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清水

4月より国立大学が法人化されることを背景に知的財産本部 の整備が進行中である。数多くの大学TLOが設立されており、

特許出願数、ベンチャー企業創出など、TLOの活動が軌道に 乗り始めたことが伺える。実りある産学連携を実現するため には、今後大学がどのように既存のTLOと新たに構築しよう としている「知的財産本部」とが協力して知的財産を管理し ていくかが重要となる。

本セッションでは、大学の知的財産本部の整備に携わった専 門家をお招きし、どのように大学の知的財産本部を整備なさ ったのか、特に既存のTLOの関係にも触れてお話いただく。

さらに、産業界における知的財産管理のエキスパートとして 澤井氏に、さらに英国からガーナー氏にそれぞれの立場から 各大学の整備状況にコメントをいただく。

石川

私のタイトルである総長特任補佐とは東大における産学連携 全体を調整する役割を担っているのに対し、産学連携推進室 長は各論的な役割を持つ。国立大学の法人化が4月に迫って いる今、東京大学の知的財産ポリシーや規則の策定は最終決 定の段階にある。東京大学はTLOと強い連携を図るとの大き な方針を打ち出している。

東京大学では、社会の変化を見据えながら産学連携について 長年にわたり議論を重ねてきたが、大学としては従来どおり、

真理の探求、学問の深化を行ない、それに加えて産学連携を 行うことを基本方針としている。

東京大学の産学連携活動は、1)アイデアが創出される「産 学連携研究推進」段階、2)TLOと連携しながら研究成果を 資産化し、マーケティング活動を展開する「知的財産戦略」

段階、3)研究成果を社会に還元する「成果事業化推進」段 階、の三段階に分けることができる。

産学連携推進室は、産学連携研究推進グループ、知的財産グ ループ、成果事業化推進グループから構成される。知的財産 グループはTLOと密な関係を築きながらライセンシングにお

ける無駄を省くべく活動を行っている。

優れた研究成果については知的財産本部で発明の開示が行わ れる。その後すぐにTLOに開示され、ヒアリングおよびマー ケティング調査が行われ、知的財産本部にその調査結果がフ ィードバックされる。そこでライセンシングの可能性がある と判断されれば、出願から事業化へ流れるというのが、知的 財産の取り扱いの基本フローである。ただし、この基本フロ ーからはずれるケースもあり、その場合は案件に応じた対策 が講じられる。知的財産の経営管理と運営はそれぞれ知的財 産本部とTLOの役割となっているが、知的財産本部とTLO間 の連携も必要である。外部交渉はマーケティング部が行い、

管理や運用との線引きが明確になされている。産業側からみ るとTLOが窓口となっている。

最近の東京大学の主要な産学連携施策としては、従来の個人 帰属から機関帰属への移行(共同研究では知的財産の多くは 機関帰属となる)、利益相反問題への対応(セーフ・ハーバ ー・ルール)、新しい産学連携モデルの確立(産学連携契約 の仕方について協議を進行)などがある。これらの他にもイ ンキュベーション支援などの取り組みも行っている。

大学は長年、「象牙の塔」として批判を受けてきたが、今後 はより積極的に情報の開示をしていきたい。TLOと知的財産 部のさらなる連携を通して知の創造を実現していきたく思う。

小寺山

九州大学にも知的財産本部が発足し、国立大学の法人化に備 えて組織の見直しが行われた。九州大学では、将来の大学発 展を視野に「教育」という柱に加え産学連携を重視している。

知的財産本部には現在30名の人員が所属している。重要事項 は産学連携推進委員会において決定され、最近では同委員会 において知的財産ポリシーが決定された。リエゾン部門は官 公庁との折衝にあたり、知的財産本部はそのほか、技術移転 部門、企業支援部門、企画部門、デザイン総合部門などで構 成されている。

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新たな産学連携体制の特色としては、ワンストップサービス、

つまり窓口の一本化を通して混乱の防止を図ったことがある。

また、ビジネス経験が豊富な専門スタッフを採用することに よってプロフェッショナルなサービスの提供を心がけている。

そのほかにも広範なネットワークによる対応や問題解決型コ ンサルティングの提供、迅速な対応なども特色の一つにあげ られる。

「社会貢献」の考えが九州大学の知的財産ポリシーの中心と なっている。大学の研究費や施設・機器を用いて創出された 知的財産は、九州大学が承継する権利を保有する。技術移転 に関しては、利益相反に十分留意した上でTLOとの連携の下、

九州大学が移転することとしている。

報酬は経費分をTLOへ配分後、残金を学内で配分する。残金 の支払い内訳は、発明者50%、学部50%、大学25%である。さ らにIP部門は大学への支払いの一部を受け取る。特許等工業 所有権の出願を伴わない知的財産の取り扱いについては、マ テリアルトランスファーや著作権のマネジメントを実施して いる。守秘義務も知的財産ポリシーの中で定められているが、

研究者の移動に伴う利益相反ポリシーについては別途協議す る予定である。

知的財産マネジメントのプロセスとしては、開示された研究 の評価を知財評価会議で行い、開示された研究が同会議で承 継された場合は、特許出願、ライセンス委託のすべての事務 がTLOに委託される。特許の発掘からライセンシングまでの プロセスを一人が行った方が良いと判断する場合には企業へ のライセンシングに知財本部のメンバーが加わることもある。

各種規定整備、知財戦略立案、教員の啓発など知的財産創出 に関わる業務は主として知的財産本部が対応し、ライセンス やマッチングファンド管理など知財活用に関する業務は主と してTLOが対応している。また、個別の発明案件の移転業務 はTLOもしくは知財本部の担当アソシエイトが一貫して担当 し、知的財産本部とTLOだけで対応しきれない移転業務につ いては、外部機関を活用している。法人化後の産学連携の青 写真の詳細はまだ描ききれていないが、知財本部とTLOの合 併も考えられる。近く6ヵ年中期計画が打ち出される予定で ある。

包括的連携研究、つまり大学と企業の共同研究共同研究の推 進が九州大学の特徴である。

九州大学の起業支援ポリシーは次の通りである。1)起業化・

事業化・製品化による成果を普及し社会に貢献すること。

2)新産業、新市場、新雇用で経済と地域を活性化すること。

3)研究現場に近いところで起業するメリットを実現するこ と。4)R&D指向ベンチャーを仲立ちとして産学連携を加速 すること。5)社会貢献を通じ教育・研究活動を活性化・永 続化すること。

支援フローとしては、まず研究者がプログラムに出願し、九 州大学のベンチャービジネスとしてそれが適切かどうかの判 断が行われる。承認後には、ベンチャービジネス開始のため 人材が確保される。大学発ベンチャーにおいては、優れた技 術シーズがあっても経営的センスがない限り成功することは 難しい。こういった意味で、人材、事業計画、そして資金調 達もサポートしていくことが重要である。

新時代の産業を開拓し、地域と世界へ貢献するダイナミック な連携モデルプロジェクトに今後も積極的に取り組んでいき たい。九州大学は上海交通大学等とも連携しているが、中国 の技術を九州地方の製造業へ移転し、今後ますます国際連携 に力を入れていきたい所存である。

田中

私は立命館大学の教員と関西TLO株式会社の専務を兼任して おり、そういった意味で大学と企業側双方の立場が理解でき るのではないかと思料する。立命館大学の研究資金は外部か ら調達していたため、企業との共同研究で成果が出た場合、

特許の帰属が問題となっていた。そこで産学連携によって5 年前にリエゾンオフィスが設立されたが、そこでは特許処理 が追いつかず、さらに大学の権限が拡大するという状況に陥 った。ロイヤルティについて議論がまとまらず契約に失敗す るケースもあったため、関西TLO株式会社が設立されること となった。

関西TLOは大学には属しておらず、さまざまな大学の知財本 部と連携を取る広域型TLOである。モデルケースの構築にお いて鍵になるのは、1)国立私立大学の知的財産本部とTLO との連携における機能分担を明確にし、2)知財本部の設置 が認可されていない大学における知財の取り扱いに対するサ ポート体制を構築し、3)大学の努力によるリエゾンオフィ ス、インキュベーションオフィス、知的財産本部、研究セン ター等の活性化とTLOとの有機的連携を実現し、4)企業と 教員の個人的ネットワークによる知的財産の企業への移転を、

大学の機関帰属にしてTLO等を介して移転することに対する 教員、企業双方の意識改革と啓蒙活動を実施することである。

関西TLOには現在40名前後のリエゾンスタッフを抱え、この スタッフが発明の発掘を行う。発明の発掘を受けて知財本部 長が知的財産の取り扱い方針を策定し、大学による権利の承 継、大学による特許出願、大学または関西TLOによるライセ ンシングについて決定がくだされる。この決定に対して、知 財本部スタッフと関西TLOスタッフからの意見聴取が行われ、

発明が職務発明に該当するのか、技術レベル、製品化のコス ト、ニーズと市場性、海外出願の是非などの観点から評価が 行われる。次に技術評価委員会・発明委員会が発明を審査し、

特許を発明者に戻す場合は発明者個人がその後の取り扱いを 判断している。大学が権利を承継する場合は、大学の単独出 願とするのか企業との共同出願とするのかについて決定がく だされる。単独出願は関西TLOにより行われる場合と知財ス タッフにより行われる場合がある。

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