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蔵持

本セッションにおける議論が参加者の関与する特許流通に役 立つことを願う。私が所属する独立行政法人工業所有権総合 情報館は、特許流通に関わる業務、特許電子図書館のサポー トサービスを提供している。

山田

株式会社全研の主要ビジネスは洗浄装置の製造である。専門 技術を蓄積した結果、費用対効果のある排水処理技術を開発 するまでに至った。

技術開発の経緯を説明すると、最初にフロン溶剤を使用する 会社を設立した。フロンは、その安全性から多くの企業で使 用されていたが、コストがかかるという問題があった。従っ て、代替溶剤を用いる企業を創設し、技術開発に取り組んだ。

技術移転のきっかけは、1998年の「ベンチャープラザちば」

への出展である。その際に特許流通アドバイザーである阿草 氏から特許流通促進事業、国および地方自治体の支援施策等 の紹介を受けた。移転成功の背景には企業とアドバイザー間 の良好なパートナーシップ構築があったといえる。

技術移転の成果としてあげられるのは、三洋電機株式会社と 共同で三洋アクアテクノ株式会社を設立し、開発した製品が 好評であったことである。成功した要因は、三洋電機の環境 に関する考え方が当社の方針と合致したことにある。

課題としては、1)優れた開発成果を収めても、事業化に必 要な資金面の支援が得られにくい、2)開発成果に対する妥 当な技術評価・市場性評価の支援が必要となる、などがあげ られる。現在、浮上濾過材を用いる濾過技術をベースにした 循環型廃水処理のシステムを構築すべく、三洋電気等と応用 開発を実施している。

従来の濾過フィルタでは汚染フィルタの廃棄が環境負荷や処 理費用の増大をもたらすという問題が生じていたが、浮上濾 材を使用した新濾過技術の開発によってこれらの問題を克服

した。

新濾過技術を利用することにより、1)濾過能力の向上、2)

微細固形物の分離、3)濾過能力再生作業の簡略化、4)占 有面積の縮小、5)低コストオペレーショ、6)酸・アルカ リ性廃液の処理が実現可能となった。

澤野

澤産業株式会社は現在大豆を中心とした食品を扱っているが、

もとは緑茶製品を販売する会社である。当社は特許流通の面 で困難に直面しているが、技術の開発には意欲的に取り組ん でいる。

当社は現在社会問題になっている産業廃棄物の減量の必要性 を認識している。豆腐の製造過程で取り除かれるオカラは産 業廃棄物として処分されるが、その費用は年間で約240億円 に達する。当社では、産業廃棄物の問題解決をひとつのビジ ネスチャンスとして捕らえている。

オカラの出ない豆腐の新製法は、アイディアと新技術を加え ることによって、オカラを付加価値の高いものに変えた。し かし、専門家からこの製法についての理解を得るのに努力を 要した。製品の流通面では、特許流通アドバイザーから提携 先の企業紹介等の支援を受けた。その後山口県でベンチャー 企業として事業を始め、今では特許が紹介されるまでに至っ た。このようにして特許技術の商業化に成功したのである。

すでに10社以上がランセンシング契約に合意しており、その うち一社がイトーヨーカドーでの販売の話を進めている。

導入の成果としては、味の良い商品ができること、また、保 健性の高い健康機能性食品が生まれることがあげられる。本 食品は、健康志向という時代のニーズへの対応、そして廃棄 物をリサイクルし、高付加価値化するという二面性を併せ持 っている。

今後の課題としては、1)ランニングコストを下げるための 技術開発、2)発展途上国にも貢献できる新商品開発、3)

[A5]

質問(蔵持)

事業化した中で失敗例はあるか。

回答(山田)

失敗例はない。しかしゼロから技術を開発し、会社を設立す るまでのプロセスでは多くの困難があった

コメント(蔵持)

失敗例がないというのは驚くべきこと。それが事実であれば 山田氏の企業は大企業になっているはずである。

回答(澤野)

当社は流通の段階で多くの失敗をしたが、失敗から学ぶこと は多かった。失敗が将来の成功へとつながる。その他の失敗 例は製品の需要を過大評価していたことに起因している。

質問(蔵持)

特許流通アドバイザーの観点から見て、山田氏はどのような 人物か。

回答(阿草)

一般人とは異なったビジネスアプローチをする人物である。

質問(蔵持)

澤野氏の発言内容に対する補足があれば伺いたい。

回答(滝川)

澤野氏は見た通りの紳士であるが、考えを曲げない芯の強い 人物である。自身が心配していることは、多くの理想を持ち 過ぎるために焦点がなくなることである。

質問(蔵持)

澤野氏は学校法人三田尻女子高等学校の理事長に就任してい るが、学生の教育にも力を入れているのか。

回答(澤野)

教育分野でも活動をしている。

質問(蔵持)

オカラが豆腐に含まれていることによって、豆腐の販売価格 は半値になるのですかネ。

回答(澤野)

かつて同様の理由により、食料品店から価格を下げるべきと の意見があったが、本製品は大変付加価値が高いものである ため、現在の価格は妥当である。

質問(蔵持)

中島氏とどのように良好な関係構築を行ったのか、松永氏に 伺いたい。

国際ビジネスへのチャレンジ、などがある。大豆は21世紀の 食のキーワードを握っていると考えている。

中島

当社は溶接業を中心とし、中島工業として創業した。有限会 社中島工業から分離した当社は製造部分を担当、有限会社中 島工業は財産管理を担当する。当社は2001年11月に岐阜県か らオンリーワン企業に認定され、2002年8月にはビジネスプ ラン・コンテスト・イン・ジャパン優秀賞を受賞した。2003 年4月には特許庁より平成15年度知財功労賞表彰産業財産権 制度活用優良企業特許庁長官表彰を受けており、現在注目を 浴びる企業の一つである。

当社は特許流通事業の一環として岐阜大学と連携している。

一般的に大学は技術開示に積極的である一方、企業は消極的 であるという相違があるが、当社は自社内で製造が可能であ るため、製作過程の秘密保持が比較的容易である。

当社の技術開発の成功事例としてはフイルムの開発があげら れる。この技術から約17件の周辺特許を取得しており、現在 追加で申請中である。

当社の製品であるモノトランフィルムの構造は単層単一のナ ノ多孔質体であり、微細泡発生機能、気体透過機能、視野選 択機能を持つ。特に微細泡発生機能は利用価値が高く、大き な期待を抱かれている。

経営理念は「小さな大企業」、つまり少人数でいかに大きな プロジェクトを行うかということである。社是は「改善より も開発を」、つまり創造性があり、かつ人と自然にやさしい 製品を開発することである。

このような経営理念の下、Foamest静(携帯エアーポンプ)、 Foamest Ring(水槽用エアーポンプ)、Creative Foamest T 型、Foamest  REVI、人工炭酸風呂等の商品化が実現した。

さらに現在養殖設備のパイロットテストが行われている。

今後は時の流れ、開発、改善の3項目を念頭に置きつつ、月 に一件のペースで特許開発を進めていきたい。

質疑応答

質問(蔵持)

技術開発の成功には特許流通アドバイザーの力が寄与してい ると思う。アドバイザーから見た各企業社長の印象は。また プレゼーテーション内容の補足があれば、いただきたい。

回答(阿草)

技術移転の成功には、ニーズの把握が欠かせない。その点で、

山田氏が企業の秘密をアドバイザーに公開していることは有 効である。アドバイザーとの良好な関係構築が成功の秘訣で はないかと考える。

回答(松永)

ナックは小規模な企業であるため、商品化が成功するまでに 多くの障壁がある。そのため、強い特許の保持が重要。現在、

ナックは大学関係者との良い関係を築いている。中島氏は頑 固な一面を持っており、顧客と喧嘩をすることもある。ナッ クの最大の問題は、技術の開発段階における企業運営のため の資金確保である。

質問(蔵持)

資金面で困難に直面しないための良いアイディアはあるか。

回答(澤野)

補助金の支給等を活用しているが、どの中小企業も同様の問 題を抱えている。自社もその筆頭である。

質問(蔵持)

大企業と連携する際に、どのように良好な関係を構築するか。

回答(山田)

協力的な関係を強めるにはお互いのニーズが合致することが 重要である。

回答(阿草)

発明技術の先進性が優れていれば、大企業の関心を引くこと が可能である。特許を保持することにより、中小企業は大企 業と対等に付き合うことが可能になる。

質問(蔵持)

海外、特に韓国へマーケティングする場合、注意すべき点は。

回答(澤野)

韓国との取引においては、事前に諸条件の取り決めについて 十分に検討し、その取り決めが不足なく履行されるよう留意 する必要がある。明確な技術契約を交わすことが必要となる。

現在米国と三つの案件につき交渉中であり、先方は自社商品 に対して強い興味を示している。

質問(蔵持)

海外企業と取引を行うにあたり、契約においてどのような対 策を講じているか。

回答(澤野)

契約に関しては、訴訟を避けるために弁護士等から助言を受 けている。

質問(会場:参加者)

海外出願費用や海外ビジネス展開のための資本が必要である。

資金面でどのような工夫をしているか。

回答(山田)

特許費用は多額であるが、自身の場合は弟が経営する特許事 務所での費用の割引が可能である。連携先との間で折半する

場合もある。

回答(澤野)

特許の海外出願費用はかかるが、これも一つの投資であると 考えている。

回答(中島)

特許出願プロセスは全て自社内で行っている。この方法は、

代理人に委託した場合には関与できない特許の細部を知るこ とができる点で良い。

質問(蔵持)

資金をかけずに知恵を出すという会社の方針に、社員はどの ように応えているか。

回答(中島)

多くの特許出願を行わずに収益を得ること試みている。自社 の長所は、特許の請求項が細かいことである。また、自社で 特許出願を行ったほうが内容の濃い請求項が作成できる。

質問(会場:参加者)

知的財産権のロイヤリティ分配の問題が発生した場合、どの ように解決しておられるか。

回答(山田)

ロイヤリティ分配の問題は生じていない。

回答(澤野)

特許権利者は自身と息子であるため、問題はない。

回答(中島)

ナックでは、ロイヤリティを開発と商品化の段階に分けて考 えているため、大学教員にも還元している。

(セッションA5終了)

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