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第 5 章 対話相手との年齢差・性別差に応じたあいづち表現の使用実態

5.4. 分析と考察

5.4.2. 感声的あいづち表現の使用状況

本節では対人関係による感声的あいづち表現の使用傾向を比較分析するため、感声的あ いづちを「はい系」「え系」「あ系」「うん系」「ふーん系」「へー系」「ほー系」の表現形 式別に分類した。詳細結果は次の表23のようにまとめられる。

表 23 対人関係による感声的あいづち表現の使用傾向 (実数:%) あいづち

対人関係 はい系 え系 あ系 うん系 ふーん、へ

ー、ほー系 合計 20代

女性

①対同年女性 10.3(23) 5.4(12) 27.7(62) 54.5(122) 2.2(5) 100(224)

②対年上女性 17.4(42) 0 34.7(84) 42.6(103) 5.4(13) 100(242) 20代

男性

①対同年男性 18.2(46) 13.0(33) 45.8(116) 17.0(43) 5.9(15) 100(253)

②対年上男性 20.4(41) 12.9(26) 38.3(77) 21.9(44) 6.5(13) 100(201)

30代 男性

①対同年男性 16.3(52) 36.4(116) 28.8(92) 11.3(36) 7.2(23) 100(319)

②対年上男性 18.1(76) 38.6(162) 29.3(123) 3.3(14) 10.7(45) 100(420)

①対同年女性 21.6(55) 26.3(67) 27.8(71) 10.6(27) 13.7(35) 100(255)

②対年上女性 4.4(13) 35.5(105) 45.6(135) 9.1(27) 5.4(16) 100(296)

全体として出現頻度から「はい系」「え系」「あ系」「うん系」が感声的あいづちの中心を なしていて、「ふーん系」「へー系」「ほー系」の使用は少ないことが分かった。あいづち表 現を感声的表現と概念的表現に二分した小宮(1986)は、「はい系、え系、あ系、うん系のあ いづちは、この順に敬意が減り、親しみが増すという一般的な傾向がある(小宮1986:51)」

と指摘している(図21)。小宮の主張を踏まえると敬意が増すと「はい系」「え系」は年上相 手に、敬意が減り、親しみが増す「うん系」は同年相手に使用することが予想できる。

しかし、ここで上記の表23の白で示した①対同年相手、網かけで示した②対年上相手へ の使用傾向を確認すると、太枠線で囲んだ、20代女性の「え系」の対年上への使用がない、

30男性の「はい系」対年上女性への使用が少ない、20代男性の「うん系」の対同年に少な いことを除いてはほとんど予想通りの傾向を示している。だが、20代女性と20代男性では

「はい系」が、30代男性では「え系」の使用が全体的に多く、今回の使用傾向から「はい

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系」と「え系」の間に敬意の差があるとは言いがたい。そして、「うん系」は小宮の指摘通 りに敬意が減り、親しみが増すことが確認できた。「あ系」は20代男性の同年相手に多い場 合を除いては全体的に年上相手に多いことが確認できた(図22)。

さらに、同性グループである20代女性、20代男性、30代男性と30代男性異性グループに おけるそれぞれの使用傾向について詳述する(あいづち表現の使用状況を示す( )内の数 字は割合(%)を表す(以下、同様))。

まず、20代女性の場合は、年上相手と同年相手の会話における感声的あいづちのうち、

敬意が最も低く、その代わり親しみが最も高い「うん系」の使用頻度が高いことが分かっ た(図23)。このような結果から5.3.で立てた仮説(1)の「初対面では、会話相手に関係なく丁 寧なあいづちの使用が多い」という結果にはならず、初対面における従来の社会的規範か ら逸脱していることが確認できた。ここで注目したいのは対同年と話す場合は「え系」「う ん系」「ふーん系」「へー系」を使用する割合が増えることである。「え系(4.9)」以外は「く だけたあいづち」としてまとめられる。このような結果は、仮説(3)(4)を支持する結果とな り年齢という社会的要因が聞き手言語行動に影響を及ぼしていることが確認できた。

図 23 20代女性の対同年・対年上女性への感声的あいづち表現の使用状況 はい系

え系 あ系 うん系

+

敬 意

親 し み +

え系

うん系

+

はい系

敬 意

親 し み +

あ系

9.4(23) 16.9(42)

4.9

(12) 25.3(62) 33.7(84)

49.8(122) 41.4(103)

4.9 (12) 3.2 (8)

5.7 (14) 4.8 (12) 20代女性対同年女性

20代女性対年上女性

はい系 え系 あ系 うん系 ふーん系 へー系 図 21 小宮(1986)における「はい系」「え

系」「あ系」「うん系」の敬意と親しみ

図 22 本章における「はい系」「え系」「あ 系」「うん系」の敬意と親しみ

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宇佐美(2001b)は、「相手を心地よくさせるために使われる言葉は、くだけた言語形式を 使っていても、『ポジティブにポライトだ』と考える捉え方が、ブラウンとレビンソン(Br own & Levinson1987)のポライトネス理論の斬新な点である(宇佐美2001b:23)」と指摘し ている。今回、初対面における従来の社会的規範から逸脱している「うん系(49.8)」「ふー ん系(4.9)」「へー系(5.7)」の「くだけたあいづち使用」を交える頻度が、20代女性同年同士 に60.4%という割合で有意に多かったという結果が示唆するのは、20代前半の若い女性が ポジディブ・ポライトネスをより表しやすいということである。「初対面でも、格式張らな い、気さくで、対等な人間関係を構築するために、くだけたあいづち表現を用いること」、

これが20代の同年女性同士の初対面会話においてふさわしいと考えられる聞き手言語行 動になっているようである。くだけたあいづち表現は20代の同年女性同士の会話でより頻 繁に使われている。後述する30代では使用が確認できない(図25、26)。これは20代にしか みられない現象である。年齢が上がるにつれて社会的に低いとされるくだけたあいづち表 現は少なくなるので見かけ上時間における変異(age grading)といえるであろう。

次に、20代の男性の場合は、年上相手と同年相手の会話における感声的あいづちのうち、

中立的な「あ系」の使用が両者ともに最も多いことが分かった(図24)。一方、年上の男性 に対しては「はい系」」「え系」の「丁寧なあいづち」が34.3%、同年の男性に対しては32.

5%の割合を示し、年上相手の会話における使用の方が若干多いことが分かった。仮説(2) の通りに年上の相手に対しては敬意の高い丁寧な表現を使うという社会的規範から逸脱す ることなく、同年相手より年上相手の場合に丁寧なあいづちの使用頻度が高いことから、

年齢という社会的な要因があいづち表現の使用に影響を及ぼしていることが確認できた。

また、全体的に見た場合、「くだけたあいづち」より「丁寧なあいづち」の方が少ないので、

20代男性同士の会話ではネガティブ・ポライトネスが表れやすいと考えられる。

図 24 20代男性の対同年・対年上男性への感声的あいづち表現の使用状況 さらに、次の図25の30代男性同性同士の場合、年上の男性相手、同年の男性相手におけ る感声的あいづちについては、両者ともに「え系」の使用が42.6%と37.7%の割合で最も 多かった。一方、「はい系」「え系」の丁寧なあいづちが年上の男性相手に62.6%、同年の

18.9(46) 21.0(41)

13.6(33) 13.3(26)

47.7(116) 39.5(77)

17.7(43) 22.6(44)

1.6 (4) 3.1 (6)

0.4(1) 1(0.5) 20代男性対同年男性

20代男性対年上男性

はい系 え系 あ系 うん系 ふーん系 へー系

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男性相手に54.6%の割合を示している。5.2.で立てた仮説(1)(2)(3)の通り、社会的規範から 逸脱することなく、場面(初対面)と年齢という社会的要因が聞き手言語行動に影響を及ぼ していることが確認できた。このような結果から30代男性同性同士の会話ではネガティ ブ・ポライトネスが最も表れやすいことが分かった。

図 25 30代男性の対同年・対年上男性への感声的あいづち表現の使用状況 なお、図26の30代男性異性同士の場合、年上の女性、同年の女性に対する感声的あいづ ちの使用のそれぞれについて、「あ系」の使用が44.0%、31.4%の割合で最も多かった。一 方、「はい系」「え系」の丁寧なあいづちが年上の女性相手に44.0%、同年の女性相手に54.

1%の割合を示している。30代男性異性同士の場合、仮説(1)の場面(初対面)という社会的要

因に関しては社会的規範から逸脱することなく、その影響がみられることが分かった。し かし、年上より同年に対し、丁寧なあいづちの使用が多いことから、「会話相手の年齢が発 話者よりも年上の場合丁寧なあいづちの使用が多い」という仮説(2)に合致しない結果とな り、年齢という社会的要因には必ずしも影響されないことが確認できた。全体的に「くだ けたあいづち」より「丁寧なあいづち」が多いことから、30代男性異性同士の会話でもネ ガティブ・ポライトネスが表れやすいといえよう。

図 26 30代男性の対同年・対年上女性への感声的あいづち表現の使用状況