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日本電気株式会社 代表取締役会長

べきですが、このマイクロコードというのは0と1のデジタ ル的な表現によって記述されているということから、著作権 で保護されるということになりました。しかしながら、この 8086/8088というマイクロプロセッサに搭載されているマイ クロコードの著作権は無効であると。と申しますのは、この 権利委託を受けたほかのメーカーが造った製品に著作権表示 が行われていなかったということです。当然マルC何とかと いう表示をすることが著作権で保護されるための要件ですが、

技術許諾を受けたライセンシーの造った製品にそれがなされ ていないのが量的に相当数あったということで、著作権は無 効である。そして3番めに、我々が使っていたマイクロコー ドについては新たな創作である。したがって、著作権を侵害 していないという結論が下されたわけです。

そういう過程から、こういった著作権で保護される対象に 対して、リバースエンジニアリングによるアクセスや類似性 があるかどうかということが侵害の判断になるという判例が 作られたわけです。したがって、この結果を基として、新た な製品開発を行う場合には公開情報のみを活用し、かつ類似 製品の秘密情報にアクセスをしていない設計者、人間が、い わゆるクリーンルームという方法を使って設計をする必要が あるという、一種の定め(ルール)ができたということです。

従来工業製品においてなじみが薄かった著作権というものが、

実際に権利として大きな意味を持つことが確認された重要な 判決ではなかったかと私は思うわけです。

こういった流れは、1980年代以降の米国の知財政策にも如 実に表れています。先ほどご説明したマイクロコードの著作 権による保護というのは、1980年の著作権法の改正において、

コンピュータプログラムを著作権によって保護するというこ とが明らかにされたことが出発点になっていると私は理解し ています。そして、1980年のバイ・ドール法の成立。これは、

政府資金による研究成果を大学、企業が特許の保有を可能と するという内容です。そして、1985年のヤングレポートが米 国の知財政策を大きく方向づけていると思いますし、また1980 年の特許法の改正を受けて、1995年のWTOにおけるTRI Ps協定、すなわちプログラムの保護は著作権による保護を 義務づけるといった協定が生まれたというところへつながっ ているわけです。

こういった知的所有権、知的財産権の内容の多様化に伴い、

企業を評価する尺度も、従来のバランスシートに現れるいわ ゆるタンジブル・アセット(Tangible Asset)と、それ以外 の無形財産権、無形資産であるインタンジブル・アセット

(Intangible Asset)の両方を考えていくということになって いるわけです。例えば、下にありますように、知的財産にか かわるバランスシートのようなものも、一つの考え方として 生まれてきているのが現状ではないかと思います。

そのような状況を受けまして、私どもにおける知的財産戦 略がどう展開されているかということについて、若干ご説明 をしたいと思います。

すでによくいわれていることですが、従来の基礎研究から 応用研究を経て、実用化に至るというリニアモデルというの が、今は必ずしも成立しなくなってきました。右にあります ように、基礎研究、応用研究、そして実用化というのが同時

進行をする、研究開発のシンクロ化が起きてきているのが現 在の姿かと思います。そういう中からよくいわれているのは、

企業の中央研究所の終焉、そして産学官連携の重要性という ことです。例えば、新規分野としてバイオインフォマティク スという分野がありますが、NECの場合にはコンピュータ・

サイエンスというエクスパティーズ、能力は持っていますが、

必ずしもバイオについては深い知見があるわけではありませ ん。したがって、異分野の知見を即時に導入するという姿か ら、こういうパラレルモデルが注目されているのが現状です。

したがって、事業戦略を基に作られる企業におけるR&D プログラムというのは、一方では大学において行われている 基礎研究と深くかかわり合っていくことが必要になってきて いるということです。それに伴い、知的財産戦略も、基本特 許の取得も重要ですが、その基本特許をどう事業につなげて いくのか。その場合には、例えばパートナーを形成すること も必要ですし、また基本特許に基づいた新たな方式を世界標 準にどうつないでいくかということも求められる等々、事業 戦略と知的財産戦略との関係は、ますますかかわり合いを深 めていっているのが現状だと認識しています。

そのような状況の中において、ここにありますような形で、

IPRのポートフォリオをどうマネージしていくかというこ とが重要になってきます。かつての企業における特許戦略と いうのは、いかに出願数を増やし、そして出願した特許を登 録するかという、数で物事を考える流れが強かったのではな いかと思うわけです。しかしながら、特許の維持のコストも 含めますと、こういった出願、登録された特許から新たな価 値をいかに生み出すかといったマネジメントが重要になって いくという認識です。ここにありますように、事業の重要度 と、その特許あるいは知的財産にかかわる技術の強さのマト リックスの中で、例えば譲渡を考えたほうがいい領域、ある いは技術の強さを生かすことによってアライアンス等を含め た収益力の強化を考えていくのが適切な分野、そして事業の 重要性と技術の強さの両方から考えて戦略的な事業領域とし て自ら展開していくべき領域、こういった位置づけのもとに 判断をしていくことが重要です。

もちろん従来のリニアモデルの中におきましても、いろい ろな戦略が作られ、それが実行されてきたということは事実 です。大きく分ければ、社外資源の戦略的な活用というリソ ースのオープン化の側面と、知的財産の戦略的活用という収 益源のオープン化という側面があるわけです。アイデアの創 造から研究、開発、そして製造、販売といった各局面におい て、社外資源の戦略的活用と知的財産の戦略的活用という二 つの面で種々の施策が講じられてきたことは確かですが、も う少し高い立場に立った知的財産権の活用の方法も考えられ るわけです。

先ほどお話ししたのは、まさにかつてのリニアモデルの中 における知的財産権の取り扱いで、製品化、そして量産によ る収益化を通じた企業価値の向上をねらうというのが一般的 な形態でした。現在においてはもちろんそういった自社製品 への組み込みがあるにしても、ライセンスを行う、あるいは 売却することでの収益化に持って行く場合もありますし、ま た情報発信をすることによる企業価値の向上という活用の仕

方も出てくるということです。

一例として、私どもが先日発表しました最も微細化された トランジスタにつきましては、現在量産されている最も小型 のトランジスタは寸法が90ナノメートル程度ですが、私ども では5ナノメートルという最小寸法のトランジスタの動作を 確認することができたということです。こういった情報発信 を通じた企業価値の向上へつなげていくことも、一つの方法 ではないかと思うわけです。

したがって、私どもの特許といいますか、代表的な例とし て特許を挙げたわけですが、当然ソフトウエアの場合には著 作権という権利も含めて考えることになりますが、従来の研 究、開発の活動をしていた範囲をさらに広く拡大して考えて いく必要があるということだと思います。つまり従来の場合 ですと、技術戦略を中心として特許の戦略を考えていたわけ ですが、やはりビジネスモデルを作成する段階から特許戦略 を組み込んで進めていくことが重要になるわけです。そこに ありますように、コア技術に対する戦略的な出願をしていく。

それから、先ほどお話ししたポートフォリオをどうマネージ していくのかという物の考え方。そして実際にR&Dを進め ていくうえでの戦略、あるいはそれを標準化していくうえで の戦略について、その連携を考えて進めていくということで す。残念ながらNECの場合には、このような技術戦略に基 づいて特許が生まれてくるという過程が、事業戦略に強い関 連づけが行われていなかった例も若干見られたということの 反省から、こういうマネジメントをしていくという考えに至 ったわけです。

さて、また新しい知的財産権の活用の方法として、昨年7 月にイノベーションマーケットプレイスを開設しました。こ れは要するに電子マーケットに特許や技術、エンジニアリン グサービスの情報を提供しようというのがねらいです。従来 はこういった電子市場において特許の紹介をし、そのライセ ンスの可能性を表示するということは極めてまれだったので はないかと思いますが、こういった形のマーケットプレイス を開設しました。

昨年末現在で約800人のユーザー登録者がおりまして、海 外ユーザーも36か国にわたっています。下のパイチャートの 中にありますのは、その登録されたユーザーの業種です。こ ういう電子市場を通じて特許のライセンスが実現する、NE Cの特許のライセンスが実現するということもこれから考え られるわけです。

それと全く別な面で考える必要があるのは、知の流出への 警戒をどうしていくかということです。これは昨年3月に経 済産業省から提示された技術流出の七つのパターンです。先 ほど申し上げましたように、企業をめぐる知的財産の内容が 多様化する状況のもとで、やはりこういったことも念頭に置 く必要があるということです。

この七つの対策を具体的に作り上げていくことが必要では ないかと思います。特に日本におきましては、従来人材の流 動性が非常に低かったということから、あまりこういった技 術流出の防止対策が適切に講じられていなかったという側面 もあろうかと思います。

いずれにしても、オープン化戦略とクローズ戦略をどうバ

ランスさせていくのかということになるわけです。

幾つかの具体的な例をご紹介しますと、ここにありますよ うに、当社の場合には生産設備やキーデバイスの内製化。少 なくともキーデバイスについては、外部に依存するにしても できる限り国内で内製するということ。そのほかノウハウの 分断、それから情報へのアクセスあるいは出願の内容の再検 討等々が幾つかの企業で実行されているというのが実情です。

先ほどお話ししましたオープン化とクローズ化という二つの 側面を含めた知的財産のマネジメントが、非常に重要になっ てきているということです。

さて、これから日本を知的財産立国ということで発展させ ていくうえでの課題について、若干私の考えを述べさせてい ただきたいと存じます。よくいわれている数字ですが、日本 におきましては、ここにありますように、ハイテク産業の輸 出占有率が低下を続けています。やはり米国との競争、そし て中国、アジアとの競争の中で、産業競争力の低下が具体的 に現れていることは確かです。そういう意味では、何らかの 体質の転換が必要だということです。

このキャッチアップ型とフロントランナー型ということで 考えた場合に、やはり競争の形態が大きく変わってきている ということかと思います。

こういった変化を一口でいえば、今までのキャッチアップ 型というのは、「いかに」うまくつくるかというプロセスイ ノベーションだったわけですが、フロントランナーという立 場は、よそにつくれない「何を」つくるかということです。

もちろんこれは技術的な先進性もありますが、同時に知的財 産権で保護(ガード)された製品をつくることによって、「他 社につくれない何かをつくる」ということも出てくるわけで す。平成14年版の「科学技術白書」にも書かれているように、

「独創的なプロダクトイノベーションを連続的に起こす」こ とにつながるということではないかと思います。

いずれにしても、技術開発力強化への期待は、大企業経営 者へのアンケートでも明らかに示されていまして、企業の技 術開発力の重要性は、行政による規制緩和に次いで第2位を 占めています。やはり自らの技術開発力の強化によって、高 付加価値化を図ろうとしている姿がここからもうかがえるわ けです。

このような中におきまして、我が国の政府としては、2002 年2月の小泉総理の施政方針演説の中で、研究活動や創造活 動の成果を知的財産として戦略的に保護・活用し、我が国産 業の国際競争力を強化することを国家の目標とすると述べら れているわけです。この施政方針演説に基づいて知的財産戦 略会議が発足し、昨年7月には知的財産推進計画が決定され ました。ここにありますように、創造から保護、活用という 各ステップの活性化、このIT時代に飛躍的に拡大するであ ろうコンテンツビジネスの強化、そして人にかかわる問題の 解決ということになるわけです。

こういった政策を受け、平成16年度の予算原案におきまし ては、多くの予算項目が削減の対象になる中で、科学技術振 興費は1兆2700億円ということで、15年度比3.3%の増加を見 たわけです。総合科学技術会議において出された「(平成16 年度の科学技術に関する)予算、人材等の資源配分の方針」

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