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「知的財産分野における人材育成―大学と企業の取り組み」

喜多見

先のセッションでは、多くの知的財産関係者が人材の重要性 を認識していることが分かった。そこで、本セッションでは、

知的財産を的確に評価し、事業化へとつなげていく人材に焦 点を当て、そうした人材の確保・育成方策について、海外の 事例も参考にしてディスカッションを行う。

高田

人材は交渉をはじめ移転プロセスのすべてに影響を及ぼし、

技術移転の分野で特に重要な役割を担っている。九州大学は 技術移転に積極的に取り組んでおり、知的財産本部を設置、

自身も知的財産本部に所属する。技術移転部門の目標は、可 能な限り迅速にそして広く研究成果を社会に普及することで ある。そのために事業化のためのパートナー企業を探し、良 好な関係を構築する必要がある。

技術移転グループの業務は、知的財産ポリシーの策定から知 的財産教育、啓発、知的財産事業化計画や知的財産戦略立案、

知的財産発掘、権利化からマーケティング、交渉、契約にま で及ぶ。

技術移転グループはリーダー(1名)、サブリーダー(2名)、 アソシエイト(2名)から構成されている。人材の訓練方法 は、1)産学連携に関する初期ガイダンスの開催、2)研究 室を訪問し教員からのニーズ処理を行う等の実地訓練を行っ ている。

2名のアソシエイトを紹介。1)応用物理で博士号取得後、

地域共同研究センターにてリエゾン業務に従事した後、2003 年4月からは技術移転グループに所属し、現在は研究者から の新規の発明開示を請け負うまでになった。自己分析および 目標設定等のガイダンスを9月に実施した結果、自己のアソ シエイト像を構築した。10月に初のオプション契約を締結し、

その後、発明協会の実務研修を受講した。2)民間でコンサ ルティングビジネスに携わる。TLOの保有案件を複数担当し、

企業訪問を実施している。8月に日本貿易振興機構(JETRO)

主催のテキサスA&M大学研修に参加し12月には初のオプシ ョン契約を締結した。現在も複数の案件を担当している。

大学知的財産マネジメントに携わる人物には、信頼感、コミ ュニケーション能力、フットワーク、異文化理解(企業と大

学)、強い価値観を持つことが求められる。加えてバランス の取れた人間であることが必要である。

知的財産本部の仕事は先端技術の動向を知ることができる点 で魅力的な仕事である。ここで生き生きと働くことが知的財 産本部の次世代の人材を育成することにつながるのではない かと思料する。

株式会社リクルートテクノロジーマネジメント開発室(TMD)

は1998年に設立。2000年に事業化し、現在はアソシエイト9 名、研究スタッフ2名を含む常勤メンバー15名を抱える。

TLOと類似した業務を行っているが、権利者にはならず、完 全成功報酬システムを採用している。実績は、これまでに 1,000件を超える開示を受け、そのうちの20%につき特許の出 願を行なった。対企業契約は約170社で、取り扱い技術分野 は主にバイオライフサイエンス、新素材である。

技術移転の成功には、当事者の熱意、裏づけ、運が欠かせな い。さらにビジネス開発には企画力・営業力・プロジェクト マネジメント能力が求められる。求められる資質は、1)前 向きで、2)問題に積極的に取り組み、3)仕事を楽しめ、

4)何事にも挑戦する精神を持つことである。また自ら考え、

判断できる人材を求めている。技術や法律に興味があること も必要。

人材育成の取り組みは三つの大きな枠組みの中で行っている。

1)実地研修:実際に案件を担当。2)共有会による疑似体 験:開示ミーティングを週1回開催し、特許のビジネスシナ リオを発表。技術、知財顧問との定期的ミーティング。3)

大学の知的財産担当者との関係構築。全案件の定期的な棚卸 し、出願数、契約者数、売り上げ予測。

ハウク

欧州と日本は労働力を統率する起業家の不在という同じ問題 を抱えている。これはスタートアップ企業の不足と既存企業 の減少に関連する。さらにベンチャーキャピタルの利用は知 識開発と技術移転において重要な要素となる。より大きな視 野からは、1)ベンチャーキャピタルの有用性、2)変動性 のある労働市場、3)金融市場の透明性、4)教育・R&Dイ

[A4]

回答(ハウク)

シュタインバイス大学では、学生の多くが技術分野の背景を 持つ。

質問(喜多見)

九州大学ではどのような自己分析を行うのか。

回答(高田)

社会の動向を踏まえた上で、産学連携と自身の課題を考え、

将来の方向性を決める。

質問(喜多見)

原氏に対する質問。人材開発に関連し、共有会におけるビジ ネスシナリオ体験について具体的にご説明願いたい。

回答(原)

ビジネスシナリオの体験では、市場性の評価を行ない、技術 特許化から収入を得るシナリオを描くシミュレーションを行 う。

質問(喜多見)

ハウク氏に対する質問。シュタインバイス大学の人材教育の 特徴は。

回答(ハウク)

知識を得るだけでなく、具体的なプロジェクトを実践する中 で問題解決のスキルを獲得することを特徴としている。

コメント(喜多見)

シュタインバイス大学の人材教育の話は印象深い。今後、日 本のモデルになるのではないか。

質問(喜多見)

シュタインバイス大学は日本の大学と連携しているか。

回答(ハウク)

技術移転の分野で九州大学と連携している。さらに東海大学、

早稲田大学等との協力も進んでいるが、最も関係が強固なの は九州大学。

質問(喜多見)

より魅力的なワークスペースを確保するには、給与体系に自 由度があり、業務が魅力的であることが必要。リクルート TMDではワークスペースの魅力向上のために工夫を行ってい るか。

回答(原)

リクルートTMDでは6カ月おきに技術開示数、担当件数、収 入額につき査定を行っており、その結果を給与に反映してい る。

ンフラ、知識技術移転制度の問題についても検討が必要であ る。

企業は主に技術を利用し、知識基盤(大学)は技術を産出、

公共部門は技術を奨励し、税管理を行う。技術移転プロジェ クトへの公共部門の参加はなく、知識基盤である大学と企業 が連携を行なう。

シュタインバイス財団は既存の研究基盤を利用して企業にサ ービスを提供している。590のシュタインバイス・トランス ファー・センターを擁し、分散型ネットワークを展開。この ネットワークを通して技術管理能力が維持されている。40社 1万人の顧客を抱えるシュタインバイス財団の活動の原動力 は起業家精神である。

シュタインバイス大学は1998年に設立。シュタインバイス大 学には、学生が実際の技術移転プロジェクトに携わることで 能力向上を目指すプログラムがあり、このプロジェクトは企 業からの支援もうけている。大学収入の50%はこのプロジェ クトから生まれている。

知識技術移転のプロセスについては、独自の方法を確立する 必要があり、熱意ある人材の集積には人を呼び込むような職 場の構造整備が必要である。シュタインバイス財団による知 識技術移転プロセスの特徴を現すキーワードには、「独自の アイデンティティ」、「独立組織」、「分権化」、「ネットワー ク」、「顧客志向」、「人材中心」、「バーチャル」、「目標志向」

等がある。

質疑応答

コメント(喜多見)

シュタインバイスが政府支援体制から独立後、どのように運 営されてきたかに関する話は印象深かった。三名のパネリス トから将来の技術移転への示唆をいただけた。質疑応答セッ ションでは、1)理想の人材像と求められる資質、2)人材 育成策、3)技術移転のワーキングスペースの魅力を高める ための方法、についてより議論を深めたい。

九州大学では技術分野の経歴を持つ人材が多いが、どのよう な人材像が求められているか。

回答(高田)

九州大学では技術分野の経歴を持つ者が多く、各々の経歴に 合わせて担当領域が決定される。

回答(原)

リクルートTMDでは文系と理系で二分される。ある程度担当 技術を理解する必要があるが、大学教員から期待されるのは むしろマーケティング能力である。

質問(喜多見)

ドイツの若者にとって技術移転を行う職場はどの程度魅力的 か。また、給与体系は労働市場においてどのような位置を占 めるか。

回答(ハウク)

ドイツについては一律に説明することはできない。1970年代 にドイツで応用研究大学が設立されたことにより、労働市場 に大きな変化が表れた。人材の流動化による技術移転も存在 する。

コメント(喜多見)

日本でも企業間の人材の流動化が起きている。

質問(会場:参加者)

一般的にTLOの財政状態は厳しい。リクルートTMDの経営 状態はどうか。

回答(原)

現在経営は赤字。2〜3年で黒字へ転換することを目指して いる。

質問(会場:参加者)

リクルートTMDと大学との関係について伺いたい。

回答(原)

大学側と良好な関係を構築するには、まず良好な人間関係を 築くことが必要である。

質問(会場:参加者)

技術移転の見込みがない技術を退ける場合、研究者にはどの ように説明しているか。

回答(原)

リクルートTMDではその技術に市場性がないと説明してい る。

コメント(喜多見)

本セッションの議論では、次の点が明らかとなった。1)大 学の活動が活性化することで、技術移転が拡大する。そこで 働く人材の育成が重要。2)知識を詰め込むだけではなく、

実地研修を利用した人材教育が必要。そのためには研修コー スの充実が望まれる。3)職場の魅力を向上させ、さらなる 給与体系等の整備が必要となる。

(セッションA4終了)

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