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免疫性神経疾患患者の妊娠・出産・授乳ー 診療の最前線

ドキュメント内 プレナリー (ページ 138-141)

座長:河内  泉 ‌‌

新潟大学脳研究所神経内科学分野

藤原 一男 ‌‌

福島県立医科大学

≪ねらい≫

近年, 生物製剤をはじめとした様々な疾患修飾薬が開発され, 実地臨床に応用されている. しかし若い女性に好発する多発 性硬化症をはじめとした免疫性神経疾患における妊娠・出産・

授乳を取り巻く問題は周知されていないことが多い. そこで 本シンポジウムでは, 免疫性神経疾患と妊娠, 薬剤と妊娠を 焦点に論じていただく. さらに近年, 進歩し続けている体外 受精医療は, 悪性腫瘍だけでなく, 疾患修飾薬による治療が 必要な難病の女性に対しても妊娠・出産の機会を与える重要 な医療になりつつあることから, その倫理的側面や適応につ いても論じていただく.

S-26-1 多発性硬化症と視神経脊

髄炎患者の妊娠・出産

○‌‌清水 優子

東京女子医科大学病院 脳神経内科

【略歴】

1987年3月  東京女子医科大学医学部卒業 1987年5月  同 神経内科学教室入局(研修医)

1989年4月  同 医療練士

1991年6月  東京女子医科大学 神経内科 助手 1992年2月~1993年12月

     ‌  ‌Department‌of‌Rheumatology‌and‌Allergy-Clinical‌

Immunology,‌

‌‌‌‌‌‌‌‌    ‌‌Cornell‌University‌Medical‌College、Research‌fellow 1994年3月  医学博士学位取得

2004年5月  東京女子医科大学 神経内科 准講師 2005年5月~2007年4月 

        東京都板橋区板橋中央総合病院 神経内科部長 2007年8月  東京女子医科大学 神経内科 講師 2012年5月  同 准教授

2013年4月~ 上智大学大学院外国語学科研究科言語学専攻非常勤講師 兼務 2018年8月  東京女子医科大学 脳神経内科 特命担当教授

現在にいたる

多 発 性 硬 化 症(multiple sclerosis: MS) と 視 神 経 脊 髄 炎

(neuromyelitis optica: NMO)・視神経脊髄炎スペクトラム障 害(neuromyelitis optica spectrum disorder: NMOSD)はいずれ も女性に多い疾患で、妊娠可能な年代に発症し、日常臨床では つねに患者の妊娠・出産を念頭におき、診療をおこなわなくて はならない。

MSでは、母体内のTh2シフトによる免疫寛容が、妊娠期の病 勢安定化に作用するため、妊娠後期に再発率は顕著に低下す るが、出産後3カ月はホルモンの急激な変化、育児ストレス、

環境の変化により再発率が有意に上昇することが特徴である。

本邦では、5種6製剤の疾患修飾薬(disease modifying drugs:

DMD)が保険適用となり、すでに多くの妊娠可能な患者にDMD が投与されている。挙示希望の患者には妊娠に備え、最適な DMDの継続・変更、出産後の再開、授乳、そして不妊治療も含 めマネージメントの課題は多い。

NMO・NMOSDの妊娠・出産による再発の影響については,出 産後3か月の再発リスクは高く,その年間平均再発率はMSより も高い.そして、流産,子癇前症のリスクが高くなる可能性が ある.

MS, NMO・NMOSDの挙児希望の患者には、まず疾患活動性 を安定させ出産後の再発リスクを軽減することが重要で、その ためには妊娠前から、治療を開始し、寛解期を維持し、妊娠の 準備に備える。

また、免疫抑制薬を投与している妊娠可能なMS, NMO・

NMOSD患者の場合、胎児へのリスクを考慮しなくてはならな い。免疫抑制薬は、これまで、多くの薬剤で「妊婦への投与は禁 忌」と記載されており、妊娠をあきらめていた患者も多かった。

しかし2018年6月厚生労働省は、「タクロリムス」「アザチオプリ ン」「シクロスポリン」の3剤を、妊婦への使用を認め、添付文書 には「妊婦への使用を禁忌」ではなく、「妊婦又は妊娠している可 能性のある女性には治療上の 有益性が危険性を上回ると判断さ れる場合にのみ投与すること。」と記載されるようになった。

本講演ではMS, NMO・NMOSDの妊娠・出産に備えDMDの継 続・変更、出産後の再開、授乳、不妊治療へのマネージメント、

免疫抑制薬の母体・胎児への影響など自験例をふまえ、わかり やすく解説したいと思います。

24 シ ン ポ ジ ウ ム 日

5月24日(金)13:45 ~ 15:45 第5会場(大阪国際会議場10F 会議室1005-1007)

Jp

S-26-2 重症筋無力症患者の妊

娠・出産

○‌‌鈴木 重明

慶應義塾大学医学部神経内科

【略歴】

職歴:1993年 慶應義塾大学内科学教室入局 1997年 慶應義塾大学医学部助手

2003年 ニューヨーク医科大学Department of Cell Biology and Anatomy留学

2007年 慶應義塾大学専任講師(内科学・神経)

学会活動:

日本内科学会,日本神経学会,日本脳卒中学会,日本脳循環代謝学会,

日本神経免疫学会,日本神経治療学会,日本神経感染症学会,日本頭痛学会,

日本臨床神経生理学会

専門領域:重症筋無力症,炎症性筋疾患,免疫チェックポイント阻害薬によ る免疫関連有害事象

受賞:2006年 慶應医学三四会奨励賞 2009年 内科学会奨励賞 2014年 日本神経免疫学会創世賞 2016年 日本神経治療学会活動賞

重症筋無力症 (myasthenia gravis, MG)患者が妊娠あるいは 出産した場合には3分の1はMGの症状に変化なく,3分の1が 軽快し,残りの3分の1が増悪すると言われている.妊娠ある いは出産後のどの時期にMGが増悪するかは報告により異な る.近年,MGの治療の選択肢が多くなり,より適切な管理 がおこなわれるようになってきた.そのため,MG患者であっ ても妊娠・出産が安全に行われることが望まれる.妊娠・出 産に際して,MGの経過が安定している場合には,従来行わ れていた治療がそのまま継続される.ピリドスチグミンとプ レドニゾロンについては,ヒト胎児への有害性の証拠はなく 妊娠の場合でも使用可能である.またカルシニューリン阻害 薬である,タクロリムスとシクロスポリンはこれまで妊婦に 対して禁忌であったが,治療上の有益性がある場合には使用 可能となった.免疫グロブリン静注療法についても安全性は 確立されていないものの,妊娠中に使用可能である.

MGが妊娠経過に及ぼす影響として,早期破水が起こる危険 性が高いものの,重大な影響をもたらさないと考えられてい る.一方,分娩時には,随意筋である腹壁筋の易疲労性をき たして第2期が遷延化するおそれがある.このため,非MG 妊婦に比較して吸引あるいは鉗子分娩や帝王切開が行われる 確率が高い.分娩時,MGの急性増悪を予防する目的で何ら かの治療を追加する必要があるか否かは一定の見解はない.

クリーゼに備えて挿管や人工呼吸器の準備は必要であり,神 経内科医が併診の上MGの状態を観察することが望まれる.

また帝王切開はMGの存在とは関係なく,産科的適応に基づ いて判断される.無痛分娩や帝王切開の際に行う硬膜外麻酔 は安全に実施すること可能である.アジア人MGに関して台 湾における163名のMG患者の妊娠・出産を,815名の非MG 妊婦と比較した報告がある.出産時低体重児,早期産,帝王 切開施行率,small for dates infantのいずれも両群間で有意 差はなかった.

MGの母親から出生した新生児の周産期死亡率は2.4%で,非 MG出産における1.4%との間に有意差はなかった.MGの母 親が出産した新生児の10~30%に一過性の筋無力症状が認め られる.また抗MuSK抗体陽性MGの母親から生まれた新生 児にも,筋無力症状が一過性に出現する可能性がある.

S-26-3 神経症候を持つ膠原病患

者の妊娠・出産

○‌‌村島 温子

国立成育医療研究センター , 周産期・母性診療 センター , 妊娠と薬情報センター

【略歴】

 昭和57年 筑波大学医学専門学群卒

【職歴】 昭和57年 虎の門病院内科研修医  昭和60年 順天堂大学膠原病内科入局  平成 7年 順天堂大学膠原病内科講師  平成14年 国立成育医療センター母性内科医長  平成20年 妊娠と薬情報センター長併任

 平成22年 (独立法人)国立成育医療研究センター母性医療診療部長  平成25年 (国立研究開発法人)国立成育医療研究センター        周産期・母性診療センター主任副センター長

【専門領域】

 リウマチ学、母性内科学、周産期薬理学

【主な著書】

 薬物治療コンサルテーション・妊娠と授乳、膠原病とリウマチの治し方 医学の進歩は多くの疾患の治療成績を向上させた.その先に あるのはQOLの向上である.疾患を持つ若い女性にとって のQOLの向上の具体的目標として,妊娠・出産・子育てが挙 げられるのではなかろうか.それは膠原病においても同様 で、重要な課題である。神経症候を呈する可能性がある膠原 病というと、ほとんどの膠原病が該当するが、患者数、性 差、好発年齢などを考慮し、ここでは全身性エリテマトーデ ス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群、シェーグレン症候群を中 心にお話ししたい。

当該分野に限らず,慢性疾患を持つ女性が妊娠する際の必要 条件は母児ともに害のない薬剤で,妊娠中も含めて寛解状態 を維持できていることである.SLE患者においても寛解状態 で妊娠することは良好な妊娠結果を得るための必要条件であ る.そのためには治療すべき時にしっかり治療することが大 切であり、卵巣機能障害のリスクがあるシクロホスファミド の使用も例外ではない。また、妊娠自体が骨粗鬆症のリスク なので、将来の妊娠を考えるならばステロイド性骨粗鬆症対 策を行うことが重要である。

妊娠中はステロイド剤のみで治療するのがこれまでのスタン ダードであったが,ステロイド剤は妊娠糖尿病や妊娠高血圧 症,感染症,前期破水などのリスクを上げるので減量を心が ける.その際には免疫抑制剤やヒドロキシクロロキンの併用 も有用である.免疫抑制剤のうち,アザチオプリン,シクロ スポリン,タクロリムスは動物実験で催奇形性を認めたため 添付文書では妊婦禁忌となっているが,移植患者の経験を根 拠として2018年7月に禁忌解除となった.なお,免疫抑制剤 のひとつであるミコフェノール酸モフェチルは催奇形性が明 らかであり,使用中は避妊を指導する必要がある.

抗リン脂質抗体保有者の妊娠管理についてはエビデンスが少 ないが,現時点でベストと考えられる対応について呈示する.

24 日 シ ン ポ ジ ウ ム

ドキュメント内 プレナリー (ページ 138-141)

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