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大連における日系企業と日本語人材のニーズ

第三章 日中関係の新たな展開と異文化交流の現場における日本人教師

第二節 日系企業と多様的な能力を持つ日本語人材の育成

2.1 大連における日系企業と日本語人材のニーズ

大連の日本語教育は大まかに言えば、次の三つの特徴がある。①初等、中等の 時期に日本語から英語にスイッチするのは時代の流れで誰にも留められないし、

止める必要もない。②大学には日本語科は十分にあるし、量的に人材も多い。ジ ェトロ2013年の調査によると、大連市の総合大学は27校で、そのうち19校(70%)

は日本語専攻を持っている。在校学生は14669名である(2013年当時)。しかし、

教師が研修に参加できる場がないのは問題である。なんとか研修、訓練の場を作 りたい。③社会人で専門を持ち、かつ日本語ができる人材が極めて不足している。

特に IT 分野では「専門+日本語(十分にできること)+英語(多少でもいい)」

という人材を探している 325

1980 年代の初頭、大連経済技術開発区に続々と進出した外資企業の半数は製造 業系の企業である。日系企業の小野田セメントを始めとして日系企業が大連に進 出した。中国のWTO加盟前後の時期、日系企業の中国市場への進出は一段と加速 している。蒼蒼社のデータによると、中国に進出した上場企業は8378社となって おり、うち東北三省 326には530社、そして大連市に進出しているのは 367社であ った。このうち製造業は 208 社で、57%を占めている。それに対して、中国には

325 国際協力事業団無償資金協力部『中華人民共和国大連日中人材育成センター設立 計画予備調査報告書』、2003年、3~17頁。

326 東北三省は遼寧省、吉林省、黒龍江省と総称する。大連は遼寧省に所属する。

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進出する非上場企業は8115社となっており、うち東北三省には749社、大連には 574社進出している 327

林楽青・西尾林太郎・孫蓮花は大連市対外貿易合作局の内部資料により、つぎ の点を明らかにした。2010年までに大連に進出した日本企業の投資総額は42億ド ルに達し、国・地域別では第一位になった。大連経済技術開発区に参入した 2000 社の外資企業のなかで、日系企業は約 580 社で、その 7 割が製造業であり、対日 輸出加工型の企業が多くを占めている 328。同時に、流通業や金融業なども中国の 消費市場としての魅力を重視して、大連に出店するようになった。

1998 年に大連ソフトウェアパーク 329が創設され、日本、欧米、中国の IT 関係 の企業が集中して進出した。日系企業を誘致するために、中国側は積極的な誘致 活動を行っている。2008年11月、東京で大連市ハイテクゾーン管理委員会の「大 連(日本)ソフトウェアパーク、大連ソフトウェアパーク(株)」の東京事務所が 開設された。現地情報の提供やIT関連企業が大連に進出できるための施策を行な っている。2010年までに進出した日本企業は120社余りで、企業全体の約26%を 占めている。業務内容からみれば、ITO 業務とBPO業務は合計で日本企業の7 割 で、組み込みソフト開発についてはその 1 割である。さらに、それら企業の業務 内容の9 割は対日輸出関連である 330

日系企業が大連に進出した理由は、多くの先行研究が指摘しているように、日 本人や日本語が使用できる中国人が多く、日本人が参入しやすい環境が整ってい るからである。「大連なら、英語ができなくても、日本語さえ話せれば就職は問題 ない」331と大連市対外貿易経済合作局公室主任の趙成武が言っている。大連では 日本語人材に対する需要が高いから、日本語を学びたい人が多くなる。逆に、日 本語ができる人が多くなれば、日系企業の進出や日本と関係がある職業も増えて いる。大連にはそういう日本語教育の発展と日系企業の発展とを相互に促進する 関係が見られる。人材募集ニーズは各種専門人材のうち、日本語専門人材の増加 速度がもっとも速く、そのほかの専門人材は 2001 年度に大幅に増加しただけで、

327 21世紀中国総研(編)『2016~2017 年版中国進出企業一覧非上場』蒼蒼社、2016 年。

328 林楽青・西尾林太郎・孫蓮花『大連における「日本語人材」の需要について―日 系企業を中心に―』現代社会研究科研究報告、2012年、37~38頁。

329 大連ソフトウェアパーク(中文表記:大連軟件園)は英語略字からDLSPとも呼ば れ、中華人民共和国遼寧省大連市の西郊外の学園地区に、1998年6月に創設されたIT 関係を中心にした工業地域である。広い意味での大連ハイテクゾーンの一部でもある。

日本・欧米・中国のIT関係の会社が多く集積する場所だが、特に日本から受注した ITO業務や BPO業務が多いのが特徴である。

330 前掲『大連における「日本語人材」の需要について―日系企業を中心に―』、39頁。

331 http://finance.sina.com.cn/china/dfjj/20120417/150811846823.shtml。2017年7月22日 閲覧

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2002 年度の増加幅は横ばい傾向にある。大連理工大学機械学部では日本語強化ク ラスを開設した。強化クラスの学生は 4 年間の課程終了後に 1 年間の日本語学習 を行うものである。IT業界のソフトウェア企業がこれらの卒業生を雇用するなど、

強化クラスの学生は歓迎されているとのことである。

調査によると、日本語専攻を開設した 9 か所の教育機関では、非専攻学生の日 本語選択率は高く、特に第一外国語として選択する学生が多いことが分かった。

具体的に言えば、遼寧師範大学では、各専門分野専攻の学生の5%が第一外国語と して、日本語を選択した。大連理工大学は機械専門の 17%の学生が第一外国語と して選択している。大連民族学院は6%の学生が日本語を第一外国語として選択し た。大連大学では機械66%、電気55%、情報10%、管理3%の学生が第一外国語 として日本語を選択している。それに対して、筆者が調査した江蘇省のある理系 の大学では、第一外国語として選んだ非専攻学生は2~3名しかいなかった。ゼロ になった学年さえある。また、大連の大学では、機械関係、電気関係、IT 関係、

管理専攻学生には日本語能力試験 2 級取得を求めている。大連の日本語人材の 51%は日系進出企業や団体に就職している。大学卒業生が企業現場で通用するよ うな訓練を受けていないため業務が遂行できないという問題は依然として残され たものである。企業は日本語ができる技術者及び管理職人材を大量に求めている が、教育関連機関側は学生、教師の置かれている状況などを理由に、一般には英 語のみの教育をしている 332

調査された45社、企業の予想によると今後 7-8年にわたっての日本語専門人材 のニーズは下降し、技術人材と管理人材のニーズが上昇すると予測されている。

33%の企業は日本語人材の採用を強く望んでおり、51%の企業がIT関連技術者を、

28%の企業が企業管理職人材を必要としている。企業は日本語と技術あるいは管 理知識を持つ複合的な人材に興味を示している。ソフトウェア企業では日本語仕 様書の読解能力が必要なため、日本語が分かるソフトウェア技術者に対する強い ニーズがあることが判明した。それにたいして、単純に日本語がきるだけの人材 は必要とされていない 333

大連は中国でも指折りの「日本語人材」が豊富な地域だと言われている。しか し、大連の日本語教育は、ほかの地域とほとんど同じように、既定の学校カリキ ュラムに沿って学習課程を修了する。「日系企業が期待しているような人材育成に 特化することはかなり困難が予想される」334。2001 年に GENPCAT(大連)有限 公司が中国初の対日コールセンターを設立し、一年目に高度会話能力持っている

332 国際協力事業団中華人民共和国事務所、北京万洋諮詢『大連日中人材育成センタ ー建設適正規模及びニーズ基礎調査』、2002年、 30頁。

333 同上、7頁。

334『国際協力事業団無償資金協力部『中華人民共和国大連日中人材育成センター設立 計画予備調査報告書』、2003年、S3-3頁。

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日本語人材を120人募集したが、2007年になるとは50~60人前後に縮小した。そ の理由として、柳井雅也はコールセンターのオペレーターの場合は高いレベルの 日本語能力を持つ人材が必要であるから、日本国内と同じレベルのオペレーター を育成するためのコストが高すぎるという点を挙げている 335

大学での教育と現場のビジネスとにはかなりの乖離がある。だから職業指導に 特化した日本語教育は社内で行われている。日系企業も積極的に中国人スタッフ に日本語教育をやっている。例えば、大連愛麗思生活用品有限公司において、毎 年12月にテストを行い、その結果に応じて50 元~500元まで手当がでる。これら は日本語学習意欲の増進に役立っている 336。木下食品株式会社は、日本での品質 管理の仕方を勉強し、日本で学んだ技術を持って帰ってもらうことを目標にした 人材派遣を行なっている。日本に年間 6 人派遣している。もう一つの例として、

前掲のGENPCAT(大連)有限公司キャピタルは日本語教師 18人を配属している。

そのうち日本人教師は 2 名である。カリキュラムをみれば、具体的に三つの業務 に分けられている。①電話のオペレーション業務(談話、応接)。オペレーション スキルの習得が中心である。経費的に苦しい状態なので、1ヶ月の全日制で集中的 に実施している。②タイピング業務(入力業務、Eメールの作業)。③マネージャ ークラスの育成 337