第三章 日中関係の新たな展開と異文化交流の現場における日本人教師
第二節 日系企業と多様的な能力を持つ日本語人材の育成
2.2 大連ビジネス人材育成プロジェクト
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日本語人材を120人募集したが、2007年になるとは50~60人前後に縮小した。そ の理由として、柳井雅也はコールセンターのオペレーターの場合は高いレベルの 日本語能力を持つ人材が必要であるから、日本国内と同じレベルのオペレーター を育成するためのコストが高すぎるという点を挙げている 335。
大学での教育と現場のビジネスとにはかなりの乖離がある。だから職業指導に 特化した日本語教育は社内で行われている。日系企業も積極的に中国人スタッフ に日本語教育をやっている。例えば、大連愛麗思生活用品有限公司において、毎 年12月にテストを行い、その結果に応じて50 元~500元まで手当がでる。これら は日本語学習意欲の増進に役立っている 336。木下食品株式会社は、日本での品質 管理の仕方を勉強し、日本で学んだ技術を持って帰ってもらうことを目標にした 人材派遣を行なっている。日本に年間 6 人派遣している。もう一つの例として、
前掲のGENPCAT(大連)有限公司キャピタルは日本語教師 18人を配属している。
そのうち日本人教師は 2 名である。カリキュラムをみれば、具体的に三つの業務 に分けられている。①電話のオペレーション業務(談話、応接)。オペレーション スキルの習得が中心である。経費的に苦しい状態なので、1ヶ月の全日制で集中的 に実施している。②タイピング業務(入力業務、Eメールの作業)。③マネージャ ークラスの育成 337。
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べき措置等について協議し、その結果を協議議事録(Record of Discussion: R/D) に取りまとめ、2005 年 12 月 5 日に署名・交換を行い、2006 年 3 月から 3 年 間の予定で技術協力プロジェクトが開始された。センターは、大連市科学技術局 の管理下の独立法人(大連交通大学を中心に、大連理工大学、大連外国語学院、
東北財経大学等が運営に協力)の非営利型公共教育機関で、「経営管理」、「生産管 理」、「ソフトウェア開発」、「ビジネス日本語」の非学歴・研修コースを実施して おり、大連市を中心とする日系企業(あるいは日系企業と取引のある中国企業)
に就業している中国人社員や日系企業に就職を希望する人々の能力を向上するこ とにより、現地日系企業を支援し、さらに大連市及び周辺地域の経済発展に寄与 することを目指している。さらに次の段階の目標として、大連および東北地域の 経済発展、並びに日中間における経済関係の緊密化に資することが挙げられる。
これらのビジス人材育成においてセンターが重要な役割を果たすことが期待され ている。
終了時評価の提言を受けて協力期間の延長 339に関する R/D が 2008 年 12 月 に締結された。協力期間を延長して技術移転を実施し、2010 年 2 月に本プロジ ェクトは終了した。
今後、日本語コールセンターや IT 産業を中心に大量の日本語人材を必要とする 企業が急増することが予測されている。企業はもとより高学歴の優秀な人材を求 めてはいるものの、人件費抑制のため職業高校生や 3 年制の「大専」卒業生など それほど学歴の高くない学生を採用していく可能性もある。その場合は不足して いる技能を社内研修で補ったり、外部に研修を依託したりするものと思われる。
企業の立場から見ると、人材のニーズは業界により異なる。製造業の生産ライ ンは安価なブルーカラーが欲しい。それに対し、「IT分野では日本向けの事業とな るとかなり高いレベルの日本語が要求されることになる。コストや人件費をおさ えつつ優秀な人材をいかに確保するかが当面の課題」である。また、注目しなけ ればならないことは、企業は「学歴」「非学歴」を問わず、教育を行なっているの は良いことである。つまり、企業の中では、大卒と非大卒とは人材の実務性を重 視している。したがって、「近い将来日本語人材が過剰気味になるとの推測もあり、
企業はそうした買い手市場となるのを待ち望んでいる状態である」340。
『予備調査報告書』には日本語教育の核は教師の確保だと認識されたとしてい る。難しいことは実際の日本語授業以外の資質も教師に求められていることだと 指摘した。予想通り、プロジェクト実施にあたって、一番大きな阻害要因は教師
339 延長の原因は、当初終了予定の 2009 年 3 月までに技術移転を完了させるべく活 動したが、中国側の技術移転対象者(カウンターパート、以下、「C/P」)の再配置等 のやむを得ない状況変化に対応する。
340 前掲『中華人民共和国大連日中人材育成センター設立計画予備調査報告書』、S3-17 頁。
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の質と教師の確保であった。中国側は要請書ベースで50名の日本人講師の派遣を 期待していたのに対して、実際に5年間の実績は四つの分野で合計21名の日本人 講師を派遣されただけであった。そのうち、日本語教師は 2 名しか派遣されてい ない。表3‐5に示したように、センターに配置された各分野の専門家人数からみ れば、日本語はわずかIT分野の10分の1という状況になった。
表3-5 日中人材育成センターへ派遣した各分野の専門家人数
長期 短期 合計
経営管理 2 5 7
生産管理 1 2 3
IT 1 9 10
日本語 1 0 1
出所:立花秀正『ビジネス日本語分野・事業完了報告書《抜粋》』2010年、4頁に よる。筆者作成。
研修延べ人数から見れば、日本語学習者の人数が一番多いと分かった。経営管理、
生産管理やITなどは多くの人が参加できる半日ぐらいのセミナーが開催され、研 修を受けた人数が多いに対して、日本語の教育はそのように多人数のセミナーを 実施するのは難しい。日本語教育は72時間コースとか300時間コースなどを実施 した。担当研修時間数から見れば、日本語教育分野の専門家の負担が一番大きか った。立花秀正は「一人できちんと責任がはたせたと思う」と自己評価している。
表3-6 各分野の専門家による研修延べ人数
経営管理 生産管理 IT 日本語
2006年度 研修人数 343 365 288 154
研修延べ人数 510 1254 1441 2570 担当研修時間数 114 221 229
2007年度 研修人数 797 342 294 313
研修延べ人数 1125 609 1142 1778 担当研修時間数 137 173 309 357
出所:立花秀正『ビジネス日本語分野・事業完了報告書《抜粋》』2010 年、4~5 頁、筆者が作成。
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以下の表3-6と表3-7は、日本語教育専門家が三年間で実施した研修実績である。
そのうち、初級日本語・標準日本語(下)、初級日本語・標準日本語(上下)、上 級日本語(新入社員研修)、ビジネス日本語会話(企業研修)、日本語能力試験 2 級対策(企業研修)という五つの授業は日本人専門家と中国人 C/P とが協力し、
担当した。ほかの授業は全て日本人専門家が担当した。
表3-7 ビジネス日本語分野の専門家の研修実績一覧表
時間数 回数 受講者数 1 初級日本語・標準日本語(下) 63 11 10 2 日本語能力試験1 級対策 81 15 30 3 ビジネス日本語会話初級(企業研修) 62 36 12 4 BJT ビジネス日本語能力テスト対策模試 6 2 15 5 初級日本語・標準日本語(上下) 120 40 29 6 BJT ビジネス日本語能力テスト対策 74 28 118 7 ビジネス日本語・上級(1) 72 24 33 8 ビジネス日本語・上級(2) 72 24 3 9 ビジネス日本語・上級(3) 48 24 14 10 ビジネス日本語・上級(4) 48 24 9 11 ビジネス日本語・上級(5) 48 24 10 12 ビジネス日本語・上級(6) 48 24 10 13 上級日本語(新入社員研修) 60 20 16 14 日本語能力試験2 級対策(企業研修) 112 28 10 15 初級日本語・みんなの日本語(企業研修) 33 11 30 16 無料セミナー・みんなの日本語(企業研修) 3 1 59 17 無料セミナー・BJT ビジネス日本語能力テスト
対策 3 1 56
18 敬語演習 32 10 7
20 聴解・会話(企業研修) 60 24 45
出所:立花秀正『ビジネス日本語分野・事業完了報告書《抜粋》』、2010 年7 頁に よる、筆者作成。
日本語教育専門家は企業へのビジネス日本語の教育に携るだけでなく、技術移
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転対象(CP)に向けて、技術移転科目を教えることになった。C/P 向けの教育は 2007 年度から始まった。内部研修を中心に進め、できるだけ CP と時間を調整し て、専門家外部研修の出席と重ならないようにした、補完するようになる。全部 でC/P は 3 人であった。技術移転対象科目は『敬語演習』『ビジネス会話・初級』
『ビジネス会話・中級』『ビジネス会話・上級』『BJT ビジネス日本語能力テスト 対策』『聴解練習Ⅰ(ニュース)』『聴解練習(ステラテジー)』『文型の導入と練習』
の8 科目である。授業は一対一で、C/Pの日本語能力等に応じてそれぞれのレベル で実施された。技術移転の授業がある程度進んだところで、C/Pが専門家の授業の 一部を担当するようにした。
教材は様々な教材から使いやすい部分を選び出し、書き直して使用した。ビジ ネス用語(電話用語、メール用語)、敬語など実務的な日本語を中心にした。
2007年度はC/P向けの教育は 43時間で、2008年度は3.5倍の149時間に増やさ れた。結果は、「2009年末3 月までに技術移転科目はすべて割り当てたC/Pに技術 移転を完了することができた。譚 C/P はビジネス日本語初級&中級、周 C/P はビ ジネス日本語中級&上級を教授する能力を身に付けることができた」と報告書に ある 341。