第 1 章 量的研究(研究 1 )
第 9 節 考察
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や大切な他者と語り合う時間をもつことができたと思われる。当初は抵抗感がありながら も家族と語り合うことで,家族関係がより良く変化したという認知と同時に,変化がみら れないという認知の両者がみられた。勧誘前に家族関係が良好であったため変化が必要な かったのかなど,変化がみられなかった状況について質的研究とあわせて検討が必要と思 われる。
2 勧誘前と脱会後における家族関係の変化 2. 1 家族機能と家族満足感の変化
家族機能の勧誘前と脱会後の得点比較より,凝集性次元と適応性次元ともに脱会後は勧 誘前よりも中央へ収束していた。また,勧誘前では凝集性が適応性と比べ中央により近い 位置であり,脱会後では適応性が凝集性と比べ中央により近い位置であり,適応性が凝集 性と比べ勧誘前から脱会後にかけて中央に収束していた。
これらより,凝集性と適応性はより機能的な状態へ変化し,特に適応性は凝集性と比べ より機能的な状態へ変化したことが認められた。仮説 1「FACES-Ⅲの凝集性,適応性と もに,勧誘前よりも脱会後において,より機能的に変化する」は支持された。
また,家族満足感でも,勧誘前と脱会後の得点比較より,脱会後は勧誘前と比べ有意に 上昇していることが明らかとなった。得点が高いほどよいというものではないこと(五十 嵐, 1992)を踏まえても,脱会後の家族に対する満足度は,勧誘前と比べ十分満足できる 状況へと変化したことが示された。仮説2「FSSの得点は,勧誘前よりも脱会後により上 昇する」は支持された。
これらより,教団脱会者は,勧誘前と脱会後において,凝集性と適応性の家族機能が変 化したと認知していることが明らかとなった。脱会者は,勧誘前では,家族関係の密着度 が低い傾向があり,家族間でのつながり感が形成されていたとは言い難く,柔軟に対応す る機能は十分ではなかった状況を認知していた一方,脱会後には,勧誘前よりも家族の情 緒的つながりが強まり,柔軟に対応できる適応性が高まり,家族が十分に機能できる状態 へと変化したと認知していることが示唆された。また,家族満足度においても勧誘前より も脱会後により高まっており,脱会者は,勧誘前と比べ脱会後に,家族への満足感がより 高まったと認知していることが明らかとなった。
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2. 2 FACES-Ⅲの人数変化と家族満足感の変化
1) 脱会者全体の場合
脱会者の全体による凝集性と適応性の4分類および円環モデル群の 3分類においては,
勧誘前と脱会後の人数比較より,凝集性次元と円環モデル群で変化がみられた。凝集性で は「遊離」が減少して「結合」と「膠着」が増加していたこと,円環モデル群では「極端」
群と「中間」群が減少して,「バランス」群が増加していることが判明した。脱会後は,勧 誘前と比べ,家族が十分に機能できる状態へと変化していたと認知している脱会者が多い ことが明らかになった。
また,円環モデルの 3 群における勧誘前と脱会後の家族満足感の得点比較より,「バラ ンス」群,「「中間」群および「「極端」群すべてにおいて,勧誘前と比べ脱会後に家族満 足感が上昇していた。特に「極端」群は,勧誘前では「バランス」群と「中間」群よりも 有意に低かったが,脱会後では差は認められなかった。
これらより,円環モデルの3群すべて家族満足感の上昇が認められた。仮説3「脱会者 全体においては,円環モデルの3群ともに,FSS の得点がより上昇する」は支持された。
また,家族機能が極端な群においては,他の2群と比べ勧誘前から脱会後にかけて家族満 足感の増大幅が大きい傾向がうかがわれた。
2) 脱会者の個別の場合
①2分類での比較
脱会者の個別における変化群と非変化群の2分類では,勧誘前と脱会後の人数比較より,
凝集性と適応性および円環モデル群ともに,変化群と非変化群の間に差はみられなかった。
一方,家族満足度の比較を変化群と非変化群の 2 分類で行った結果,凝集性,適応性,
円環モデル群ともに,変化群と非変化群どちらも勧誘前から脱会後にかけて家族満足感が 上昇していた。特に適応性では,変化群は非変化群と比べ家族満足感の増大幅が大きい傾 向がみられた。仮説 4「脱会者の個別においては,勧誘前から脱会後にかけて変化した群 と変化していない群の2分類では,変化した群は,変化していない群と比べ,凝集性と適 応性および円環モデル群どちらにおいてもFSSの増大幅が大きい傾向がみられる」は,適 応性においてのみ支持された。
これらより,変化有無別における特徴の第1は,凝集性と適応性,円環モデル群におい ては,勧誘前から脱会後の変化の有無に関係なく家族満足感が上昇した点である。家族へ
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の満足感の上昇が家族機能の変化有無に関わりないことが示唆された。
第2は,適応性においては,変化したと認知している群は,変化していないと認知して いる群と比べてFSSの増大幅が大きい傾向がみられた点である。家族機能の適応性が変化 したと認知している脱会者は,変化していないと認知している脱会者よりも,勧誘前から 脱会後にかけて家族に対する満足感がより高まったと認知する傾向がみられ,家族機能の 適応性の変化と家族満足感のさらなる上昇との関連が示唆された。
②3分類での比較
脱会者の個別における機能的変化群,非機能的変化群および非変化群の 3 分類では,3 群人数比較より,凝集性では非変化群,次に機能的変化群の人数が多く,適応性では機能 的変化群,次に非変化群の人数が多く,円環モデル群では非変化群,次に機能的変化群の 人数が多かった。
これらより,凝集性と円環モデル群では,変化していないと認知している脱会者がより 多く,適応性では,機能的に変化したと認知している脱会者がより多いことが明らかとな った。
また,脱会者の個別における勧誘前と脱会後の家族満足感の比較より,凝集性,適応性 および円環モデル群ともに,3群すべて勧誘前よりも脱会後にFSSが有意に上昇した。特 に適応性と円環モデル群では,非機能的変化群は機能的変化群と比べて勧誘前と脱会後と もにFSSが有意に高かった。3分類の仮説として,仮説5「脱会者の個別においては,勧 誘前から脱会後にかけて機能的に変化した群と非機能的に変化した群および変化していな い群の3分類では,機能的に変化した群は,非機能的に変化した群や変化していない群と 比べ,凝集性と適応性および円環モデル群ともに, FSS の増大幅が大きい傾向がみられ る」を立てた。しかしながら,機能的変化群が非機能的変化群や非変化群と比べFSSの増 大幅が大きい傾向は認められず,仮説は支持されなかった。
これらより,3 分類における凝集性の特徴は,機能的変化群と非機能的変化群および非 変化群の差異である。人数比較では,非変化群,次に機能的変化群の人数が多く,非機能 的変化群の人数が少なかった一方,家族満足感の得点では,3 群とも脱会後に上昇してい たものの3群間での家族満足感の差はみられなかった。また,適応性の特徴は,機能的変 化群と非機能的変化群の差異である。適応性において機能的に変化したと認知している脱 会者は,非機能的に変化したと認知している脱会者と比べ人数が多い一方,非機能的に変
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化したと認知している脱会者と比べ家族満足感が勧誘前と脱会後ともに低かった。
3 勧誘前と脱会後における家族満足感と尺度得点との関係 3. 1 勧誘前
勧誘前では,「信者としての自己受容欲求」と「入信中の家族親和希求」および「信者と しての被心理的拘束」の 3 尺度得点の内部相関および勧誘前の家族満足感との相関では,
有意な相関はみられなかった。これにより,勧誘前においては,家族に対して不満足であ ることと教団からの関係性に関する教義の受け入れとの関連が認められないことが示唆さ れた。
3. 2 脱会後
脱会後では,家族満足感と「信者としての自己受容欲求」尺度得点との間に弱い正の相 関がみられた。これにより,カルト脱会者は,信者としての自己を受容してほしい欲求と 家族に対する満足感との間に関連があることがうかがわれた。また,脱会者の個別でみら れた家族満足感の上昇については,信者としての自己を受容されたい欲求に対する認知が 関与している可能性がうかがわれた。
一方,家族満足感と「信者としての被心理的拘束」との間に相関はみられなかった。こ れにより,身近な家族や大切な他者にとって,家族関係に関する心理的拘束を問題とする よりも,信者としての本人を受容し理解することが,カルト脱会の第一歩となりうること が示唆された。
4 属性ごとの特徴 4. 1 性別
1) 家族満足感の相違
性別における勧誘前と脱会後の家族満足感については,有意な差は全くみられなかった。
2) 脱会後の家族満足感と尺度得点との相関
性別における 3 尺度得点の内部相関および脱会後の家族満足感との相関では,女性は,
有意な相関は全くみられなかった。脱会者の女性は,自己の欲求や家族関係に影響する心