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ブロードバンド・アンバンドル規制に対する NTT 持株会社の株価の反応

第 7 章 考察及び結論

7.1 実証分析結果の総括

7.1.1 ブロードバンド・アンバンドル規制に対する NTT 持株会社の株価の反応

理論仮説1-1:

ブロードバンド・アンバンドル規制の導入に対して、NTT持株会社の株価(地域会社以外の連結 子会社の影響除去前)は有意に負の反応を示した。

理論仮説1-1の検証にあたって、(1)ADSLアンバンドル規制導入、(2)FTTHアンバンドル規制

導入、(3)FTTHアンバンドル規制撤廃に関する政治論議、(4)FTTHアンバンドル規制撤廃論議、

(5)NGNアンバンドル規制導入の5つの事例に関して、NTT持株会社の株価(地域会社以外の連

結子会社の影響除去前)の反応を分析した。

イベント期間ダミー変数による回帰分析では、いずれのアンバンドル規制のイベントに関しても 係数は有意とはならなかった。イベント日全体ダミー変数による回帰分析では、FTTHアンバン ドル規制撤廃論議以外については、係数は有意とはならなかった。したがって、ブロードバンド・

アンバンドル規制全般としては、NTTの非政府株主は同社の期待収益に大きな影響を及ぼすとは 考えなかった、と言うことができる。

個別イベント日ダミーによる回帰分析では、ADSL・FTTH アンバンドル規制導入(イベント 番号A及びF)、FTTHアンバンドル規制撤廃論議(イベント番号fff)、及びNGNアンバンドル 規制導入(イベント番号 N)に関する結果からは、アンバンドル規制による期待収益の変化では なく、規制の安定性に対して株価が有意に反応している可能性が覗われた。一方、FTTH アンバ ンドル規制撤廃に関する政治論議(イベント番号 ff)については、3 件のイベントのうち1件に ついて株価が有意に反応していたが、競合イベントの影響の可能性を排除することはできなかっ た。

以上により、ブロードバンド・アンバンドル規制について、規制内容を強化する動きに対して NTT持株会社の株価が有意に負に反応し、緩和する動きに対して有意に正に反応した、と判断す ることはできず、作業仮説1-1-1~1-1-5はすべて棄却される(図表7-1)。したがって、理論仮説 1-1は棄却される。

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図表7-1 理論仮説1-1検証結果

番号 分析対象事例 作業仮説 検証結果

1-1-1 ADSL アンバンドル 規制の導入

ADSLアンバンドル規制の導入において、NTT持株 会社の株価は規制内容を強化する動きには有意に負 に、規制内容を緩和する動きには有意に正に反応し た。

棄却

1-1-2 FTTH アンバンドル 規制の導入

FTTHアンバンドル規制の導入において、NTT持株 会社の株価(影響除去前)は規制内容を強化する動 きには有意に負に、規制内容を緩和する動きには有 意に正に反応した。

棄却

1-1-3 FTTH アンバンドル 規制撤廃に関する政 治論議

FTTH アンバンドル規制撤廃に関する政治論議にお いて、NTT持株会社の株価(影響除去前)は撤廃を 支持する動きに対しては有意に正に、撤廃を否定す る動きに対しては有意に負に反応した。

棄却

1-1-4 FTTH アンバンドル 規制撤廃論議

FTTHアンバンドル規制撤廃論議において、NTT持 株会社の株価(影響除去前)は撤廃を支持する動き に対しては有意に正に、撤廃を否定する動きに対し ては有意に負に反応した。

棄却

1-1-5 NGN アンバンドル 規制導入

NGNアンバンドル規制の導入において、NTT持株 会社の株価(影響除去前)は規制内容を強化する動 きには有意に負に反応し、規制内容を緩和する動き には有意に正に反応した。

棄却

筆者作成

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理論仮説1-2:

ブロードバンド・アンバンドル規制の導入に対して、NTT 持株会社の株価(地域会社以外の連 結子会社の影響除去後)は有意に負の反応を示した。

理論仮説1-2の検証では、まず、理論仮説1-1と同じ事例(事例1-1-1を除く)について、NTT ドコモ及びNTTデータの株価の変動を統制してNTT持株会社の株価の反応に関して分析を行っ た。その結果、統制前、統制後とも有意となったイベントが数多く見られ(F2、F7、F21、F29、 ff2、N41、N42、N46、N47)、統制前と統制後とで概ね同様の傾向が見られたと言うことができ る。両社統制後に有意水準が上昇したイベントのうち競合イベントが発生していなかったと見ら れるものはF30、N12及びN31であり、符号はF30及びN12がプラス、N31はマイナスであっ た。いずれも、規制の強化・緩和の方向性が決まったという性格のイベントではなく、接続料金 の内容(F30)、追加意見募集(N12)、意見募集結果の公表(N31)と、規制の安定性や利害関係 者の意見対立状況が明らかになったものである。以上を勘案すると、NTTドコモ及びNTTデー タを統制する前と同様、NTT持株会社の株価は、規制を強化する動きに有意に負に反応し緩和す る動きに有意に正に反応した、とは言い難い。したがって、作業仮説1-2①1~1-2①4はいずれも 棄却される(図表7-2)。

なお、NTT地域会社の期待収益の変化がNTT ドコモやNTTデータの期待収益の変化によって 一部相殺され、NTT持株会社の株価の変動として表出することが妨げられたと推定されるイベン トもあったが(F30、N12、N31及びN42)、この他のほとんどのイベントについては両社の統制 前と統制後とで大きな変化は見られなかった。したがって、持株会社方式の下でも、NTT地域会 社の期待収益の変化はNTT持株会社の株価の変動に表出していたと考えて良いと思われる。

次に、NTT持株会社の株価に対するNTTコミュニケーションズのISP事業の影響を考察する ために、同社のOCN事業関連ニュースに対するNTT持株会社の株価(連結子会社の影響除去前)

の反応を分析した。その結果、一部のニュースに関してNTT持株会社の株価が反応していること が覗われたが、想定される期待収益の変化と株価の反応の符号は必ずしも一致していない。した がって、NTTコミュニケーションズに有利な OCN事業関連ニュースに対してNTT持株会社の 株価が有意に正に反応した、という作業仮説を支持することはできない(図表7-2)。

作業仮説1-2①-1~1-2①-4の検証結果より、NTTドコモ及びNTTデータの影響を除去した場 合も、NTT持株会社の株価はブロードバンド・アンバンドル規制の導入に対して有意に負に反応 を示していなかった、と考えられる。また、NTTコミュニケーションズに有利なOCN事業関連 ニュースに対して NTT 持株会社の株価が有意に正の反応を示していたとは言えないことから、

NTTコミュニケーションズのISP事業に有利になる規制変更に対して、NTT持株会社の株価は 正の反応は示さない、と解釈される。ブロードバンド・アンバンドル規制の導入は、NTTコミュ ニケーションズの ISP 事業の事業機会を拡大すると考えられるため、同規制の導入に対しても、

NTT 持株会社の株価は有意に正に反応したとは考えることは困難である。即ち、NTT 持株会社 の株価は、ブロードバンド・アンバンドル規制導入に伴うNTT コミュニケーションズのISP事 業の期待収益の変化によって相殺されたとは考えられない。

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以上により、主要な連結子会社の影響を除去した場合も、ブロードバンド・アンバンドル規制 導入に対してNTT持株会社の株価は有意に負に反応したと言うことはできず、理論仮説1-2は棄 却される。

図表7-2 理論仮説1-2検証結果

番号 分析対象事例 作業仮説 検証結果

1-2

①-1

FTTHアンバンドル 規制の導入

FTTHアンバンドル規制の導入において、NTT持株 会社の株価(NTT ドコモ、NTT データの影響除去 後)は規制内容を強化する動きには有意に負に、規 制内容を緩和する動きには有意に正に反応した。

棄却

1-2

①-2

FTTHアンバンドル 規制撤廃に関する政 治論議

FTTH アンバンドル規制撤廃に関する政治論議にお いて、NTT持株会社の株価(NTTドコモ、NTTデ ータの影響除去後)は撤廃を支持する動きに対して は有意に正に、撤廃を否定する動きに対しては有意 に負に反応した。

棄却

1-2

①-3

FTTHアンバンドル 規制撤廃論議

FTTHアンバンドル規制撤廃論議において、NTT持 株会社の株価(NTT ドコモ、NTT データの影響除 去後)は撤廃を支持する動きに対しては有意に正に、

撤廃を否定する動きに対しては有意に負に反応し た。

棄却

1-2

①-4

NGN アンバンドル 規制導入

NGN アンバンドル規制の導入において、NTT持株 会社の株価(NTT ドコモ、NTT データの影響除去 後)は規制内容を強化する動きには有意に負に反応 し、規制内容を緩和する動きには有意に正に反応し た。

棄却

1-2

OCN 事業関連ニュ ース

NTTコミュニケーションズの事業に有利なOCN事 業関連ニュースに対して、NTT持株会社の株価(影 響除去前)は有意に正に反応した。

棄却

筆者作成

125

理論仮説1-3:

規制変更に対して、政府一部所有企業の株価は有意に反応する。

理論仮説 1-3を検証するために、2 つの事例について分析を行った。まず、日米接続料交渉に 対するNTT持株会社の株価(連結子会社の影響除去前)の反応に関する分析では、イベント期間 ダミー変数及びイベント日全体ダミー変数による回帰分析において、係数は有意とはならなかっ た。したがって、全般として非政府株主はNTTの期待収益に影響がないと考えていたと言える。

一方、個別イベント日ダミー変数による分析では、日本政府が米国側の接続料引き下げ要求に譲 歩しなかったイベントに対して株価が有意にプラスに反応し、日本が妥協しないため米国がWTO への提訴を示唆したイベントに対しては株価が有意にマイナスに反応していることが明らかにな った。日本政府が譲歩しなかったというイベントは、接続料の引き下げ幅が最低限に抑えられる 可能性を示唆するため、NTTにとって有利な動きである。一方、米国によるWTO提訴の示唆は、

日本政府が妥協して接続料の引き下げ幅が拡大される可能性を表すため、NTTにとって不利な動 きであると考えられる。したがって、日米接続料交渉において、NTTに有利な動きに対してNTT 持株会社の株価は有意に正に反応し、不利な動きに対して有意に負に反応した、と解釈すること ができる。ただし、株価が有意に反応した個別イベントは数が少ないため、本分析結果からは、

作業仮説 1-3①は積極的に支持されるというよりも、棄却できない、という表現が適切であると 考えられる(図表7-3)。

第二の事例として、MNPの導入に対するNTTドコモの株価の反応について分析を行った。こ こでも、イベント期間ダミー変数及びイベント日全体ダミー変数による回帰分析では、係数は有 意にはならなかった。一方、個別イベント日ダミー変数による分析では、イベント期間前半にお いては、規制の不安定性を示すイベントに対して株価が有意に負に反応し、イベント期間後半に おいては、規制の内容がある程度確定したイベントに対して有意に正に反応していることが確認 された。また、前半期間中は、競争の激化を懸念させるイベントに対して有意に負の反応が見ら れた。つまり、前半期間に限定すれば、NTTドコモの株価は同社に不利な動きに対して有意に負 に反応していたと解釈される。株価が有意な反応を見せたのは規制の安定性に関するイベントが 多いことから、この事例においても、作業仮説 1-3②は積極的に支持されるというよりも、棄却 できない、という表現が適切であると考えられる(図表7-3)。

以上の2つの事例の分析結果から、政府一部所有企業の株価は規制変更に対して有意に反応し ない、と断言することはできず、理論仮説 1-3を棄却することはできない。ただし、有意に反応 した個別イベントはそれほど多くはないため、更に多くの事例について分析を行ってサンプル数 を増やして、更に検証を進める必要がある。