第 5 章 実証分析:ブロードバンドに対するアンバンドル規制に対する
5.7 作業仮説 1-4②の検証:MNP に対する競争事業者の株価の反応
5.7.3 分析結果
KDDI、ボーダフォン及びソフトバンクにおいて、単日(当日、前日、翌日)及び連続日(前 日から当日の2日間、当日から翌日の2日間、前日から翌日の3日間)のいずれにおいてもイベ ント日ダミー変数の係数が有意となったイベントは、図表 5-2 の通りである(各社の結果表につ いては、巻末の付表2-46~2-48参照)。
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図表5-2 単日及び連続日のいずれにおいても係数が有意となったMNP関連イベント
イベント 日番号
KDDI ボーダフォン ソフトバンク NTT ドコモ
M1 0,-,0,-,0,0 0,-,-,0,-,-
M2 0,-,0,-,0,0
M3 +,0,0,+,+,+
M4 -,0,+,-,0,0 0,0,-,0,0,- 0,-,0,-,0,-
M7 0,0,+,0,+,+ -,+,+,0,0,+
M9 0,0,+,0,0,+
M10 0,-,0,-,0,0 M13 0,0,-,0,-,0 M15 0,0,-,0,0,-
M17 -,*,0,*,-,*
M18 -,0,0,-,-,-
M19 +,-,-,0,0,-
M22 +,0,0,+,0,0
M23 +,*,-,*,+,*
M25 0,0,+,0,+,+
M31 0,0,+,0,+,+ 0,0,+,0,+,+
M33 -,0,0,-,-,- 筆者作成
注:
イベント当日、前日、翌日、前日から当日の2日間、当日から翌日の2日間、前日から翌日の 3 日間、の 6期間におけるイベント日ダミー変数の係数について、有意にプラスの場合:「+」、 有意にマイナスの場合:「-」、有意でない場合:「0」、前後のイベントと重なるため N.A.:「 *」。 空欄は、いずれの期間についても有意ではないことを示す。
M1(2001年8月10日)は、総務省において、「情報通信新時代のビジネスモデルと競争環境
整備の在り方に関する研究会」(以下、新時代研究会)第1回会合が開催された日である。当日(
8月10日)及び翌日(11日)に、MNPが検討課題の一つであり、総務省は2003年にも導入す る方針であると報じられている(2001年8月10日 日経産業新聞、2001年8月11日 日本経 済新聞朝刊)。KDDI 及びボーダフォンにおいて係数が有意にマイナスとなっている。この時期、
両社の株価に影響を与える可能性がある競合イベントは発生していない。
M3(2001年10月24日)は、総務省新時代研究会が主要論点を公表した日である。携帯電話
分野の他の問題を含め、MNPの是非をどのように考えることが適当か、という点が挙げられてい る。KDDI において係数が有意にプラスとなっている。この時期、同社の株価に影響を与える可 能性がある競合イベントは発生していない。
M4(2001年12月13日)は、同研究会が中間報告書草案を公表し、意見募集を開始した日で
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ある。草案では、次世代携帯電話(3G)の登場に伴い、MNPの実現を視野に入れ、SIMロック などの他の携帯電話分野の問題と一体的に検討する場を設けることが適当である、と提言されて いる。KDDIにおいて、当日単日及び前日から当日の2日において有意にマイナス、翌日に有意 にプラスとなっている。また、ボーダフォンにおいて有意にマイナスとなっている。なお、NTT ドコモは有意にマイナスとなっている。この時期、KDDI 及びボーダフォン両社の株価に影響を 与える可能性がある競合イベントは発生していない。
M7(2002年3月6日~7日)は、2日連続のイベントである。初日の3月6日は、総務省新
時代研究会の第13回会合が開催された日である。翌7日には、同研究会が、「電気通信事業分野 におけるIP化の進展等」に関して意見募集を開始している。KDDIの係数が有意にプラス、ソフ トバンクは概ね有意にプラスとなっている。2002年2月の携帯電話純増数で au(KDDI)と J-フォンが健闘した旨、電気通信事業者協会から3月7日に発表されている。KDDIの株価の変動 には、このイベントが影響している可能性も考えられる。
M9(2002年4月4日~5日)は、2日連続のイベントである。初日の4月4日には、総務省
新時代研究会が、M7で行った意見募集の結果を公表している。また、翌5 日には、同研究会の 第14回会合が開催されている。ボーダフォンにおいて係数が有意にプラスとなっている。3月末 の携帯電話契約数でボーダフォン(当時のブランド名はJ-フォン)がデジタルホン設立以来初め て第2位に浮上した旨、電気通信事業者協会から4月6日に発表されている。この日はイベント 日翌日に当たり、ボーダフォンの係数が有意になっているのは翌日単日及び前日から翌日の3日 間であることを考えると、同社の株価の変動には市場占有率で第2位に浮上したというニュース が影響した可能性が考えられる。
M10(2002年4月12日)は、総務省新時代研究会の第15回会合が開催された日である。KDDI において係数が有意にマイナスとなっている。この時期、同社の株価に影響を与える可能性があ る競合イベントは発生していない。
M13(2002年6月6日)は、総務省新時代研究会の第17回会合が開催され、最終報告書が公
表された日である。KDDI において係数が有意にマイナスとなっている。イベント前々日に当た る6月4日に、情報通信分野における規制緩和に関して総務省情報通信審議会が答申案を発表し ている。この答申案には、届出制への変更のほか、ADSL 分野に関する NTT への規制の緩和な どが盛り込まれている。競争事業者がこの答申案によってNTTのグループ力が強化されることを 懸念していたことが、新聞で報じられている(2002年6月5日 日本経済新聞朝刊)。KDDIの 係数が有意になっているのは翌日単日及び当日から翌日の2日間であるため、前々日の答申案発 表というイベントが株価に有意にマイナスの影響を与えたとは考えにくい。
M15(2003年9月18日)には、総務省の平成14年度電気通信番号に関する研究会の報告書
に、「携帯電話の番号ポータビリティに関する勉強会」による報告書が添付され、公表されている。
同勉強会報告書では、MNP導入には設備投資が必要であり、そのコストが最終的に利用者に転嫁 されることから、ユーザー・ニーズを十分把握した上で導入を決定すべきであること、また、導 入が決定した場合は、昨日提供や費用負担の在り方、顧客サービス体制などについて十分議論し た上で、関係事業者間での運用ルールを確立すべきであることなどが提言されている。KDDI に おいて、係数が有意にマイナスとなっている。イベント前々日に当たる9月16日、競争事業者な
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ど16社が、NTT東西地域会社に対するIP電話の認可に反対する意見書を総務省に提出している。
KDDIの係数が有意になっているのは翌日単日及び前日から翌日の3日間であるため、前々日の イベントが株価に有意にマイナスの影響を与えたとは考えにくい。
M17(2003 年11月 10日)には、総務省「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する
研究会」(以下、MNPの在り方研究会)の第1回会合が開催され、委員による意見交換が行われ た。ソフトバンクにおいて、係数が有意にマイナスとなっている。イベント当日に当たる 11 月 10日、同社は中間決算を発表し、大幅な赤字が明らかになっている。この時期の株価の変動には、
この決算発表が影響している可能性が考えられる。
M18(2003年11月25日)には、総務省MNPの在り方研究会の第2回会合が開催されている。
MNPに積極的なのはボーダフォンだけであったことが報じられている(2003年11月28日 日 経産業新聞、日経コミュニケーション2003年12月8日号)。ボーダフォンにおいて係数が有意 にマイナスとなっている。この時期、同社の株価に影響を与える可能性がある競合イベントは発 生していない。
M19(2003年12月15日~16日)は。2日連続のイベントである。初日の12月15日は、MNP の在り方研究会が意見募集を行った日であり、翌16日には、同研究会の第3回会合が開催されて いる。ソフトバンクの係数が概ねマイナスになっている。エクイティファイナンスによる大型資 金調達の発表を受け、12月12日に同社の株価がストップ安となったことが報じられている(2003 年 12月 13日 日本経済新聞朝刊)。同社の係数が有意にマイナスとなったのは前日単日、翌日 単日、及び前日から翌日の 3日間であり、12日は、土日を挟んでイベント日前日に当たるため、
同社の株価の変動には、大型資金調達の発表を受けた需給悪化懸念が影響していることが考えら れる。
M22(2004年3月30日)は、MNP在り方研究会の第6回会合が開催された日であり、翌31
日の日本経済新聞朝刊で、2006年度半ばまでにMNPを導入する方針で合意に達した、と伝えら れている。KDDIの係数が有意にプラスとなっている。イベント前日に当たる3月29日、auの 携帯電話2機種に不具合がある旨、同社が発表しているが、このイベントが株価に有意にプラス の影響を与えるとは考えにくい。
M23(2004年4月1日)は、MNP在り方研究会が報告書案を公表し、同案に対する意見募集
を開始した日である。ここでは、すべての携帯電話事業者において同時かつ双方向で MNP が実 現されるべきである、と提言されている。また、メール・アドレスのポータビリティについては、
当面必要はないとされている。ソフトバンクにおいて、当日単日及び当日から翌日の2日間が有 意にプラス、翌日単日が有意にマイナスとなっている。イベント翌日に当たる4月2日の東京市 場で、米国市場での株価上昇を受けて株価が反発し、ソフトバンクを初めとするインターネット 関連銘柄に人気が集まった旨、新聞で報じられている(2004年4月3日 日本経済新聞朝刊)。 ただし、イベント翌日単日の係数は有意にマイナスとなっており、同社の株価の対前日集計率の 伸びは、市場全体の収益率の伸びと比べると相対的に小さかったことを意味する。
M31(2006年5月17日)は、各事業者よりMNPの手続き方法が発表され、10月中旬にMNP を導入する予定であることが明らかにされた日である。KDDI の係数が有意にプラスとなってい る。NTTドコモも同様である。この時期、KDDIの株価に影響を与える可能性がある競合イベン