第 5 章 実証分析:ブロードバンドに対するアンバンドル規制に対する
5.2 作業仮説 1-2①-1~1-2①-4 の検証:ブロードバンド・アンバンドル規制に対する
5.2.4 FTTH アンバンドル規制撤廃論議及び NGN アンバンドル規制導入(2005 年 10 月~
年12月)に関する分析結果(NTTドコモとNTTデータ統制後)
5.2.4.1. イベント期間ダミー変数による分析
FTTHアンバンドル規制撤廃論議及びNGNアンバンドル規制導入についても、同様に分析を 行う。まず、FTTHアンバンドル規制撤廃論議関連イベントに関するイベント期間ダミー変数に よる回帰分析の結果は、巻末の付表2-22の通りである。NTTドコモとNTTデータの株価の対前 日収益率を統制しない場合と同様、イベント期間ダミー変数の係数は有意とはならない。
同様に、NGNアンバンドル規制導入についても、イベント期間ダミー変数による回帰分析を行 う。巻末の付表2-23の通り、NTTドコモとNTTデータの株価の対前日収益率を統制した場合も、
イベント期間ダミー変数の係数は有意とはならない。
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5.2.4.2. イベント日全体ダミー変数による分析
次に、イベント日全体ダミー変数による回帰分析を行う。FTTHアンバンドル規制撤廃論議関 連イベントに関する分析結果は巻末の付表2-24の通りである。NTTドコモとNTTデータの株価 の対前日収益率を統制しない場合は、前日(列(2))及び前日から当日の2日間(列(4))における イベント日全体ダミー変数の係数が、10%水準で有意にプラスであったが、統制した場合は有意 とはならない。ただし、符号は同様にプラスである。もともと有意水準がそれほど高くなかった ことから、大きな変化はないとも考えられるが、具体的には、個別イベント日ダミー変数による 回帰分析を行い、個別イベントの変化の有無を精査する必要がある。
同様に、NGNアンバンドル規制導入についてイベント日全体ダミー変数による回帰分析を行っ た結果は、巻末の付表2-25の通りである。NTTドコモとNTTデータの株価の対前日収益率を統 制しない場合と同様、イベント日全体ダミー変数の係数は有意とはならない。
5.2.4.3. 個別イベント日ダミー変数による分析
FTTHアンバンドル規制撤論議
最後に、個別イベント日ダミー変数による回帰分析を行う。FTTHアンバンドル規制撤廃論議 関連イベントに関する分析結果は、巻末付表2-26の通りである。NTTドコモとNTTデータの株 価の対前日収益率を統制しない場合、fff5の当日(列(1))及び前日(列(2))、fff6の当日(列(1))
と前日から当日の 2 日間(列(4))において、イベント日ダミー変数の係数が有意となっており、
うち、fff5 の当日(列(1))のみ符号がマイナス、それ以外はプラスであった。統制した場合は、
fff5の前日(列(2)))のみが同じ符号(プラス)で有意となっている。有意ではなくなったfff5の 当日(列(1))、fff6 の当日(列(1))及び前日から当日の2日間(列(4))については、符号には変 化はない。
なお、前述の通り、fff5(2007年2月28日)の前日に当たる2月27日に、NTTデータがオ ランダ系システム会社を買収する旨新聞報道がなされているが(日本経済新聞朝刊、日経産業新 聞)、NTT データの株価の対前日収益率を統制した場合も前日の符号が有意にマイナスとなって いることから、本買収案件以外にもイベント日前日の株価に影響を与える要因があったと考える ことができる。
NGNに対するアンバンドル規制の導入
同様に、NGNアンバンドル規制導入に関して、個別イベント日ダミー変数による回帰分析を行 う(巻末付表 2-27)。単日及び連続日のいずれについても有意となったのは、N12、N31、N41、
N42、N46及びN47の6件であり、符号はN12とN46がプラス、N31、N41、N42、N47がマ イナスである。N41、N42、N46及び N47については、前節のNTTドコモとNTTデータを統 制しない場合においても、単日及び連続日のいずれについても有意となっていたものである。
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N12は、前節では当日(列(1))のみ有意にプラスであったが、NTTドコモとNTTデータを統 制した場合は、当日(列(1))に加えすべての連続日(列(4)~(6))において有意にプラスとなって いる。総務省は、2005年10月28日から「IP化の進展に対応した競争ルールの在り方に関する 懇談会」を開催し、本格的なIP化時代を展望した接続・料金政策の在り方等について検討を行っ ていた。同懇談会では、関係各方面からの意見聴取を踏まえ、第2回会合(2005年12月)にお いて検討アジェンダを決定した。その後、具体的な議論を行い、主要論点を整理した結果、論点 のうち①垂直統合型ビジネスモデルに対応した競争ルールの在り方、②公衆交換電話網(Public Switched Telephone Network: PSTN)に係る接続料の今後における具体的算定の在り方、③ネ ットワークの中立性の確保の在り方、④端末レイヤーにおける競争促進の在り方、⑤紛争処理機 能強化の在り方、⑥ユニバーサル・サービス制度の在り方の6項目について、追加的に意見を募 集することになった56。N12(2006年5月15 日)は、その追加的意見募集の結果が公表された 日である。関係者から提出された追加意見に対する同懇談会の考え方は明らかにされず、政策の 方向性はこの時点では不明であったと考えられるが、個別イベント日ダミー変数の係数は、有意 にプラスとなっている。N12の3日前に当たる5月12日に、NTTが2006年3月期の連結決算 を発表し、営業利益が 2%減であったものの、FTTH などの新サービス事業が好調であることが 翌13日に報じられている(2006年5月13日 日本経済新聞朝刊)。ただし、同報道の翌日であ り、かつN12の前日(列(2))の個別イベント日ダミー変数の係数は、有意ではないがマイナスと なっているため、この連結決算発表と関連報道がN12当日及び連続日における株価の有意なプラ スの変動に影響を与えているとは考えにくい。
N31(2003年3月6日)は、総務省情報通信審議会が、「次世代ネットワークの接続ルールの
在り方について」に関する答申案に対する意見募集の結果を公表した日である。この日は、総務 省や同審議会の方針が明らかにされたわけではないため、NGNアンバンドル規制の方向性が決定 したということではない。したがって、規制の内容がNTTにとって有利か不利か、という点では なく、答申案に対して意見が分かれて、規制の先行きが不透明になったことが期待収益の悪化に 結びついた可能性が考えられる。回帰分析の結果は、NTTドコモ及びNTTデータ統制前には当 日から翌日の2日間(列(5))においてのみダミー変数の係数が有意となっており、有意水準は10%、
符号はマイナスであった。統制後には、当日から翌日の2日間(列(5))における係数が同じ符号 のまま、有意水準が 5%に上昇しているほか、当日(列(1))の係数が有意にマイナスとなってい る。なお、当日(列(1))は、NTT ドコモ及び NTT データ統制前も符号はマイナスであったが、
有意ではなかった。即ち、NTTドコモ及びNTTデータの統制前と統制後とで符号はマイナスで 変わらないが、統制前の方が有意水準が低い。これは、NTTドコモ及びNTTデータの期待収益 の増大によって、両社以外のNTTグループ企業の期待収益の悪化が一部相殺されたことを示唆し ている。
また、N42については、前節の分析では前日(列(2))及び前日から当日の2日間(列(4))が有 意にマイナス、翌日(列(3))が有意にプラスであったが(有意水準はすべて 5%)、NTT ドコモ
56 追加意見の公表の経緯及び詳細については、
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/s-news/2006/060515_2.html参照
(2015年1月18日アクセス)。
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とNTTデータを統制した場合は、前日(列(2))及び前日から当日の2日間(列(4))の有意水準
が 1%に上昇したことに加えて、前日から翌日までの3 日間(列(6))が1%水準で有意にマイナ
スとなり、翌日(列(3))については符号はプラスのまま変わらないものの有意ではなくなってい る。
これらのN12、N31、及びN42の3件に関しては、NTTドコモやNTTデータによってNTT
地域会社の期待収益の変化が NTT 持株会社の株価に表出することが妨げられていた可能性が考 えられる。しかし、これら以外のイベントについては、NTTドコモとNTTデータを統制した場 合としない場合とで結果は大きく変わらない。したがって、全般として、両社によってNTT地域 会社の期待収益の変化が持株会社の株価に表出することが妨げられた、とは言い難い。
また、NTT ドコモ及び NTT データを統制したことで新たに株価の反応が有意となったのは N12とN31だけであり、いずれについても規制の強化・緩和の方向性が明らかになったイベント ではなかった。