山本
本日のセッションのテーマは国際技術移転。海外の特許契約 の方針および戦略について議論する。
米国とカナダの大学を対象に、海外への特許出願現状に関す るアンケート調査を行い、一年間の特許出願件数、全出願に 占める海外出願の割合、海外出願に占めるPCT出願の割合に ついて回答を得た。さらに海外企業にマーケティングを行う 際の手法、海外へのマーケティングにおいて障壁を感じるか、
また障壁を感じる場合にはその具体的内容について調査を実 施した。パネリストには、各自が行っている活動、また海外 へのマーケティングの障害について話を伺いたい。
佐村
日本企業がグローバル化するためには、特許が重要な要素と なる。現在の日本企業は可能な限り海外出願を行う方向で動 いている。国内よりも、欧米で技術を実用化したほうが市場 のニーズが高い場合があるからだ。
産総研は国内最大の公的研究機関であり、1000億円の年間予 算を確保、幅広い産業技術を対象としている。産総研イノベ ーションズは外部の技術移転機関(TLO)として機能し、産 総研は特許出願に、産総研イノベーションズは技術移転に専 念している。
ライセンス収入の推移をみると、1990年から急激に下降し、
5000万円にまで落ち込んだが、その後再び増加に転じ、2001 年には3億円にまで回復した。ライセンス収入総額のトップ 10企業には、Isomeraze(14億1000万円)、ITO(6億9000万 円)、Melibiaze(3億7000万円)等の企業がある。海外から のライセンス収入は、酵素系特許の取得により、1970年代後 半に年間7500〜8000万円の高収入を記録した。
2002年度の年間特許出願数のうち、国内出願は1406件、海外 出願は211件であった。2002年3月末現在、国内の登録特許 権総数は11,595件、海外では2,649件である。
産総研の国内における特許出願数は増加している。一方、海 外出願数にはあまり変化はみられない。国内の特許登録数は 減少しており、海外登録は出願数と同様、数に変化はみられ
ない。
2000年度の国内特許の分類をみると、IT分野で1,600件、保健 分野で1,600件、ナノ・先端材料分野で1,300件、生産技術分野 で1,000件出願。2000年度の米国出願での特許分類をみると、
化学分野が43%、情報電子が22%、機械製造が20%、生命科 学が15%を占める。
発明から特許出願までのプロセスについて。特許庁に出願し た後、特許評価会議を招集し、当該技術がTLOのマーケティ ング、またベンチャーの起業に適しているかとの観点から、
産総研のコーディネーター、技術アドバイザー、TLOスタッ フ、ベンチャーインキュベータによる評価・判断を受ける。
その後、戦略特許出願委員会で出願方針が検討され、海外出 願の場合は、外国出願委員会で審査が行われる。外国出願委 員会での特許の評価基準は1)商業化の可能性、2)特許権 利範囲、3)開発の状況などであり、検討の結果基準を満た していると判断された場合に出願が実施される。
特許出願、維持費用には年間約2億円を当てている。昨年の 特許関連費用は3億円。これに対しライセンス収入は年間1200 万とごくわずかであった。その背景としては、1)産総研の 知名度の不足、2)特許ポートフォリオの不備、3)事業化 までのサポート不足、4)侵害への対策の不備、があげられ、
これらの点につき対策を講じることが課題となっている。解 決策としては民間TLOとの連携や展示会の活用が考えられる。
産 総 研 は BTG、 Fairfield Research、 TAUES、 First Principals等の海外TLOと連携している。これらTLOと連携 してのマーケティングプロセスは、1)対象特許の選定、2)
特許価値評価(発明者のヒアリング)、3)マーケティング、
4)フォローアップの四プロセスから成る。
近年出展している海外技術展示会としては、HIT2002、
Hannover Messe、BIO 2003、COMDX 2003等がある。海外 技術展示会を活用してのマーケティングプロセスは、1)対 象技術の選定、2)知的財産調査、3)プレマーケティング、
4)出展、5)フォローアップマーケティングの五つのプロ セスから成る。プレマーケティング以降のプロセスは必要に 応じて民間TLOへ委託している。
[A3]
特許侵害への対応としては、1)研究部門からの情報収集、
2)産総研顧問弁護士との連携、3)専門スタッフの配置、
4)海外TLOとの連携を行っている。その結果、国内ではセ ラミック成型体の製造方法やフラッシュメモリーの侵害事案 で成果を出している。液晶カラーフィルターは現在も交渉中 で、海外では生分解性プラスチックについて交渉中である。
TLO設立後、国内収入に増加が認められるものの、海外ライ センス収入には改善の余地がある。1975年から1980年にかけ ては酵素のライセンスが収益増加に貢献した。2002年度の海 外出願件数は211件であり、これは国内出願の22%に当たる。
質問(山本)
ライセンス料が低かった理由は何か。
回答(佐村)
当時は研究費用に税金を当てており、ライセンシング交渉に おいて強い立場が取れなかったため。現在は独立行政法人化 されたことで、相当する対価を要求することが可能である。
ガーナー
TLOの中心業務は、技術開示によって生み出された製品の販 売、およびライセンシングである。その結果として、大学側 に利益が生まれる。スコットランドの大学は米国の大学より も技術の事業化を推進しており、世界的な評価を受けている。
初期技術を顧客に売り込むことは希である。なぜなら、初期 技術は概念であるため、実際に顧客に見せることができない からである。新技術を事業化する場合は、スタートアップ企 業を設立することが必要。新マーケットを創出することは大 変困難である。
技術の創出と同様、適切な技術の移転先を発掘することも重 要である。TLOはライセンス先の企業の適正評価を実施し、
ライセンス先の企業もまた同様の調査を行う。企業が技術開 発を行った後にロイヤリティを産出しなければ、発明者や TLOにとってすべてのプロセスは無駄となる。事業化に至る までの時間枠は短くなってきているため、プロセスが目的に かなったものでなければ機会を失うことになる。
適切な企業を探すためには、直接相手に働きかける必要があ る。技術詳細をウェブ上で紹介しても発見されるケースは少 ない。技術のPRとして、技術の概要や現状について伝えるこ とが必要である。また、技術移転をより効率的に行うには、
顧客の意見に耳を傾けると同時に当該分野の専門家が開発し たことを伝えることも重要である。
地域的なマーケティングイニシアチブを活用することも有用 といえる。グローバルマーケティングは通常の企業間のビジ ネスに比べ問題が発生する機会が多いため、製品を売り込む 際には地元の知識を活用することが必要となる。自身の日本 でのビジネス経験は大変興味深いものだった。状況は変化し
つつあるようであるが、日本は法律関連書類に苦手意識を持 つ傾向がある。さらに、意思決定の概念の違いに当惑したこ ともある。仲介業者などを利用すればお互いの理解促進を高 めることができるであろう。
AUTMは知的財産管理を積極的に推進することにより、開発 途上国の医療品へのアクセス改善等の分野で世界に貢献した いと考えている。世界貢献は技術支援、研究、戦略分析、情 報の普及、知的財産管理のキャパシティビルディング、革新 的知的財産モデル、良い慣行を通じて可能となる。
ヒル
Qi3は外部TLOであり、技術販売とマーケティングの専門知 識を、1)公共機関、2)技術基盤を持つ企業へのベンチャ ーを試みる企業、3)スタートアップ企業や技術を基盤とし た中小企業に提供している。
公共機関に対して技術移転活動を展開する際には、技術移転 を通して政府の目標が満たされ、大学や個人の評判を獲得し 報酬を得るという目標を掲げる。技術移転のアプローチには、
1)知的財産を保護するための法的アプローチ、2)ビジネ ス連携をもたらす資金的アプローチ、3)事業化機会を評価 するためのマーケティングアプローチがある。
技術を創出する人間にはマーケティングスキルやコアマーケ ット以外で知的財産を事業化する資源がないため、企業がそ の技術のビジネス可能性を見極めることが必要である。助言 に留まることなく専門知識の提供や直接的支援が欠かせない。
また、技術商業化のための資金提供も求められる。一般に、
資金の50%が事業開発に、12%が知的財産保護に、38%が技 術開発に分配されている。
技術移転の理想的なプロセスは、その知的財産に市場可能性 があるかを検討し、可能性がある場合に事業化を行うという ものである。その後、知的財産はライセンシング、スピンア ウト、連携、販売、コンサルタンシー等の成果へとつながる。
フラット・パネル・ディスプレイは、500億ドルの市場で30 億ドルのシェアを占めているが、この成果はQi3が効果的な グローバル商業戦略を採用していることに起因している。三 つの市場を査定し、200万ドルのライセンス料を得た。
課題としては、1)マーケティング、技術研究、知的財産保 護の予算のバランスを保つこと、2)プロジェクトの成果を ベンチャー企業に組み込むことであり、これは将来的な成功 にもつながる。
ワッサーマン
オンタリオでは数多くのイノベーションが生まれ、世界屈指 の教育システムが整備されていることや世界でもトップクラ スのテクノロジー企業が集積していることでその名を馳せて いる。