第四章 グローバル化時代における日本語教育と日本人教師
第三節 .デジタル・メディアの活用と日本人教師
2.1 中国におけるオンライン語学教育
2015年3 月、李克強首相が政府活動報告において、「互聯網+(インターネット プラス)行動計画」を提出した。新しいインターネット技術全体とほかの産業と が結びつくことにより、「インターネット+医療」、「インターネット+教育」、「イン ターネット+金融」などのように従来の産業の新たな発展の推進を目指すものであ る。7 月4 日、国務院は「互聯網+(インターネットプラス)行動を積極的に推進 することに関する指導意見」を発布した。中国のインターネットユーザーも急増 し、16年12月までに、7.31億人に達し、年間で4,299 万人増えた。そのうちモバ イルネットユーザーは 6.95 億人に達し、年間で 7,550 万人増えた。ネットユーザ ーにおけるモバイルネットユーザーは、2015年の90.1%から95.1%に増加した 400。
図4-5 2013年と 2014年の中国におけるオンライン教育投資金額の割合
出所: 艾瑞 咨询&有 道 学堂『2015 年中国 オ ンライ ン語 学教 育産 業 研究報 告 』、
http://www.199it.com/archives/333684.html。2017年9月1日閲覧。筆者作成。
そのような背景の下で、2016年12月までに、中国のオンライン教育ユーザー規
400 中国互联网信心中心CNNIC《2016中国互联网发展状况统计报告》
http://www.cac.gov.cn/wxb_pdf/39CNNIC.pdf。2017年8月28日閲覧。
32.0%
27.0%
21.0%
12.0%
3.0% 5.0%
6.7%
46.0%
10.5%
30.8%
3.2% 2.8%
0.0%
5.0%
10.0%
15.0%
20.0%
25.0%
30.0%
35.0%
40.0%
45.0%
50.0%
就学前教育 語学教育 中小学 職業教育 趣味教育 その他
2013年 2014年
179
模は 1.38 億人に達した。前年比 25.0%増加。そのうちモバイルでオンライン語学 教育を使用しているユーザーは 9798 万人であり、前年より 4495 万人増え、増加 率は 84.8%と、急成長を遂げている。各学齢をターゲットに、様々な語学教育ア プリが市場展開している。例えば、「網易有道詞典」、「百度翻訳」などの辞書・翻 訳類、宿題の質問ができる「作業帮」、「一起作業」のような補講・宿題補助類、「学 而思網校」等のようなオンライン講座類である。外国語教育に最初出てきたアプ リは「有道詞典」である 401。
2013 年から資本はオンライン教育を追いかけ、大量の資金がオンライン教育に 投資された。2013 年は「中国オンライン教育の元年」と呼ばれている。図 4-6 に 示すように、オンライン語学教育がオンライン教育投資全体に占める割合は 2013 年の第二位の27.0%から2014年には第一位の46.0%になり、増加率は最も大きか った。
語学教育では、図 4-6のように、辞書類への投資が一番多く、次いで1対1のネ イティブ授業と子供向け英語教育であった。
図4-6 2014年タイプ別中国におけるオンライン語学教育投資の割合
出所: 艾瑞 咨询&有 道 学堂『2015 年中国 オ ンライ ン語 学教 育産 業 研究報 告 』、
http://www.199it.com/archives/333684.html。2017年9月1日閲覧。
401 http://dict.youdao.com/。これは網易有道による検索エンジン技術を使用した無料 言語翻訳ソフトとして2007年9月サービス開始してきた。2015年4月までに、パソ コン/モバイル版合わせてユーザー数は5億人を突破し、中、英、日、韓、独、仏等の 言語切替が可能になり、単語は3700万以上、2300万の例文をカバーしている。
25.9%
18.5%
14.8%
11.1%
11.1%
7.4%
7.4%
3.7%
0.0% 5.0% 10.0%15.0%20.0%25.0%30.0%
辞書類 1対1ネイティブ授業 子供向け英語 口頭外国語 授業・講座 留学の関係 進学の関係 テスト
投資比率
180
2014年の中国オンライ教育の市場規模は 998 億元で、前年同期より 18.9%増加 した。2018 年には 2000 億元を超え、2046.1 億元となっている。2014 年オンライ 語学教育の市場規模は193.8 億元であり、2018年には435.8億元になると予測され るが、年平均増加率は2013年以降20%以上である 402。
中国のインターネットの普及につれて、ネットの利用者数も急増していった。
ネットがあったからこそ、中国人は海外へ行かなくても、海外のことに触れるこ とができ、最新の海外の情報を手に入れられるようになった。ネットの友の会に は外国語に興味を持ち、外国語を学びたい欲求を持つ潜在的な消費者が大量に存 在するようになった。図 4-8 にみるように、2013 年には、中国のオンライン語学 教育ユーザーは1200万人となった。年間増加率は 20%以上で、2018年には 3123 万人になると予測されている。
図4-7 中国オンライン語学学習者数
出所:艾瑞咨询『2015年中国在线教育研究报告』、
http://report.iresearch.cn/report_pdf.aspx?id=2490。2017年9月1 日閲覧。33頁。
オンライン語学教育規模が拡大した要因として、次の四つが挙げられている。
①グローバル化の時代において留学ブームや外国との交流の進展などにつれて、
外国語の重要性がいっそう高まり、外国語教育産業の規模が拡大した。②インタ
402 艾瑞咨询《2015年中国在线教育研究报告》、
http://report.iresearch.cn/report_pdf.aspx?id=2490。2017年9月1日閲覧。15 頁。
1200.5
1477.6
1766.1
2138.6
2584.3
3123.3
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
2013 2014 2015 2016 2017 2018
オンライン語学教育 ユーザ数(万人)
181
ーネット技術の発展により、ネット利用が普及し、学習者は時間や場所の制約が なくなった。いつでもどこでも自分のぺースで学習できる。③オンライ教育課程 は標準化され、学習のコストが大幅に削減され、格安の授業料ではユーザーに教 育サービスを提供できるようになった。④1対1の授業形態によって個人的な学習 ニーズに対応できるようになった。
オンライン語学教育の言語の種類は英語とその他の言語とに分かれている。
2015年、「有道学堂」の調査によると、言語別にみた学習者の割合は英語 44.7%、
中国語 28.7%、日本語 11.4%、韓国語 5.2%。フランス語 3.1%、ドイツ語 2.3%、
ロシア語 1.6%、スペイン語 1.2%、ポルトガル語 0.6%、アラビア語 0.5%、その 他0.5%であったとされた。日本語学習者の学習動機については、仕事上の必要性 22%、移民 4%、個人的趣味 31%、テレビ番組を見るため 16%、資格試験 10%、
進学試験8%、留学9%からなる。以上からみれば、日本語学習者の動機は、実用 性と興味性が半分ずつを占めている。その他の言語では実用性のほうが多く、そ の点で日本語は他の言語と違っている。
現在、オンライン語学教育は、内容からみれば、電子辞書類、単語の暗記、聴 解口頭練習、ネット講座、1対1のネイティブ教師の授業、友の会といった六種類 に分けられる。電子辞書と単語の暗記はIT技術を利用して、伝統的本や辞書の機 能はネットへ移され、ユーザーは端末さえあれば、断片の時間を利用し、外国語 が学べるようになった。聴解と口頭の練習は、テレビ番組、最新のニュース、映 画、音楽などネットからの視聴リソースを学習者に提供し、学習のポイントを指 導しながら、ユーザーに自由に使用させる。友の会は、外国語の学習だけでなく、
「日本の音楽」、「日本語番組」、「日本語の留学案内」などいろいろカテゴリが設 けられ、同じ興味がある人を集めて、交流のプラットホームを作る。友の会はオ ンライ教育機構にとってとても重要な役割を果たし、人気の友の会はユーザーを 引きつけることができ、教育機構の口コミに大きな影響を与える。日本語オンラ イン教育において、一番人気な「沪江網」は非営利の日本語の友の会から発足し たのである。当時、日本側の最新情報を提供することが沪江網の「看板」である。
2006 年にはユーザー数は 80 万以上を超えてから営利の会社として起業したこと になる。
ネット講座は有料と無料と分けられ、無料講座とは一般的に五十音図、挨拶語 など初級レベルの授業、または日本文化を紹介している授業などであり、日本へ の興味が持っているユーザーを引き付けようとするから、講座の講師には日本人 もいると見える。有料の講座は能力試験向けの一連授業であり、ユーザーは学費 を支払い、ID 番号とパスワードで登録しいつでもどこでも授業を受けるようにな る。また、ネット講座の内容は何回も繰り返すことができ、自分のペースで学習 することができる。ネット講座の講師は中国人教師もいるし、日本人教師もいる
182
が、中国人教師のほうが多い。講座は非同時型であるからこそ、学習者と講師と の即時的なコミュニケーションができないというデメリットがあるが、講座にはQ
&A という掲示板を設定したりして講師と学習者との交流チャンスを作ろうと工 夫している。
日系企業でも中国人従業員をオンラインの日本語講座を利用しようと励ます。
トヨタ(長春)エンジン会社の人事担当者により、「以前は、日本語教師を招聘し、
社内で日本語教育が行われたが、PCや移動端末を利用し、オンライン日本語教育 を行うようになった。日常会話だけでなく、仕事現場で使われている実用日本語 の能力を要求している。オンライン語学教育はより多様化になり、中国人従業員 の学習意欲を引き付ける」403。
2.2 1対1オンラインネイティブ教師の授業
現時点でユーザーはオンライン語学学習を利用する時、無料の道具類の商品が より好きになり、1 対1のネイティブ授業が他の商品より受講料が高いから、現時 点注目しているユーザーが少ない。一方、「搜狗ビックデータ商業研究院・腾讯教 育」が発表した『2014 年教育業界のデータ報告』により、試験、授業講座、オン ライン教育、語学学校、教科書、学費などのキーワードを比べ、外国人教師とい うキーワードで検索することが多くなってくると見られる。コミュニケーション 能力は次第に重視されてきたと分かる。語学学習者は「100%の外国語の雰囲気」
で学ぶのが好きになった。だから、外国語学習において、ネイティブ・スピーカ ーの重用性も大きくなってきた。9割の利用者に 1対1の外国人教師の授業は有効 だと認められた。同報告により、2011 年オンラインネイティブ口頭講座を主な業 務として起業した 51Talk の検索量は PC 端末で 72.8%増え、移動端末で 84.6%増 えているとされた。51Talk は現在語学機構で一番注目された会社である。外国人 教師のオンライン授業は高速発展時期を迎えている。学習者はオンラインのネイ ティブ口頭授業を選ぶ次の四つの理由がある。①学習時間、場所の制限がない。
②自分のペースとニーズに合う③学習費用が低い。④自分が好きな講師が選べる
404。