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神経免疫疾患の病態解明への多面的アプローチ 座長:米田  誠 ‌‌ 福井県立大学看護福祉学部

ドキュメント内 プレナリー (ページ 77-80)

山﨑  亮 ‌‌

九州大学大学院医学研究院神経内 科学

≪ねらい≫

神経免疫疾患の病態には、脳内のニューロンだけでなく、グ リア、血管、腸内フローラなど脳の局所あるいは全身的な免 疫系の乱れが、疾患の発症や進行に深く関与する。また、分 子病態からみると、自己抗体、プロテオーム、背景遺伝子な どの様々な因子が発病・病態に影響する.本シンポジウムで は、中枢性免疫疾患の病態に関連する様々な脳・全身性因子 を、病理学的、生化学的、遺伝学的に多方面から探究する。

疾患メカニズムの解明と新規治療法の開発に関して、各分野 のエキスパートに最先端の研究を紹介していただく。

S-06-1 腸内環境と神経炎症

○‌‌三宅 幸子

順天堂大学医学部附属順天堂医院 免疫学講座

【略歴】

昭和62年3月 東京医科歯科大学医学部卒業‌

昭和62年6月 順天堂大学医学部付属順天堂医院 内科 臨床研修医 平成‌ 2年4月 順天堂大学医学部内科系大学院入学

平成‌ 6年3月 順天堂大学医学部内科系大学院卒業(学位授与)

平成‌ 6年4月 順天堂大学医学部付属順天堂医院膠原病内科助手 平成‌ 7年6月 米国ハーバード大学リウマチ免疫科 留学(博士研究員)

平成‌ 9年6月 同上 (インストラクター)

平成11年9月 国立精神・神経センター神経研究所免疫研究部 室長 平成25年6月 順天堂大学医学部免疫学講座 教授

腸と中枢神経との関連は以前から腸脳相関として注目され ている。近年、特定の細菌が菌体成分や代謝産物を介して、

制御性T細胞や他のヘルパーT細胞の分化や機能に影響を 与えることが明らかとなってきた。T細胞が重要となる中 枢神経炎症の代表的な疾患である多発性硬化症では、実際 にdysbiosisが認められることもわかってきた。我々の解析 では、16S rRNA配列解析によりMS患者の腸内細菌叢には dysbiosisが存在し、Clostridium XIa, IVに属する菌が減少や Bacteroidesに属する菌が減少し、口腔内細菌などが増加す ることを見出した。Clostridium XIa, IVに属する菌は、短鎖 脂肪酸の産生により、制御性T細胞の増殖を促す。多発性硬 化症の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)

マウスに、水溶性繊維を多く含む食事や短鎖脂肪酸を投与す ると、制御性T細胞の増加とともに病態が抑制されることを 明らかにした。さらに、リンパ球を介さない脱髄モデルであ るクプリゾン投与モデルやスライスカルチャーによる脱髄モ デルにおいても、短鎖脂肪酸は脱髄を抑制し、再髄鞘化を促 進することがわかってきた。これらのことから、腸内細菌叢 の変化は、免疫細胞を介するのみでなく、直接的にグリア細 胞の機能に影響を与え、病態に関与する可能性が考えられる。

22 日 シ ン ポ ジ ウ ム

5月22日(水)13:20 ~ 15:20 第5会場(大阪国際会議場10F 会議室1005-1007)

Jp

S-06-2 血液脳関門・血液神経関

門からのアプローチ

○‌‌神田  隆

山口大学病院 脳神経内科

【略歴】

1981年3月 東京医科歯科大学医学部医学科卒業

1985年3月 東京医科歯科大学大学院医学研究科卒業(医学博士)

1985年6月 東京都立神経病院神経内科医師(主事)

1988年6月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科助手

1990年1月  同休職、米国南カリフォルニア大学神経学教室リサーチフェロー 1992年1月 米国ヴァージニア医科大学生化学・分子生物学教室研究員 1994年1月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科助手 1999年4月 東京医科歯科大学医学部附属病院神経内科講師

2000年1月  東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳行動病態学講座 脳神経機能病態学部門助教授

2004年9月 山口大学医学部脳神経病態学講座神経内科学教授

神 経 系 の バリア ー 機 構 で あ る 血 液 脳 関 門(blood-brain barrier, BBB)と血液神経関門(blood-nerve barrier, BNB)

は、中枢神経系、末梢神経系を全身循環から隔絶させ、自己 抗体や病原性T細胞の神経実質内侵入を阻止している。神経 免疫疾患の病態・治療を考える上でバリアーの破綻と修復に 関する知識が不可欠であることは従来から指摘されていたこ とであるが、α4インテグリン抗体製剤であるナタリズマブ の多発性硬化症に対する劇的な効果は、神経系の自己免疫疾 患治療に向けて、バリアー制御の重要性を改めて我々に示し たものと言ってよい。ヒト神経系バリアーは、1枚の基底膜 によって囲まれる内皮細胞とペリサイトが基本単位を構成 し、BBBでは、更にもう1枚の基底膜(glia limitans)とその 外側に接するアストロサイトが構成成分となっている。ヒト 神経系バリアーシステムの破綻・修復メカニズムを知るため には、in vivoの状態を忠実に反映するヒト細胞システムの 確立が必須であり、演者の研究室では、このコンセプトの下、

神経系バリアーを構成するすべての細胞のヒト不死化細胞株 の樹立に着手し、続いて、BBBでは内皮細胞、ペリサイト、

アストロサイトの3者、BNBでは内皮細胞とペリサイトの2 者からなる細胞相互接着型三次元的in vitro modelを構成す ることに成功した。本シンポジウムでは、神経免疫疾患の病 態解明に関するバリアーの重要性について、主に演者の研究 室からこれらの細胞モデルを使用して発信した研究成果を中 心に概説する。演者らはBBBを破綻させる自己抗体(GRP78 抗体)をNMO患者血清から見出したが、同抗体はNMOにと どまらず広範な自己免疫性神経筋疾患の病態に関連してい ることが明らかになっており、神経免疫疾患でのバリアー 破綻の重要性は新たな局面を迎えている。BBB、BNB単な る障壁ではなく、複雑な分子が機能して物質流入・流出を 選択的にコントロールするインターフェースである。BBB、

BNBの分子メカニズムを更に明らかにすることで、有効な immune surveillanceを維持しつつ、病原性T細胞や自己抗 体の侵入を防止する手段の開発に一歩でも近づくことができ ることを確信する。

S-06-3 プロテオーム解析を用いた神

経免疫疾患へのアプローチ

○‌‌池川 雅哉

同志社大学生命医科学部

【略歴】

1987年 京都大学医学部卒業・同付属病院内科研修医  1988年 市立舞鶴市民病院 内科医

1990年 第32次南極地域観測隊越冬隊随行医(国立極地研究所文部技官)

1994年 京都拘置所医務課長

1998年 京都大学大学院大学医学研究科環境医学専攻修了(医学博士)

1996年 京都大学大学院医学研究科・研修員(本庶 佑教授)

2004年 京都府立医科大学ゲノム医科学教室・准教授(田代 啓教授)

2013年 同志社大学生命医科学部・教授

多発性硬化症(Multiple sclerosis; MS)は,自己免疫機序の 関与する中枢神経系 (Central nervous system; CNS) の炎 症性脱髄疾患である.我々はこれまで患者脳脊髄液のプロテ オミックパターン解析から,MSと類縁疾患である視神経脊 髄炎 (Neuromyelitis Optica: NMO)との鑑別に成功し,神 経免疫疾患の病態機序解明に, プロテオーム解析からのアプ ローチの有効性を示してきた.近年,イメージング質量分 析 (Imaging Mass Spectrometry; IMS) 法の発展にともな い, 抗体などのプローブを用いずに,組織切片上に存在する 生体分子の局在を直接可視化することができるようになっ た.我々は, IMS法を神経疾患研究に応用するため超高速イ メージング質量分析装置を導入し, 組織前処理法や解析統計 手法を開発することによりアルツハイマー病 (Alzheimer's Disease: AD) や脳アミロイドアンギオパチー(Cerebral Amyloid Angiopathy: CAA)の患者剖検脳を対象としたア ミロイドのイメージングに成功した. そこで本研究では, MS およびMS類縁の炎症性脱髄疾患を示す自己免疫モデルであ る実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis; EAE)を用い, EAEマウス脳・脊髄の凍 結組織切片を対象にIMS法を試みた. その結果 EAEマウスの 脳・脊髄病変のプロテオームレベルのイメージングに成功し,

バイオマーカー・タンパク質の候補を複数見出した.さらに 本タンパク質をターゲットにした新たな治療戦略を立案し,

EAEの予防・治療に寄与する可能性を見出したので若干の 考察を加えた.

22 シ ン ポ ジ ウ ム 日

5月22日(水)13:20 ~ 15:20 第5会場(大阪国際会議場10F 会議室1005-1007)

Jp

S-06-4 神経免疫疾患の病態生理

-自己抗体からのアプローチ-○‌‌原   誠

日本大学医学部 内科学系 神経内科学分野

【略歴】

2006年 日本大学医学部卒業

2006年 日本大学医学部附属板橋病院 初期臨床研修医 2008年 日本大学医学部神経内科 医員

2008年 日本大学大学院医学研究科 神経内科学専攻

   東京都医学総合研究所(東京都神経科学総合研究所)脳病理形態研 2012年 日本大学医学部 専修医究室

2013年 日本大学 助教

2015年  バルセロナ大学医学部神経免疫学(Josep Dalmau研究室)

Clinical and Senior Researcher  2017年3月に帰国後、日本大学 助教 現在に至る。

神経免疫疾患のうち,神経・筋組織に対する自己抗体が陽性 になる疾患群については,抗体診断法の確立とともに,自己 抗体の作用からみた病態形成メカニズムの解明が進められて きた。抗体作用は,主に患者血清・髄液抽出IgG(またはIgG サブクラス別)を用いた細胞単位あるいは個体単位の病態モ デルを通じて評価されることが多い。特に,自己免疫性脳炎 については従来の腫瘍神経抗体による古典的な傍腫瘍性脳 炎に加え,新たに神経細胞表面の受容体・膜蛋白に対する抗 体(神経細胞表面抗体)が陽性になる脳炎が相次いで報告さ れ,後者では抗体の作用機序と病態,さらには治療効果と の関連を含む新たな展開がみられている。NMDA受容体IgG 抗体はIgG1分画が主体であり,結合抗体の作用は細胞表面 NMDA受容体の架橋形成と内在化による可逆的な密度低下 であることが培養細胞とモデルマウスによる病態モデルから 明らかにされている。一方で近年,IgAやIgMクラスの抗体 はNMDA受容体密度に影響しないことが示された。AMPA 受容体,GABA受容体や代謝型GluR5に対する抗体もIgG1分 画が主体であり,受容体の密度低下を主な作用とする。一方 で,VGKC複合体ドメインであるLGI1やKv4.2の細胞外ドメ インであるDPPXに対する抗体は,IgG1とIgG4分画の両者か ら成り,LGI1抗体はシナプス間隙のLGI1密度を変化させず にADAM22との共役を阻害する機能障害を主な作用とする。

さらにDPPX抗体は,細胞表面DPPXとKv4.2の可逆的な密 度低下とともに,神経細胞の即時過剰興奮による機能障害を 引き起こすことが特徴である。本演題ではこれら神経細胞表 面抗体の作用に関する最近の知見から,自己抗体陽性の神経 免疫疾患における病態生理について議論したい。

S-06-5 グリア細胞からのアプローチ

○‌‌竹内 英之

横浜市立大学病院 神経内科・脳卒中医学

【略歴】

【現職】横浜市立大学医学部 神経内科学・脳卒中医学 准教授

【略歴】平成 7年 3月 名古屋大学医学部卒業 平成14年 3月 名古屋大学医学部大学院修了

平成15年10月 名古屋大学環境医学研究所 神経免疫学講座 助手 平成19年 4月 名古屋大学環境医学研究所 神経免疫学講座 助教 平成21年 9月  米国ペンシルベニア大学附属病院Visiting Assistant

Professor

平成24年 4月 名古屋大学環境医学研究所 神経免疫学講座 助教復職 平成28年 4月 横浜市立大学医学部 神経内科学・脳卒中医学 准教授

【専門領域】

神経免疫学、神経変性疾患、神経遺伝学

【所属学会】

日本神経学会(代議員、専門医)、日本内科学会(総合内科専門医)、日本神経 治療学会(評議員)、日本神経免疫学会(評議員)、日本人類遺伝学会(臨床遺 伝専門医)、日本神経科学学会(編集委員)など

【Editorial Board】

Scientific Reports(Handling Editor)、Neuroscience Research

(Associate Editor)、Clinical and Experimental Neuroimmunology

(Associate Editor)、Frontiers in Neurology(Reviewing Editor)、

Frontiers in Immunology(Reviewing Editor)

神経系は、固有のリンパ組織を持たず、強固な血液脳関門に よって免疫系の監視から免れる免疫学的特権部位と考えられ てきた。これまでの研究で、神経系においては、グリア細胞 が末梢の免疫系とは異なった独自の免疫ネットワークを形成 し、神経系の恒常性維持や免疫調節を担っており、病態下で は、神経細胞やグリア細胞の機能異常や神経外からの炎症性 細胞・因子の流入により、神経系の恒常性が破綻することが 判明してきた。

特に、近年では、多発性硬化症に代表される神経免疫疾患の みならず、アルツハイマー病・パーキンソン病・筋萎縮側索 硬化症・脊髄小脳変性症などの神経変性疾患、てんかん、脳 卒中、脊髄損傷、神経因性疼痛などの様々な難治性神経疾患 において、グリア細胞による慢性神経炎症の惹起・遷延化が 病態形成に大きく関与していることが示されている。

本講演では、これまで我々が進めてきた、グリア細胞を標的 とした神経疾患に対する新規治療法開発について紹介した い。

22 日 シ ン ポ ジ ウ ム

ドキュメント内 プレナリー (ページ 77-80)

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