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作業仮説 1-2②の検証:NTT コミュニケーションズの

第 5 章 実証分析:ブロードバンドに対するアンバンドル規制に対する

5.3 作業仮説 1-2②の検証:NTT コミュニケーションズの

持株会社の株価の反応

5.3.1. 具体的な方法と対象イベント

本研究では、ブロードバンド・アンバンドル規制に対して株価がどのように反応したかを検証 することを目的としている。アンバンドル規制は、被規制企業(NTT東西地域会社)にとっては 期待収益の減少に結びつく可能性があるが、ISP 事業者にとっては、回線が高速大容量化し、か つ接続の形態によっては自らがサービスの内容を決定することが可能であることから、事業機会 が拡大するものと捉えることが可能である。NTTグループ内における規模の大きなISP事業は、

NTTコミュニケーションズの「OCN」と、株式会社ぷららネットワークスの「ぷらら」である。

このうち、NTT コミュニケーションズは事業規模が大きく、NTT 持株会社の株主がブロードバ ンド・アンバンドル規制によって同社の期待収益が増大すると考えた場合、NTT東西地域会社の 期待収益の減少が相殺され、その結果としてNTT持株会社の株価がマイナスに反応しなかった可 能性が考えられる。そのため、NTT コミュニケーションズの OCN に関するニュースに対して NTT持株会社の株価がどのように反応しているかを分析することによって、ブロードバンド・ア ンバンドル規制によるISP事業に対する期待収益の変化がNTT持株会社の株価に与えた影響を 推論する。ここでは、規制ではなく、事業提携や新サービスなどのニュースを取り扱うため、式 4-1に基づく一般的なイベント・スタディの手法を適用する。

= + +

:NTT持株会社の株価の対前日収益率

:TOPIXの対前日変化率

:誤差項

、 :パラメータ

ADSL 及びFTTHに対するアンバンドル規制の導入期(1999年3月~2001年11月)、及び FTTHアンバンドル規制撤廃論議・NGNに対するアンバンドル規制の導入期(2005年10月~

2008年12月)における OCN事業に関連するイベントを分析対象とし、それぞれのイベントに ついて、イベントの260日前から11日前までの250日間を推定期間として上記の回帰式によっ てパラメータ 、 を算出する。その上で、イベント当日、前日、翌日、前日から当日の 2 日間、

当日から翌日の2日間、及び前日から当日の3日間について、式4-2~式4-5に基づき を算 出する。帰無仮説は : = 0とする。

分析対象とする具体的なイベントは、巻末の付表1-6(ADSL・FTTHアンバンドル規制導入期)

及び付表1-7(FTTHアンバンドル規制撤廃論議・NGNアンバンドル規制導入期)の通りである。

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5.3.2. ADSL・FTTHアンバンドル規制導入期(1999年3月~2001年11月)に関する分析結果

巻末の付表2-28は、ADSL及びFTTHに対するアンバンドル規制の議論・導入の時期に発生 した、NTTコミュニケーションズのISP事業(OCN事業)に関連するイベントに関するイベン ト・スタディ分析の結果をまとめたものである。単日(列(1)~(3))及び連続日(列(4)~(6))の 両方においてイベント日ダミー変数の係数が有意となったのは、C3、C8、C11及びC15である。

C3(2000年5月8日)には、ベリオ社(米国)を6,000億円で買収して電子商取引事業を強

化し、欧米市場でデータ通信事業を展開する旨、NTT コミュニケーションズが報道発表を行い、

同日付の日本経済新聞夕刊に報じられている。累積超過収益率は、当日(列(1))、前日から当日 の2日間(列(2))、及び前日から翌日の3日間(列(6))において有意にプラスになっている。

C8(2001年5月16日)は、NTTコミュニケーションズがIP電話事業に参入する旨、報道発

表を行った日であり、翌日に新聞で報道されている(2001年5月17日 日本経済新聞)。累積超 過収益率は、前日(列(2))に有意にプラスになっているが、当日(列(1))と翌日(列(2))は有意 ではないがマイナスに転じ、その結果、当日から翌日の2日間(列(5))では有意にマイナスとな っている。前日に当たる5月15日に、NTT東西地域会社が中継光ファイバー及び地域IP網の接 続料金をそれまでより大幅に低い金額で認可申請し、翌16日にその旨報道されている(日本経済 新聞朝刊、日経産業新聞)。また、イベント日翌日に当たる 5 月 17 日には、決算発表に先立ち NTT東西地域会社の収益の悪化を報じる記事や、NTTデータの決算、NTTドコモによる香港企 業の買収など、グループ会社に関する報道が数多く掲載されている。したがって、NTTコミュニ ケーションズの IP 電話事業への参入による株価への影響を切り出して分析することは困難であ る。

C11(2001年10月29 日)には、ADSLユーザー満足度調査の結果が新聞で報じられ、NTT

コミュニケーションズの OCN は第6位と振るわなかったことが明らかにされている(日経産業 新聞)。累積超過収益率は、当日(列(1))及びすべての連続日(列(4)~(6))において有意にマイ ナスとなっており、有意ではないものの、前日及び翌日の単日もマイナスとなっている。10月25 日に、NTTが総務省に対して自主的経営改革を提出し、翌26日に報道されている。また、自主 的経営改革の内容が不十分であるとして、総務省が26日にNTTに対して経営改善を求め、翌27 日に報道されている(2001年10月27日 日本経済新聞朝刊)。イベント日当日(10月29日)

とは日が開いているため、C11当日までの間に本件は株価に織り込まれたものと考えられる。

C15(2002年7月26日)は、NTTコミュニケーションズがDDIポケットの回線を利用して

無線データ通信に参入すると報じられた日である。累積超過収益率はすべてプラスとなっており、

中でも、翌日(列(3))、当日から翌日(列(5))及び前日から翌日(列(6))は有意となっている。

26日及び27日には、本件以外ではNTT持株会社またはグループの期待収益に大きな影響が想定 されるイベントは見当たらない。

なお、C2(1999年12月21日)では、NTTコミュニケーションズが東京と大阪でADSLの試 験サービスの提供を開始すると発表したほか、前日に当たる12月20 日にNTT-MEがやはり都 内一部で ADSL の提供を開始することを発表しているが、NTT 持株会社の株価は有意には変動 していない。

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5.3.3. FTTHアンバンドル規制撤廃論議・NGNアンバンドル規制導入期(2005年10月~2008

年12月)に関する分析結果

同様に、FTTH規制撤廃論議及びNGNに対するアンバンドル規制導入の時期における、NTT コミュニケーションズのISP事業関連イベントについて、イベント・スタディによる分析を行う

(巻末付表2-29)。単日(列(1)~(3))及び連続日(列(4)~(6))のいずれにおいても累積超過収益 率が有意となったのは、CC2、CC11、CC13、CC14、CC17、CC20、CC21、CC22、CC23、CC24 である。

CC2(2005年11月30日)は、日経流通新聞に、第23回サービス業総合調査のISP分野の売 上高でNTTコミュニケーションズが首位であったと報じられた日である。累積超過収益率は、当 日(列(1))、及び連続日のすべて(列(4)~(6))において有意にマイナスとなっている。同日、KDDI やソフトバンクなどの競争事業者が、NTT のグループ一体運営は公正競争を阻害するとして、

NTT再々編計画に対して異議を唱える意見書を総務省に提出し、翌12月1日に新聞で報道され ており(日本経済新聞)、NTT持株会社の株価に影響を与えた可能性を否定することはできない。

CC11(2007年2月15日)は、複数のNTTグループ企業が展開中のブロードバンド回線を利

用した映像配信サービス事業を、NTTコミュニケーションズに集約する方針であることが報じら れた日である(2007年2月15日 日本経済新聞朝刊)。累積超過収益率は、前日(列(2))、翌日

(列(3))、当日から翌日の 2日間(列(5))、前日から翌日の 3日間(列(6))において有意にマイ ナスとなっている。当日(列(1))は、有意ではないがプラスである。イベント期間中に、NTT持 株会社やグループの期待収益に大きく影響を与える可能性が想定されるような他のイベントは見 当たらないが、前々日に当たる13日に、NTT、NTTドコモ及びKDDIの株価が前年来高値を記 録しており、携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)制度導入に伴う競争激化懸念が和らいだ結 果であると報じられている(2007年2月14日 日本経済新聞朝刊)。C11イベント期間中の株価 の変動は、この高値傾向の反動であった可能性があると考えられる。

CC13(2007年5月23日)は、NTT西日本が、同社の個人向けISP事業をNTTコミュニケ ーションズに譲渡すると報道発表を行い、翌24日に新聞で報じられている(日経産業新聞)。累 積超過収益率は、翌日(列(3))及び前日から翌日の3日間(列(6))において有意にマイナスとな っている。当日(列(1))は、有意ではないがプラスである。なお、イベント当日の5月23日、

NTT東西地域会社でFTTHを利用したIP電話に障害が発生している。翌24日の日本経済新聞 朝刊は、「NTTグループのIP電話トラブルは多発しており、その都度原因が異なる。電話網から IP通信網への移行を目指す同グループの信頼回復はさらに遠のいた格好だ」と報じている。CC13 における株価の変動は、このIP電話障害が影響している可能性も考えられる。

CC14(2007年5月25日)には、マンション向けFTTH料金の値上げについてNTTコミュニ ケーションズが報道発表を行い、翌26日に新聞で報じられている(日本経済新聞朝刊)。累積超 過収益率は、すべての期間でマイナスとなっており、中でも、前日(列(2))、前日から当日の 2 日間(列(4))及び前日から翌日の3日間(列(6))において有意となっている。前日に当たる24 日に前述のNTT東西地域会社のIP電話障害に関する新聞報道がなされ、当日に当たる25日に

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は、障害の原因が入力に係る人的ミスであったこと、及び、総務省が、NTT東西地域会社を含む 電気通信事業者に対して IP 電話の管理体制を総点検するよう指示を出したことが報じられてい る(日本経済新聞朝刊、日経産業新聞)。CC13と同様、CC14における株価の変動も、NTT東西 地域会社のIP電話障害問題の影響を否定することはできない。

CC17(2007年11月21日)は、日経流通新聞に、第24回サービス業総合調査のISP分野の 売上高でNTTコミュニケーションズが首位であったと報じられた日である。累積超過収益率は、

当日以外のすべての期間においてマイナスであり、中でも、前日(列(2))、前日から当日の 2 日 間(列(4))及び前日から翌日の3 日間(列(6))において有意となっている。前々日に当たる19 日には、NTTドコモが26日に新料金を導入する旨新聞報道されている(日経産業新聞、日経流 通新聞)。販売手数料が圧縮される反面、端末購入に係る利用者の負担が大きくなる内容である。

株価が有意に負に反応したCC17の前日とは1日違いであるため、本件がイベント期間中の株価 変動に影響を与えた可能性を否定することはできない。

CC20(2008年7月22日)は、ISP事業者部門でNTTコミュニケーションズが初めてシェア

首位を獲得した、と日本経済新聞朝刊に報じられた日である。同じ調査結果は、CC21(2008 年 7月24日)に日経産業新聞でも報道されている。CC20については、すべての期間について累積 超過収益率がマイナスとなっており、中でも翌日(列(3)、すなわち CC21 の前日)、当日から翌 日の2日間(列(5))及び前日から翌日の3日間(列(6))において有意となっている。一方、CC21 については、符号は様々であり、前日(列(2)、すなわちCC20の翌日)が有意にマイナス、及当 日から翌日の2日間)が有意にプラスとなっている。この期間中、NTT持株会社やグループの期 待収益に大きな影響を与えると考えられるようなイベントは見当たらない。

CC22(2008年7月31日)は、ADSL事業者のイー・アクセスが、同じくADSL事業者であ

り NTT コミュニケーションズが第 2位株主であるアッカ・ネットワークスを買収すると発表を 行った日である。これを受け、NTT コミュニケーションズは同日、保有するアッカ株式約 13%

のすべてを、米国のベンチャーキャピタルであるイグナイト社に9月を目途に売却すると発表し た。これらの発表は、翌8月1日に新聞で報道されている(日本経済新聞朝刊)。累積超過収益率 はすべての期間についてプラスであり、中でも、当日(列(1))及びすべての連続日(列(4)~(6))

において有意となっている。ただし、この期間中、NTTグループが四半期決算を順次発表してお り、その影響も考えられる。

CC23(2008年8月28日)は、企業向けIP-VPN利用率でNTTコミュニケーションズが7年 間連続で首位を維持したという調査結果が、新聞に報じられた日である(日経産業新聞)。累積超 過収益率はすべての期間においてプラスであり、翌日(列(3))、当日から翌日の 2日間(列(5))

及び前日から翌日の3日間(列(6))において、10%水準ではあるが有意となっている。この期間 中、NTT持株会社やグループの期待収益に大きなプラス要因となるようなイベントは発生してい ない。

CC24(2008年11月28日~12月1日)は、2日連続のイベント期間である。11月28日には、

アッカ・ネットワークスのTOBに応募した旨、NTTコミュニケーションズが報道発表を行った 日である。これによって、2000年のアッカ設立以来続いていた両社の資本関係は解消されること となった。本件は、翌29日に日本経済新聞朝刊で、12月1日に日経産業新聞で、それぞれ報道