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片頭痛病態解明への羅針盤

ドキュメント内 プレナリー (ページ 123-126)

座長:竹島多賀夫 ‌‌

社会医療法人寿会 富永病院脳神 経内科・頭痛センター

清水 利彦 ‌‌

荏原製作所藤沢事業所

≪ねらい≫

本シンポジウムは 片頭痛の病態解明をめざした研究から最 新の知見を紹介することを主眼とします。「片頭痛病態解明 へ -in vivo研究からの羅針盤」では遺伝子異常を含めた動物 研究および臨床研究の片頭痛病態に関する最新の知見を、ま た「片頭痛病態解明へ -in vitro研究からの羅針盤」では細胞レ ベルでの片頭痛病態研究の最新知見について解説をお願いし ます。「神経生理学的研究からの羅針盤」では電気生理学的検 討からの片頭痛の病態に関する最新の知見および「脳機能画 像研究からの羅針盤」では、fMRIなどの神経機能画像から得 られた結果に基づく片頭痛の病態についての解説をお願いし ます。以上の講演から神経学会会員皆様に片頭痛病態に関す る最新の情報を提供し、神経内科診療に役立てていただくこ とを目的とした企画です。

‌‌後援:日本頭痛学会

S-21-1 片頭痛病態解明へ-in vivo研究からの羅針盤

○‌‌永田栄一郎

東海大学医学部 内科学系神経内科

【略歴】

現職:東海大学医学部内科学系神経内科・教授 略歴:1989年3月 名古屋市立大学医学部卒業

1993年3月 慶應義塾大学大学院医学研究科(神経内科)博士課程修了 1999年4月 米国ジョンス・ホプキンス大学医学部神経科学部門 2002年5月 慶應義塾大学医学部神経内科助手 

2005年2月 さいたま市立病院神経内科 医長 2007年4月 東海大学医学部内科学系神経内科・講師 2011年4月 東海大学医学部内科学系神経内科・准教授 2016年4月 東海大学医学部内科学系神経内科・教授 現在に至る

資格:‌博士(医学)、日本神経学会専門医、日本脳卒中学会専門医、日本内科学 会認定医、日本頭痛学会専門医

専門分野:片頭痛、神経内科、神経科学、神経化学

研究テーマ:‌‌片頭痛の病態解明、神経疾患におけるイノシトールリン酸の役割 所属学会:‌日本内科学会(認定医、指導医、内科地方会常任幹事)、日本神経学 会(専門医、指導医、代議員)、日本脳卒中学会(幹事、専門医、指導医)、

日本脳循環代謝学会(幹事)、日本自律神経学会(評議員)、日本頭痛 学会(評議員、専門医、指導医)、日本神経科学会、日本神経化学会(評 議員)

片頭痛病態に関する研究は、脳血管が原因で起こるとする 血管説、さらに、Leãoらが皮質性拡延性抑制現象(Cortical spreading depression, CSD)を提唱するようになると前兆の ある片頭痛の病態説明には、神経を起源とした神経説が広く 理解されるようになった。しかし、神経説では前兆のない片 頭痛の病態を説明するのは困難であり、その後Moskowitzら により三叉神経終末を中心とした血管や神経原性炎症が引き 起こされ片頭痛が発症するという三叉神経血管説が提唱さ れ、現在まで広く受け入れられている。また、片頭痛病態には、

様々なニューロペプチドが病態に関与していることが報告さ れている。セロトニン(5-HT)は血管収縮作用があり、5-HT が血中に放出されると、血管の5-HT受容体に作用して、血 管が収縮する。その後5-HT放出が枯渇し、血中濃度が減少し、

血管拡張が起き、片頭痛発作が起きる。また、三叉神経周囲 に存在する5-HT1B/1D受容体作動薬がトリプタンであることか ら片頭痛病態に密接に関与していると考えられる。さらに、

視床下部に存在するPACAP38や核内DNA結合タンパクで炎 症性疾患との関連が報告されているHMGB1が片頭痛病態に 関連していることが明らかとなり、血管拡張性物質であるカ ルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を阻害する抗体製剤 が臨床現場で治療薬として使用され、片頭痛予防効果を示し ている。また、片頭痛発生時期を従来は閃輝暗点などの前兆 期と考えていたが、実はそれより数時間前(48時間以内)にあ くび、疲労感、集中力低下などの予兆が存在することが明ら かとなった。PETなどで予兆期にすでに視床下部異常が起こ ることが報告されている。さらに、片頭痛患者における光過 敏の原因として内因性光感受性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cells; ipRGCs)が重要な役割 を担っていることが明らかとなりつつある。頭痛研究におい て最大の欠点は、他の疾患と異なりモデル動物の作成が非常 に困難なことである。それゆえに今までは、病態仮説の域を 脱することができなかったが、近年の分子生物学および画像 診断の目覚ましい進歩により、過去に提唱されていた病態仮 説が次第に明らかとなりつつある。

24 日 シ ン ポ ジ ウ ム

5月24日(金)8:00 ~ 9:30 第9会場(大阪国際会議場12F 特別会議場)

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S-21-2 片頭痛病態解明へ-in vitro研究からの羅針盤

○‌‌柴田  護

慶應義塾大学病院 神経内科

【略歴】

平成 4年 3月 慶應義塾大学医学部卒業

平成 4年 3月 慶應義塾大学大学院医学研究科修了 平成 8年 4月 慶應義塾大学医学部助手 (内科学・神経内科)

平成11年 5月  大阪大学大学院医学系研究科神経機能解剖学基礎系医員

(岡野栄之教授)

平成12年 6月 慶應義塾大学助手 (医学部内科学・神経内科)

平成14年 4月  米国Harvard Medical School細胞生物学部門博士研究員

(Junying Yuan教授)

平成17年 6月 慶應義塾大学助手 (医学部内科学・神経内科)

平成18年 5月 国立病院機構東京医療センター神経内科医員        慶應義塾大学神経内科非常勤講師

平成20年 5月 慶應義塾大学助教 (医学部内科学・神経内科)

平成20年10月 慶應義塾大学医学部専任講師 (学部内・神経内科)

平成26年 7月 慶應義塾大学医学部専任講師 (神経内科)現在に至る 片頭痛は中枢神経系、三叉神経系、自律神経系の異常を呈 する複雑な神経疾患であることから、従来in vitro研究は 病態解明に有用でないと考えられていた。TRP (transient receptor potential)チャネルは非選択的カチオンチャネルで あり、三叉神経節ニューロンを含む感覚性一次ニューロンに 発現している。TRPV1は侵害性の刺激によって活性化され 痛みシグナルを生じさせる。さらに、TRPV1活性化は片頭 痛病態に深い関わりを持つCGRP放出を引き起こすことも知 られている。一方、ボツリヌス毒素は慢性片頭痛の治療薬と して用いられているが、その機序に関しては不明な点が多 い。我々はTRPV1を安定発現した細胞株を樹立し、ボツリ ヌス毒素がTRPV1の細胞膜への輸送を阻害した結果、細胞 内でプロテアソームによって分解されることを見出した。ま た、TRPM8は非侵害性の寒冷刺激やメントールによって活 性化されて清涼感を引き起こす。片頭痛発作に際して頭部冷 却によって症状が改善することは経験的に知られているが、

メントールを始めとしたTRPM8刺激作用を有する成分の片 頭痛発作に対する効果を検討した臨床研究も存在する。しか も、片頭痛患者を対象にした複数のゲノムワイド関連解析に よってTRPM8遺伝子が重要な疾患感受性遺伝子であること が高い再現性をもって確認されている。我々は、TRPV1と TRPM8を共発現する培養細胞を用いて、c-Jun N-terminal kinaseリン酸化を指標にして両者の機能が拮抗関係を示す ことも明らかにした。同時に動物実験によって、顔面への TRPM8刺激が片頭痛モデルの疼痛に対して抑制的に作用す ることを観察した。このように、in vitro研究は片頭痛病態 や治療効果の機序を探る上で有用な手段であると考えられ る。

S-21-3 片頭痛病態解明へ-神経生

理学的研究からの羅針盤

○‌‌柴田 興一

東京女子医科大学東医療センター 内科(脳神 経内科)

【略歴】

1983年3月 獨協医科大学医学部卒業

 5月 東京女子医科大学脳神経センター神経内科(研修医)

1985年9月 太田熱海総合病院神経内科医員

1987年3月 東京女子医科大学脳神経センター神経内科助手 1991年5月 東京女子医科大学医学博士学位取得

2000年1月 オランダ・ライデン大学医学部神経内科留学

2002年4月 東京女子医科大学附属第二病院(現東医療センター)内科講師 2010年1月 同 内科准教授

片頭痛では、予兆期から光過敏が出現し前兆期に閃輝暗点が 認められることから、発作間欠期に脳機能に変化が生じてい ることが推測される。脳波をはじめとする神経生理学的検査 は、片頭痛のダイナミックに変化する病態を評価するのに有 用な検査法であり、これまで多くの研究がなされてきた。本 講演では、発作間欠期の片頭痛の視覚誘発電位(VEP)の研 究を中心に述べる。

1)慣れの障害

Schoenenらは、図形反転刺激を50回ごと連続して250回施行 し、5つのVEPを記録すると、健常者では各ブロックで振 幅が低下し慣れが生じるが、片頭痛では振幅は増大し慣れの 障害があることを見いだした。最初のブロックの振幅は低下 しており、視覚野の活動性は、セロトニン系の異常に関連す る視床大脳ネットワークの調節系の障害により低下している ものと推測されている。慣れの障害により、繰り返す刺激で 皮質は過剰な反応を示し、皮質・皮質下のフィードバックを 調整する視床と脳幹ではdown-regulationが生じていると考 えられている。

2)視覚野の機能異常

演者のVEPの研究では、前兆のない片頭痛(MO)と前兆のあ る片頭痛(MA)を比較すると、MAにおいて振幅の増大がみ られ、発作直後に振幅が増大する症例が認められた。VEP を正中後頭部に加え、左右の後頭部で記録すると、振幅の非 対称が認められた。片頭痛において、異なるコントラストの 刺激でVEPを記録し比較すると、高コントラストの条件で 振幅の増大がみられた。片頭痛では、特にMAにおいて一次 視覚中枢を中心に視覚野の興奮性の増大を示す機能異常が存 在し、発作の時間経過によっても変化することが考えられた。

3)視覚情報処理系の異常

演者のsteady-state VEPを用いた研究において、MAでは低 空間周波数の条件で、振幅の変動がみられるのが特徴であっ た。片頭痛の光過敏に注目した研究では、光過敏の程度は、

網膜電図とVEPの振幅に相関するこが報告されており、片 頭痛では、網膜レベルからの視覚情報処理系の異常があるも のと推測される。

片頭痛のVEPでみられる慣れの障害と振幅増大の2つの所 見は、視覚刺激に対する過反応を示すことが共通しており、

網膜から視覚野に至る視覚情報処理系の機能異常に起因し、

片頭痛でみられる特徴的な所見であると考えられる。

24日

シ ン ポ ジ ウ ム

ドキュメント内 プレナリー (ページ 123-126)

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