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UNDP による紛争分析手法

ドキュメント内 Microsoft Word - kanseiban.doc (ページ 135-139)

第Ⅴ章  予防開発のための紛争要因分析論[大平剛]

2.  国連システムにおける紛争分析手法の開発と援助の調和化

2.1  UNDP による紛争分析手法

2.1.1 DfID の影響と独自性   

1990 年代に多発した内戦状況を受けて、UNDP は新たな部署として緊急事態対応部

(Emergency Response Division: ERD)を 1996 年に創設したが、この ERD は紛争など の人為的災害だけではなく、洪水などの自然災害にも対応する部署とされた。その後、ERD は 2001 年 11 月をもって「危機予防復興支援局」(Bureau  for  Crisis  Prevention  and  Recovery: BCPR)に改組され現在に至っているが、そこには部から局への改組が示すよう に、UNDP におけるこの問題への取り組みの拡大が見て取れる。BCPR は、危機的状況の 発生に対応するだけではなく、その後の復興を重視する部署として改組されており、そこ には復興段階で開発援助が重要な役割を担わなければならないという機関としての責任が 感じられる。 

ここで取り上げる紛争分析手法の開発を担っているのも BCPR であり、2003 年 10 月に 公表された Conflict-related Development Analysis(CDA)は、英国国際開発省(DfID)

の支援を受けて策定されており、多分に DfID が策定した Conflict  Assessments(CA)の 影響を受けている。しかし、コンセプトにおいて多くの影響を受けてはいるものの、UNDP

2  ギャップ問題について詳しくは、小向絵里「平和構築」三好皓一・高千穂安長編『国際協力の 最前線』玉川大学出版部、2001 年、134-7 頁を参照。 

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は独自性も打ち出している。本節では、まず、CA と CDA とを比較しながら、両者の共通 点と差違とを明らかにし、UNDP が紛争分析においてどのような点を重視しているのかを 明らかにしたい。 

図1は英国国際開発省が策定した CA で、図2が UNDP の CDA である。一見してわか るように、UNDP は DfID の手法の根幹部分を受け継ぎながらも、それを部分的に改変して いる。大きな特徴は、すべてのステージで見られるように、国際(International)、地域

(Regional)、国(National)、地方(Sub-national)、現地(Local)といった 5 つのレベ ルのそれぞれにおいて、安全保障、政治、経済、社会といった 4 つの領域を組み合わせて いる点である。これによって 5 4 のマトリクスができあがることになる。なかでも UNDP は経験上、地方レベルを重視しているが、紛争分析においてはとかく注意を払われないレ ベルであるという3。また、DfID による CA と共通している点のなかでも特徴であると思わ れる点は、ステージ2の「紛争への関わり」の項である。そこでは、主体(UNDP の場合 は開発の主体)が、紛争そのものとどのように関わっているのかについての分析が行われ る。3 つの場合が想定されており、一つは紛争の外で活動すること(working  around  conflict)であり、紛争を開発にとっての障害とみなして、紛争による影響を受けずに開発 計画を継続させるというものである。二つ目は、紛争の中で活動すること(working  in  conflict)であり、開発計画が紛争に悪影響をもたらさないように、開発計画と紛争との繋 がりを認識しながら、紛争に伴う危険をなるべく減らそうとするものである。これは別名

“Do No Harm”(害を与えない)というフレーズによって知られている取り組みの姿勢であ る4。そして、最後に紛争に直接働きかけるように活動すること(working on conflict)が ある。これは紛争にプラスに作用するような機会を求めて開発計画を策定することであり、

開発計画によって紛争の根本原因の除去を目指すものである。 

3  UNDP, Conflict-related Development Analysis (CDA), BCPR/UNDP, 2003, p. 24. 

4  以下の文献を参照。Mary B. Anderson, Do No Harm-How Aid Can Support Peace or War,  Boulder, Lynne Rienner Publisher, 1999(メアリー  B.  アンダーソン  [大平剛訳]  『諸刃の援 助』明石書店、2006 年).   

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図1  DfID の CA   

                     

(出所)DfID, Conducting Conflict Assessments: Guidance Notes, DfID, 2002 をもとに 筆者作成。 

図 2  UNDP の CDA   

     

1.世界銀行の手法  2. 

                       

(出所)UNDP, Conflict-related Development Analysis (CDA), BCPR/UNDP, 2003 をも とに筆者作成。 

A i)

ii)

iii)

B

i) /

ii)

in, on, around iii)

C /

i)

ii)

1 i)

ii)

[ ]

[ ]

iii)

[ ]

[ / ]

iv) v)

[ ]

[ / ]

2

i)

[ ]

[ ]

ii)

in, on, around iii)

1

3

i)

[ ]

[ ]

ii) UNDP

[ ]

[ ]

iii) UNDP

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DfID の分析によれば、これまでの開発はどちらかと言えば「紛争の外」での活動が多く、

そのために紛争状況を悪化させたり、紛争を緩和なしは解決するための機会を見逃したり してきたのだという5。そこで、今後は「紛争の中」や「紛争に直接働きかける」活動とい った積極的な態度が求められているのである。しかしながら、このような開発主体の積極 的な活動には注意が必要である。つまり、紛争の中ないしは紛争に直接関わると言うこと は、「火中の栗を拾う」行為でもあり、そこには危険が伴う。従来の開発戦略に多々見られ たように、紛争地から離れて遠隔地から現地の開発計画を考えることは、現地の事情が判 らないばかりに地域の緊張状態を悪化させかねないが、もし仮に十分な知識や経験がない まま working in conflict ないしは working on conflict といった戦略をとったならば、そ れと同じくらいに危険や悪影響をもたらすであろう。特に、これまで開発援助の枠組みで は取り扱われることが少なく、人道援助分野で主に語られてきた援助従事者の身体に降り かかる危険については十分な配慮が求められることになろう。このように考えてくると、

開発援助は紛争と関わることにより、従来とは異なる視点、特に現地の事情に精通してい ることが求められ、社会学のアプローチが不可欠になっていると言えよう。 

ここで、先述した DfID と UNDP の両者に共通している“Do  No  Harm”という考え方に 注目したい。このアプローチは、そもそも M.アンダーソン(Mary  B.  Anderson)が設立 した「開発活動のための協同社」(Collaborative for Development Action, Inc.)という米 国マサチューセッツ州に本社を置く開発コンサルタント会社が、いくつかの NGO とともに 行った「平和へと向かう現地の力プロジェクト」(Local  Capacities  for  Peace  Project: 

LCPP)において提唱されたものである。このアプローチは、その後数多くの NGO の戦略 に採り入れられることになり、“Do No Harm”という言葉が一種の標語として、紛争に関わ る援助機関の合い言葉となって今日に至っている。この言葉を DfID という二国間援助機関 が用い、それを多国間援助機関である UNDP も受け入れていることは、NGO の影響力が 公的な援助にまで及んでいることを示し、人的ならびに知的交流が、欧米の NGO やその他 の援助機関で進んでいることを表している証左として興味深い。 

 

5  DfID, Conducting Conflict Assessments: Guidance Notes, DfID, 2002, p. 22. 

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