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CQ 7 侵襲的人工呼吸管理からの離脱支援として NPPV は有用か?

回答:侵襲的人工呼吸管理(気管挿管を伴う)からの離脱支援では,基礎疾患によって NPPV の推奨レベ ルが異なる.メタアナリシスより,COPD の増悪に対して侵襲的人工呼吸管理されている患者の場合,

NPPV は離脱支援に有効であり,死亡率ならびに ICU 滞在期間,入院期間,人工呼吸期間のすべてに おいて改善がみられる.ただし,これらのランダム化比較試験の約半数が入手不可能であることや,

離脱支援のタイミングが一定でないことに留意が必要である.また,研究対象の大部分が COPD 増悪 であるため,それ以外の病態における NPPV の人工呼吸器離脱支援としての有用性は不明である.

CQ7 推奨:COPD を合併する症例においては,侵襲的人工呼吸管理からの離脱支援として NPPV は有 用である.【エビデンスレベル Ⅰ,推奨度 B】

1)RCT(表 1)

抽出された 16 のRCTでは,994 例の患者を対象とし ているが,いくつかの問題点がある.中国語で発表され ているために,抄録以上の情報を入手できない点5, 9, 10, 12). 同様に.準無作為比較試験5)が含まれていること,抄録 のみの研究が 2 つ4, 8),電子的に論文にアクセスできない ものが 2 編16, 17)含まれている.その意味で,フル論文と して英文で私たちが検証可能(アクセス可能)な研究は,

9 つしかないことになる.また,症例数は,100 例を超え るものが 2 つあるものの,規模の小さな臨床研究に限ら れていることがわかる.

2)患者背景(表 1)

すべての研究が成人症例を対象としているが,9 研究 はCOPD患者のみを対象としている2, 5, 8〜12, 14, 16).Girault とFerrerならびにTrevisanは複合的な症例とはいえ,主 な疾患としてはCOPDの増悪である3, 6, 13).Hillは,

ARDSを対象としているが抄録のみなので詳細は不明4). 結論として,今までに行われてきた臨床研究はCOPDの 増悪例を対象としたものが多いといえる.

b.結果

1)第一のゴール:死亡率

検討対象とした 16 の臨床研究すべてが死亡率を明ら かにしているが,30 日死亡率,60 日死亡率,90 日死亡 率2, 3, 6, 14, 17),あるいは退院時死亡率3, 8, 10〜13, 15, 16, 18)など,

さまざまなタイミングで評価されていた.あるいは,評 価のタイミングを明らかにしてないものもあった4, 5, 9).そ の結果,NPPVを用いた離脱支援は,総合的に死亡率の 低下に寄与するという強いエビデンスが示された(相対リ スク 0.53,95%信頼区間 0.36〜0.80,994 例).

サブグループ解析として,死亡率との関係は,COPD の有無に関連して検討されているが,特にCOPDの増悪 に限定した研究において,相対リスクが 0.36(95%CI 0.24

〜0.56)に減じている点が注目される2, 5, 8〜12, 14, 16). 2)第 2 のゴール

①離脱失敗率

離脱の条件については,さまざまな定義が用いられて はいるものの,8 つのRCTで 605 例を対象とした場合に,

離脱失敗率が顕著に減少している(相対リスク 0.63,

95%CI0.42〜0.96)2〜4, 8, 15〜18)

②VAP 発生率に関する影響

14 の臨床研究で,NIVを用いた離脱を行うことで 表 1 各臨床研究の特徴

著者 問題点 患者数 患者条件 離脱条件 NIV 群 対照群 COPD

のみ Nava 2), 1998 50 COPD 増悪 1hr-SBT の失敗 NIV-PSV PSV Girault 3), 1999 33 COPD 増悪> 50%,拘束性障

害 25%,混合性 25% 2hr-SBT の失敗 NIV-PSV PSV Hill 4), 2000 抄録のみ 21 ARDS 30min-SBT の失

NIV-VPAP PSV

Chen 5), 2001 中国語のみ 24 COPD 増悪 人工呼吸 3 日目,

離脱条件あり NIV-BIPAP PSV Ferrer 6), 2003 43 COPD 増悪> 50%,心不全>

20%,呼吸器感染症 2hr-SBT の 失 敗

を 3 日連続 NIV-BIPAP AC/PSV Rabie Agmy 8), 2004 抄録のみ 37 COPD 増悪 2hr-SBT の失敗 NIV-PAV PSV Wang 9), 2004 中国語のみ 28 COPD,呼吸器感染症 PIC window NIV-PSV SIMV-PSV Zheng 10), 2005 中国語のみ 33 COPD,呼吸器感染症 PIC window NIV-BIPAP PSV Group 11), 2005 90 COPD 増悪 PIC window BIPAP SIMV-PSV Zou 12), 2006 中国語のみ 76 COPD,呼吸器感染症 PIC window NIV-BIPAP SIMV-PSV Trevisan 13), 2008 65 35% COPD,心不全> 10%,

術後 20% 30min-SBT の失

NIV-BIPAP invasive Prasad 14), 2009 30 COPD + hypercapnia 2hr-SBT の失敗 NIV-BIPAP PSV Giault 15), 2011 138 chronic hypercapnic 2hr-SBT の失敗 NIV-BIPAP PSV Rabie Agmy 16),2012 access − 264 COPD 増悪 2hr-SBT の失敗 NIV PSV Tawfeek 17), 2012 access − 42 侵襲的人工呼吸> 48 hr 2hr-SBT の失敗 NIV-PAC SIMV Vaschetto 18), 2012 pilot RCT 20 hypoxic,侵襲的人工呼吸>

48hr 離脱条件あり Helmet NIV PSV

:Collaborating Research Group for Noninvasive Mechanical Ventilation of Chinese Respiratory Society

COPD:chronic obstructive pulmonary disease(慢性閉塞性肺疾患),SBT:spontaneous breathing trial(自発呼吸トライアル),PSV:

pressure support  ventilation,BIPAP:bilevel  positive  airway  pressure ventilation,PAV:proportional  assist  ventilation,PIC  window:pulmonary infection control window(呼吸器感染症の症状が改善したタイミング)

VAPが減少することが示されている(相対リスク 0.25

(0.15〜0.43)2, 3, 5, 6, 8〜17).なお,VAPの診断基準が明記さ れているのは 10 の臨床研究である2, 5, 6, 9〜13, 14, 17)

③ICU 入室期間,入院期間,人工呼吸期間など 表 2にまとめたように,集中治療室入室期間(−5.59 日)と入院期間(−6.04 日)はNPPV支援で有意に短縮し ている.総人工呼吸期間(−5.64 日),侵襲的人工呼吸期 間(−7.44 日)についても,短縮が確認されている.ただし,

離脱に直接必要だった期間に有意差はみられていない.

④偶発症

不整脈の発生率には差がみられなかったが,再挿管率

(相対リスク 0.65,95%CI0.44〜0.97)3, 4, 6, 11〜13, 15〜18)や気 管切開率(相対リスク 0.19,95%CI0.08〜0.47)3, 6, 13, 15〜18)

は,有意に減少している.

2 メタアナリシス結果を踏まえた考察

気管挿管や気管切開を伴う人工呼吸管理は,VAPの併 発や人工気道に伴う合併症,ならびに陽圧換気そのもの による影響(VILI:人工呼吸関連肺損傷)を考慮すると,

できる限り短期間とすべきである.このため,VILIを軽 減あるいは回避するために,『肺保護換気』戦略が導入 され,一定の効果を挙げている.同時に,人工呼吸期間 そのものを短縮する目的で,NPPVの積極的な導入が試 みられてきたが,慎重な意見が主体を占めていた.最近に なって,NPPVによる離脱支援の臨床研究が増えたため,

その有用性について検討が可能になりつつある19, 20, b). 人工気道を用いない陽圧換気であるNPPVでは,鎮静 レベルを軽減可能であること,経口摂取が可能であるこ と,人工呼吸器関連肺炎のリスクを軽減可能であること,

などの理由から臨床的意義が期待されてきた.実際,前 回のガイドライン作成後にも,こうしたアプローチを支

持するデータが集積されたと判断した.

今回,紹介した 994 例を対象とした 16 の臨床研究で は,死亡率の改善,人工呼吸期間の短縮,VAPの改善,

総人工呼吸期間の短縮のすべてにおいてNPPVが有利で あることを示している.離脱に直接関係した人工呼吸期 間のみは短縮できずにいるが,気管切開率や再挿管率を 有意に減少させている.ただし,結果の項でも指摘した ように,994 例にのぼる対象患者の多くがCOPD症例で あることに注意が必要である.さらに,COPD以外の症 例もほとんどが心不全患者であり,その意味ではNPPV ガイドラインにおけるNPPV導入の第一選択の疾患が離 脱に際しても共通していることが興味深い.メタアナリ シスには含まれていないが,心不全のみを対象した Fer-rerらによる検討でも,抜管時APACHEⅡ>12 を高リス ク群として,抜管直後よりNPPVを開始することで,抜 管後呼吸不全の発症とICU死亡率が低下したと報告して いる21)

2011 年のカナダのガイドラインで示された急性呼吸不 全でのNPPVの選択において,第一選択で強い推奨度

(1A)にあるのはCOPD増悪と心原性肺水腫のみであり,

喘息重責発作,ARDS,重症市中肺炎,胸部外傷,術後 呼吸不全などにおいては,エビデンス不十分のため推奨 度が設定されていない22).本項で紹介した 16 の臨床研究 は,このNPPVを第一選択とする疾患について,離脱支 援の効果があったとするものであり,妥当な結果である と考える.一方,他の病態については,今後の検討が必 要であるが,少なくとも病態としてNPPVを第一選択と できないものについて,離脱促進のためにNPPVを導入 することには困難が伴うものと考える.

以上,NPPVが侵襲的人工呼吸からの離脱に有用であ るか否かについて厳密な結論を出すためには十分な臨床 研究が不足することから,更なる臨床研究が必要である.

表 2 成人重症患者における NPPV の離脱支援に関する結果

項目 臨床研究数 対象患者数 結果(95%CI) 不均一性 I2(%)

死亡率 16 994 0.53(0.36〜0.80) 37

VAP 14 953 0.25(0.15〜0.43) 38

離脱失敗 8 605 0.63*(0.42〜0.96) 39

滞在期間(日)

  集中治療室

  入院 13

10 907

803 − 5.59(− 7.90〜− 3.24)

− 6.04(− 9.22〜− 2.87) 77 78 人工呼吸期間

  全人工呼吸期間(日)

  離脱に関係した日数   気管挿管を行った日数

79 12

385645 717

− 5.64(− 9.50〜− 1.77)

− 0.25(− 2.06〜1.56)

− 7.44(− 10.34〜− 4.55)

8690 87 イベント  再挿管

  気管切開   不整脈

107 3

789572 201

0.65(0.44〜0.97)

0.19(0.08〜0.47)

0.89(0.34〜2.34)

4110 0

:相対リスク,:重み付き平均差

特に,その有用性を評価するにあたり,診療のゴールを 明らかにする必要がある.現在,臨床研究のデザインと しては以下の 3 種類がある22).つまり,

①自発呼吸トライアルでは侵襲的人工呼吸からの離脱 適応なし,と診断された症例を抜管し,NPPVで管 理するアプローチ

②無事離脱した症例が,離脱後に再度呼吸不全を生じ ないように早期にNPPVを導入するアプローチ

③無事離脱した症例が,離脱後に発症した呼吸不全を NPPVで治療するアプローチ

今後,それぞれのアプローチについて臨床的妥当性を 検討する必要があるものと考える.

3 結論

2012 年までに蓄積された臨床研究(RCT)の結果を基に 行われたBurnsらのメタアナリシス結果より,COPDの 増悪に対して侵襲的人工呼吸を行っている成人患者の場 合,離脱支援にNPPVは有効であり,死亡率ならびに ICU滞在期間,入院期間,人工呼吸期間,のすべてで改 善のみられることが確認された .ただし,選 択されたRCTの半数がアクセス不可能であり,離脱支援 のタイミングについてもまったく異なるアプローチが混 在しているため,離脱支援のためのNPPVの推奨度につ いてはBが妥当と考えた.

文献

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