第 5 章 実証分析:ブロードバンドに対するアンバンドル規制に対する
5.1 作業仮説 1-1-1~1-1-5 の検証:ブロードバンド・アンバンドル規制に対する
5.1.4 FTTH アンバンドル規制撤廃論議及び NGN に対するアンバンドル規制導入
月~2008年12月)に関する分析結果
5.1.4.1. イベント期間ダミー変数による分析
まず、FTTH アンバンドル規制撤廃論議が起こってから決着するまで(撤廃しないことが決定 するまで)について、イベント期間ダミー変数により回帰分析を行う。付表2-10にある通り、初 回イベントから最終日まで、初回前日から最終日の翌日までのいずれをイベント期間とした場合 も、イベント期間ダミーの係数の絶対値は極めて小さく、統計上有意ともなっていない。
次に、NGNに対するアンバンドル規制導入について議論が始まり、規制の内容が確定するまで の期間(2005年10月~2008年12月)について、イベント期間ダミー変数によって同様に回帰 分析を行う(巻末付表 2-11)。こちらについても、イベント期間ダミー変数の係数はマイナスな がらも絶対値が非常に小さく、統計上有意ともなっていない。
5.1.4.2. イベント日全体ダミー変数による分析
FTTHアンバンドル規制撤廃論議について、イベント日全体についてダミー変数を1とした場 合の回帰分析結果は、巻末の付表2-12の通りである。イベント日前日(列(2))、及び前日から当 日の2日間(列(4))について、10%水準ではあるが有意にプラスとなっている。
NGNアンバンドル規制関連イベントについて同様に分析を行った結果は、巻末の付表2-13の 通りである。イベント日をどのパターンで取った場合も、ダミー変数の係数は有意にはならない。
5.1.4.3. 個別イベント日ダミー変数による分析
FTTH規制撤廃論議
次に、イベント日ごとにダミー変数を設定して回帰分析を行う。FTTH規制撤廃論議に関連す るイベントの分析結果は、巻末の付表2-14の通りである。
FTTH撤廃論議関連イベントで個別イベント日ダミーが有意となったのは、fff5とfff6である。
fff5(2007年2月28日)は、総務省が、「コロケーションルールの見直し等に係る接続ルール
の整備について」答申案に対する意見募集の結果を公表した日である。前日(列(2))に有意にプ ラスに反応し、当日(列(1))は有意にマイナスとなっており、そのため、2日間また3日間単位 で見た場合は、係数の符号が打ち消しあって有意とはなっていない。前々日に当たる2月26日に、
NTTデータがオランダ系システム会社の買収を発表し、前日に当たる27日に新聞報道がなされ ている(日本経済新聞朝刊、日経産業新聞)。この買収案件が、株価の変動に影響を与えた可能性 を否定することはできない。
fff6(2007年3月30日)は、総務省情報通信審議会が、「コロケーションルールの見直し等に
係る接続ルールの整備について」答申した日である。NTT 東西地域会社が求めていた FTTH の
61
開放義務撤廃が認められなかった一方で、OSU(Optical Service Unit)をNTTと他社が共有し て分岐端末回線単位の接続料を設定することについては、NTT東西のNGNに係る接続ルールの 検討において改めて検討することが適当であるとされた。また、NGN接続ルールについては、可 及的速やかに検討を開始することが適当であるとされた。すなわち、FTTHを開放義務対象から 外すというNTTの主張が認められなかった一方で、その他の規制については具体的な議論は今後 行う、とされ、規制が不安定な状態に置かれたと解釈することが可能である。イベントの内容を 考えると、直感的には、株価はマイナスの反応を示すものと想定されるが、実際には、イベント 当日(列(1))のダミー変数の係数が有意にプラスとなっている。3月28日から4月1日(イベ ント前々日から翌々日)の間に、NTT持株会社またはグループの期待収益を大きく増加させるよ うな報道やイベントは見当たらない48ため、イベント当日における超過収益率の有意なプラスの 反応は、FTTH 開放義務付けという規制の大きな枠組みが確定したことに対するもの、と考える ことが可能である。
NGNに対するアンバンドル規制の導入
次に、NGNアンバンドル規制に関するイベントについて、同様に個別イベント日ダミー変数に よって回帰分析を行う。ダミー変数の係数が有意となったイベントは、期間の後半に集中してい る(巻末付表2-15)。N46とN47は、当日(列(1))、前日(列(2))のいずれかの単日の場合、及 び2日間(列(4)、(5))または3日間(列(6))の場合のいずれにおいても1%水準で有意となって おり、符号はN46がプラス、N47がマイナスである。
N46(2008年12月19日)は、総務省「次世代ネットワークの接続料算定等に関する研究会」
第9回会合が開催された日である。同研究会は、NTT東西地域会社の次世代ネットワーク(NGN)
に係る費用配賦の在り方や需要算定の在り方など、接続料算定等に係る問題点及びその解決策に ついて検討することを目的として設置された49。第9回会合では、事務局が提示した最終報告書案 について討議が行われた50。個別イベント日ダミー変数の係数は、当日(列(1))、翌日(列(3))、
及び連続日のすべて(列(4)~(6))において有意にプラスとなっている。なお、12月17日から21 日(N46の2日前から2日後まで)の期間に、NTT持株会社またはグループの期待収益に大きな 影響を与えると予想されるような報道発表や報道は見当たらない51。
48 この期間になされた報道発表・報道として、NTTコミュニケーションズ、ぷらら、NTT-ME によるIP電話無料通話先の拡大に関する報道発表(2007年3月27日)などがある。
49 「次世代ネットワークの接続料算定等に関する研究会」の開催の背景については、
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/s-news/2008/080519_2.html参照
(2015年1月18日アクセス)。
50
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa /cost_driver/pdf/081219_3.pdf参照(2015年1月18日アクセス)。
51 この期間の報道発表として、NTTコミュニケーションズによる東海道新韓線における無線 LANサービス提供開始予定に関する報道発表及び次世代専用線提供開始に関する報道発表(2008 年12月18日)、同社の家族向けSNS開始に関する新聞報道(2008年12月19日 日経産業新 聞)などがある。
62
N47(2008年12月25日)は、総務省「次世代ネットワークの接続料算定等に関する研究会」
最終報告書が公表された日である。ここでは、N46とは逆に、個別イベント日ダミー変数の係数 はすべてマイナスとなっており、そのうち、前日(列(2))、前日から当日の2日間(列(4))及び 前日から翌日の3日間(列(6))において有意となっている。N47の前日に当たる12月24日、光 回線と地上デジタル放送の受信環境整備を求めるNTT東西地域会社の広告について、NTTが放 送事業を行っているかのような誤解を与える可能性があるとして、総務省が行政指導に踏み切る 方針を固めたと新聞で報道され(2008年12月24日 日本経済新聞朝刊)、同日総務省からその 旨報道発表されている(2008年12月25日 日経産業新聞)。株価の有意なマイナス反応は、こ の行政指導に対するものである可能性があると考えられる。
N46及びN47よりも水準が低いが、N39、N41、N42でも、単日および連続日の両方において 有意となっている。
N39(2008年9月9日)は、総務省「次世代ネットワークの接続料算定等に関する研究会」の
第4回会合が開催された日である。同会合では、NTT東西地域会社より、NGNコストシミュレ ーションの考え方、及び質問事項・作業依頼事項への回答が提示されたが、資料は非公開となっ ている52。個別イベント日ダミー変数の係数は、前日(列(2))及び前日から当日の2日間(列(4))
で有意にプラスとなっているが、会合の模様が外部に知られることになったと想定される当日(列
(1))及び翌日(列(3))の係数は、有意ではないがマイナスとなっている。N39の2日前にあたる
9月7日から当日の9日において、NTT持株会社またはグループの期待収益に影響を与えると想 定されるような報道はなされていない53。また、N39の翌日に当たる9月10日には、NTTドコ モが料金の誤請求があった旨報道発表を行い、翌日に報じられている2006年9月11日 日経産 業新聞)。以上を考慮すると、第4回会合関連情報に対してイベント前日に株価が有意にプラスに 反応したが、イベント当日及び翌日には、NTTドコモの料金誤請求問題で反応がマイナスに転じ た、という可能性が考えられる。
N41(2008年10月7日)は、総務省「次世代ネットワークの接続料算定等に関する研究会」
の第6回会合が開催された日である。同会合では、NTT東西地域会社からの説明の後、オブザー バーとして参加した競争事業者や研究会構成員を交えて討議が行われた。NTT側が、接続料を設 定しないビル・アンド・キープ方式の可能性を示唆したことに対して、競争事業者から懸念が表 明されている54。個別イベント日ダミー変数の係数は、翌日(列(3))に有意にプラスとなってい るが、前日から当日の2日間(列(4))は有意にマイナスとなっている。前日に当たる10月6日、
テキサス大学とハイドロケベック社(カナダ)から起こされていたリチウムイオン電池訴訟につ いて、NTTが33億円の和解金を支払い、関連特許のライセンス権を原告側に譲渡することで和
52
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa /cost_driver/080909_2.html
53 この期間の報道発表として、NTT東西地域会社によるひかり電話からの0570発信対応化に関 するものがある(2006年9月8日報道発表、翌9日に日経産業新聞報道)。
54 討議の内容は議事要旨に詳しい
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/joho_tsusin/policyreports/chousa /cost_driver/pdf/081007_3.pdf(2015年1月18日アクセス)。