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菊池

知的財産社会が確立されるならば次のような点を期待するこ とができよう。1)知的財産による直接金融により信託とい うスキームが現れ、2)知的財産によるガバナンスの構造が 変わり、3)知的資産経営による組織改革が進展する。

本セッションにおいては、次の五つのテーマに絞って質疑応 答を行いたい。1)知的財産のパッケージング。2)ハイリ スクの問題。3)大学のガバナビリティ。4)知財報告書。

5)知的財産の公開。

石井

知的財産権の経営的意義について。知的財産権は、排他独占 的実施による収益拡大、経営の自由度確保、他者牽制による 自社優位性確保などの分野で自社事業との一体性を確保し、

さらにライセンスによるロイヤリティ収益確保、ライセンス による市場参入機会の実現といった意味で自社事業を補完す るものともなっている。これらに加え、最近では知的財産権 を財務戦略に活用する例が現れ、信託など活用スキームの高 度化が進んでいる。

無形資産の企業資産に占めるウエイトは増加してきており、

付加価値源泉の中心的存在となってきている。無形資産には、

経営者のアイデアや構想力などが含まれるが、これらを顕在 化することは困難である。他方で知的財産権は明示可能な資 産であり、事業化イメージが図られやすいため、単体で取引 の対象とされる。そこで、知的財産権やロイヤリティ債権を 裏付けとする資金調達が可能となる。さらにこのようなノン デッド型、ノンエクイティ型の資金調達、投資家からの資金 調達といった新しいファイナンス手法が確立されつつある。

知的財産権を流動化する際には信託等によりオリジネーター とのリスクと分離し、専門家に事業家のサポートをゆだねる というビジネスストラクチャが構築されつつある。

流動化の事例としては、映画放映会社(松竹)が収益請求権 を資金調達の裏づけにした事例や、ゲーム事業の収益請求権 について一般投資家から資金を調達した事例などがある。

松竹の事例の特徴は、企業リスクについて松竹からリスク転 換を行い、テレビ東京のロイヤリティ支払い能力を中心に仕 組みづくりが行われたことである。借り入れの主体は特定目

的会社で、オリジネーターの貸借対照表には載せられない点 も特徴である。コナミの場合は、資金調達の仲立ちの会社

(社債発行会社・匿名組合員)が設立され、この組合が利益 参加型社債を発行、これを投資信託に組み込み、証券会社を 通して投資家に販売した。

証券化の効果としては、オリジネーターにとっては未稼働資 産を有効活用することによりキャッシュ化が可能となるとい う点がある。さらに、ライセンシーは、特許権が譲渡されて いるので、万が一オリジネーターが倒産したとしても継続し て安定的にライセンスを受けることができる。投資家にも多 様な投資先を選択する機会が与えられ、さらに、リスクがオ リジネーターからライセンシーに転化されているので倒産リ スクを回避することができるという効果も証券化には期待で きる。

信託の特徴について。メリットは、資産自体が独立性をもっ て、倒産隔離がなされる、会計・税務処理上の透明性を確保 することがあげられる。

信託業法が改正され、知的財産を含む幅広い財産が財産権の 対象となった。さらに参入基準の緩和も検討されている。ど のような行為規制が課せられるかについては今後の動向を注 視する。

知的財産権の流動化の課題について。知的財産権活用のため にはデューデリジェンス面のサポートが必要となり、この点 において人材育成が不可欠となる。

岡田:

資本市場での評価は利益でなされているが、知的財産や技術 に関する情報を活用して将来予測をたてているのが現状だ。

一つの知的財産戦略がすべての企業に効果的に機能するとは 限らない点ご留意いただきたい。

知的財産活用の基になる発想は、「企業の内在的価値」であ る。知的財産とは、一般に定義されている特許や発明のほか に、事業戦略、研究開発戦略、知的財産戦略の結びつきの中 での中長期の企業価値の形成に必要な要因なども含まれてい る。

[B3]

中長期的に企業価値を高めるための論点は、開発の戦略的方 向性と資本市場の知識と組織学習である。

現在の資本市場の状況を説明。多くの企業で純資産割れが発 生しているが、これは価値破壊を意味する。企業の株式時価 総額と理論値の関係については多くが理論値を下回っている。

これについて考えられる原因としては、大きなネックがあっ て企業価値が資本市場で評価されていない、企業の潜在力が 発揮されていない、企業のIR活動が効果的に行われていない 等が考えられる。

企業評価は、現在の収益性のみならず、将来の期待を修正す る非財務的情報が関係する。最新の機関投資家アンケート調 査によると、機関投資家は、「戦略・ビジョン」、「知的財産・

技術」、「高付加価値製品開発力」といった非財務状況に注目 していることが明らかとなった。「戦略・ビジョン」があげ られたことは、競合状態の中での位置付けと企業の個性が注 目されていることを示す。このような実態調査から生まれた のが知財報告書であるが、特に、中核技術の概略と企業・事 業戦略、リスク対応情報に機関投資家は強い関心を示してい る。

中核技術を武器に市場分析と知的財産戦略を通して成功した 企業もある(事例1:新素材としてのガラスやコーティング 技術を武器に新たな分野への特許に乗り出す。事例2:繊維 から出発した企業が知的財産を独占的に固めライセンスを積 極的に収益として活用する)。

知的財産活用から期待される成果はとしては、継続的な自己 変革、イノベーション能力の高まりに着目した市場からのガ バナンスである。

大津山

知的財産権の機能として重要なのはマーケットシェアや収入 の拡大であるが、実際にどのように活用するのかは、「投資 の保全と権利帰属の明確化」から「金融資産としての活用」

までの五段階に分けることができる。現在、特許を事業戦略 や経営戦略につなげていこうという動きがあるが、基本ライ ンとしてはイノベーションから優れた知的財産を生み出すと いう発想を維持すべきである。

事業戦略を組む際には将来戦略が重要となる。将来戦略を策 定するにあたっては、経営により密着した形で市場の将来を 見越す必要があり、特許や技術に関する情報がここで重要と なる。その意味で特許戦略は情報戦略ともいうこともできる。

実際、米国には知的資産を一元管理するIAMシステムが構築 されているが、日本の企業の中にもIAMシステムを構築する 動きがあり、その中には意思決定の場に有効な情報を持ち込 む方法を模索する企業、明確に事業戦略と知的財産戦略をリ ンクさせている企業なども表れつつある。ライセンス収入の 向上を目的に情報の収集と分析を行う企業も出現している。

さらに、さまざまなツールを活用して特許マップを作成し、

これをアライアンスの提携に活用しようとする企業の数も増 えている。

経営トップにより高度な判断基準を与えられるだけのデータ や人材の育成に力を入れる企業の数も増えている。重要なの は、さまざまな意思決定プロセスにおいてお互いの情報をフ ルに活用することである。

質疑応答

質問(菊池)

不動産と知的財産は特質としてどのような点が異なるとお考 えか。

回答(石井)

資産の特定性、収益に関するボラティリティの大きさにおい て異なる。資産の特定性については、知的財産権は不動産と は異なり資産である権利自体にフラクチュエート性が存在す る点で大きく違なる。知的財産関連事業に比べれば不動産収 益のボラティリティは小さいという点でも異なる。

質問(菊池)

知的財産の捉え方について、たとえば、パッケージするとき の戦略の観点からその特殊性をお教えいただきたい。

回答(大津山)

少なくとも企業が知的財産権を自己実施する際には、信用力 の範囲内で行うこととされている。知的財産の場合は組み合 わせ戦略によっていかようにもなる。重要となるのが人材や 外部とのネットーワークの問題である。戦略論を進めると同 時に企業内外から優秀な人材を確保・育成する必要がある。

質問(菊池)

潜在的収益性における「潜在性」をどのように評価すること ができるのか。

回答(石井)

評価という観点からみるならば、先が読めないために証券化 を断念した事例もあるが、キャッシュフローの読みそのもの が評価となっている。これは、キャッシュフローを誰が読ん で誰が納得するかという問題と関連する。評価手法はさまざ まにあるが、重要なのはそういった手法をどのように活用し、

活用の結果を当事者がコンセンサスをもって納得するかとい う点である。先の読めないキャッシュフローにおいては、資 金を調達する人物と投資をする人物(リスクテイカー)との 間で何らかのコンセンサスが形成されて初めて評価が確立さ れたことになる。

回答(大津山)

実際にキャッシュフローを生んでいる特許の方が少ないと思 う。知的資産は未来資産に対する投資。キャッシュフローが なくとも将来の潜在性があることを、企業の戦略・ビジョン

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