• 検索結果がありません。

5 方法

マスクフィッティング 機器の設定 覚醒中の装着訓練※1

睡眠中の装着訓練※2 必要なら酸素投与を考慮 導入後の評価

外来で管理法 慢性期導入についての

効果の説明と同意 短時間に効果の現れるものではなく数時間 から数週間後に体調が改善したり,入院や 増悪回数の減少する患者が多い

※1:機器の設定を最も適切な状態にする,5 分から開始して1時間 以上の昼寝の間に装着できるよう目標を決める(表 4 参照)

※2:2 〜 3 時間の連続使用が可能であれば,一晩装着を目標とする.

終夜パルスオキシメーターやできれば経皮炭酸ガス連続測定器 によって,機器の調整を更に行い,最適の条件を決める.

図 1 導入の要点

(詳細は本文参照)

本療法を開始する病態であるが,対象疾患患者の睡眠 時呼吸障害と密接に関係する1).すなわち睡眠中のREM 期の無呼吸によらない低換気が,基礎にある慢性呼吸不 全の進行をさらに助長するという理論による4).また,

それは酸素吸入ではなく夜間のNPPV治療によって慢性 呼吸不全のそれ以上の進行を抑える5)

すでにHOT(長期在宅酸素療法)を行っているCO2蓄 積のあるCOPD患者におけるHOTに加えた夜間NPPV 導入の効果について,最近のオーストラリアからの報告 では,生活の質としての活動度などの低下はあるものの 生命予後を延長させることが示されている6)

また,80 歳未満の慢性高二酸化炭素血症を伴う比較的 重症度の高いCOPDに対するprospectiveな予後の観察 研究から,在宅NPPV症例(99 例)は長期NPPV非施行 症例(41 例)と比べて,重症例ほど[(BE>8.9mmol/L),

low pH(<7.41),FEV(<27.5%)]1 年生存率(87.7%1 vs.

56.7%),2 年生存率(71.8%vs. 42%)と有意に生存に対す るNPPVの効果を認めている7)

したがって,各疾患によってその導入至適時期の目安 となるPaCO2のレベルは少しずつ異なり,各論にガイド ラインとして記載されているが,PaCO250〜60Torr前後 が基準となる.ただしpHは慢性呼吸不全であるため,

保たれていることが多く,重炭酸イオンは代償のため増 加していることが前提条件となる.

b.導入時期

慢性呼吸器疾患では,基礎疾患が徐々に進行し換気補 助が必要となることが多い.高二酸化炭素血症を呈する 患者で,睡眠時低換気に由来する早朝の頭痛,傾眠,寝 苦しさ,呼吸困難感の増強などの自覚症状や,浮腫など の右心不全の徴候がみられ,在宅酸素療法中にもかかわ らず増悪を繰り返す症例はNPPVの導入を検討する必要 がある.長期在宅酸素療法患者では,定期的に終夜SpO2

をモニターして睡眠時の酸素飽和度の低下がないか確認 し,必要があれば睡眠時低換気の有無を検討するために 睡眠ポリグラフを行う.

COPDで増悪後に引き続いて導入した 31 例について 検討した成績8)では,増悪後の平均生存期間中央値は 28.6 ヵ月であり,1 年生存率 68%,2 年生存率 55%で あった.これとほぼ同じ背景を持つ対象群 16 例で安定期 に長期NPPVを導入した患者群と比較したところ,増悪 後に導入された症例においても,PaCO2からみた治療反 応性,施行時間,換気圧などに有意差はなく,治療に対 するアドヒアランスなどが良好であったとしている.な お,慢性期での導入は,即時的な効果が乏しいためその 効果を患者に理解してもらいにくく,導入後アドヒアラ ンスの低下につながっている.したがって,急性期に本 法の効果を知った後引き続き適応があれば導入したほう がアドヒアランスを高められる可能性がある.

2 患者・家族に対する説明・教育

治療を始める前に,現在の病状,睡眠時の低換気,換 気補助の必要性,期待される効果,副作用(表 2),

NPPV不適応時の対応を医師から患者と家族に説明する.

これは治療に対する不安感を取り除き,治療への積極的 な意識を高めるのに必須である.

COPDに対しては,本療法により従来QOLの改善など が期待され,それを示す研究報告もなされている.しか し一方,呼吸機能・ガス交換・睡眠に関する改善は認め られなかった9)とする報告もあり,本法の効果の評価に は違いがあり4, 5, 10, 11),そのことを理解してもらったうえで 開始する必要がある.なお,COPDで最近になりQOLの 改善のみならずいくつかの文献で予後の延長も証明され てきている7, 8, 12, 13)

神経筋疾患や肺結核後遺症などでは,適応病態に至っ た際には医学的には行うべき最良の方法として提示すべ きである.

特に神経筋疾患では,1990 年代すでにDMD(デュシェ ンヌ型筋ジストロフィー)やALS(筋萎縮性側索硬化症)

に対していくつかの非ランダム化比較試験14, 15)があり,

それらによりNPPVの生命予後改善効果が明らかになり,

倫理的にそれ以上の臨床研究が行えない状況となってい る.それは肺結核後遺症による慢性呼吸不全に対する NPPV療法でも同様である.

3 用いられる機器

増悪時に使用される機器とは異なり,在宅で長期に使 用されるため,よりコンパクトで操作性が容易かつ停電 などの際にもバッテリー駆動可能な機種が選択される.

最近では換気量設定方式に進歩がみられ,一回換気量,

あるいは分時換気量(肺胞換気量)をあらかじめ設定し,

睡眠中の一過性の低換気の際にも一定の換気量を維持で 表 1 慢性在宅 NPPV 導入対象疾患の内訳

   (2,753 人)

COPD 26%

肺結核後遺症 23%

神経筋疾患 18%

後側彎症   5%

肺胞低換気症候群   3%

肺高血圧症   3%

肺線維症,間質性肺炎   2%

その他 20%

(日本呼吸器学会認定施設 251,一般病院 103,臨床内科 医会からの抽出施設 21,計 375 施設からのアンケート調 査の結果.在宅呼吸ケア白書,2010 から)

きる機種が上市されている.具体的にはAVAPS,iVAPS などのmodeであるが,それらが実際にどれほどの効果 があるのかは,現在臨床的に検討されている16)

4 機器の設定

a.mode について

通常S-mode,T-mode,S/T modeがあり,自発呼吸 の回数や強弱によって選択する.通常はS/T modeで開 始する場合が多いが,自発呼吸の吸気努力の弱い場合や,

機器との同調性の悪い場合(リークのため呼気終末の不 明遼な場合など)には,T-modeにより一定の間隔で送気 させる方法をとる.その場合の呼吸数設定は,自発呼吸 数よりやや多めに設定し,気道内圧もやや高めで自発呼 吸をなくし器械呼吸のみとするとよい.

b.気道内圧について

bilevelでは 2 つの気道内圧であるIPAPとEPAPを設 定する.通常は初期EPAP4cmH2O,IPAP6〜8cmH2O から開始し,IPAPは徐々に増加させ,12〜14cmH2O程 度で維持させる方法が取られてきた.しかし最近,より 高い圧で行ったほうが有効性が増すとする報告がある.

最近のメタアナリシス12)では 383 例のCOPDに対し てIPAP14cmH2O以上と以下との群で層別比較をしたと ころ,前者で有意にCO2の低下があり,これは呼吸器装 着時間の影響より大であったとしている.さらにドイツ のWindischらは,73 例のCOPDを対象に平均のIPAP 28cmH2Oにて 6 年間以上経過観察したところ,22%が 1 年以内に増悪で入院したものの,2 年生存率 82%,5 年生 存率 58%とよい結果であった.さらにこのような高い気

道内圧によるNPPV(high intensity NPPV:HiNPPV)と 従来のNPPV(low intensity NPPV:LiNPPV)をRCT

(randomized controlled crossover trial)にて比較した報 告をDreherら17)が行っている.17 例のCOPD症例を 6 週ごとにHiNPPVとLiNPPVを交互に行ったところ,

HiNPPV施行期間中にのみ夜間のPaCO2の減少が認めら れ,また,同群ではbaselineに比べて日中のPaO2,運動 耐容力などが改善していた.

この結果について,前述の圧設定は日本で通常行われ ているものよりもかなり高く,体格の差があり気腫型の 多い日本人のCOPD患者にとっては,気胸のリスクなど も想定され,日本でも同様な結果になるのかは問題が残 る.またHiNPPV(27.6±2.21cmH2O)とLiNPPV(17.7± 1.6cmH2O)を同一のCOPD患者 15 例に行い,換気と循 環のパラメーターをみたところ18),経横隔膜差圧(Pdi)な どは,有意に前者が低く,呼吸筋仕事量の減少が期待でき る結果であったが,循環動態でCI(心係数)や酸素運搬能 をみたところ前者が有意に低く,心疾患のある患者に装 着する場合,IPAP圧を高く設定することには注意を要す ると考えられる.

c.その他の設定

実際の設定に関しては,呼気がしづらいと訴える場合 にはEPAPを低くし,吸気不足を感じる場合にはIPAP を増加させる.なお,EPAPは安静換気位(FRC)レベル を変えるので吸気感覚にも影響を与える.

また,ライズタイム(圧供給速度)を設定できる機種で は,吸気補助筋である胸鎖乳突筋の動きや,鎖骨上窩の 吸気時陥凹状況をみながら調整する.実際にCOPDなど の閉塞性障害患者では,fast riseを,肺結核後遺症など拘 表 2 NPPV の合併症

原因分類 関連部位 症状 対策

マスクに関連 皮膚症状 マスクやベルトの圧迫による皮膚の発赤・

びらん・潰瘍など rotartion

®などの創傷被覆材貼

エアリークによるもの 鼻口腔・目の結膜の乾燥

I/E 圧を下げリークを減らす 高流用送気に

よるもの 気道(特に咽頭・喉頭)

の乾燥 気道分泌物の硬化・喀出困難

道の観察

消化管へのガス流入 腹部膨満,ときに嘔吐 睡眠障害

気胸(陽圧換気であり常にこの可能性は考

慮,挿管管理より多いものではない)

関連したドキュメント