座長:小森 哲夫
独立行政法人国立病院機構箱根病 院 神経筋・難病医療センター溝口 功一
静岡医療センター脳神経内科≪ねらい≫
難病法が施行されて5年目を迎え、法の見直し作業が進んで いる。各都道府県の医療提供体制も固まってきた。この時期 に、難病の中でも医療と福祉の連携を必要とする神経難病に 必要とされる総合的な支援を専門医集団として共有し、神経 難病の視点で法の見直し及び期待される具体的施策を考える きっかけとする。
SS-02-1 神経難病にとっての難病
医療提供体制
○宮地 隆史
国立病院機構 柳井医療センター 脳神経内科
【略歴】
1992年 広島大学医学部医学科卒業 同年 広島大学医学部附属病院第3内科研修医
1993年 東京都老人医療センター(現 東京都健康長寿医療センター 1995年 内科)広島大学大学院医学系研究科内科系専攻 入学
1999年 博士(医学)号取得
同年 国立大竹病院(現 国立病院機構広島西医療センター神経内科)
2005年 広島大学病院脳神経内科 助手 2006年 広島大学 脳神経内科 学部内講師兼任
2009年 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 医学教育担当 講師 2012年10月 国立病院機構柳井医療センター 副院長
2015年 8月 認知症疾患医療センター センター長 兼任
専門医等:日本神経学会認定専門医・指導医,日本内科学会認定総合内科専 門医・指導医,日本老年医学会認定老年病専門医・指導医,日本認知症学会 認定認知症専門医・指導医
代議員等:日本神経学会代議員,日本内科学会中国支部評議員,日本老年医 学会代議員,日本認知症学会代議員,日本脳血管・認知症学会代議員、日本 ボツリヌス治療学会代議員
厚労科研指定研究班:難病患者の総合的支援体制に関する研究班(研究代表 者 箱根病院 小森哲夫院長)分担研究員
平成27(2015)年1月1日に「難病法(難病の患者に対する医療 等に関する法律)」が施行され、同年9月に「難病の患者に対す る医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針(難病対 策基本方針)」が示された。基本方針の第3項「難病の患者に対 する医療を提供する体制の確保に関する事項」の中で「国は、
難病の各疾病や領域ごとの特性に応じて、また、各地域の実 情を踏まえた取組が可能となるよう、既存の施策を発展させ つつ、難病の診断及び治療の実情を把握し、医療機関や診療 科間及び他分野との連携の在り方等について検討を行い、具 体的なモデルケースを示す」としている。また、「都道府県は、
難病の患者への支援策等、地域の実情に応じた難病に関する 医療を提供する体制の確保に向けての必要な事項を医療計画 に盛り込むなどの措置を講じるとともに、それらの措置の実 施、評価及び改善を通じて、必要な医療提供体制の構築に努 める」としている。一方、平成10(1998)年度より難病特別対 策推進事業として、重症難病患者入院施設確保事業及び難病 患者地域支援対策推進事業が創設・実施されてきた。重症難 病入院施設確保事業の実施主体は都道府県であり、難病医療 連絡協議会を設置するとともに概ね二次医療圏ごとに1カ所 ずつ難病医療協力病院を整備し、原則としてそのうち1カ所 を難病医療拠点病院として指定し、重症難病患者のための入 院施設の確保を行うものとした。難病医療拠点病院は相談 連絡窓口を設置し難病医療専門員(平成27年度以降は難病医 療コーディネーターに名称変更)を配置した。現在、平成30
(2018)年度以降、難病特別対策推進事業として新たな難病医 療提供体制の構築が推進されている。新体制では都道府県に 設置された難病医療連絡協議会による検討を踏まえ、都道府 県は難病診療連携拠点病院や難病診療分野別拠点病院、難病 医療協力病院を指定し、拠点病院等に難病診療連携コーディ ネーター及び難病診療カウンセラーを配置することとなって いる。難病法による指定難病は神経難病が多くを占め、これ からも脳神経内科医の果たす役割は大きい。本シンポジウム では新難病医療提供体制についての現状と課題を検討する。
23 シ ン ポ ジ ウ ム 日
5月23日(木)8:00 ~ 9:30 第12会場(大阪国際会議場11F 会議室1101-1102)
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SS-02-2 難病診療における多職種連
携サポートチームについて
○阿部 達哉
国立病院機構箱根病院 神経筋・難病医療セ ンター 神経内科
【略歴】
1997年 埼玉医科大学医学部卒 2001年 同 大学院医学研究科卒 埼玉医科大学神経内科 助教 2002年 東京都立神経病院脳神経内科 医員 2004年 埼玉医科大学神経内科 助教
2006年 University of Iowa, Division of Clinical Electrophysiology, Department of Neurology: Visiting research fellow.
2007年 埼玉医科大学神経内科 助教 2009年 同 講師
2010年 国立病院機構箱根病院神経内科 医長
2016年 国立病院機構箱根病院 神経筋・難病医療センター 診療部長 現在に至る
【目的】国は平成30年度から新たな難病医療供給体制の構築を 目的に、難病診療の中核的医療機関として難病診療連携拠点 病院(以下、拠点病院)の設置を進めている。難病の診療には 複数の医療関連職の関わりが必要となる場合があり、実際に 多職種の関与した診療活動が行われているが、その内容は多 彩である。今回、多職種連携診療・サポートチーム(多職種 連携サポートチーム)の実態を把握する目的で、平成30年10 月時点で拠点病院に指定された医療機関を対象にアンケート 調査を行った。
【方法】難病診療における多職種が連携した診療・ケアに関す るサポートチームの実態、必要性などに関するアンケートを 作成し、拠点病院に指定された25医療機関を有する14都道府 県を対象に、厚生労働省を通じて拠点病院へアンケートを送 付し、都県の難病担当課よりアンケートを回収した。
【結果】平成31年1月時点で8都県より回答が得られた(回収率 57%)。全ての拠点病院で、難病診療における多職種連携サ ポートチームの活動実績はなかった。一方で、難病診療にお ける多職種連携サポートチームの必要性に関する質問に対し て、「必要あり」(5都県)、「必要なし」(2都県)という回答が得 られた。1都県は無記入であった。多職種連携を必要とする 理由については、「難病には複雑な病態が係るため」(5都県)、
「難病診療には、様々なケア・サポートが必要であり、多職 種の連携が必要である」(5都県)、「地域診療にも積極的な貢 献ができる」(3都県)、「医師のみでは難病患者の診療におけ る評価やケアが不十分である」(5都県)、「多職種が関与する ことで、より良い難病診療が行える」(5都県)であった。
また、アンケート以外の自由記載で得られた意見は6都県で
「難病を対象とした多職種連携サポートチームの必要性は感 じているが、他業務も多忙であり、診療報酬算定の対象とな らなければメリットがなく、病院の理解も得がたい」という 内容が多かった。
【考察】今回、アンケートを行った時点で回答が得られた拠点 病院の多くでは、難病診療における多職種連携サポートチー ムの関与は有意義と考えられているが、現実的には医療現場 に係る負担も鑑みた上で、診療報酬算定等の医療機関へのメ リットが必要という意見が大半であった。新たな難病医療供 給体制を構築する中で、医療現場への有益性を担保すること を検討していくことが重要と思われた。
SS-02-3 神経難病患者の仕事と治療
の両立支援について考える
○植竹 日奈
国立病院機構 まつもと医療センター
【略歴】
国立病院機構まつもと医療センター
包括医療支援センター ソーシャルワーカー (主任医療社会事業専門職)
認定医療社会福祉士
1986年 上智大学大学院文学(社会学)修士
1986年 信州大学医学部付属病院ソーシャルワーカー
1997年 国立療養所中信松本病院(現・国立病院機構まつもと医療セン ター)ソーシャルワーカー
2012年~2015年
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)研究分担者 2018年 厚生労働行政推進調査事業費補助金(難治性疾患等政策研究事業)
研究分担者
長野県医療ソーシャルワーカー協会会長 国立病院ソーシャルワーカー協議会副会長 日本難病医療ネットワーク学会編集委員副委員長
人生におけるさまざまなイベント、たとえば、妊娠、子育て、
介護、高齢などの事情と「働く」ことを両立させるための支援 は、少子高齢化が進む日本社会にとって非常に重要であり、
それが思いがけない傷病、特に「難病」と言われる疾患への罹 患であっても例外ではない。がん分野においては、がんの告 知を受けた患者が誰にも相談できずに尚早に離職してしまう ことが指摘されているが、重篤な病気の診断を受けて混乱し ている人が、支援を受けることなく、受けようとすることな く働くことをやめてしまう、あきらめてしまうというような できごとは、難病においても同様に起こっていることが推測 される。
もちろん「難病」は治らない重篤な疾患というイメージは医療 技術の発達、支援の充実によってすでに過去のものであり、
多くの状況下において適切な支援を得られれば、就労継続ま たはいったん中断した職業生活の再開(再就職)が可能との前 提に基づいて、特定求職者雇用開発助成金、難病患者就職サ ポーター、難病患者の雇用管理に関する情報提供の実施事業、
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業などの支援施策が展 開されてはいる。とはいうものの難病にせよ、がんにせよ、
罹患し発症した患者がまず訪れるのは医療機関である。その 医療機関において、早期に患者の就労への悩みを拾い上げ、
支援することが、両立支援の最初の一歩と考えられるが、実 際には医療機関での両立支援が十分に行われているとは言い 難いのが実情であろう。背景には、治療に関わる職種、特に 医師にとっては二次的なフォーカスである就労支援にまでな かなか視野が広がらないことにより就労支援に関するニーズ が発信されにくいこと、さらに医療機関の機能分化により治 療に関わる職種が患者に継続的に関わることが難しくなった こと、本来就労という社会的課題に関わるべき医療ソーシャ ルワーカーが退院支援にその業務の多くを割かざるを得ない ことなど、さまざまな状況が考えられる。
今回、厚生労働行政推進調査事業費補助金(難治性疾患等政 策研究事業(難治性疾患政策研究事業))において検討作成し た医療機関における両立支援モデルおよび両立支援に活用で きるツール(仕事と治療の両立お役立ちノート・ガイド)を紹 介しながら、難病患者への就労支援のあり方について考えて みたい。