第 3 章 日本におけるブロードバンドの発展及び NTT の所有・組織形態
3.1 日本におけるブロードバンドの発展とアンバンドル規制
3.1.6 アンバンドル規制の下でのブロードバンドの普及
以上に述べた通り、日本では、NTT東西地域会社のブロードバンドの商用サービス開始ととも に、当該サービスがアンバンドルの対象とされてきた。また、アンバンドル規制だけでなく、電 柱・管路の開放による設備ベースの競争の促進や、地方自治体等が所有する光ファイバー網の割 安な料金での開放など、NTT東西地域会社のブロードバンド設備に頼らない形態の整備手段も講 じられた。
ADSLがアンバンドルの対象となったことで、多くの事業者が参入し、ADSLが爆発的に普及 した。しかし、その後FTTHが急速に契約数を伸ばし、2008年度にDSLの契約数を逆転した(図 表3-1)。
27 総務省情報通信審議会「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方について 答申」(2008 年3月27日)。
28 NTT東日本報道発表(2007年11月22日)参照
(http://www.ntt-east.co.jp/release/0611/061122a.html)。
29 総務省情報通信審議会「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方について 答申」(2008 年3月27日)。
30 同上。
25
図表3-1 固定系ブロードバンド契約数の推移
出典:総務省「2005年度(平成7年度)電気通信事業分野における競争状況の評価」、「電気通信 事業分野における競争状況の評価 2010」、「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半 期データの公表(平成26年度第2四半期(9月末))」
その FTTH も、NTT の投資の継続やケイ・オプティコムを初めとする設備ベースの競争事業 者の参入により、ネットワークの整備は進んだものの、普及率は伸び悩みに直面した。NTT東西 地域会社は、2004 年11月に、2010 年までに国内固定網加入の約半分に当たる 3,000 万世帯を FTTHに切り替える方針を固めるなど、契約数の目標を設定してFTTH の契約促進を図ったが、
思うように普及が加速せず、2007年11月には、2010年の契約数目標を2,000万に引き下げた。
しかし、携帯電話によるデータ通信の普及などに伴い、この修正目標も達成されることはなかっ た。FTTHを含むブロードバンド普及率の伸び悩みは政府にも問題とされ、2009年12月に原口 総務大臣(当時)が公表した「原口ビジョン」において、2020年時点ですべての世帯でブロード バンド・サービスを利用することが目標に掲げられた31。2010 年 3 月の総務省政務三役会議で、
原口大臣がこの目標を5年前倒しして実現時期を2015年とすることを指示し、同年4月に公表 された「原口ビジョンII」では、2015年頃を目途に「『光の道』100%」(全世帯がブロードバン ド・サービスを利用)を実現することがうたわれている32。
アンバンドル規制が競争に与えた影響は、ADSLとFTTHとで対照的である。ADSLでは、ア ンバンドル規制を利用したサービス・ベースでの競争が活発化し、NTT東西地域会社はシェア首
31 総務大臣原口一博「原口ビジョン」(2009年12月22日)参照。
32 総務大臣原口一博「原口ビジョンII」(2010年4月27日)参照。
954 1,526
1,953 2,328
2,642
2,874 3,033 3,286 3,410 3,493
3,530 3,582
145 289
545 880
1,215 1,502
1,780 2,022
2,230 2,385 2,532
1,120
1,368 1,452 1,401 1,271
1,118
974 820 670
542 447 258 296 331 361 387 441 531 567
591 601 602 1.3 1.2 1.0 1.0 0.9 0.8 0
500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000
固定系ブロードバンド
(計)
FTTH DSL
CATVインターネット FWA
(万契約)
26
位とはなっていない(図表3-2)。一方FTTHは、関西地方で設備ベースの競争が活発であるもの の、全国で見るとNTTのシェアが7割を超えている(図表3-3)。
図表3-2 DSLの契約数における事業者別シェアの推移
出典:総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成26年度 第2四半期(9月末))」
図表3-3 FTTHの契約数における事業者別シェアの推移
出典:総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成26年度 第2四半期(9月末))」
0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
64.0
38.4 38.7 38.4 38.8 40.0
0.0
15.5 23.5 23.8 23.6 23.0
18.4 0.0
17.5 17.3 16.9 15.8 14.9
17.3
17.3 17.6 17.7 18.3 18.3
7.1 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
3.2 3.0 2.9 2.9 2.8 2.7
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2009.3 2010.3 2011.3 2012.3 2013.3 2014.3
その他 その他NTT
アッカ・ネットワークス NTT西日本
NTT東日本 イー・アクセス ソフトバンクBB ソフトバンク
41.9 42.3 42.1 41.9 40.9 40.2 32.2 32.1 32.4 32.3 31.6 31.1
1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.6
7.1 8.0 8.8 9.5 11.4 12.3
4.9 5.6 5.8 5.8 5.8 5.8
2.9 2.0 1.9 1.9 1.9 1.9
1.7 1.8 1.5 1.4 1.3 1.2
3.4 3.0 2.5 2.2 2.2 2.2
4.9 4.4 4.3 4.3 4.3 4.7
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2009.3 2010.3 2011.3 2012.3 2013.3 2014.3
その他
アルテリア・ネットワークス 九州通信ネットワーク その他電力系事業者 ケイ・オプティコム KDDI
その他NTT NTT西日本 NTT東日本
27
FTTHによる地域IP網には、「収容局接続」と「ISP接続」という二種類の接続形態が存在す る。「収容局接続」とは、他事業者が自らアクセス回線を調達し又はNTT東西のアクセス回線を 借りた上で、当該回線をNTT東西の収容局の収容ルータに接続して地域IP網を利用する形態を 主に想定したものであり、「ISP接続」とは、中継局の中継ルータ上の網終端装置で主にISP事業 者が接続する形態を想定したものである。いずれの接続形態も地域IP網に接続するという点では 変わりはないが、「収容局接続」には接続料が設定されているのに対して、「ISP 接続」には接続 料が設定されていないため、ISP接続する場合は、ISP事業者とNTT東西がそれぞれ利用者に対 して料金を請求する「ぶつ切り」料金となっている。ISP 接続で地域 IP 網に接続している ISP 事業者は、2007年10月末時点で160社(NTT東西計)存在する。他方、収容局接続については、
当該形態で地域IP網に接続する他事業者は存在せず、2007年1月から、NTT東西同士が互いの 地域IP網を接続しているのみの状況となっている33。
FTTH・地域IP網のアンバンドルの利用が進まない理由の一つとして、回線の貸し出し単位の
問題が指摘されてきている。光ファイバー1芯を8回線(分岐)が共有しているため、シェアド・
アクセス方式の場合、競争事業者は 1 芯(8 分岐)単位で回線を借りなければならない。したが って、住宅が密集している地域以外では、アンバンドル接続をしても競合事業者がコスト割れと なる可能性がある。分岐回線単位の接続料の導入は、情報通信審議会において 2007 年に議論さ れたが結論は持ち越しとなり34、2008年のNGNアンバンドル規制検討の際には、「現時点では必 要不可欠とはいえない」として導入が見送られた35。2010 年には、「原口ビジョン II」で目標と された「光の道」の実現に関する議論の中で分岐回線単位の接続料の導入問題が再浮上し、2011 年 1 月より情報通信審議会で検討されたが、結論は先送りされた36。情報通信審議会は 2014 年 12 月、「2020 年代に向けた情報通信政策の在り方-世界最高レベルの情報通信基盤の更なる普 及・発展に向けて-」の答申の中で、「接続料の算定方式を含む加入光ファイバーに係る接続制度 の在り方について、情報通信審議会電気通信事業政策部会接続政策委員会においてより専門的な 知見に基づく検討に着手することが適当である」として、分岐回線単位の接続料の導入について 検討の可能性を示唆している37。
33 本段落の記述は、総務省情報通信審議会「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方につ いて 答申」(2008年3月27日)に基づく。
34 総務省情報通信審議会「コロケーションルールの見直し等に係る接続ルールの整備について答 申」(2007年3月30日)参照
(http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.soumu.go.jp/s-news/2007/070330_9.html
)。
35 総務省情報通信審議会「次世代ネットワークに係る接続ルールの在り方について 答申」(2008 年3月27日)参照。
36 総務省情報通信行政・郵政行政審議会「東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社 の第一種指定電気通信設備に関する接続約款の変更の認可(平成 23 年度以降の加入光ファイバ に 係 る 接 続 料 の 改 定 ) 」 ( 2011 年 3 月 29 日 ) 参 照
(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban03_01000045.html)。
37 総務省「『2020年代に向けた情報通信政策の在り方-世界最高レベルの情報通信基盤の更なる
28