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紛争分析に関する機関間調整

ドキュメント内 Microsoft Word - kanseiban.doc (ページ 144-149)

第Ⅴ章  予防開発のための紛争要因分析論[大平剛]

2.  国連システムにおける紛争分析手法の開発と援助の調和化

2.3  紛争分析に関する機関間調整

    第Ⅴ章  予防開発のための紛争要因分析論(大平)    143     

外」15という認識が確認されたものと考えられる。ここでも政治的な色彩を極力排除しよう とする世銀の姿勢がうかがえる。このように対象や活動を世銀は極力経済問題のみに限定 しようと努めているが、そのことによって国際社会が紛争問題を解決しようとする際に障 害が生じるおそれがあると思われる。それは、すでに破綻している国家が分析対象から除 外されてしまうのではないかという懸念である。たとえば、ソマリアのように正統な政府 が存在しないとされる場合には、世界銀行の融資先になることが出来ないばかりか、CAF の対象にもならないということである16。紛争中の国家が対象から外されることで、本来国 際社会が優先して取り組まなければならない問題が手つかずの状態に置かれる可能性は否 定できないだろう。 

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題執行委員会(ECHA)との間で、2004 年 11 月に「移行期における紛争分析のための機 関間枠組み」(Inter-agency framework for conflict analysis in transition situations)が 策定された。図4は UNDG と ECHA との間で作成された機関間ツールの概念図である。 

  図4で示されているように、国連ファミリーには大きく分けて 3 つの援助経路が存在し ている。一つは人道援助に関するものであり、あとの二つは開発援助の経路である。開発 援助の経路については、国連システムのものと世界銀行のものとが並列して存在している のが現状である。 

 

図4  機関間計画ツール 

   

(出所)UNDG, Inter-agency framework for conflict analysis in transition situations,  2004, p.2 から引用。 

 

  このような紛争分析に関する共通の枠組みを策定する目的は、1)紛争原因についての 共通の認識を持つこと、2)計画を策定するにあたって紛争に配慮したアプローチを支持 すること、3)紛争後のニーズ評価に対して共通基盤を構築することの三点であるとされ

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18。ここには、紛争の原因に関して共通の認識を形成するとともに、それに基づいた共同 での対処方法が目指されていると言える。このような取り組みには、人道援助機関と開発 援助機関との間で問題となってきたギャップ問題を実務のレベルで解決しようとするねら いが認められる。つまり、何が紛争の原因であるのかについての機関間における認識のギ ャップや、緊急期から復興期に至る期間での人道援助機関と開発援助機関との間の引き継 ぎに関するギャップを解消するねらいがあると思われる。 

2.3.2  世界銀行との調整から政策の策定へ 

  援助の調和化を進める上で世界銀行と国連諸機関とをつないでいるのが、図4に示され ている PCNA(Post-Conflict  Needs  Assessment)という紛争後のニーズ評価である。こ の PCNA に関する実践手引き書はドイツの技術協力機関である GTZ の協力を得て、

UNDP/BCPR と世界銀行/CPR との間で策定された19。この PCNA によって期待される事柄 としては、以下の7項目が掲げられている20。 

① ドナー、政府機関、NGO、他の関係者に包括的かつ客観的なニーズの概略を 提供する。 

② 国際的に高く注目されることで、復興回復に向けての十分な資金の誓約に結び つける。 

③ 復興のための優先順位に対して国際的にコンセンサスを形成し、プログラムの 重複を少なくし、ドナー間での一貫性を高める。 

④ 早い時点で、紛争の原因と復興回復のための手段に焦点をあてる。 

⑤ 政治的なはずみを作り出し、和平交渉プロセスを支援する。 

⑥ 国内の権威(紛争当事者)の正統性を強める。 

⑦ 世銀や国連の国別戦略(CAS,  UNDAF)だけでなく暫定 PRSP のための概念 基礎を打ち立てる。 

また、実践手引き書を策定する目的は、1)最低限の共通の基準を設け、2)専門的な対 応を迅速に行い、3)制度化と標準化を促進することでコストを低減することであるとさ れている21。 

18  UNDG, Inter-agency framework for conflict analysis in transition situations, 2004, p.1. 

19  UNDP/World Bank/UNDG, Practical Guide to Multilateral Needs Assessments in  Post-Conflict Situations, UNDG, 2004. 

20  Ibid., p.2. 

21  Ibid. 

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  PCNA を国連ファミリーに横断的に用いることのメリットの一つは、上記 7 項目の第 2 点にあると思われる。紛争や災害後の緊急期には CAP(Consolidated  Appeal  Process)

と呼ばれる援助機関が共同で行う援助資金獲得のための呼びかけがあるが、この方法の場 合、セクターごとに割り振られる資金が特定の機関と結びついており、必ずしもドナー側 の意思が反映されない。それとは対照的に、PCNA の場合は、ドナー側に裁量権があり、

ドナーが最適であると判断する実施メカニズムを選択できるというのである22。このような 方法によって、ギャップ問題として指摘される過渡期における資金不足、いわゆる「資金 のギャップ」が解消される見込みがある。また、活動の重複を抑えて効率化を目指すとい う観点からも望ましい手段であると評価できるだろう。しかも、PCNA がその後、国連シ ステムによる国別の共 通開発枠組みで ある UNDAF(United  Nations  Development  Assistance  Framework)や、世界銀行の 国別戦 略である CAS(Country  Assistance  Strategy)、また該当する途上国が作成を義務づけられている貧困削減のための文書である PRSP(Poverty Reduction Strategy Paper)を作成する上で橋渡しの役割を担うことも重 要である。共通の認識基盤を持ち、現地のニーズを正しく捉えた上でそれを政策に結びつ けられるのであれば、これまで長年にわたり指摘されてきた活動の重複や非効率といった 問題点が解消に向かうであろう。 

  最後に、PCNA の第 5 点と第 6 点が持つ意義に注目したい。それらによれば、PCNA は 技術的であると同時に政治的な一面も持ち合わせ、和平交渉を成功に導くうえで交渉過程 の一部分として機能するということである。潤沢な資金や明確な復興過程の青写真があれ ば、和平交渉を円滑に進めることが可能であろう。政経分離の原則から極力政治的な事柄 には関わらないできた世界銀行が、PCNA によって国連システムと共同で紛争問題に関わ ることによって、政治的事項に関わらざるを得ない状況に直面することになったと言える だろう。そのことは機関の業務指令を見直す必要性を世界銀行に突きつけるかもしれず、

世銀と国連システムとの間に横たわる大きなギャップを埋めることになるかもしれない。 

むすびにかえて 

  本稿では OECD/DAC を中心に進められてきた紛争分析手法の開発について、特に世界銀 行と国連システムを中心に考察を行った。援助機関によるこのような分析手法の開発は、

大きく捉えれば「援助の調和化と連携」というここ数年の国際的な援助潮流の中で捉える ことができ、UNDP のケースに見られたように、二国間援助機関である DfID との間で知的 交流やノウハウの共有が進められ、確実に調和化と連携は進んでいる。しかも、そこに現 れている紛争地における援助方針には、NGO が推進してきた”Do No Harm”と呼ばれる指

22  Ibid., p.4. 

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針が採り入れられており、非政府組織との連携も確実に進んでいることが浮き彫りになっ た。 

  紛争問題に関する限り、「調和化と連携」にはいわゆるギャップ問題を解消するねらいが あると捉えられる。紛争原因に対する異なる認識や、緊急期から復興開発期に至る過程で 生じる援助不足などのギャップ問題を解消する上で、本稿で考察した PCNA は実務レベル における解決方法の一つになっていると言えよう。現地で特に必要とされる世界銀行とい う主要なアクターを紛争後復興に関わらせる仕組みを取ることによって、資金面のみなら ず、包括的に紛争問題に対処することのできる枠組みがようやくできあがりつつあると言 えるのではないだろうか。 

参考文献   

池上清子「国連機関の調整と問題――特に UNDG とエイズ分野をめぐって」『国連研究』

第6号、2005 年、147-167 頁。 

稲田十一編『紛争と復興支援』有斐閣、2004 年。 

淵ノ上英樹・松岡俊二「平和構築と開発援助政策」広島大学連携融合事業『平和構築に向 けた社会的能力の形成と国際協力のあり方に関する調査研究』Discussion  Paper  Series Vol. 1, 2006 年。 

三好皓一・高千穂安長編『国際協力の最前線』玉川大学出版部、2001 年。 

DfID, Conducting Conflict Assessments: Guidance Notes, DfID, 2002. 

Mary B. Anderson, Do No Harm-How Aid Can Support Peace or War, Boulder, Lynne  Rienner Publisher, 1999(メアリー  B.  アンダーソン  [大平剛訳]  『諸刃の援助』

明石書店、2006 年). 

UNDG, Inter-agency framework for conflict analysis in transition situations, 2004. 

UNDP, Conflict-related Development Analysis (CDA), BCPR/UNDP, 2003. 

UNDP/World Bank/UNDG, Practical Guide to Multilateral Needs Assessments in  Post-Conflict Situations, UNDG, 2004. 

World Bank, The World Bank Operational Policies, OP 2.30, World Bank, 2001. 

World Bank, Conflict Analysis Framework (CAF) Draft, Washington D.C.: World Bank,  2003.

    148    第Ⅵ章  難民保護のための人道・復興支援論(平和構築と難民の安全保障論・新垣) 

 

ドキュメント内 Microsoft Word - kanseiban.doc (ページ 144-149)