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分析対象とする事例及び作業仮説

第 4 章 分析枠組み、仮説、方法、及びデータ

4.2 仮説

4.2.2 分析対象とする事例及び作業仮説

理論仮説1-1:

ブロードバンド・アンバンドル規制の導入に対して、NTT持株会社の株価(地域会社以外の連 結子会社の影響除去前)は有意に負の反応を示した。

3.2.3で見た通り、NTTの地域事業会社であるNTT東日本及びNTT西日本(以下、NTT東西 地域会社)は、持株会社の 100%子会社であり株式は公開されていない。したがって、まず、ブ ロードバンド・アンバンドル規制の導入に対する、NTT持株会社の株価の反応を検証する(第5

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章5.1)。ブロードバンド・アンバンドル規制として、ADSLに対するもの、FTTHに対するもの、

及びNGNに対するものの3種類を分析の対象とする。なお、FTTHアンバンドル規制について は、撤廃について本格的な議論が行われたという経緯があるため、撤廃論議についても分析の対 象とする。

分析対象事例とそれぞれの作業仮説を整理すると、図表4-3の通りとなる。

図表4-3 理論仮説1-1の検証における分析対象事例及び作業仮説

番号 分析対象事例 作業仮説

1-1-1 ADSLアンバンドル規制の導入 ADSL アンバンドル規制の導入において、NTT

持株会社の株価は規制内容を強化する動きには 有意に負に、規制内容を緩和する動きには有意に 正に反応した。

1-1-2 FTTHアンバンドル規制の導入 FTTH アンバンドル規制の導入において、NTT

持株会社の株価(影響除去前)は規制内容を強化 する動きには有意に負に、規制内容を緩和する動 きには有意に正に反応した。

1-1-3 FTTH アンバンドル規制撤廃に関

する政治論議

FTTH アンバンドル規制撤廃に関する政治論議 において、NTT持株会社の株価(影響除去前)は 撤廃を支持する動きに対しては有意に正に、撤廃 を否定する動きに対しては有意に負に反応した。

1-1-4 FTTHアンバンドル規制撤廃論議 FTTHアンバンドル規制撤廃論議において、NTT

持株会社の株価(影響除去前)は撤廃を支持する 動きに対しては有意に正に、撤廃を否定する動き に対しては有意に負に反応した。

1-1-5 NGNアンバンドル規制導入 NGNアンバンドル規制の導入において、NTT持

株会社の株価(影響除去前)は規制内容を強化す る動きには有意に負に反応し、規制内容を緩和す る動きには有意に正に反応した。

筆者作成

理論仮説1-2:

ブロードバンド・アンバンドル規制の導入に対して、NTT持株会社の株価(地域会社以外の連 結子会社の影響除去後)は有意に負の反応を示した。

次に、持株会社方式がNTT持株会社の株価変動というシグナル表出に与えた影響を考察するた めに、地域会社以外の連結子会社の期待収益の変化を除去することを試みる。すべての子会社の 影響を除去することは困難だが、3.2.4 で確認した通り、NTT ドコモ、NTT データ、及びNTT

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コミュニケーションズの3社の営業収益の合計は、2014年3月期において主要6社の営業収益の 6 割以上を占めるため、これら3 社の影響を統制することによって、東西地域会社以外の子会社 の影響の大部分を除去することができると考えることができる。NTTドコモとNTTデータにつ いては、それぞれ単独で上場しているため、両社の株価の変動によって期待収益の変化を測定す ることが可能である一方、NTTコミュニケーションズは持株会社が100%所有する子会社である ことから、前者2社とNTTコミュニケーションズとを異なる方法で統制する。

NTTドコモ及びNTTデータについては、仮説1-1の検証において分析対象とした5つの事例 のうち、NTTドコモの上場時期の関係で対象とすることが不可能である事例1-1-1を除く4つの 事例に関して、両社の株価データを用いて、両社の期待収益の変化を持株会社の株価の変動から 除去する。

NTTコミュニケーションズについては、「OCN」というサービス名で ISP事業を行っており、

アンバンドルされたNTT東西地域会社のネットワーク要素を利用して、OCNブランドのインタ ーネット接続サービスを提供することが可能である。即ち、アンバンドル規制によって事業機会 が拡大する可能性があることから期待収益の拡大が想定され、地域会社の期待収益減少を相殺す ることも考えられる。したがって、地域会社関連イベントが同時期に起きていない OCN 関連イ ベントに対する持株会社の株価の変動を分析することによって、OCNによる期待収益の変化が持 株会社の株価にどの程度盛り込まれているかを考察する。

分析対象事例とそれぞれの作業仮説を整理すると、図表4-4の通りとなる。

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図表4-4 理論仮説1-2の検証における分析対象事例及び作業仮説

番号 分析対象事例 作業仮説

1-2①-1 FTTH アンバンドル規制の導 入

FTTHアンバンドル規制の導入において、NTT持 株会社の株価(NTTドコモ、NTTデータの影響除 去後)は規制内容を強化する動きには有意に負に、

規制内容を緩和する動きには有意に正に反応した。

1-2①-2 FTTH アンバンドル規制撤廃

に関する政治論議

FTTH アンバンドル規制撤廃に関する政治論議に おいて、NTT持株会社の株価(NTTドコモ、NTT データの影響除去後)は撤廃を支持する動きに対し ては有意に正に、撤廃を否定する動きに対しては有 意に負に反応した。

1-2①-3 FTTH アンバンドル規制撤廃

論議

FTTH アンバンドル規制撤廃論議において、NTT 持株会社の株価(NTTドコモ、NTTデータの影響 除去後)は撤廃を支持する動きに対しては有意に正 に、撤廃を否定する動きに対しては有意に負に反応 した。

1-2①-4 NGNアンバンドル規制導入 NGNアンバンドル規制の導入において、NTT持株

会社の株価(NTTドコモ、NTTデータの影響除去 後)は規制内容を強化する動きには有意に負に反応 し、規制内容を緩和する動きには有意に正に反応し た。

1-2② OCN事業関連ニュース NTT コミュニケーションズの事業に有利な OCN

事業関連ニュースに対して、NTT 持株会社の株価

(影響除去前)は有意に正に反応した。

筆者作成

理論仮説1-3:

規制変更に対して、政府一部所有企業の株価は有意に反応する。

理論仮説1-3を検証するために、2つの事例を取り上げる。政府一部所有企業の非政府株主は、

政府は存亡にかかわるほど当該企業にマイナスの影響を与えるような規制は導入しないだろう、

と想定し、その結果、規制変更に対して株価が大きく変動しない、という可能性が考えられる。

そのため、政府が必ずしも完全にコントロールできない規制関連イベントに対する株価の変動を 検証し、ブロードバンド・アンバンドル規制に対する株価の反応と差があるかどうかを見るため に、日米接続料交渉を分析対象事例として取り上げる。本件は、東西地域会社の電話回線等の接 続料を引き下げるよう、米国政府が求めてきたものである。したがって、持株会社の株価の変動 を分析の対象とする。

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ただし、東西地域会社に対する期待収益の変化を持株会社の株価の変動によって検証するやり 方は、仮説 1-1 と同様、他の連結子会社の期待収益の影響という問題が残る。そのため、2 つめ の事例として、他の主要な連結子会社の影響を考慮する必要がない例を取り上げ、携帯電話の番 号ポータビリティ(MNP)に対するNTTドコモの株価の変動を分析する。なお、同社は、厳密 には政府が直接一部所有している訳ではないが、NTT持株会社の所有分を通じて間接的に政府が 関与していると考えられるため、政府一部所有企業に準じると見なすこととする。

分析対象事例とそれぞれの作業仮説を整理すると、図表4-5の通りとなる。

図表4-5 理論仮説1-3の検証における分析対象事例及び作業仮説

番号 分析対象事例 作業仮説

1-3① 日米接続料交渉 日米接続料交渉において、NTT持株会社の株価(影 響除去前)は日本に有利な動きには有意に正に、不 利な動きには有意に負に反応した。

1-3② 携帯電話の番号ポータビリティ

(MNP)

MNPの導入において、NTTドコモの株価は同社に 有利な動きには有意に正に、不利な動きには有意に 負に反応した。

筆者作成

理論仮説1-4:

規制変更に対して、私有企業の株価は有意に反応する。

理論仮説1-4についても、2つの事例について分析を行う。可能な限りNTTの場合と条件をそ ろえて比較するために、KDDIやソフトバンクなどのNTTの競争事業者の株価が、ブロードバン ド・アンバンドル規制及びMNPに対してどのように反応したかを検証する。

分析対象事例とそれぞれの作業仮説は、図表4-6の通りである。

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図表4-6 理論仮説1-4の検証における分析対象事例及び作業仮説

番号 分析対象事例 作業仮説

1-4 ① -1

ADSLアンバンドル規制の導入 ADSLアンバンドル規制の導入において、NTTの 競争事業者の株価は規制内容を強化する動きには 有意に正に、規制内容を緩和する動きには有意に負 に反応した。

1-4 ① -2

FTTHアンバンドル規制の導入 FTTHアンバンドル規制の導入において、NTTの 競争事業者の株価は規制内容を強化する動きには 有意に負に、規制内容を緩和する動きには有意に正 に反応した。

1-4② 携帯電話の番号ポータビリティ

(MNP)

MNPの導入において、NTTの競争事業者の株価は 自社に有利な動きには有意に正に、不利な動きには 有意に負に反応した。

筆者作成

理論仮説2-1:

アンバンドル規制の下でのブロードバンド網投資計画に対して、NTT持株会社(地域会社以外 の連結子会社の影響除去前)の株価は有意に負に反応した。

理論仮説2-1を検証するために、NTT持株会社・東西地域会社によるブロードバンド網投資計 画の発表に対して、持株会社の株価がどのように反応したかを分析する。また、ブロードバンド・

アンバンドル規制施行前と施行後とを比較することによって、アンバンドル規制の有無が投資家 の期待収益判断に影響を与えているかどうかを検証する。

分析対象事例及び作業仮説は図表4-7の通りである。