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心原性肺水腫

CQ 5 急性心原性肺水腫の人工呼吸管理に CPAP または bilevel PAP を使用すべきか?

回答:急性心原性肺水腫に対する NPPV の有効性については多数のメタアナリシスが行われ,その有効 性が確認されている.CPAP は酸素療法と比べ有意な呼吸数減少,P/F 比上昇,血行動態の改善,気 管挿管減少,死亡率減少をもたらす.特に頻脈の改善が早期に認められることは重要である.bilevel PAP は CPAP 同様の有効性が認められているが,生命予後の改善は証明されていない.CPAP と bilevel PAP とで心筋梗塞の発症率に差はなく,またショックを除いた急性心筋梗塞に合併する急性肺 水腫に対しても有効な治療法である.

CQ5 推奨:急性心原性肺水腫に対し,NPPV(特に CPAP)を第一選択とすべきである.【エビデンス レベル Ⅰ,推奨度 A】

リニカル・シナリオ-1)の患者である.CPAPの胸腔内圧 上昇による肺うっ血の軽減,左室後負荷の軽減,相対的 な交感神経緊張の緩和などにより治療効果が得られる.

CPAPは肺動脈楔入圧(pulmonary artery wedge pres-sure:PAWP)が 12mmHg以下の時は減少させるが,

12mmHg以上のときは心拍出量を増やすとされており,

心不全状態に対し有利に働く8).また,CPAPは心不全状 態においてheart rate variabilityを増加させる9).つまり 急性肺水腫に対しCPAPは生命維持治療であるとともに 治療方法のひとつであるといえる.CPAPは高濃度酸素 投与と比べ有意な呼吸数減少,PaO2/FIO2上昇,血行動態 の改善,気管挿管減少をもたらす5, 10〜17).特に頻脈の改善 がCPAPで早期に認められることは重要である11).心筋 虚血後,気絶心筋の状態になっている心筋の機能回復は 呼吸,循環系の機能回復によりもたらされる18).また,

呼吸仕事量の増加は心臓への負担を増やす.呼吸仕事量 を減少させるのはCPAPの優れた点のひとつである.

CPAPは,より早い血管外肺水分量の減少と換気血流比 の改善により酸素化能と肺胞換気量の増加をもたらし頻 呼吸を改善する.呼吸困難感の軽減も,頻脈改善の理由 のひとつである.現在,急性心原性肺水腫による呼吸不 全に対してはNPPV(continuous positive airway pres-sure:CPAPお よ びbilevel positive airway pressure:

bilevel PAP)を第一選択とした呼吸管理をすべきであると 推奨されている.

4 bilevel PAP

急性心原性肺水腫に対してbilevel PAPは包括的に CPAP同様の有効性が認められている14〜17).CPAPと bilevel PAPのどちらがより効果的かと比較した研究で は,ひとつはCPAP,bilevel PAP,マスク酸素投与の順 に生存退院率が高いとしている13).もうひとつの研究で はCPAPもbilevel PAPも同様な効果を持つとする報告 されている19).しかし,生命予後に関しては,メタアナ リシスでもbilevel PAPは死亡率を低下させる傾向にあっ たが症例数の少なさのため,有効性は確認できていない.

しかし,CPAPとbilevel PAPとの間には有意な差はな かった.

一方でCPAPがbilevel PAPよりも生存退院をさせる 率が高く(p=0.029),より有効だとする報告もある13). いずれにせよ,CPAPはbilevel PAPよりも生命予後の点 で有効性が明らかに証明されていて,より簡単な設定で,

呼吸器との同調性も考慮しなくてよく,簡単に誰でも対 応しやすい.CPAPモードを第一選択とすべきである.

5 心筋梗塞の合併

Mehtaらはbilevel PAPはCPAPと比べ心筋梗塞の発 症が多いと報告した20).この報告ではbilevel PAP14 例 のうち 10 例が心筋梗塞に進展したとしているが,14 例 中心電図上虚血性変化が 13 例に,10 例に胸痛発作が study entry時に認められている.つまりはじめからこの 10 例は心筋梗塞だった可能性が高い.その後,同様の報 告はなくbilevel PAPが心筋梗塞を引き起こすということ は否定的である14〜17).最近の報告ではCPAPとbilevel PAPとで心筋梗塞の発症率に差はなかった21).日本の報 告では,心筋梗塞発症の有無に関係なく,低酸素性の急 性呼吸不全に対し同様にNPPVは効果的であることが示 された22).また,ショックを除いた心筋梗塞に合併する 心原性肺水腫による低酸素性急性呼吸不全患者に対し,

CPAPは血行動態,酸素化能を有意に早く改善し,気管 挿管への移行,ICU死亡率を減少させ有効な治療方法で あることが報告されている10)

6 無効症例

NPPV無効例となる症例として特に注意すべき状態は,

①NPPV開始後 1 時間でも低酸素血症が改善しない,② 肺炎や気管支炎による喀痰の排出ができない,この 2 つ である.低酸素血症が改善しない状態としては高度の心 機能低下(左室駆出率 30%以下で腎機能低下など)状態が 背景にある場合が多い.また,肺炎を契機として心不全 が悪化することはよくみられるが,この場合は喀痰の量 と排出が可能かどうかである.はじめから喀痰の排出が できない場合は気管挿管を推奨する.喀痰排出が可能で ありNPPVにより酸素化能が改善してくる場合でも,経 過の途中で喀痰排出ができなくなってくる場合がある.

この場合に肺炎の治療経過をよく検討し,まだ治療に時 間がかかるようであればPaO2が維持できていても気管挿 管に移行することを推奨する.また,日本の報告で Acute Lung InjuryでのNPPV無効症例の予測因子を示 した報告もある23).ここでは,NPPVを 1 時間施行時点 でAPACHEⅡスコア 17 以上,呼吸回数 25 回以上で気 管挿管が必要であった.このほか,pH値をNPPV成功 の指標として提案する報告もある24)

7 生命予後

2005 年以降,多数のメタアナリシスが行われ,NPPV

(特にCPAPモード)が生命予後を改善することが確認さ れた25〜 32).特にJAMA27),Lancet26),Cochrane Data-base of Systematic Reviews25),これら 3 つのメタアナリ シスは非常に精度の高いものであり,十分に信頼できエ

ビデンスとなった.NPPVは気管挿管を減少させ,死亡 率を減少させる.CPAPとbilevel PAPを分けて検討し たメタアナリシスではCPAPが,よりよい生命予後を提 供できるとわかった25).CPAPは死亡率を 25%から 13%

へと有意に減少させ,6 人にCPAPで治療をすれば 1 人 の気管挿管を回避し,10 人にCPAPで治療をすれば 1 人 の死亡を回避できることが確認された26).8 年間にICU でのNPPV使用率が約 30%から 90%に増加したのに対 し,死亡率は実に 21%から 7%へと 14 ポイント低下した とする報告がある33).NPPV従来の治療方法に比べ生存 退院を有意に改善する13).さらに 80 例の重症心原性肺水 腫に対し行った研究では,NPPVは院内死亡率を有意に 減少させた(死亡率:酸素 23%,CPAP4%,bilevel PAP 7%)19).メタアナリシスではNPPV(特にCPAP)は死亡 率を改善させることが確認されている27〜29).NPPVは気 管挿管を 32%から 16%へ減少させ,死亡率を 13%から 8%へ減少させる29).CPAPとbilevel PAPを分けて検討 したメタアナリシスでは,CPAPは有意に死亡率を減少 させることが確認され27, 28),7 人にCPAPで治療をすれ ば 1 人の気管挿管を回避,8 人にCPAPで治療をすれば 1 人の死亡を回避できると報告されている28).一方,

bilevel PAPは死亡率を低下させる傾向にあったが有意な ものではなかった27, 28).しかしCPAPとbilevel PAPと の間には有意な差はなかった27).急性心原性肺水腫に対 するCPAPの使用は,よりよい生命予後を提供できる.

Navaらも,最もNPPVが効果を発揮する症例が心原性 肺水腫であるとしている34).他にも,NPPVは急性心原 性肺水腫に対し院内ではfirst-line treatmentとすべきで あり,院外でも救急要請があったときにメディカル・ケ ア・チームが到着したときに,すぐに院外でNPPVを開 始すると臨床症状の改善,気管挿管の回避,しいては院 内死亡の減少をもたらすとの報告もある35).また,院外 発症の急性心原性肺水腫を疑う呼吸不全患者を対象に,

搬送中にヘルメット型CPAPを使用するだけの治療を受 けた群(59 人)とCPAPに加え従来の薬物療法を搬送時 に追加治療として行った群(62 人)で比較検討も行われて いる36).結果は,全患者でヘルメット型CPAPは忍容さ れ院外挿管症例はなく,酸素化,呼吸数,血行動態の改 善を認めた.両群間の比較では院内挿管症例,死亡数に 差はなく,その他の臨床所見も同様に差はなかった.以 上より,薬物療法の併用の有無にかかわらず,院外発症 の急性心原性肺水腫にはヘルメット型CPAP導入が適応 されるべきとの考えが示唆されている.21 の研究に対し て行われたシステマティックレビューで,NPPVにて管 理された急性心原性肺水腫において挿管率,院内死亡率,

心筋梗塞,院内滞在日数,ICU滞在日数も減少したとし ている37)

しかし,一方で大規模RCTでもNPPVが無効であっ

たという報告がNew England Journal of Medicineに掲 載された38).それは,NPPVは生命予後を改善させるこ とはないとする結果であった.しかし,この研究には多 くの問題点がある.この報告では両群とも気管挿管率が 低い.また,死亡率はstandard oxygen treatment群で は低く,NPPV群で高い.この研究に登録された多くの 症例は軽症の肺水腫であり,この研究に登録された患者 は人工呼吸が必要とされていない軽症の患者が多かった といわれている39).著者らも論文中の最後のまとめで次 のように述べている.“NPPVは有効でない”と結論し ているのではない.NPPVはより重症の肺水腫患者や通 常の薬物治療に反応しない患者に使用することを考慮す べきである.

安全性に関してはADHERE databaseから解析が報告 された40).15 万人からなるデータベースで,呼吸管理が 正確に確認された約 37,000 人の心不全患者で人工呼吸を 必要としたのは 2,430 人(6.5%).そのうちNPPVは 72%

の患者に用いられ,有効率は 96%であった.また,NPPV から気管挿管へと移行した場合でも,はじめから気管挿 管・人工呼吸をされて患者と比べ,まったく差はなく,

NPPVは安全に用いられる治療方法であることが解る.

つまり,適応さえ間違えなければNPPVをfirst-line treatmentとするほうが,治療成績がよいと考えられる.

8 NPPV の開始時期

急性心原性肺水腫の呼吸管理を成功させるためには,

いたずらに酸素投与のみで様子をみるべきではなく NPPVを第一選択とし,積極的に早期に開始することで

ある41, 42).低酸素血症に呼吸困難を伴っていれば,直ち

に開始すべきである.

Mebazzaらは急性心不全の治療指針を提示している43). 病院到着時,初期治療マネジメントのひとつにNPPVの 適応があげられている.心原性ショックと右心不全以外 はNPPVの適応であるとしている.

急性心原性肺水腫の呼吸管理はNPPVを第一選択と し,早期に開始する.モードはCPAPを第一選択とする.

CPAPを行っても高二酸化炭素血症や呼吸困難が続くよ うなときにbilevel PAPに変更し,いたずらに酸素投与の みで様子をみるべきではなく積極的にNPPVを行う44). 開始時期としては,低酸素血症(ルーム・エアでSpO2

90%以下)に呼吸困難を伴っていれば,直ちに開始.ま た,SpO290%以上でも起坐呼吸,あえぎ呼吸など臨床 上,強い呼吸困難を伴う場合も使用する.呼吸苦を訴え る肺水腫患者は,NPPVの開始により呼吸苦は改善する.

日 本 の 報 告 で ,Sato ら は 4,842 名 の Hospitalized Heart Failureについて報告している.そのなかで,起坐 呼吸の患者は 63.3%であったが,NPPV使用例は 24.4%

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