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神経筋疾患

CQ 22 乳幼児の呼吸障害に対して NPPV を使用時に,インターフェイスで注意すべき 点は?

回答:小児の長期 NPPV の適応疾患で多いものは,神経筋疾患,閉塞性睡眠呼吸障害,頭蓋顔面形成異 常,膵囊胞線維症,先天性中枢性低換気,脊柱側彎などである.特に神経筋疾患については,低換気・

睡眠呼吸障害の改善,自覚症状の軽減,入院頻度の低下,QOL の維持などに有効であることがコホー ト研究により示唆され,国際ガイドラインでも小児神経疾患の呼吸不全に対しては NPPV が第一選択 とされている.NPPV の使用報告が少ない疾患や,原疾患が不明な小児の慢性呼吸不全に対しては,

より慎重に NPPV の適応を判断する.また日本では,長期 NPPV 下の小児に対して,増悪時の対応 を含めたケアシステムが不十分であることを考慮に入れる必要がある.

乳幼児のインターフェイスは種類が少ないが,マスクの圧迫による皮膚障害や変形,成長障害を防 ぐために,違うタイプのマスクを交代して使用するのが望ましい.

CQ21 推奨:

①小児の神経筋疾患の慢性呼吸障害の管理に有効である.【エビデンスレベル Ⅳ,推奨度 C1】

②神経筋疾患以外の小児の慢性呼吸障害に対しては,慎重に適応する.【エビデンスレベル Ⅴ,推奨度 C1】

CQ22 推奨:乳幼児のインターフェイスは,顔面の変形を防ぐため複数を使い分ける.【エビデンスレ ベル Ⅴ,推奨度 C1】

表 1 小児の長期 NPPV の適応疾患と病態

●通常の適応

(脊髄性筋萎縮症,先天性筋ジストロフィー,先 天性ミオパチー,デュシェンヌ型筋ジストロフィーなど)

◎適応の可能性

より上位)

腫瘍,手術,出血,放射線照射など)

閉塞型睡眠時無呼吸でも,吸気の低下した患者ではいび きが聞かれないこともある.早期の症状としては,寝つ きが悪い,夜間の寝返りが増える,早朝に目がさめ疲労 している,不機嫌,情緒障害,日中の集中力低下,学業 成績低下,昼間の眠気がある3).より進行すると,起床 時の頭痛,吐き気,補助筋を使った呼吸,頻呼吸,寝る ことを怖がる,悪夢をみる,睡眠時の頻脈や発汗などが ある3).繰り返す呼吸器感染,嚥下困難,誤嚥,体重増 加不良,体重減少も認める2, 3)

2 歳以下の筋力低下のある小児では,典型的な呼吸苦 の発見はさらに慎重な観察を要する4).頻呼吸と陥没呼 吸を認めないからといって呼吸機能に問題がないとはい えない4).体重減少や体重増加不良(成長障害)に加え,

泣き声が弱い,効果的な咳ができない,食べ物や唾液が 喉につまる,咽喉部のゴロゴロした音などの徴候が特徴 となる4).このような症状と繰り返す気道感染症,気道 の過敏性,奇異呼吸などが最初に現れる徴候になりやす い4)

3 NPPV 適応に関連する呼吸機能検査

原疾患に呼吸機能障害を合併する可能性がある場合,

年 1 回は呼吸機能検査を行う4, 5).患者がスパイロメト リーができる状態であれば,肺活量(坐位とできれば臥位 も),咳のピークフロー(cough peak flow:CPF)6),昼間 のSpO2および経皮または呼気終末CO(または2 PaCO2) を測定する4, 5).睡眠モニターの適応がある患者には,

SpO2および経皮または呼気終末CO(または2 PaCO2),場 合により睡眠ポリグラフを行う3)(表 2).

年齢的にまたは発達遅延のために通常のスパイロメト リーができない患者には,鼻口マスクをあて,回路内に スパイロメトリーを組み込んで啼泣時の肺活量を測定す る4).2 歳以下や非常に虚弱な患者で泣かない場合は,一 回換気量を測定する4)

4 長期 NPPV の適応

NPPVの目的は,睡眠時や覚醒時の低換気症状の改善,

気道感染による入院を減らす,胸郭の変形を予防し長期 予後を改善する,生命の延長である3)

NPPVを在宅で使用する通常の適応は,低換気(症状 や肺活量低下),パルスオキシメーターによる酸素飽和度

(SpO2)低下,経皮または呼気終末(あるいは動脈血)CO2

分圧上昇,閉塞型睡眠時無呼吸である7).これに加えて,

小児神経筋疾患に特異的な適応は,ウイルス性呼吸器感 染,繰り返す肺炎と無気肺,術後ケア(抜管困難の抜管 の促進,再挿管予防など),胸郭の変形,脊髄性筋萎縮症

(spinal muscular atrophy:SMA)Ⅰ型と診断されて家族 が非侵襲的呼吸サポートに関心がある場合,である7)

詳しい適応については,神経筋疾患の章に記載されて いる適応8)を,他の疾患でも参考にする.

近年のいくつかの小児神経筋疾患のケアの国際ガイド ラインで,神経疾患の呼吸不全に対してはNPPVが第一 選択とされている4, 5, 8, 9).症状,所見,検査,本人と家族 との話し合い,環境評価により,NPPV導入を試みる.

効果が不十分であったり,副作用などにより継続困難な 場合は,再評価を行う.また,軽快してNPPVが不要に なった場合は,中断して経過をフォローする.

5 昼間の NPPV

昼間の換気補助の開始時期について明瞭な定義はまだ ないが,過去の報告では次の時期に開始されている3)

①夜間のNPPVを最大に使用していても日中の高二酸化 炭素血症が進行するとき,②日中の呼吸不全を疑う症 状:頭痛,嘔気,呼吸困難感,頻脈,発汗,末梢血管収 縮や拡張,疲労,不機嫌,③適切な咳介助を行っていて も感染が増える場合.

6 長期 NPPV の効果

小児の神経筋疾患患者で,換気不全や症状のある睡眠 呼吸障害に対して睡眠時のNPPVを行うと,睡眠時と覚 醒時のSpO2と経皮CO2が正常化する10).小児の神経筋 疾患患者の呼吸不全に対して,NPPVは症状を軽減し,

入院を減らし,コストを軽減し,QOLを低下させない11). また,感染による抗菌薬投与,外来通院,入院を減らす12). SMAⅠ型では,器械による咳介助(mechanical insuffla-tion-exsufflation:MI-E),徒手介助併用の器械による咳 介助(mechanically assisted coughing:MAC)を併用し,

表 2 筋力低下のある小児の睡眠呼吸モニターの適応

閉塞型睡眠無呼吸や低換気の症状 備考

C < 60%

SpO2< 95%や経皮,呼気終末ま たは PaCO2> 45mmHg

C 測定には 6 歳以上の理解度を要する.

気管切開を回避して生命予後を改善し13),声を失わず会 話の発達,人工呼吸の離脱時間を確保しやすくする14). 小児の肺囊胞線維症に対しては,肺機能の安定化に有 用である15)

7 インターフェイス

小児においては,“鼻マスク”によるNPPVの効果に 影響を及ぼす上気道閉塞の要因がある16).①成人に比べ て全体の呼吸システムの抵抗に対する鼻の抵抗が高い,

②上気道炎時に分泌物により急速な鼻咽頭の閉塞が起こ る,③アデノイドや扁桃が相対的に大きく,気道感染時 に肥大する,④上顎の低形成を伴う先天奇形が鼻咽頭の エアウェイにおいて骨格的な狭窄になる,⑤咽頭が比較 的前方にあり,咽頭浮腫になりやすい,⑥鼻咽頭の閉塞 の代償として,口呼吸の傾向がある.一方で,小児にお いても,鼻マスクを選ぶ患者が半数以上を占める2)

乳幼児に対するNPPVの上手な活用を妨げる最も大き な問題は,適切なインターフェイスが見つかりにくいこ とである7).マスクの鼻や顔の圧迫による皮膚障害や変 形,成長障害を防ぐために,違うタイプのマスクを交代 して使用する16〜18).数少ない市販の乳児用マスク7), CPAPキットを高い圧に耐えられるように補強19).カス タムメイドのマスクも使われる2)

季節性のアレルギー性鼻炎や上気道感染による鼻閉に 対応するために鼻口タイプのマスクの使用も考慮する20). しかし,入手可能な小児患者用のマスクは限られている.

そのため,入手できる大人用鼻マスクの小さいサイズを,

ヘッドギアを修正して小児に提供する20)

8 NPPV の人工呼吸器条件

フランスの 2003 年の報告で,102 人の小児在宅NPPV のうち,従量式人工呼吸器を好む傾向があるのは,拘束 性肺障害(神経筋疾患,脊柱側彎など)56%,中枢性低換 気 56%であった2).PSVが好まれていたのは,膵囊胞線 維症 71%であった2).閉塞型睡眠呼吸障害および頭蓋顔 面形成異常は,CPAP(45%)かbilevel PAP(52%)を使

用していた2, 21, 22).Pompe病のコンセンサスでは,睡眠 時の低換気に対して,CPAPでは不十分でbilevel PAP を用いるとされている23).bilevel PAPの高い圧に耐えら れないか不適な患者に従量式の条件を活用することがで きるが,従圧式のようにリークを代償することはできな い20, 24)

神経筋疾患の患者は,呼吸筋の弱さと少ない一回換気 量により,自発呼吸による人工呼吸器の吸気トリガーを うまく使えないかもしれない3, 25).また,神経筋疾患の小 児に対して,現在の携帯型人工呼吸器では呼気トリガー はうまく設定できない3).実際,トリガーが設定されて いても,睡眠時にはバックアップ換気のみで換気されて いることが多い3).このため,十分な回数のバックアッ プ換気が推奨される3).IPAPは,子どもの換気を十分行 える程度に高く設定するとしている14).また,筋力低下 がある小児では,EPAPを最低値(または呼気弁のある人 工呼吸器ではゼロ)に設定し,少ない一回換気量でも,

受動的に呼気を促進できるようにする7)

9 小児に特有の NPPV 合併症

NPPVの合併症(表 3)の管理において,特に本人が訴 えたり対処することができない低年齢や発達遅滞の例で は,両親や介助者の熟練した観察とケアを要する16)

NPPV の禁忌

慢性期におけるNPPVの相対的禁忌(絶対的禁忌では ない)は,気道確保が困難な場合である.すなわち,咳が 不十分で,徒手や器械による咳介助を用いても,気道ク リアランスを維持できない場合である.特に,誤嚥の可 能性が高い例では,気道に流入した食物や唾液を,咳介 助で排出することができず,SpO294%以下が続く場合は,

誤嚥性肺炎や窒息の危険があり,適応するべきではない.

また,患者・家族が,NPPVの理解が不十分で非協力的 な場合も,適応できない.

長期NPPV使用中には,疾患の進行や加齢,さまざま なエピソードが起こり,その際にNPPVの継続かどうか 表 3 小児における NPPV の合併症の特徴

合併症 小児に特徴的な要因

,感情コントロール 困難,酸素消費量増大,ファイティ ング,涙や鼻汁による上気道閉塞

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