久保
本セッションでは、知的財産および地域産業振興に貢献する 公的機関の役割について議論する。
地方自治体の活性化に焦点が当てられる中、現在二つの潮流 が見られる。1)国から地方への税源委譲、国の補助金の整 理・合理化、地方交付税制度の見直しを含む三位一体改革に よる地方分権の流れの進行、および2) 知的財産基本法による 地方自治体における知的財産政策強化である。三つの公的機 関よりそれぞれの具体的な施策について伺いたい。
橋本
東京都は2003年を東京都知的財産元年と位置づけ、中小企業 の知的財産支援を開始した。さらに東京都知的財産活用本部 を設け、基本戦略および支援施策を策定している。2003年8 月には中小企業の知的財産活用のための東京戦略が策定され た。同時に東京都知的財産総合センターが開設され、施策実 施の拠点として機能している。当センターは中小企業に支援 を提供する際、各企業の視点を考慮して行う。また、当セン ターは、城東支援室、城南支援室、多摩支援室の3つの支援 室によって構成されている。
サービスの大きな特徴としては、活用推進員が一般相談を行 う点である。活用推進員は全員民間出身者であり、知的財産 権には精通している。同時に、特許、意匠、商標相談は弁理 士が、契約、訴訟相談は弁護士が、技術相談は技術士が行う。
活用推進員は毎日サービスを提供、技術士は各専門分野によ って相談曜日が異なる。支援室は毎日1名の活用推進員を置 いている。
都の相談のメリットとしては、お金がかからない、相談内容 の秘密が厳守される、各分野の専門家から総合的かつ専門的 アドバイスをもらえることなどがある。予約すると、待ち時 間なく相談をうけることができ、相談時間は午前9時から午 後5時までである。センターの休日は、土日祝日および年末 年始。
相談件数を知的財産区分に分けると、特許、実用新案が約 70%を占め、意匠権の10%、商標権の8.9%がそれに続く。相 談内容別相談件数については、権利取得に関する相談が最も 多い。相談件数は毎月200件を超している。
その他の事業としては、フォーラム、セミナーの開催、マニ ュアル作成等の特許情報提供がある。中小企業は人材・技術・
資金の不足といったさまざまな問題を抱えているが、当セン ターではこのような問題に対し専門家がアドバイスを行なっ ている。
当センターは、中小企業の支援機関として東京都が2002年に 設立した。専門性の高い出願についても、専門家を紹介でき るようにしており、模倣品の調査機関を日本貿易振興機構
(JETRO)と協力して紹介するなどの活動も行っている。
藤田
宇部市は少子高齢化を迎えているが、地域の特色を活かした 労働力人口確保を目指している。
宇部市の大学・研究機関の集積は県内随一であり、医工連携 も進みつつある。また、文部科学省の助成で知的クラスター 創成事業、地域貢献特別支援事業、大学知財本部整備事業を 行っている。環境産業育成も今後の大きな柱としている。
産学官連携戦略の一環として、2000年に宇部小野田産学官連 携協議会を設立し、2002年度から2004年度までに共同研究の 実用化件数200件、大学発ベンチャー40件という大きな数値 目標を設定した。この数値を達成するために、連携促進戦略、
実用化促進戦略、PR戦略を行っている。
連携促進戦略については、海外からの技術のライセンシング よりも特許形成を推進するべく、うべ医療福祉産業研究会が 設立された。MBプロモーションも商工会議所によって開催 された。その他インターンシッププログラム、リエゾンチー ムプロジェクト(8機関から13名の研究者)が行われた。ま た、連携促進戦略の一部として、13名の特許流通アドバイザ ー、23名の産学連携コーディネーターを含むコーディネータ ーを擁している。C-Ubeサロンは企業、大学等研究者および 行政等との情報交換や出会いの場として月に1回開催されて いる。
実用化促進戦略として、ハード面ではインキュベーション施 設を設立し、宇部市内外からテナントを募集している。ソフ ト面では、新技術、新商品研究開発補助金の提供がある。こ の情報は拡大しつつあり、昨年は9件の補助金提供を行った。
[A6]
今後は外部の弁理士との接点を増やし、専属の弁理士の教育 を行いたい。
PR戦略では、産学官交流フォーラム、各種シンポジウムの開 催、全国規模展示会出展などでPRし、成果を発表している。
さまざまな取組みの結果として、産学官連携共同研究実用化 件数の目標合計200件のうち、102件をすでに到達した。今後 はキャピタル作り、知的財産の創造、活用支援等の分野で産 学官連携を推進していくことが課題であると考える。
草野
熊本の製造品出荷額総額は2兆3,724億円であり、そのうちの 20%は輸送用機器、16%が半導体・電子部品、11%が食料品 が占めている。
熊本にある国立・県立の研究機関には、熊本電波高等工業専 門学校、熊本県農業研究センター、くまもとテクノ産業財団、
テクノリサーチパーク、熊本工業技術センター等がある。く まもとテクノ産業財団は、地域産業の振興支援の役割を担う。
つまり、1)支援機能の集約による機能性の向上、2)構想 段階から事業化までの一貫した支援、3)産学連携と技術移 転の支援などの活動を行っている。これらの活動は熊本技術 移転機関(TLO)、地域研究開発促進拠点支援事業(RSP)、
産学官の研究会を通して行われる。
くまもとTLOの内部には技術移転審査会が設けられており、
大学から開示を受けた研究結果を評価し市場可能性につき決 定を下す。優良な技術は国内外の企業へのライセンシングが 行われ、商業化に成功すればTLOと研究者にロイヤリティが 支払われる。熊本県の中小企業やベンチャー企業も熊本化学 TLOクラブの会員に所属することによってこのシステムを利 用することが可能である。熊本TLOは会員となった企業や研 究者の特許出願支援も行う。
地域研究開発促進拠点支援事業(RSP)事業には、独立行政 法人科学技術振興機構に所属する4名の科学技術コーディネ ーターの役割が欠かせない。彼らは研究結果、技術シーズを 調査し、その実行可能性を評価する。RSP事業とTLOは技術 移転プロセスの向上のため、有機的に連携している。
産学官の研究会については、熊本知能システム技術研究会
(RIST)は月例フォーラム、技術検討会、共同研究会などを 通じて年に100回以上の会合を開催。バイオテクノロジー研 究推進会には大学、企業から約300名の参加者があり、バイ オテクノロジー研究助成事業、バイオ甲子園、市民バイオテ クノロジー公開講座を行っている。このような事業を通じて、
大学と企業との交流の場を提供している。
バイオテクノロジー研究推進会とRISTは新産業創出のための 構想を作り上げた。その後、RSP事業によるシーズ探索、各 種研究プロジェクトによる産学連携研究開発が行われた上で
産学連携研究開発の段階に至る。特許は熊本TLOによって出 願され、県の補助金と起業家支援センターによる投資によっ て事業化される。
技術移転の例としては、衝撃波による粉体殺菌装置の開発、
紫サツマイモからアントシアニンを含む発酵酒開発があげら れる。
今後は共同研究等のコーディネーションを増やし、技術移転 の増進に努めたい。
質疑応答
質問(会場:参加者)
地方公共団体の知的財産に関する活動について、各自治体は 特許申請にどのような考えを持っているか。
回答(久保)
大阪府は特許申請に積極的である。特許申請の最大の問題は 申請費用および維持費用の負担であり、特に海外出願の場合 は資金負担が大きい。よって、出願する前に技術の事業性を 見極めている。
回答(橋本)
東京都は特許のライセンスについてその方針を研究しており、
産業界のニーズを把握するため、産業界との緊密な関係を維 持している。東京都は地方自治体の研究機関から多くの要求 を受けている。
回答(藤田)
この問題は宇部市にとって大きな関心事ではない。
回答(草野)
2002年からPR活動に積極的に取り組み始めた。開発の実例を 載せたパンフットを作成し、PR活動に努めている。
質問(会場:参加者)
分野を超えた連携はどのようなかたちで行うのか。
回答(草野)
懇親会、研修会で企業、大学関係者を集めて情報交換を行っ ている。そこでの技術分野は限定されていない。
回答(藤田)
産学連携は、実際に会って対話することが必要であるため、
地元で顔を合わせることができる街づくりを心掛けている。
回答(橋本)
東京都は特定の地域に限定して支援を行うことはない。
回答(久保)
奈良先端科学技術大学院大学においては、当大学が所属する