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脳神経と肝臓のクロストーク

ドキュメント内 プレナリー (ページ 126-129)

座長:宮嶋 裕明 ‌‌

浜松医科大学内科学第一講座

関島 良樹 ‌‌

信州大学医学部脳神経内科,リウ マチ・膠原病内科

≪ねらい≫

肝臓は,糖・脂質・タンパク質など様々な生体物質の代謝の 中心的な役割を担う臓器であり,脳神経と肝臓との関連に関 する理解は,代謝性脳神経疾患の病態解明および疾患修飾療 法の開発に必須である.本シンポジウムでは,疾患頻度や治 療などの側面から特に重要な4疾患(ウイルソン病,シトリ ン欠損症,脳腱黄色腫症,遺伝性ATTRアミロイドーシス)

の肝・脳神経関連に焦点をあて,それぞれの疾患の病態解明・

治療法開発に関する最新の研究を発信する.

S-22-1 ウイルソン病の高精度診断

○‌‌松浦 晃洋、杵渕  幸

藤田医科大学 医学部

【略歴】

札幌医科大学医学部助手 1982

米国New‌York‌Memorial‌Sloan-Kettering‌がんセンター 1984

(Cellsurface‌Immunogenetics,‌EA‌Boyse)

札幌医科大学医学部病理学助手 1988 同 講師 1990

同 助教授 1995‌

藤田保健衛生大学医学部第2病理教授 2000.9‌

同 動物実験委員会委員 2001.4‌(委員長2010.4‌-‌)

同 大学院医学研究科‌専攻委員 2000.9‌-‌

同 疫学・臨床研究倫理審査委員会委員長 2005.4-2015.3

同 遺伝子治療・ヒト幹細胞臨床研究倫理審査委員会副委員長 2010.9‌-‌

藤田医科大学(校名変更) 医学部病理学教授 同 医学研究倫理審査委員会委員長 2018.10‌-同 臨床研究審査委員会委員長 2018.4‌-‌

【学会など】

病理学会会員‌評議員、免疫学会会員‌評議員

ウイルソン病研究会会員(幹事2012-)、分子生物学会会員、小児科学会会員、

先天性代謝異常学会会員

American‌Association‌of‌Immunologists,‌Active‌member The‌New‌York‌Academy‌of‌Sciences,‌member 医学系大学倫理審査委員会連絡会議 法人化検討委員会委員

 ウィルソン病は特異な神経症状を示す家族歴のある神経 変性疾患に肝硬変を伴うものを1群の関連した病気として Kinnier Wilsonが報告してから100年以上が経過しました。

錐体外路徴候(レンズ核変性), 肝硬変, Kayser-Fleischer角膜 輪を三主徴とし、当初は進行性かつ致死性の疾患と認識され ていましたが、キレート剤治療の導入により治療可能な最初 の肝臓病となりました。その後、常染色体潜性遺伝形式の銅 トランスポーター蛋白の機能異常により肝に銅が蓄積し、さ らに漏れ出た銅が脳、腎、角膜などに蓄積し、細胞・組織傷 害による多彩な 臨床徴候が引き起こされる。早期発見と早 期治療開始が予後改善と生活の質の向上に貢献する。

 しかしながら、臨床実地でのウィルソン病診断は必ずしも 容易ではありません。特に、小児科領域では、典型的 な三 主徴を呈して初診する方は少なく、風邪や扁桃腺炎など他の 病気で来院し、偶然見つかった軽度の 肝機能異常が遷延し、

ウイルス・薬剤・自己抗体等の明らかな原因がなく、セルロ プラスミンを測定しウィルソン病を疑い、ようやく詳しい銅 代謝関連検査を施行するという症例か増えている。

 ウィルソン病確定診断のGold Standardは、生検による肝 組織内銅の生化学的定量とAP7B 遺伝子変異 の検出である。

自覚症状がないか極めて軽度の場合、侵襲性の高い肝楔状切 除を行うことは本人・保護者のみならず、医師にとっても躊 躇される。そこで、針生検を行って定量を試みるも微量のた め疑問値や測定不能となることも多い。生検組織の病理標本 を銅染色して陽性となることは進行した肝硬変でさえ少な い。遺伝子検査は約10- 15%において病原変異が検出されな いと報告されている。結果として確定診断がつかないまま治 療されることも少なくない。

 正確な診断に重要な銅蓄積の証明と遺伝子解析に潜むいく つかの問題点の解決方法を模索してきた。新しい原理のアプ ローチとして、シンクロトロン光を利用し、高感度・高解像 度・十分な観察範囲を保持しつつ病理組織内の銅の可視化法 を開発した。通常診療の残余生検組織検体の検索を行い、統 合的な高精度診断を行うことが可能となった。本シンポジウ ムでは忌憚のないご批判意見を伺いたく、背景・原理・実際 について紹介したい。

24 シ ン ポ ジ ウ ム 日

5月24日(金)8:00 ~ 9:30 第10会場(大阪国際会議場12F グラントック)

Jp

S-22-2 成人型シトルリン血症

(CTLN2)の分子病態と これまでの治療法開発へ の取り組み

○‌‌矢崎 正英

1,2

1 信州大学バイオメディカル研究所神経難病学部門、2 信州大 学医学部保健学科検査技術科学専攻

【略歴】

1992年 信州大学医学部 卒業、信州大学医学部第三内科入局 1993年 厚生連富士見高原病院内科 研修医

1998年 信州大学大学院修了 1999-2002年

  米国Indiana大学病理学・検査医学 研究員  2011年 信州大学医学部脳神経内科、リウマチ膠原病内科 准教授

2014年  信州大学バイオメデイカル研究所神経難病学部門 准教授(部門長)

2017年  信州大学バイオメデイカル研究所神経難病学部門・信州大学医学部 保健学科 教授

成人型シトルリン血症(CTLN2)は、SLC25A13遺伝子変異 によるミトコンドリア膜蛋白であるシトリンの欠損あるいは 機能不全に起因する疾患であり(シトリン欠損症)、高アンモ ニア血症を伴う代謝性脳症を発症する。臨床的に多くの患者 で、ピーナッツ、大豆、乳製品などの高蛋白・高脂質食を好み、

糖質を忌避する特異な食嗜好で有名な疾患である。尿素回路 酵素のアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の低下を伴うが、

ASS遺伝子異常に起因する古典型シトルリン血症(CTLN1)

とは異なり、肝細胞中のASSの低下は後天的である。シトリ ンはミトコンドリア内膜上で、アスパラギン酸―グルタミン 酸輸送蛋白(AGC)として機能しており、ミトコンドリア内 のアスパラギン酸を細胞質へ供給し、尿素回路で尿素合成に 使われる。また糖質代謝で生じたNADHをミトコンドリア 内へ移送する機能も有しており、このNADHは電子伝達系 に運ばれATP産生に使われる。このためシトリン欠損状態 下では、尿素回路機能不全と細胞質でのNADH/NAD比のア ンバランス、ひいては肝細胞でのエネルギー不足が引き起こ される。現在推奨されているCTLN2の治療法であるが、肝 移植に加えて、食事療法(炭水化物制限食)、アルギニン製剤、

MCT(中鎖脂肪酸)、ピルビン酸ナトリウムが標準的治療法 としてガイドラインに記載されている。信州大学では約30年 以上前から本疾患に着目し、これまで肝移植療法と炭水化物 制限食等の有効性を確立し、脳浮腫治療薬であるグリセロー ルの危険性を提唱した。現在は非肝移植療法の確立を目指し ている。本シンポジウムでは、主に当大学のこれまでの取り 組みと今後の治療法の展望ついて発表する。

S-22-3 脳腱黄色腫症の分子病態

と疾患修飾療法

○‌‌小山 信吾

山形大学医学部第3内科

【略歴】

1999年 山形大学医学部医学科卒業 1999年 山形大学医学部第3内科 2000年 鶴岡市立荘内病院 2001年 山形大学医学部第3内科

2004年 山形大学大学院医学系研究科医学専攻卒業 2006年 東京大学薬学部臨床薬学教室

2008年 山形大学医学部第3内科 2009年 山形大学医学部第3内科 助教 2017年 山形大学医学部第3内科 講師

 脳腱黄色腫症(cerebrotendinous xanthomatosis;CTX)

(OMIM 213700) は、新生児期の黄疸・胆汁うっ滞、幼児期 発症の慢性的な下痢、若年性白内障、腱黄色腫、若年性動脈 硬化症、骨粗鬆症などの全身症状や多彩な精神・神経症状を 臨床的特徴とする常染色体劣性遺伝形式をとる先天性代謝性 疾患である。1991年、CYP27A1遺伝子が原因遺伝子として 同定され、本疾患の病態はCYP27A1遺伝子がコードする27-水酸化酵素の機能障害による胆汁酸合成経路の障害である ことが明らかとなった。中間代謝産物である7α-hydroxy-4-cholesten-3-oneを経て血中コレスタノールが上昇し、脳、脊 髄、腱、水晶体、血管など全身臓器に沈着し、様々な臓器障 害を惹起する。さらにはケノデノデオキシコール酸(CDCA)

の著明な減少、胆汁・尿中の胆汁アルコール上昇などが生化 学的特徴として挙げられる。CDCAの合成低下は胆汁酸合 成経路の律速酵素である7α-水酸化酵素に対するネガティブ フィードバックの減少をきたし上述の代謝異常はさらに助長 される。CYP27A1遺伝子変異は多岐にわたり、現在まで80 種類以上の変異が報告されている。

 著者らは、本邦の疫学調査をふまえてCTXの病型を、① 知的障害、錐体路症状、錐体外路症状、小脳失調、てんかん、

末梢神経障害など多彩な症状を呈する古典型、②痙性対麻痺 を主症状とする脊髄型、③症状が腱黄色腫、白内障など非神 経系にのみに限局する非神経型、④新生児胆汁うっ滞型に分 類した。さらに早期診断に重きを置いて診断基準の見直しを 図り、脳腱黄色腫症診療ガライン2018として公開している。

 CTXの疾患修飾療法は、CDCAの補充療法が中心となる。

これにより7α-水酸化酵素へのネガティブフィードバックが 正常化し、血清コレスタノールの上昇などの生化学的所見は 改善する。CDCAとスタチン製剤との併用療法の有効性も報 告されているが、長期的な予後改善効果については明確なエ ビデンスは確立されていない。LDLアフェレーシスにより血 清コレスタノールの低下作用が報告されているが、LDLア フェレーシスの2週間後には血清コレスタノールは前値に戻 るとされており長期的管理という観点からは選択しにくい。

CTXは治療可能な代謝性疾患であるが、精神・神経症状が 確立してしまうと、CDCAによる治療によっても症状の改善 は限定的あるいは治療後も神経症状が進行することが相次い で報告されており、早期の治療介入が望まれる。

24 日 シ ン ポ ジ ウ ム

ドキュメント内 プレナリー (ページ 126-129)

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