順天堂大学医学部附属順天堂医院 脳神経内科
【略歴】
2006年3月 早稲田大学 教育学部 教育学科 教育心理学専修 卒業 2013年3月 藤田保健衛生大学 医学部 医学科 卒業
2013年4月 順天堂大学医学部附属 順天堂醫院 臨床研修医 2015年4月 順天堂大学医学部附属 順天堂醫院 脳神経内科 2018年4月 順天堂大学大学院 医学研究科 博士課程 入学
我々は2018年、自記式のアンケートと日本版バーンアウト 尺度(久保ら, 1998)を用いて大学病院の脳神経内科(本院の み)についての現状を調査した。全81大学中74大学から回答 を得られた(90%)。総配布数は934枚でアンケートは699人
(74.8%)、日本版バーンアウト尺度は500人(71.5%)から回答 が得られた。回答者の年齢は、30歳代が45%と最も多かった。
日本版バーンアウト尺度の回答結果より、196名(40%)が 一因子以上に高得点を有していた。因子ごとの中等度から高 得点を有する割合は、情緒的消耗感40%、脱人格化56%、個 人的達成感53%であった。
アンケート結果から、バーンアウトの有無と有意な関連が 認められた因子として、経験年数が短い、事務仕事が多い、
当直回数が多い、人間関係の不良などが挙げられた。また、
社会的支援の有無では、支援者ありは72%、なしは29%であっ た。
アンケートと日本版バーンアウト尺度が対応して記載され た192名についての解析では、専門医年数が短い、睡眠時間 が短い、事務仕事が多い、人間関係が不良、医療スタッフの サポートに不満足な人で、点数が高い傾向にあった。多変量 解析では、転職を考えていること、人間関係が不良なこと、
脳神経内科を勧めようと思わないこと、仕事に意義を見いだ せないことがバーンアウトのリスクとして挙げられた。
バーンアウトの対策・改善策については、332名の方から 合計447個の提案を頂いた。内容をまとめると、適度な休息・
仕事の軽減・労働時間適正化・待遇や労働環境改善が40.6%
と最も多く、業務の分担や人員増加を合わせると70%以上に なった。
以上のことから、少なくとも、経験年数の少なさ、仕事量 の多さ、人間関係の不良さなどが主なバーンアウトリスク因 子となっていると考えられる。教授及びそれぞれのリーダー シップにより医局全体の体制を変化させることが必要となっ てくるが、まずは、入局年数の短い医師にターゲットを絞り、
「脳神経内科を勧めたい」と思えるような対策を行う必要があ ると思われる。具体的には、人員の増加を急速に行うことは 難しいため、現在の医局員の協力を頂き、事務作業の減量も 含めた業務分担、当直回数の適正化、適切な休暇の取得、給 与の見直し、サポートの充実、研究や論文執筆の機会を与え るなどの対策を早急に行う必要があると考えられる。
23 日 シ ン ポ ジ ウ ム
5月23日(木)8:00 ~ 9:30 第5会場(大阪国際会議場10F 会議室1005-1007)
公募 Jp
S-10-4 一般病院における燃え尽
き症候群の状況と提言
○柏原 健一
岡山旭東病院 脳神経内科
【略歴】
1981.3 岡山大学医学部卒業
1985.3 岡山大学大学院医学研究科 神経精神医学修了 1985.4 岡山大学付属病院神経科精神科
1985.5 高知県立中央病院(現高知医療センター)神経内科
1987.4 国立療養所山陽荘病院(現宇部医療センター) 神経科 医長 1988.4 岡山大学付属病院神経科精神科 助手
1989.8 米国アリゾナ大学医学部薬理学教室 1994.6 岡山大学神経内科 講師
2001.4 岡山旭東病院 神経内科 主任医長 2012.4 同 部長
<主な所属学会>
日本神経学会専門医、代議員、指導医、日本脳卒中学会専門医、日本てんか ん学会専門医、評議員、日本神経治療学会評議員
日本パーキンソン病および運動障害疾患学会(MDSJ)
International Parkinson and Movement Disease Society
<著書>
みんなで学ぶパーキンソン病(南江堂)
パーキンソン病のことがよくわかる本(講談社)
パーキンソン病治療薬をどう使いこなすか?(南江堂)
一般病院では大学病院、基幹病院よりも研究や教育にかかわるス トレスは少ない。一方で、救急から緩和ケアまで、対応患者数や疾 患種が多く、同僚や上司が脳神経内科医とも限らない。このような 一般病院における脳神経内科医の燃え尽き要因を、演者の所属病院 での現況を交えて呈示し、改善に向けた提言を加えたい。
演者の病院は203床、週3日以上勤務する医師数は平成29年の時点 で神経内科4人、脳神経外科5人、整形外科7人、一般内科4人、放射 線科3人、麻酔科3人など、脳、神経、運動器領域に重点をおいた中 規模病院である。管理職2人を除く医師に労働環境に関するアンケー トを行い20人から回答を得た。8人が燃え尽きる可能性を訴え、そ の要因に労働時間の長さ、仕事量の多さ、休みの取り難さをあげた。
神経内科に関しては、平成29年度は退院患者1096、外来患者31879
(新患5253)人に対応した。入院は脳梗塞(469人)、パーキンソン病、
てんかんが多いが、肺炎、尿路感染、電解質異常、低血糖、心、腎、
肝不全等の内科疾患や打撲、骨折、他科せん妄患者への対応もし ばしばである。82%が緊急入院であり、一般内科56%、脳神経外科 54%を上回る。診断書は一人約500件で、次点整形外科の2倍であった。
Shanafelt ら(Arch Int Med 2012)は燃え尽き易い診療科として救 急科、総合内科に次ぐ3番目に脳神経内科をあげた。救急を含む神 経疾患への対応のみならず、背景不明な多病態への対応、合併身体 障害や危険因子対策、リハビリ・介護の調整など、本邦の一般病院 で脳神経内科医は、しばしば上記科すべての役割を求められる。モ チベーションを下げる(Busis et al, Neurology 2017)書類、紹介状記 載も多い。一般病院に特化した対策には業務量減が重要であり、役 割分担、医師数増、患者数減が手段となる。分担には多職種連携、
病診連携が望まれる。他科との連携には各診療科の長、特に統括す る上司の問題意識が不可欠である。時間外勤務量などの客観的数値 が議論の参考になるかもしれない。
医師の燃え尽きは本人、家族のQOLを害するのみならず、医療安 全の観点からも大きな問題である。しかし、個人の能力や奉仕心の 問題にすり替えられ、前向きに検討されない現状にある。国を挙げ て労働環境の見直しが議論される現在も、医師は積み残こされてい る。神経学会ないし医師会で燃え尽き防止に向けた指針を作成し、
広く医療界、国民に理解を求めるのも一法と考える。
S-10-5 神経学会キャリア形成促
進委員会からの提言
○武田 篤
仙台西多賀病院 脳神経内科
【略歴】
1985年 3月31日 東北大学医学部卒業
1985年 6月 1日 東北大学医学部附属病院研修医(神経内科)
1986年10月 1日 国立療養所宮城病院・神経内科医師 1987年 1月16日 国立療養所岩手病院・神経内科医師 1987年10月 1日 国立療養所西多賀病院・神経内科医師 1992年 3月31日 東北大学大学院医学研究科卒業 1992年 4月 1日 東北大学医学部附属病院医員(神経内科)
1998年10月 1日 米国Case Western Reserve大学病理研究所・神経病 理部門留学
2000年 2月 1日 東北大学大学院医学系研究科助手(神経内科)
2006年 2月 1日 東北大学病院神経内科講師
2007年 5月16日 東北大学大学院 神経・感覚器病態学講座 神経内科 学分野准教授
2013年10月 1日 国立病院機構 西多賀病院・副院長 2014年 4月 1日 国立病院機構 仙台西多賀病院・院長
2016年 4月 1日 東北大学連携大学院高齢者認知・運動機能障害学講座 客員教授(併任)
未曾有の少子高齢化社会の到来、そして労働人口の減少を 背景として政府による働き方改革が進んでいる。2019年4月 より労働基準法も改正され、通常の勤務時間とともに残業時 間の上限も厳しく管理することが求められることとなった。
医師については地域医療への影響を考慮し5年間の猶予期間 が認められ、「医師の健康と地域医療の両立」を主題として現 在議論が進んでいる。
医師法第19条により医師には応召義務があり、また倫理上 も医師には高い職業意識が求められている。こうした背景に より医師の長時間労働はこれまで半ば常態化して来た。医師 不足に悩む本邦では諸外国に比してもより医師の長時間労働 が顕著であることが各種の調査でも示されている。長時間労 働は循環器系疾患の発症リスクと関連することが示されてい る他、抑うつやバーンアウトと言ったメンタル面での障害と も密接に関わることが示唆されている。医療安全上の問題を 懸念する意見も多い。
脳神経内科の診療範囲は急性期から回復期・慢性期まで広 く、診療の他にも各種の書類作成に追われたり、終末期医療 に携わる状況も多いため、しばしば長時間労働に陥り易い。
こうした中で米国神経学会では会員アンケートにより脳神経 内科医のバーンアウトが少なくないことを示し注目を集めて いる。本邦に於いても状況は似通っていると推定されるが、
これまで十分な調査が行なわれて来なかった。そこでまずは 今年度バーンアウトに関する会員アンケートを行い、日本の 脳神経内科診療の現状を調査する予定である。またそれを受 けて対策を提言し、特にこれからの若手医師が安心して従事 できる環境を整備することで、安全で良質な脳神経内科医療 を継続して提供できる体制を構築できる様に努めたいと考え ている。