リハビリテーション
CQ 24 夜間の NPPV と運動リハビリテーションの組み合わせは有用か?
回答:NPPV の呼吸リハビリテーションへの応用として,①運動中の換気補助,②夜間の NPPV による 呼吸筋の休息と昼間の運動リハビリテーションの組み合わせ,が試みられている.
運動中の NPPV による換気補助は,特に高度の呼吸機能障害例において,より高強度の運動がより 長時間可能になることが示されている.4〜8 週間の運動トレーニングにおいても,特に重症 COPD 患者に対して,有用性が明らかになってきている.
夜間の NPPV による呼吸筋の休息と昼間の運動リハビリテーションの組み合わせについては,少数 ながらランダム化比較試験が存在し,運動耐容能の改善などの有効性は明らかと思われる.ただし,
主たる対象が高二酸化炭素血症を呈する長期 NPPV の適応症例あるいはその予備軍と考えられるため,
軽症例に対する適応は今後の検討課題である.
CQ23 推奨:運動中の NPPV は,特に高度の呼吸機能障害例において,運動強度・運動時間を向上させ る.【エビデンスレベル Ⅱ,推奨度 B】
CQ24 推奨:夜間の NPPV と運動リハビリテーションの組み合わせは,高度の呼吸機能障害例の運動耐 容能改善に有用である.【エビデンスレベル Ⅱ,推奨度 B】
の毛細管の増加,その結果として嫌気的代謝で生じる乳 酸の減少,および循環器系の能力向上が得られるとされ ている.
なお,COPD以外の疾患でも運動トレーニング中に NPPVによる換気補助で呼吸筋の負担が軽減できれば,
トレーニング効果が期待できる強度の運動が可能になる と考えられる.
2 運動中の換気補助としての NPPV の急 性効果
単回の運動負荷試験で運動中の換気補助としての NPPVの急性効果が検証されている.COPDを中心に研 究がなされ,CPAP(EPAP)がITLを軽減し,サポート圧 が吸気筋の補助となり同時に換気量を増加し,その結果 として運動耐容能が増えることが示されている.
a.COPD に関する研究 1)CPAP
CPAP(continuous positive airway pressure)は count-er PEEPとして働き,ITLを軽減することが期待される.
重症のCOPDを対象に,4〜5cmH2OのCPAP下に定 常負荷テストを行い,肺の過膨張を増強することなく運 動持続時間を増加させ呼吸困難感を軽減し呼吸数を減少 させたとする報告がある1).一方,同様のことを健常者 に試みたところ逆に呼吸困難感が増強した2).これは,
健常者ではDHIを生じないため,CPAPが吸気の助けに あまりならず,息が吐きにくくなったためと考えられる.
こうした現象は健常者と同様に重症COPDでも認められ ている.やや高めの 7.5〜10cmH2OのCPAP下で運動負 荷テストを行った研究では,COPD症例でも吸気筋は休 息したものの呼気筋の負担は増加した3).
2) NPPV( bilevel positive airway pressure:
bilevel PAP, proportional assist ventila-tion:PAV など)
運動中の換気不全患者に,吸気中にNPPVなどで圧補 助することで吸気筋の負担が軽減できればCPAP以上に 運動耐容能の改善が期待できる.
予想どおり,重症のCOPD患者を対象に,サポート圧 12〜15cmH2OのNPPV,6cmH2OのCPAP,酸素吸入 下での運動耐容能を比較したところ,NPPV下で最も歩 行距離が延び呼吸困難感も軽減した4).
吸気筋の負担をとるためにはある程度の圧補助が必要 と考えられる.重症COPD患者を対象に運動負荷テスト を , 自 発 呼 吸 ,PS(pressure support)5cmH2O,PS 10cmH2Oの 3 とおりで行ったところ,運動持続時間は 自 発 呼 吸 とPS5cmH2O で は 差 が な か っ た が ,PS 10cmH2Oでは延長した5).
運動耐容能の改善には,無酸素運動の結果生じる乳酸 値の上昇が抑制されることが必要と考えられている.重 症のCOPD患者で自発呼吸下とNPPV下で歩行テスト を行い,前後で乳酸値を測定したところ,自発呼吸下よ りNPPV下で乳酸値の上昇速度が抑えられることが判明 した6).
呼吸筋疲労の指標として横隔膜の最大弛緩速度が低下 することが知られているが,著しく重症のCOPDを対象 に,自発呼吸下とNPPV下での歩行テストをしたところ,
NPPV時に横隔膜の最大弛緩速度の低下が緩和されてお り,NPPVが吸気筋の負担を軽減することが示された7). また,同程度の重症度のCOPD患者を対象に歩行中の食 道内圧や胃内圧を測定した研究で,自発呼吸では吸気筋 の負担は運動早期に最大値に達し,呼気筋の負担は運動 が進むにつれ,ほぼ直線的に上昇していた.これは,
COPD患者では運動時に吸気筋を最大限使用しても十分 にVTを増やせないため,呼気筋を動員して換気量を増 やしていることを示している.一方,NPPV下では,吸 気筋・呼気筋の負担は運動中にほとんど上昇せず,NPPV が吸気筋だけでなく呼気筋の負担も軽減することが示さ れた8).
NPPVによる換気補助下の運動中に,下肢筋の酸素化 が改善することも示されている.中等症のCOPD患者を 対象に,自発呼吸下とNPPV下に運動負荷テストを行 い,NPPV下で下肢筋の血流量と酸素化が改善し,呼吸 困難感と下肢筋の疲労感が低下し,運動持続時間が延長 した.NPPVによる呼吸筋の負担軽減により血流が呼吸 筋から下肢筋にシフトしたことが示された9).
COPDに運動中に換気補助としてPAV(proportional assist ventilation)を用いた研究が多い.高二酸化炭素血症 を伴う重症COPDを対象に,sham(1.0cmH2O CPAP),
CPAP(6.0cmH2O),PS(12〜16cmH2O,EPAP1.0cmH2O),
PAV(EPAP1.0cmH2O)で高強度の運動負荷テストを行 い,PSとPAVで同程度に吸気流速が増加し,呼吸困難 感も軽減し,運動持続時間が延長した10).また,重症の COPD 患 者 を 対 象 に , 自 発 呼 吸 ,PAV,CPAP
(5.0cmH2O),PAV+CPAPの条件下に運動負荷テスト を行い,PAV+CPAPが運動持続時間を最も延長した.
圧サポートだけではなくiPEEPに対応するためのCPAP
(EPAP)の重要性が示唆された.
特異な研究としてNPPVと酸素とヘリウムの混合ガス であるHelioxを比較した研究がある.Helioxの長期効 果は否定的であるが12),生理学的指標を測定した研究が あり,重症COPD患者を対象にHelioxとNPPVをDHI の観点から評価している.30%酸素吸入,Heliox,
NPPV(PS,EPAP0cmH2O)の条件下に高強度の運動負 荷テストを行った.NPPV下で運動中の過膨張が緩和さ れたが,Helioxがより運動中の過膨張を緩和した.しか レベル Ⅱ
レベル Ⅱ
し,NPPVで吸気時終末により肺を膨らませることがで きたため,運動終了時のVTは両者でほぼ同様であった.
呼吸筋仕事量,呼吸ドライブ,肺抵抗,呼吸困難感,下 肢筋の疲労感はHelioxとNPPVで同等であったが,運 動持続時間はNPPV下で最も延長した13)Helioxより NPPVが優れていることが示された.
20 年前の人工呼吸器は 15〜20kgもあったが,近年に なりその軽量化がなされたため,長期NPPV患者が日常 生活に近い形で車イスに酸素と人工呼吸器を積んで押し て歩く研究が可能となった.重症COPD患者を対象に,
酸素のみ,酸素+NPPVで 6 分間歩行テスト (6MD)を 行った.酸素+NPPV群がPaO2を高く保て呼吸困難感も 低く歩行距離も長かった.車イスに酸素ボンベと人工呼 吸器を載せての日常の歩行の可能性が広がった14).一方,
長期NPPV患者が背中に酸素と人工呼吸器を担いで歩く 研究もなされている.日常処方されている通常の吸入酸 素量,通常の 2 倍の吸入酸素量,NPPV+通常の吸入酸 素量で,12 分間歩行試験 (12MD)を重症COPD患者に 試した.NPPV+O2は機器が重くて背負えない患者が多 かった.日常生活で酸素供給装置と人工呼吸器を背負っ て移動するには現在の装置では重過ぎて困難であること が示された15).
b.拘束性胸郭疾患(restrictive thoracic dis-ease:RTD)に関する研究
1)CPAP 研究なし
2)NPPV(bilevel PAP など)
初期の研究として,約 25 年前に,重症のRTD患者を 対 象 に , 室 内 気 自 発 呼 吸 , 室 内 気 NPPV(control mode),通常より多い酸素吸入下の 3 条件で,廊下にて 12MDを行ったものがある.NPPV下に歩行距離が最も 短くなった.歩行といった日常動作で使用できるほど感 度がよく軽量な人工呼吸器が当時なかったことが大きな 要因と考えられる16).同様な症例を対象に,室内気自発 呼吸,室内気NPPV(control mode),35%酸素吸入下,
35%以下の酸素+NPPV(control mode)下,でエルゴ メーターによる運動負荷テストを行った研究がある.
NPPVにより呼吸困難感は有意に軽減し,運動中のPaO2
の低下やPaCO2の上昇も緩和された.運動持続時間は酸 素+NPPVが最もよかった(図 1).すべてのテストを通 して,呼吸困難感の軽減と運動持続時間の延長が有意に 相関していた17).一方,RTD患者でNPPVの換気補助が 有効でなかったとする報告もある.後側彎症患者を対象 に,マウスピースを用いて 3 種類の人工呼吸器を用いた
レベル Ⅵ
レベル Ⅱ
0 50 100 150 200
0 2 4 6 8 10 12 14 16
VAS(mm)
Endurance time(分)
Air NPPV O2
NPPV & O2
図 1 各施設における運動負荷テスト中の運動持続時間と呼吸困難感の推 移の比較
重症の RTD 患者を対象に,室内気自発呼吸,室内気 NPPV,酸素吸入下,酸素+
NPPV 下,でエルゴメーターによる運動負荷テストを行った.NPPV により運動持続 時間が延長し,呼吸困難感は有意に軽減した.酸素+NPPV が最もそれらの効果が優れ ていた.
(文献 17 より改変引用)