第 1 章 量的研究(研究 1 )
第 3 節 FACES-Ⅲと FSS の勧誘前と脱会後の比較
本節では,脱会者において,勧誘前と脱会後のFACES-ⅢとFSSを比較して変化が起き ているのかどうかを検討することを目的とする。そのために,FACES-ⅢとFSSそれぞれ の勧誘前と脱会後の得点比較をを行った。
1 FACES-Ⅲの勧誘前と脱会後の比較
1. 1 分散分析
FACES-Ⅲについて,次元(凝集性と適応性)と時期(勧誘前と脱会後)による 2 要因
被験者内の分散分析を実施した。
その結果,次元の主効果は有意であり(F(1,82)=66.11, p<.001),時期の主効果は有意 であり(F(1,82)=66.68, p<.001),交互作用も有意であった(F(1,82)=8.81, p<.01)。交 互作用が有意であったことから単純主効果の検定を行った結果,勧誘前における次元の単 純主効果は有意であり(F(1,82)=68.74, p<.001),脱会後における次元の単純主効果も有 意であった(F(1,82)=38.05, p<.001)。また,凝集性次元における時期の単純主効果は有 意であり(F(1,82)=34.04, p<.001),適応性次元における時期の単純主効果も有意であっ た(F(1,82)=72.42, p<.001)。Table 14に示す。
これらより,凝集性と適応性ともに勧誘前と比べ脱会後が有意に上昇し,また,勧誘前 と脱会後ともに凝集性が適応性と比べ有意に高く,さらに,適応性は凝集性と比べ増大の 幅が大きい傾向がみられた,
Table 14 勧誘前と脱会後における凝集性と適応性の得点と分散分析の結果
1.2 分散分析の結果に対する検討
FACES-Ⅲの凝集性次元と適応性次元については,Olson(1979; 1985)が分類基準を定
めており,Clarke(1984)は,統合失調症患者や不安神経症患者における青年期時点での F
勧誘前 脱会後 次元 時期 交互作用
凝集性 28.93±7.75 32.55±6.69 66.11*** 66.68*** 8.81**
適応性 23.22±5.46 28.61±5.28 得点(M±SD)
*p<.05, **p<.01, ***p<.001
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家族関係分析のために,Olson が定めた青年用と成人用の基準のうち,青年用の基準を選 び実施した。Olson(2000)も,ある家族の凝集性適応性両次元の得点変化についてFACES の分類基準に則り一つの円環モデルの中で表示した。また,草田・岡堂(1993)は,491 名の青年を対象とした調査により,暫定基準であるものの日本語版FACES-Ⅲの分類基準 を定めている。これらより,凝集性および適応性次元は,同一の分類基準のもとで扱われ るべきであると理解でき,それに則った集計のもとでの人数比の検討を行うべきであると 考えられる。また,Clarkeの実施を踏まえれば,本研究では青年期の家族関係を振り返る 状況であることから,青年期の基準を採用すべきである。そのため,学生に限定した草田・
岡堂分析による基準を本研究の基準として採用することとした。
草田・岡堂(1993)は,改訂日本語版FACES-Ⅲを健康群約500 名,臨床群約130 名 に実施し,有効回答491名の結果として,暫定的ではあるもののFACES-Ⅲ両次元に対す る4分類の分類基準を定めた。このときのα係数は凝集性が.88,適応性が.74であって信 頼性は確認され(草田,1995),妥当性も因子分析により 2因子構造が確認されて因子的 妥当性が認められている(草田,1995;草田・岡堂,1993)。草田・岡堂による分類基準 とは,凝集性次元では10~24点が「遊離」,25~31点が「分離」,32~38点が「結合」, 39~50点が「膠着」であり,適応性次元では10~23点が「硬直」,24~28点が「構造化」,
29~34点が「柔軟」,35~50点が「無秩序」である。
この分類基準に則り,またカーブリニアの特徴を考慮して,凝集性と適応性における勧 誘前と脱会後の平均値について検討を行った。まず,凝集性と適応性ともに勧誘前と比べ 脱会後が有意に上昇していた点について検討した。凝集性では,勧誘前の28.93点は第 2 段階の「分離」であり,脱会後の32.55点は第3段階の「結合」であって,凝集性の中央 値31.5点と比べると,勧誘前の-2.57点から脱会後の+1.05点への移行であった。凝集 性においては,勧誘前よりも脱会後に中央に収束していた。また,適応性では,勧誘前の
23.22点は第1段階の「硬直」であり,脱会後の28.61点は第3段階の「柔軟」であって,
適応性の中央値28.5点と比べると,勧誘前の-5.28点から脱会後の+.11点への移行であ った。適応性においても,勧誘前よりも脱会後に中央に収束していた。
次に,勧誘前と脱会後ともに凝集性が適応性と比べ有意に高い点について検討を行った。
勧誘前では,凝集性は-2.57点,適応性は-5.28点であり,脱会後では,凝集性は+1.05 点,適応性は+.11 点であった。カーブリニアの特徴および平均値の値が異なることを考 慮すると,勧誘前では凝集性が適応性と比べ中央により近い位置であり,脱会後では適応
149 性が凝集性と比べ中央により近い位置であった。
さらに,適応性は凝集性と比べ増大の幅が大きい傾向がみられた点について検討を行っ た。凝集性は,勧誘前よりも脱会後に1.52点中央に収束しており,適応性は,勧誘前より も脱会後に5.17点中央に収束していた。また,勧誘前では凝集性が適応性と比べ中央によ り近い位置であり,脱会後では適応性が凝集性と比べ中央により近い位置であった。カー ブリニアの特徴および平均値の値が異なることを考慮すると,適応性は凝集性と比べ勧誘 前から脱会後にかけて中央に収束していた。
2 FSSの勧誘前と脱会後の比較
勧誘前と脱会後のFSS得点を比較するため,対応のあるt検定を実施した。
その結果,t (80)=9.28, p<.001となり,有意であった。FSSは,勧誘前よりも脱会後 に有意に上昇した(Figure 1)。
Figure 1 勧誘前と脱会後の FSS 得点
3 結果のまとめ
FACES-Ⅲの勧誘前と脱会後の得点比較より,凝集性と適応性ともに,脱会後は勧誘前 と比べ中央に収束していた。また,勧誘前では凝集性が適応性と比べ中央により近い位置 であり,脱会後では適応性が凝集性と比べ中央により近い位置であり,適応性が凝集性と
20 25 30 35 40 45 50
勧誘前 脱会後
得点
時期
FSS
150 比べ勧誘前から脱会後にかけて中央に収束していた。
また,FSSにおいては,脱会後は勧誘前と比べ有意に上昇していた。
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