座長:山脇 健盛
広島市立広島市民病院脳神経内科櫻井 圭太
帝京大学医学部放射線科学講座≪ねらい≫
Duropathyとは,2012年Kumarにより提唱された概念で,脊 柱管内硬膜の欠損または損傷により神経症状を呈する疾患の ことであり,特発性脳脊髄液減少(漏出)症,脳表ヘモジデリ ン沈着症,特発性脊髄ヘルニア,多髄節性筋萎縮症,などが 含まれる.近年注目を浴びている疾患であるが,Duropathy としてまとまった検討がされたことはあまりない.
本シンポジウムでは,まずDuropathyに詳しい柳下先生より,
その概念と放射線診断について解説いただき,その後比較的 頻度の高いDuropathy 2疾患(脳脊髄液漏出症,脳表ヘモジ デリン沈着症)について解説いただく.また,平山病は,頸 部前屈により下部頸髄後部硬膜が前方へ移動して後部硬膜外 静脈叢が拡大することが知られている.Kumarは平山病も Duropathyの一つとしているが,平山病がDuropathyである か否かは議論の別れるところであり,その点から解説いただ く.
後援:日本神経放射線学会
S-20-1 Duropathiesの概念と画像診断
○柳下 章
東京都立神経病院神経放射線科
【略歴】
1973年 3月慶應大学医学部卒業、4月同放射線科
76年 同放射線診断部
78年 フランス マルセーユ大学医学部神経放射線科に留学
80年 帰国、慶應大学医学部放射線診断部
82年 都立広尾病院放射線科
84年 都立神経病院神経放射線科
2013年 定年となり、以後、同病院 神経放射線科医師として勤務 1 duropathiesの概念
2012年、Kumarは脊柱管内硬膜の欠損あるいは損傷によ り神経症状を呈する疾患に対してduropathiesという概念を 提唱した。病名からは硬膜に関係した広い範囲の病態が考え られるが、実際には硬膜損傷あるいは硬膜欠損(特に前部硬 膜)があり、そこから髄液が硬膜外に漏出することに伴って 生じた疾患が含まれる。特発性脳脊髄液漏出症(特発性低髄 液圧症)、脳表へモジデリン沈着症、特発性脊髄ヘルニア、
多髄節性筋萎縮症、平山病、硬膜外くも膜嚢胞が含まれてい る。平山病が入っているが、平山病では硬膜欠損も、脊柱管 内の前部硬膜外に液貯留を認めず、duropathiesに入れない のがよいと私は考えている。
duropathiesの基本は,種々の原因による脊柱管内硬膜の 欠損あるいは損傷で脳脊髄液(髄液)が漏出し,それに伴って 特発性脳脊髄液漏出症(特発性低髄液圧症候群)が起こる.ま た,脊柱管内硬膜外静脈叢の拡大などが生じ,そこからの出 血がくも膜下腔に入ることで,脳表ヘモジデリン沈着症とな る.硬膜欠損部より髄液が漏出し,続いて脊髄が硬膜外に突 出することによって,特発性脊髄ヘルニアになる.さらに,
液貯留が長い間に脊髄を圧迫して,脊髄前角に異常を示し,
多髄節性筋萎縮症になる.硬膜外くも膜囊胞は液貯留による 囊胞形成と考えられる.
脳表へモジデリン沈着症を初めとするduropahtiesの原因 とその治療法が発見されたのは大きな進歩です。このシンポ により、この進歩が多くの神経内科医師に周知されることを 期待しています。
2 duropathiesの画像
duropathiesを画像から考えると,脊柱管内硬膜の描出が 必須であり,矢状断像ではT2強調像およびFIESTA法〔ある いはCISS法〕,横断像では薄いスライス〔東京都立神経病院 では1 mm厚〕が可能なFIESTA法が最も有効である.硬膜欠 損を描出するにはFIESTA横断像が必須である.矢状断像か ら硬膜外の液貯留部位をみつけ,横断像の部位を絞ることが 必要となる。
以下、神経内科に関係が深い、脳表へモジデリン沈着症、
特発性脊髄ヘルニア、多髄節性筋萎縮症、特発性脳脊髄液漏 出症(特発性低髄液圧症候群)について、最近の画像所見を提 示する。
24 シ ン ポ ジ ウ ム 日
5月24日(金)8:00 ~ 9:30 第5会場(大阪国際会議場10F 会議室1005-1007)
公募 Jp
S-20-2 脳脊髄液漏出症の診断と治療
○光藤 尚
埼玉医科大学病院 神経内科
【略歴】
2006年 3月 埼玉医科大学医学部卒業 2006年 4月 熊本市民病院臨床研修医 2008年 4月 熊本市民病院神経内科医院補 2010年10月 埼玉医科大学神経内科助教 学会活動脳脊髄液減少症研究会世話人
2018年 2月 第17回日本脳脊髄液減少症研究会会長
脳脊髄液漏出症とは国際頭痛分類にはその名はなく、国際 頭痛分類第3版では低髄液圧による頭痛に分類される。脳脊 髄液漏出は低髄液圧の原因に注目した疾患概念と考えられ る。本症は、Marfan症候群やEhlers-Danlos症候群など結合 組織の脆弱性を認める疾患に多いとの報告もある。治療に関 しては、硬膜外腔自家血パッチが保険収載された。
しかし、神経内科においてはブラッドパッチを施行されて 漏出が改善したにもかかわらず起立性頭痛が持続する症例を しばしば認める。我々は脳脊髄液漏出症に体位性頻脈症候群 を合併したために髄液漏出の改善後に起立性頭痛が再燃する 症例があることを見出した。
体位性頻脈症候群は髄液漏出の鑑別診断として挙げられる が、両者の合併に関しても留意すべきである。
髄液漏出症のバイオマーカーとして脳型トランスフェリン が注目されているが、体位性頻脈症候群を合併した脳脊髄液 漏出症においては、髄液産生の指標とされる脳型トランス フェリンの値は健常コントロールに近いことから、代償性の 髄液産生が低下していることが示唆される。
本発表は「脳脊髄液減少症における自律神経機能異常の関与 の検討(研究代表者:荒木信夫)」の一環として行う。
S-20-3 脳表ヘモジデリン沈着症
の診断と治療
○山脇 健盛
広島市立広島市民病院 脳神経内科
【略歴】
1980年 慶應義塾大学医学部卒業 1980年 慶應義塾大学医学部内科学教室入局 1984年 慶應義塾大学医学部内科学教室(神経内科)助手 1992年 水戸赤十字病院神経内科副部長
1997年 国立循環器病センター 研究所 脳循環研究室 室長 内科 脳血管部門 医長(併任)
2003年 名古屋市立大学大学院 神経内科学 准教授 2009年 広島大学大学院 脳神経内科学 准教授 2013年 広島市立広島市民病院 神経内科 主任部長
所属学会 日本内科学会(認定医,総合内科専門医,指導医,専門医試験委員神経部門世話人)
日本神経学会(専門医,指導医,元代議員)
日本頭痛学会(専門医,指導医,理事,専門医委員,編集委員)
日本脳卒中学会(専門医,評議員) 日本神経免疫学会(評議員)
日本認知症学会(専門医,指導医) 日本神経治療学会(評議員)
日本アフェレシス学会(専門医) 日本老年医学会(専門医,指導医)
日本救急医学会(専門医) Movement Disorders Society,Japan Movement Disorders Society
脳表ヘモジデリン沈着症(superficial siderosis:SS)は,主 として40歳以降に発症し,進行性の感音性難聴,小脳失調,錐 体路徴候を主徴とする.2013年に厚生労働省の研究班により 診断基準が提唱され,古典型SSと限局型SSに分類されている.
そのうち「古典型SS」は2015年からは,特定疾患(指定難病)の 一つに指定されている.
SSの病態としては,持続性あるいは反復性に脳脊髄腔への 出血があり,赤血球中の鉄がヘモジデリンとして脳や脊髄の表 面に沈着する.何らかの基礎疾患が存在することが多く,外傷,
腫瘍,血管奇形などが報告されている.一方で,原因不明のも のも多いとされていたが,それらの多くでは脊髄での脳脊髄液 貯留がみられることが指摘され,「duropathy」という概念が提 唱されている.その局在は硬膜外,硬膜下,硬膜内と様々であ り,髄膜瘤,偽性髄膜瘤,硬膜外嚢胞,くも膜嚢胞,あるいは 単に"脳脊髄液貯留"と呼ばれる.これらは,多くが脊髄の腹側 優位に存在する液体貯留であり,しばしば硬膜欠損を介してく も膜下腔と交通している.硬膜の欠損部あるいは損傷部付近の 脆弱な血管による慢性出血が本症の原因とされている.
SSの診断は,以前は剖検や外科手術により診断されていた が,MRIの登場により生前診断が可能となった.MRIでは,
T2強調画像(T2WI)やT2*強調画像(T2*WI)で脳表を縁取るよ うな線状の低信号として描出される.さらにはsusceptibility weighted image (SWI)では,さらに磁化率効果を強調した画 像を得ることが可能である.前述の脊髄硬膜欠損部位の検出に は,MRIの水強調画像(FIESTA,CISSなど)やdynamic myelo CTが有用である.髄液検査では,赤血球の増加やキサントク ロミーが見られる.細胞数,蛋白,鉄,フェリチンの上昇がみ られることもある.
「古典型SS」では,一度症状が出ると改善することは難しい 場合が多い.SSの治療は,まず出血源を検索し,それに対す る治療を行い進行を阻止することである.これまで原因不明と された一部は,脳脊髄液貯留を基盤として発症しており,貯留 部位,硬膜欠損部位,などを可能なかぎり探索し,手術治療を 考慮する.出血源が明らかでない場合は,止血剤やキレート剤 を投与することにより,進行が停止したり,改善したとする報 告もある.