• 検索結果がありません。

神経疾患に対する⾮侵襲脳刺激療法の最先端 座長:長峯  隆 ‌‌ 札幌医科大学医学部神経科学講座

ドキュメント内 プレナリー (ページ 67-71)

寺尾 安生 ‌‌

杏林大学医学部 病態生理学教室

≪ねらい≫

近年,脳機能解析技術による機序解析や医療機器開発が進ん だこと新規neuromodulationの神経疾患への臨床応用が期待 されている。非侵襲脳刺激法として、反復経頭蓋磁気刺激や 経頭蓋直流電流刺激に加え,デコーディッドニューロフィー ドバックなどの脳科学に基づいた手法も開発されている。対 象疾患としても非侵襲的脳刺激法による脳可塑性誘導がパー キンソン病、脳梗塞など神経疾患の治療に応用されるように なったが、さらに新しい非侵襲的脳刺激の手法をリハビリ テーションと組み合わせた臨床効果の向上や、これまで治療 困難であった疾患への応用も期待されている。また大脳でな く脊髄に可塑性を誘導するで神経疾患の運動症状を改善する 新しい治療法の試みもある。多くの脳神経内科医師には馴染 みの薄い領域であるが、非侵襲脳刺激法に関わる脳内回路の メカニズムに関する理解を深めることができるセッションで ある。

S-03-1 ニューロモデュレーショ

ン治療へのいざない 認 知症に対する非侵襲脳刺 激療法の挑戦

○‌‌眞野 智生

1,2,3

1 大阪大学大学院医学系研究科 脳神経機能再生学、2 大阪大 学大学院医学系研究科 神経内科学、

3 脳情報通信融合研究センター

【略歴】

2004年 帝京大学医学部 卒業

2004年 名古屋第二赤十字病院 臨床研修医 2006年 名古屋第二赤十字病院 神経内科 2010年 名古屋大学大学院医学系研究科‌神経内科 2013年 岡崎市民病院 脳神経内科

2015年 ‌NIH,‌National‌Institute‌of‌Neurological‌Disorders‌and‌

Stroke‌(NINDS)

2016年 ‌大阪大学大学院医学系研究科‌脳神経機能再生学‌(脳神経外科・神 経内科併任)

ニューロモデュレーションは,神経伝達における神経修飾が 語源とされるが,近年では中枢神経や末梢神経への刺激によ る神経活動の変調を治療的に用いることに使用されることが 多い.不可逆性な神経変性が確認されている神経疾患に対す るニューロモデュレーションは,脳内回路異常が原因である 機能的疾患と比べ,治療応用は難しいとされている.しかし,

認知症の日常診療では,認知刺激や運動療法などによる臨床 症状の改善を少なからず経験する.認知症に対する薬物療法 の開発は難航しており,非薬物療法としてのニューロモデュ レーションへの注目も高まりつつある.反復経頭蓋磁気刺激

(rTMS;repetitive transcranial magnetic stimulation)は外 因性かつ低侵襲なニューロモデュレーションの一つで,2017 年に本邦でもうつ病に対する治療法として認可された.アル ツハイマー型認知症(AD;Alzheimer's disease)患者に対す るrTMSの研究は小数例を対象に認知機能の改善効果が報告 されているが,エビデンスは高いとは言えず,そのメカニズ ムは不明である.我々は,日本人におけるrTMSの臨床的有 効性を確かめるべく,軽症~中等度のADに対し,両側背外 側前頭前野(DLPFC)への高頻度rTMS(10Hz,120%RMT,

4秒間刺激,刺激間隔26秒間,片側あたり15回の計600発)を2 週間連日介入し,介入前後で臨床症状の推移を調べた.AD 患者16名(男性2名,女性14名,平均76.6歳)が完遂し,実施 コンプライアンスは80%であった.認知機能検査において,

Moca-Jでは刺激前後で有意な改善を認めたが,ADAS-cogや MMSEでは改善傾向にはあったが有意な改善は認めなかっ た.項目ごとに検討すると,注意機能と遂行機能にて概ね改 善傾向にあったが,記憶,見当識や視空間認知では改善と悪 化傾向が散在していた.BPSD,ADLや介護負担の改善は認 めなかった.刺激後4週間の経過観察したところ,認知機能 は刺激前よりは改善しているものの,低下傾向にあり刺激前 に戻りつつあった.両側DLPFCへの高頻度rTMSは,ADの 新たな治療法の一つとなる可能性はあるが,認知機能検査の 学習効果や残存効果などを検討する必要があり,慎重な判断 が必要である.我々は,2019年より刺激強度への反応性や長 期効果を探索すべく,無作為割付プラセボ対照並行群間試験 を予定している.

22 日 シ ン ポ ジ ウ ム

5月22日(水)9:50 ~ 11:50 第11会場(大阪国際会議場12F 会議室1202)

公募 Jp

S-03-2 パーキンソン病に対する

非侵襲脳刺激法

○‌‌濱田  雅

東京大学医学部附属病院 神経内科

【略歴】

平成13年3月 東北大学医学部卒業 平成13年4月~平成17年3月

       東大病院・関東中央病院・虎の門病院で研修 平成17年4月 東京大学大学院博士課程入学

平成21年3月 同修了/日本学術振興会特別研究員(PD)

平成22年6月~平成25年3月

        英国留学(Sobell Department, UCL Institute of Neurology, London)/日本学術振興会海外特別研究員 平成25年4月~現在

       東京大学医学部附属病院神経内科 助教

所属学会日本内科学会・日本神経学会・日本臨床神経生理学会・日本パーキンソン病・

運動障害疾患学会(MDSJ)・Movement Disorder Society・Society for Neuroscience・International Federation of Clinical Neurophysiology 受賞歴など

平成26年4月~ Editorial Board, Brain Stimulation 平成27年10月 日本臨床神経生理学会 第5回奨励賞

平成29年~  日本神経学会パーキンソン病診療ガイドライン作成委員会 研究協力者

脳深部刺激法(deep brain stimulation , DBS)はすでに進行 期のパーキンソン病(Parkinson disease; PD)において確立 された治療法である。しかし脳外科的手術が必要になること から、副作用の発現率は少ないものの、出現した場合の重 篤性や、脳外科的手術治療自体を躊躇する患者も少なくな い。一方、非侵襲脳刺激法(non-invasive brain stimulation, NIBS)は脳外科的手術を必要とすることなく(=非侵襲的に、

開頭することなく)、脳神経細胞を刺激することができる方 法である。NIBSの一つである経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation, TMS)は従来より単発・二発刺激によ り錐体路・運動野などの神経興奮性を調べる生理学的なツー ルとして汎用されている。2000年ごろからNIBSの一部の方 法では、刺激終了後も持続する神経細胞興奮性の変化(=可 塑性)を誘導できることが報告され、主に神経科学分野で多 く使用されてきた。近年ではこの可塑性を利用し、疾患によ る長期的な異常興奮性の是正することで、神経疾患を治療す るという戦略の元、多くのNIBS臨床研究が行われいる。我々 のグループでもこれまでに4つの多施設共同ランダム化比較 試験を行い2つの試験では有効性があることを示した。しか し残りの2つの試験では有効性を示すことができなかった。

NIBSの有効性が高くないこと、検討症例数が少なかったこ と、NIBSによる可塑性誘導について個々人でばらつきがあ ること、PD特有のプラセボ効果が主要な原因と考えており、

今後個々の脳状態に合わせた最適NIBSを行うことでこれら の課題を解決できると考える。本シンポジウムでは以上の点 を踏まえ、NIBS治療の現状と課題を議論する。

S-03-3 非侵襲的脳刺激併用ハイ

ブリッド・リハビリテー ションによる課題特異的 脳再構成

○‌‌小金丸聡子

獨協医科大学医学部生理学(生体情報)講座

【略歴】

2005年 京都大学医学部医学科 卒業

2010年  兵庫医科大学大学院医学研究科高次神経制御系リハビリテーショ ン科学 博士課程早期修了

2010年 京都大学大学院医学研究科脳機能総合研究センター 博士研究員 2011年 十条武田リハビリテーション病院 リハビリテーション科医師 2013年 京都大学大学院医学研究科 学振特別研究員

2015年  スイス連邦ベルン大学 精神神経生理学・システム神経科学部門 2017年 北海道大学病院リハビリテーション科 助教へ留学

2019年 獨協医科大学医学部生理学(生体情報)講座 准教授

 神経可塑性を誘導する非侵襲的脳刺激法は、この数十年間で 様々な神経疾患に治療応用されてきた。リハビリテーション医学 分野においては、リハビリテーション訓練(以下、リハビリ)と 脳刺激の併用による運動機能、言語・注意などの高次脳機能の回 復についての報告が数多くなされている。一方で、脳刺激併用リ ハビリがリハビリ単独の効果を超えられないとする報告も散見さ れている。非侵襲的脳刺激法をリハビリテーション医療に応用す る上では、リハビリ単独では達しえないレベルの機能回復が得ら れることが重要である。機能回復の神経基盤は脳における神経可 塑性である。脳刺激併用リハビリがリハビリ単独の効果を超える 手法の一つに、訓練課題における脳活動と脳刺激を連関させ、脳 における連合性可塑性を誘導する方法がある。そのような非侵襲 的脳刺激法併用リハビリを演者らはハイブリッド・リハビリテー ション(ハイブリッドリハビリ)と定義した。

 演者らは、慢性期脳卒中片麻痺患者において、麻痺側上肢伸展 運動と患側1次運動野(M1)への5Hzの高頻度反復TMSの併用によ る上肢ハイブリッドリハビリを行い、リハビリ単独では認められ ない上肢機能回復を報告した(Koganemaru et al., 2010)。これは、

rTMS併用により上肢伸展運動課題による患側M1 での使用依存 的可塑性を増強させたものと考えられた。しかしながら、脳損傷 後の機能回復過程においては、M1だけではなく、他領域の脳活 動変化も脳機能画像研究にて報告されている。そこで、fMRIを 用いて、ハイブリッドリハビリ前後で上肢伸展運動課題時の脳活 動、および対照条件として上肢屈曲運動課題時の脳活動を測定し た。その結果、伸展運動課題に特異的な脳活動変化を明らかにし、

機能回復に関わる神経ネットワークについて新たな知見を得るこ とができた(Koganemaru et al., 2015)。

 今後、ハイブリッドリハビリを展開していく上で、個々の病態 の把握、併用する訓練課題の検討、課題動作における脳活動・筋 活動の把握、脳刺激の最適なタイミングや部位の選択が重要であ ると考える。またTMSや脳波、fMRI、MEGなどの脳機能画像で 脳活動変化を定量的に明らかにし、機能・能力改善との関連を検 討することで、より効率的・効果的なリハビリが可能になると考 える。

文献)

Koganemaru S, et al. Brain 133(11):3373-3384. 2010 Koganemaru S, et al. Neurosci Res. 92:29-38. 2015

22 シ ン ポ ジ ウ ム 日

ドキュメント内 プレナリー (ページ 67-71)

Outline

関連したドキュメント