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作業仮説 2-2②の検証:NTT のブロードバンド網投資計画発表に対する

第 6 章 実証分析:アンバンドル規制下におけるブロードバンド網投資に対する

6.3 作業仮説 2-2②の検証:NTT のブロードバンド網投資計画発表に対する

主要ISP業者の株価の反応

NTT東西地域会社がFTTH網を整備することは、NTTコミュニケーションズのISP事業にと って事業機会の拡大に結び付く、と投資家が考える可能性がある。そのため、本節では、NTT地 域会社のFTTH網整備計画によるNTTコミュニケーションズのISP事業の期待収益の変化が、

NTT持株会社の株価にどのような影響を与えていたかを考察する。

NTTコミュニケーションズはNTT持株会社が株式の100%を所有する非公開企業であるため、

NTTドコモやNTTデータのように、株価の対前日収益率を統制変数として組み込むことによっ て統制することはできない。そのため、ここでは、シェア上位の ISP 事業者の株価が、NTT の FTTH網整備計画などの発表に対してどのように反応していたかを検証することにより、NTTコ ミュニケーションズのISP事業の期待収益が NTT持株会社の株価にどのように反映されていた かを推察することとする。

6.3.1. 具体的な方法及び対象とするイベント

前々節と同様、式 4-1 に基づいてイベント・スタディ分析を行う。ただし、被説明変数は、シ ェア上位のISP事業者またはその親会社とする。

= + +

:ISP事業者又はその親会社の対前日収益率

:TOPIXの対前日変化率

:誤差項

、 :パラメータ

各イベントの260日前から11日前までの250日間を推定期間として上記の回帰式によってパ ラメータ 、 を算出する。その上で、イベント当日、前日、翌日、前日から当日の2日間、当日 から翌日の2日間、及び前日から当日の3日間について、式4-2~式4-5に基づき を算出 する。帰無仮説は : = 0とする。

NTTドコモ及びNTTデータを統制した場合のNTT持株会社の分析とベースを合わせるため、

ここでも、(1)FTTHアンバンドル規制検討期間(1999年8月23日~2001年11月16日:巻末 付表1-10の期間(II)に同じ)、(2)FTTHアンバンドル規制導入後(2001年11月17日以降:

同付表の期間(III)に同じ)の2つの期間について分析を行う。ただし、本節では、アンバンド ル規制導入前後におけるNTTのFTTH網整備計画に対するISP事業者の株価の反応の差を検証 することは目的としないため、2つの期間の間の差の検定は行わない。

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6.3.2. 分析の対象とするISP事業者

図表6-1は、分析対象期間中の、個人向けISP事業における上位事業者のシェアの推移をまと めたものである。アナログ回線やISDNのダイヤルアップが主流だった1990年代後半とブロー ドバンド普及し始めた 2000 年代以降では、上位プロバイダーの顔ぶれが大きく変化している。

ブロードバンド普及期以降は、OCN(NTTコミュニケーションズ)、ぷらら(NTTぷらら)、を 初めとする通信事業者や、J:COMなどの設備ベースの事業者のサービスのシェアが大きくなって いる。Yahoo!BBは、ADSLの普及とともにシェアを拡大し、FTTHの普及が拡大するにつれシ ェアが低下している。このように、上位ISP事業者の顔ぶれが変化する中、通信事業者系以外で 分析対象期間を通じて上位を維持していたのは、ニフティ(富士通)、ビッグローブ(NEC)及 びソネット(ソニー系)である。

図表6-1 個人向けISP事業における事業者別シェア

出典:一般財団法人インターネット協会「インターネット白書」各年版

ニフティ株式会社(現在)は、日商岩井(当時)と富士通の共同出資でエヌ・アイ・エフ株式 会社として1986年に設立された。1999年3月に富士通の完全子会社となった後、2006年12月 7日に東証二部に上場し、現在に至っている。

NECは、1996年7月に総合インターネットサービス「BIGLOBE」の提供を開始し、2006年 7月には、NECから分社化してNECビッグローブ株式会社が設立された。2014年4月には、

NECグループから独立し、ビッグローブ株式会社と社名変更している。同社は、NECの子会社 であった時代から、一貫して非公開企業である。

ソネット株式会社(現在)は、1995年11月に、ソニー株式会社、株式会社ソニー・ミュージ ックエンタテインメント及び株式会社ソニーファイナンスインターナショナル各社の出資により、

ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社として設立された。2005年 12月20日に東証 マザーズに上場、2006年10月にソネットエンタテインメント株式会社に社名変更し、2008年1

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40% ニフティ

ビッグローブ ソネット インフォウェブ DTI

MSN/ぷらら リムネット ベッコアメ ASAHIネット IIJ/IIJ4U OCN ODN

DION/au one net Yahoo!BB J:COM USEN ソネット

Yahoo!BB

OCN ニフティ

ビッグローブ

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月17日に東証一部に指定替えとなったが、2012年12月25日に上場廃止となり、ソニー株式会 社の完全子会社となった。2013年7月に、現在の社名であるソネット株式会社に社名が変更され ている。

以上により、ニフティについては、2006年12月6日以前(巻末付表1-10のIII16以前)は富 士通、12月7日以降(同III17以降)はニフティ株式会社の株価によって、イベント・スタディ 分析を行うこととする。また、ビッグローブについては、2014年4月にNECグループから独立 するまで、NECの子会社として非公開企業であったため、分析対象期間を通じてNECの株価を 分析の対象とする。ソネットについては、東証マザーズ市場に上場した2005年12月20日以降

(同III12以降)のソネットエンタテインメント株式会社の株価を分析の対象とする。

なお、富士通とNECは総合電機メーカーであり、NTTによるADSLやFTTHへの投資によ って、通信機器事業の事業機会が拡大する可能性がある。そのため、両社の株価の変動には、通 信機器事業の期待収益の変化が影響している可能性があることに注意が必要である。

6.3.3. 分析結果及び考察

ニフティ(富士通及びニフティ)、ビッグローブ(NEC)及びソネットにおいて、単日及び連 続日のいずれにおいても有意になったイベントは、図表 6-2 の通りである。NTT 持株会社とは、

III18を除き重複していない(各社の結果表は巻末の付表2-51~2-54参照)。

ビッグローブ(NEC)が有意にプラスとなったII4(2000年11月28日)では、イベント当日 に当たる11月28日の日本経済新聞朝刊で、NECと日立製作所のDRAM事業の完全統合が同日 発表される見通しであることが報じられている。

ニフティ(富士通)とビッグローブ(NEC)が有意にプラスとなったIII2(2002年2月28日)

では、イベント当日に当たる 2月28日に、電機メーカー6社(富士通、NEC、松下電器産業、

日立製作所、東芝、三菱電機)の2002年3月期の連結業績修正が出そろい、6社合計で最終赤字 が2兆円に迫る見通しである旨、翌3月1日に新聞で報じられている(日本経済新聞朝刊)。これ は、株価にとってはむしろマイナス要因であると想定される。

ニフティ(富士通)が有意にプラスとなったIII6(2003年2月27日~28日)では、当日の初 日に当たる2月27日に、富士通が企業向けIP電話サービスを開始したと発表し、当日2日目の 28日に新聞で報道されている(日経産業新聞)。

ニフティ(富士通)が有意にマイナスとなったIII7(2004年2月27日~3月1日)では、当 日初日に当たる 2月27日、富士通の株価が3日ぶりに反落し、米国インテルの業績発表を控え て半導体関連銘柄が買い控えられたと指摘されている(2004年3月1日 日経金融新聞)。 ソネットが有意にマイナスとなったIII16(2007年11月1日)とIII20(2008年3月31日)、 及びビッグローブ(NEC)が有意にプラスとなったIII18(2008年2月27日)には、他に競合 イベントは見当たらない。

ビッグローブ(NEC)が有意にマイナスとなったIII27(2011年3月1日)では、前日に当た る2月28日の日本経済新聞夕刊で、2月25日に2011年3月期の業績予想を下方修正したこと でNECの株価が続落している、と報じられている。

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θ値は、いずれのISP事業者のいずれの期間とも、有意とはなっていない。

以上を総括すると、ISP 事業者の株価が有意に反応したイベントのうち、同時期に他の競合イ ベントが発生していないのはIII16、III20及びIII18の3件だけである。NTTによるFTTH網 整備によって、ISP 事業者の事業機会が拡大すると捉えられていたのであれば、関連イベントに よって株価は有意にプラスに反応すると仮定することができるが、この 3件の中で有意にプラス の反応が出ているのはIII18のビッグローブ(NEC)だけである。前述の通り、NECは総合電機 メーカーであり、NTTのFTTH網整備は通信機器事業にも影響を与えると考えられることから、

ISP事業の期待収益の拡大によってNECの株価が有意に反応したと特定することは困難である。

更に、いずれのISP事業者についてもθ値は有意とはなっていないことから、NTTのブロードバ ンド網投資計画発表によるISP事業者の期待収益拡大に対する投資家の期待は、顕著には観察で きないということができる。

図表6-2 単日及び連続日のいずれにおいても有意になった

ブロードバンド網投資計画関連イベント

(参考)

ニフティ ビッグローブ ソネット NTT NTT(NTT ドコモ及び

NTT データ統制後)

II1 0,0,-,0,-,0 0,0,-,+,0,0

II4 0,+,0,+,0,+

III2 +,0,0,+,+,+ +,0,0,+,+,+

III3 -,0,0,-,-,- -,0,0,-,0,-

III6 0,0,+,0,+,+

III7 -,0,0,-,-,-

III8 0,0,-,0,-,0

III12 0,0,+,0,+,0 0,0,+,0,+,0

III13 0,-,-,-,-,0

III16 -,0,0,-,-,0

III18 +,0,0,+,+,0 0,0,-,0,-,0

III19 0,0,+,0,+,0

III20 0,0,-,0,-,0

III21 +,0,+,+,+,0 0,0,+,+,+,0

III23 0,+,0,+,0,0 0,+,0,+,0,0

III27 0,-,0,-,0,0

筆者作成 注:

1. イベント当日、前日、翌日、前日から当日の 2日間、当日から翌日の 2日間、前日から翌日 の3日間、の6期間におけるイベント日ダミー変数の係数について、有意にプラスの場合:「+」、 有意にマイナスの場合:「-」、有意でない場合:「0」。空欄は、いずれの期間についても有意で