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第3章 研究方法

3.3 分析方法

3.3.3 依頼会話における「待遇調整」の分類基準

依頼会話は被依頼者に対して大なり小なり負担をかける行為であることから、会話参 加者がお互いに快く会話を終了させるためには、待遇調整を行う必要があると考えられる。

本研究では、会話参加者である依頼者と被依頼者が相互のやりとりの中で、依頼を行う側 は、どうすれば被依頼者が快く依頼を受け取ってくれるか、被依頼者が断りたい場合、容 易に断れるようにするためにはどうすればいいか、反対に依頼された側は、その依頼をど のように承諾して依頼者の気持ちを軽くするか、拒否してもどうすれば依頼者の面目を潰 さないかなど、どの段階でどのような待遇をどのように行っているのかについて考察を行

う。依頼者と被依頼者は会話の中で、妥当性を調整すべき点において「待遇ストラテジー」

によってそれらの問題を解決しようとする「待遇調整」を重ねながら、会話を構成すると 考えられる。以下、日本語母語話者同士による場面1の会話を例として、グエン ティニ ューイー(2014)で明らかになった談話構造の部分ごとに、各発話機能がどのような意 図で用いられているのかを考察したうえで、会話参加者が依頼会話の中でどのような待遇 調整を行っているのかを記述する。

会話例 1 依頼者:JM1 被依頼者:JM2 会話

構造

発話機能 会話例 待遇調整

《 雑 談 部

挨拶 01 JM1: ごめん,お待たせ:! 会話の開始部において、

被依頼者を依頼の目的に 自然に引き込むことで、

人間関係に配慮しながら 依頼を伝えやすいタイミ ングを作る

待 遇 調 整 1

挨拶 02 JM2: お::久しぶり:::[:お元気だった?

挨拶 03 JM1: [ひさびさ:.うん.そっちはどう?

挨拶 04 JM2: う:ん.まあぼちぼちかな:.

依頼対象の情報要求 05 JM1: あれ?(1.1)何読んでんの?

依頼対象の情報提供 06 JM2: え-「もしドラ」って知ってる?

依頼対象への理解 07 JM1: あ.

依頼対象の情報提供 08 JM2: ちょっと前流行っ[たやつ.

依頼対象への理解 09 JM1: [知ってる

[それ!

継続支持 10 JM2: hhまじで? [(え)-.hh

依頼対象の情報要求 11 JM1: でも:(1.0)>あれもう<,買ったんだ?

依頼対象の情報提供 12 JM2: そうそうそう,買っちゃったちょっ

[と:

依頼対象への評価要求 13 JM1: [どう?面白い?

依頼対象への評価 14 JM2: ああ,めっちゃ面白いよ.

《 依 頼 部

〈 依 頼 理 由

状況確認要求 15 JM1: >今<どんぐらい? 依頼者が依頼遂行のための 前提条件を確認することで 依頼をしようとしているこ とを暗示し、被依頼者に心 理的な準備をさせる。

待 遇 調 整 2 状況確認 16 JM2: 今半分ぐらい[かな:まだ.

理解 17 JM1: [半分

いいな::.=

〈 依 頼 遂 行

依頼 18 JM1: =読み終わったら貸してよ. 依頼者の依頼を受け取っ

た被依頼者が明示的に承 諾か拒否を行う時点、ま た、その直前、直後にお いて、会話参加者の関係 に配慮するための発話で 両者の人間関係を保とう とする。

待 遇 調 整 3

承諾 19 JM2: (1.0)[あ-うん,いいよ.

負担軽減 20 JM1: [い-いやま,買うかもしれな

[いけど.うん. ]もしあれ だったら.

受け入れ 21 JM2: [あ:や-いいよいいよ. ]

〈 依 頼 相 談

解決案申し出 22 =いいけどでも:,.hh sいつ読み終るか な,後-えっ?(.)どうしよかな::ま一週間 くらいあったら読み終わる[(から:)

被依頼者が依頼への承諾 を示した後、その依頼を 遂行する際の問題を会話 参加者がお互いに考え、

その問題の解決案を両者 が提示する。あるいは、

依頼が拒否された場合は お互いに配慮しながらこ れからの人間関係を良好 に維持しようとする。

待 遇 調 整 4 負担軽減 23 JM1: [あ,全然急がなくてもいいか[ら:

受け入れ 24 JM2: [あ,本当?

解決案提示 25 JM1:

読み終わったら連絡してくれたら,ま-買ってr-たらあれ-また[一週間

同意 26 JM2: [あ::オッケオッケー.

わかったわかった.

感謝 27 JM1: ありがとう. 会話終了のため、人間関

係を良好に保とうする 調 受け入れ 28 JM2: うん.はいは::い.

このように、依頼会話における「待遇調整」は、グエン ティニューイー(2014)で 明らかになったベトナム語・日本語の依頼会話の談話構造の部分ごとにそれぞれ異なる待 遇調整が行われていると見ることができる。以下、両言語に見られた待遇調整を 5 つの段 階に分けてまとめておく。

待遇調整1(会話開始)

① 依頼会話の開始部において、依頼者が被依頼者とどのような「人間関係」であるかを 被依頼者に伝えて人間関係を確認し、依頼者が依頼対象に関する情報への評価につい て話し、被依頼者を依頼の目的に自然に引き込む。

待遇調整2(説得)

① 依頼者が自らの陥っている状況について伝える【状況説明】や、被依頼者の現在の状 況について尋ねる【状況確認要求】などを行い、依頼行動の前提が整っているかどう かを確認することを通して依頼者が依頼しようとしていることを被依頼者に伝えよう とし、一方被依頼者はそれを的確に理解し、快くその依頼を受け取る、あるいは、断 ることができるように準備する。

② ①の待遇調整を行うことで、依頼者は依頼を行う理由・前提条件を伝えることができ るが、その依頼を遂行するかどうかの決定権は被依頼者にあるため、【承諾】か【拒 否】かすぐに決められないような場面では、被依頼者は依頼者がその依頼を行う前提 の詳細を追及しようとする。あるいは、依頼者自身から依頼を行う理由やその依頼を 承諾してもらって得られる恩恵を示したり、被依頼者の負担を軽くしようと調整を行 ったりして被依頼者が安心してその依頼を承諾できるよう誘導しようとする。

待遇調整3(働きかけ)

① 場面により、依頼を明示的に行う前に、依頼者が「ちょっとお願いがあるんですけど」

などの依頼を明示的に示唆するメタ的な発話である【前置き】を行って唐突感を与え ず、被依頼者に心理的な準備をさせようとする。

② 依頼者が依頼内容を明らかにし、その【依頼】を受け取った被依頼者が明示的に【承 諾】、あるいは、【拒否】を行うことで、お互いに行動の働きかけをしようとする。

③ 依頼明示の直後、依頼者が依頼に対する【承諾】を得られない場合には、依頼条件を 緩和したり自分の状況を詳しく説明したりすることで承諾してもらいやすくする。ま た、【依頼】を承諾してくれた被依頼者の善意に対して【再依頼】を行って両者の人 間関係を良好に保とうする。

待遇調整4(相談)

① 被依頼者が依頼への【承諾】の後、その依頼を遂行する際の問題を考えて、その問題 の解決案をどちらかあるいは両者が提示し依頼を遂行できるようにする。

② 【拒否】を示した時点で、依頼者の期待に応じれらない被依頼者は依頼者の問題を解 決できる代案などを提示してこれからの人間関係を良好に保とうする。

待遇調整5(会話終了)

① 会話終了の際に、被依頼者に【感謝】や【謝罪】を示し、両者間の人間関係を良好に 保とうする。

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