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第4章 待遇調整による依頼会話の展開の特徴

4.2 場面 2(ビデオカメラの貸し借り)における待遇調整

4.2.2 場面 2 の待遇調整2(説得)

4.2.2.1 日本語依頼会話における待遇調整2(場面 2)

(ア) 《行動前提の伝達と理解》に関わる待遇ストラテジー

①依頼者の状況を被依頼者に伝えようとする【状況説明】(依)

場面 1 と同様に、場面2の日本語においても、依頼者が陥っている状況を被依頼者に伝 えるために、【状況説明】が行われているが、それらにおいて使用されている待遇ストラ テジーは以下のように 3 種類見られ、場面1より複雑化していることが観察された。

a) 依頼行動の必要性表明(JP7・JP8・JP9・JP10)

b) 願望・意思表明 (JP6・JP8・JP9・P10)

c) 被依頼者を頼らざるを得ない状況にあることを示す(JP7・JP8・JP9)

まず、会話例 39では、依頼者は 37JF5 でスピーチ大会出場のために練習しているとい う情報を提供している。そして、39JF5、41JF5 でスピーチを見て発音や表情などを確認 できるようにした方が良いといわれていることを伝えることで、依頼行動の必要性を表し ている。さらに、43JF5 で「ちゃんとしたカメラとか持ってなくて」と状況を説明するこ

依頼の妥当性の高低の認識【理解】

とで、被依頼者にビデオカメラを借りる依頼をする他手段がないことを暗示し、さらに依 頼の「妥当性」を上げようとしている。

会話例 39 (JP8)依頼者:JF5 被依頼者:JF6

37 JF5: (0.4)しかもね.その先生が:,(.)なんか:,(0.5)その(.)スピーチ?

してる時に:,あの:>多分なんか<映像とかで撮っといた [ほ

うがh\な(h)んかh

状況説明 待遇調整2

38 JF6: [おhhh 継続支持

39 JF5: [.hhその発音とか [表情とか:, そういうのもすごく:話す

時に大事たから:みたいなことゆってて,

状況説明

40 JF6: [.hh( ) [あ:あ:. 理解

41 JF5: .h映像 [撮ってきなさいみたいなこと言われるんだけど

[:.

[.hh

状況説明

42 JF6: [なるほど.

[うんうん[うんうん

[うん.

継続支持

43 JF5: [ちょっと-ね:,(0.4)なんかそこまで(.)ちゃ

んとしたカメラとか持ってなくてちょっとどう[しようか な:とか [思って:.

状況説明

44 JF6: [ < 確 か に .>

[うんうんうんうんうんうん.

継続支持

45 JF5: う:ん.そうなんだよね:. [だから(0.7)ちょっとね,友達に撮

ってもらたいな:とか思ってるんだけど:. [.h

状況説明

48 JF6: [゜うんうんうん.゜

[うんうんうん.

理解

49 JF5: そ:.で, 状況確認要求

50 JF6: カメラが. 継続支持

51 JF5: そ:.[カメラね:,どうしようかな:と思ってん[だけど:..h>

なんか<前さ: [(.)カメラをもっ [(0.5)てるって:.

状況確認要求

52 JF6: [うんうんうん. [ う ん う ん う ん

うん. [うんうんうん. [↑あ. そ う そ う そ う そ う そうそう [そうそう.

状況確認

53 JF5: [↑あ,本当. [も-(0.6) ] 理解

54 JF6: [うんうんうん.] 受け入れ

55 JF5: h[いやなんか][:,ちょっと(.)どうかな:と[>思った< 前置き 待遇調整3

同様に、会話例 40 でも、依頼者は、まず、52JM1 の「スピーチコンテストがちょっと 来月あるらしくて」と 54JM1 の「出ろ出ろと言ったからさ」のように、避けられない状 況にあることを被依頼者に伝えている。その後、63JM1 と 65JM1 でそれらを自分で克服 しようとしたが、解決できないという旨を伝え、被依頼者の共感を得ている。それを踏ま えて、依頼者は、69JM1 と 71JM1 でスマートホンではうまく録画できないことを伝えて、

ビデオカメラを借りる依頼行動の必要性を強調して「妥当性」を高めようとし、被依頼者 を説得しようとしている。

会話例 40 (JP9)依頼者:JM1 被依頼者:JM2

52 JM1: でさ,やっぱ入ってから,まあ,そんなに経っていないんだけど:

[(.)]スピーチコンテストがちょっと来月あるらしくて,

状況説明

待 遇 調 整 2 53 JM2: [うん ]

まさか?

継続支持

54 JM1: そう.h.h出[ろ出ろと言ったからさ, ] [あんまり話すのが

得意じゃないけど, ]

状況説明 55 JM2: [hhhhhhhh ]すご [いな:::::::なっ

ているだね ]すごいね.

理解

56 JM2: =もう原稿とか自分で考えてる:ん? 関連情報要求

57 JM1: まあ,先生と相談しながら:だね 関連情報提供

58 JM2: おっ,格好いいな 関連情報への評価

59 JM1: でも,俺だめだ.はなす‐はなすのは緊張しすぎるから 状況説明

60 JM2: そうだね.結構いるんでしょう?スピーチの人 理解

61 JM1: まあ,そうね.結構いるみたいね. 状況説明

62 JM2: 大変だ 理解

63 JM1: まあ,家でもね[練習 ]そうそう.ほら,今さ,スマートホ

ンにさ, ICレコーダー機能があるじゃん

状況説明

64 JM2: [練習してるの]

はいはいはい

継続支持

65 JM1: 僕は、撮りながらやっているんだ [けど, ]やっぱさスピ

ーチってさこうなんか身振り手振りとかさ-

[それとも審査対象なってくるからさ

状況説明

66 JM2: [あ,はいはい]

ああ,[英語でやるってなったら一見やらない [てならないと]

するもんね.

理解

67 JM1: [そうそう ] 理解

68 JM2: (.)そうかそうか. 理解

69 JM1: ビデオを撮りながら練習をしたいなあと思ってるんだけどさ, 状況説明

70 JM2: おおお 継続支持

71 JM1: スマートホンでこう立て-立てられないじゃん.こう分かる? 状況説明

72 JM2: そうやんね.こぼっちゃってね. 理解

73 JM1: そうそう.だから,ちょっとビデオカメラ:あったらいいなと思っ

ているだけどさ, [ ]なんかさ,ビ [デオカメラさ, ]持って

[いるね.

状況説明

74 JM2: [うん] [おーはい,はい,]

[あるある.

理解

75 JM1: そういうのをとるのが好きだね. 状況確認要求

76 JM2: 結構ね,いいやつがね,あるんだよね. 状況確認

このように、場面 1 では現れなかったc)被依頼者を頼らざるを得ない状況にあること

を示すことで、「妥当性」を高めようとする待遇ストラテジーは場面2の特徴だと考えら れる。この待遇ストラテジーは、「ちょっと,撮ったほうが先生が「勉強になるよ」って 言うから」、「(先生が)出ろと言ったからさ,」のようなもので、ほかの人からの指示 などの客観的な理由があるため依頼するしかないことを伝え、被依頼者からの理解を得ら れやすくするものではないかと考えられる。

② 被依頼者の依頼遂行能力を把握しようとする【状況確認要求】(依)

場面 1と同様に、被依頼者が置かれている状況を確認するために、まず依頼対象を所有 していることを確認する待遇ストラテジーが会話例41のように使用されている。

会話例 41 (JP9)依頼者:JM1 被依頼者:JM2

75 JM1: そういうのをとるのが好きだね 状況確認要求 待遇調整2

76 JM2: 結構ね,いいやつがね,あるんだよね. 状況確認

77 JM1: 本当. 理解

78 JM1: =なんかさ,いいやつだったら,借りるのはちょっと,申し訳な

いんだけどさ,

前置き

79 JM2: [うん] 受け入れ

80 JM1: [ちょっと,スピーチコンテストがさ:,後2週間くらいなんだ

けど:::ちょっと本番まであれをちょっと借りてもいいかな

依頼 待遇調整3

会話例 41 では、被依頼者が置かれている状況を把握せずに依頼行動を行うと唐突感、

違和感が生じる可能性が高いことから、【状況確認要求】を依頼者が行って被依頼者の状 況を確認することで依頼を行う「妥当性」を高めようとしている。ここで、会話例 41 の JM1の依頼者が被依頼者の状況を確認する会話は、ビデオカメラの所有確認しか見られな かった。このことに関して、4.1節で述べたように、場面1(本を借りる場面)では依頼者が 被依頼者が依頼を受けることが可能かどうかを確認するためのやりとりである【状況確認 要求】と依頼者の状況を被依頼者に理解させるためのやりとりである【状況説明】のよう な2種類の前提条件の確認が現れていた。しかし、なぜ場面2では【状況確認要求】の欠 落が生じるのだろうか。その理由としては二つ挙げられる。一つは、場面2では【所有確 認要求-確認】という連鎖によって被依頼者の状況を把握し、依頼を受ける能力があると 判断できたため、それ以上確認する必要がないということが考えられる。もう一つの理由 としては、そもそもビデオカメラ自体が毎日使うものでなく、依頼を受けてしばらく貸す ことに特に差し障りがないことも多いからである。今回のデータでは、被依頼者は依頼を 承諾する際、「そんなに毎日毎日使ってるわけじゃないから」「別に今は使ってないし」

のような【承諾理由説明】をしばしば行っていたが、この発話からも、日頃貸せる状況に あるということが分かる。

③ 依頼の妥当性を高めるよう求める【状況詳細要求】(被)

④ 依頼内容を調整しようとする【条件緩和要求】(被)

会話例 40 と会話例 41 では、依頼者が【状況確認要求】と【状況説明】を行ってから

【依頼】を明示している。ここでは、被依頼者の JM2 は、依頼を承諾する姿勢に立って はいるが、依頼者が貸し借りの時間に言及せずに依頼が行われようとしているため、被依 頼者は依頼者にそれを明らかにすることを求める必要がある。それゆえ、会話例 42 のよ うに、被依頼者はすぐに承諾せず、81JM2の「もうすぐ借りたい感じでしょう」と【状況 詳細要求】で詳しい依頼内容を聞いた上で、84JM2 と 86JM2 で【保留理由説明】を行い、

依頼者が依頼を取り下げないことを確認してから 88JM2 で承諾しているが、「一回確認 してみてもいい?」と、貸すのを待ってもらうことについての条件緩和を求め、依頼者の 理解を得て依頼が成立している。

会話例 42 (JP9)依頼者:JM1 被依頼者:JM2

80 JM1: [ちょっと,スピーチコンテストがさ:,後2週間くらいなんだ

けど:::ちょっと本番まであれをちょっと借りてもいいかな

依頼 待遇調整2

81 JM2: 2週間ぐらい.もうすぐ借りたい感じでしょう? (保留)

状況詳細要求

待遇調整3

82 JM1: まあ,できるだけ早いのほうがいいっちゃいいけど, 状況詳細説明

83 JM2: そうやんね. 理解

84 JM2: その[(.)]さっきドライバーが撮っってきたじゃん. 保留理由説明

85 JM1: [うん ] あ、はいはい

理解

86 JM2: それで,週末は使うかどうかが,友達がそのドライバーするん

だけど[:(.) ]分からないから,友達から聞いてみて, もし友達がいらないと言ったら,全然すぐ貸せるわ.

保留理由説明

87 JM1: [そうなんだ.] ああ,そう. 理解

88 JM2: たぶん大体だい‐大丈夫だと思うよ.貸せると思う.一回確認

してみてもいい?

条件緩和要求

89 JM1: ああ,オッケーオッケー. 条件緩和

90 JM2: うん.だったらもん.だ-それかある.もうひとつあるかな.い

いほうがいい? [どっちでもいい?]

条件緩和要求

91 JM1: [いや,まあ, ]でも別に.うつりが,

[見 ]られるだけでいいや.

条件緩和

92 JM2: [うん] 理解

93 JM2: それじゃ,そのもう一つのほうが絶対貸せる. 承諾 待遇調整3

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