座長:重藤 寛史
九州大学大学院医学研究院・保健 学部門・検査技術科学分野寺田 清人
静岡てんかん・神経医療センター てんかん科≪ねらい≫
てんかんはcommon diseaseであり正確に診断がなされ、適 切な治療が行われることでおよそ7割の方で発作が抑制され る。てんかん診療においては、てんかんの背景疾患(病因)や 併存症がより臨床的に重要な意味をもつ場合も多い。本シン ポジウムではてんかんのある方においてみられる併存症の診 断と治療、および鑑別についてエキスパートの先生に最新の 知見を踏まえて、概説いただく。
後援:日本てんかん学会
G-01-1 睡眠異常症とてんかん
○岡 靖哲
愛媛大学医学部附属病院 睡眠医療センター
【略歴】
京都大学医学部卒業
2000年 InstituteofNeurology,UniversityCollegeLondon修了
(MasterofScience)
2005年 京都大学大学院医学研究科臨床神経学分野修了(博士(医学))
2005年 財団法人神経研究所附属代々木睡眠クリニック副院長 2007年 広島睡眠クリニック院長
2009年 愛媛大学医学系研究科睡眠医学講座准教授(兼任)
2012年 愛媛大学医学部附属病院睡眠医療センター長(現職)
日本神経学会専門医・指導医,日本臨床神経生理学会脳波認定医,日本睡眠 学会評議員・認定医,日本精神神経学会専門医
CertifiedInternationalSleepSpecialist(AmericanBoardofSleep
Medicine)
InternationalRestlessLegsSyndromeStudyGroupMember てんかんにおいては,睡眠の問題を訴える患者が多くみら れ,また睡眠不足や睡眠の障害がてんかん発作を促進したり,
睡眠異常症の治療がてんかん発作を抑制する場合もあること から,てんかんと睡眠との間には相互に密接な関連がある.
てんかんと睡眠の関係を考えるうえで,睡眠不足あるいは 睡眠を障害する疾患,例えば睡眠時無呼吸症候群といったよ く遭遇する疾患が,てんかんの増悪につながり,逆に睡眠の 障害の治療・改善によりてんかん発作の頻度を減少させうる ことは,まず把握しておくべきポイントといえる.
また睡眠異常症の中でも,夜間の運動を伴う疾患は,睡眠 関連てんかんとの鑑別が必要となる.脳波の長時間記録,あ るいは終夜睡眠ポリグラフィ(polysomnography : PSG)が 鑑別に有用であるが,ビデオによる行動の記録も欠かせない.
睡眠時随伴症(parasomnias)には,ノンレム睡眠からの覚醒 障害としての錯乱性覚醒,睡眠時遊行症や睡眠時驚愕症,レ ム睡眠関連のレム睡眠行動障害や悪夢障害などがあるが,周 囲からの行動の様子の情報のみでは必ずしも鑑別は容易で はない.また,睡眠関連運動障害(sleep related movement disorders)の中にも,周期性四肢運動障害や,睡眠関連下肢 こむらがえり,睡眠関連律動性運動障害,睡眠時ひきつけ等,
睡眠関連てんかんと鑑別を要する疾患が多くある.さらに,
夜間の運動異常と,睡眠時無呼吸症候群などの睡眠異常が併 存することも稀ではなく,病像をより複雑にする.想定外の 睡眠異常が隠れていることも,常に考慮する必要があるとい える.
このように,てんかん診療,睡眠医療のいづれにおいても,
てんかんと睡眠との関連性を念頭に置くことで,診断および 治療の両側面において患者のより良いマネジメントに結びつ くことが期待される.本シンポジウムでは,てんかんと鑑別 を要する睡眠異常症について,その診断・治療のポイントを 解説する.
23 シ ン ポ ジ ウ ム 日
5月23日(木)15:35 ~ 17:35 第11会場(大阪国際会議場12F 会議室1202)
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G-01-2 脳卒中とてんかん
○田中 智貴
1,21 国立循環器病研究センター、
2 シンガポール国立大学
【略歴】
2005年3月 島根大学医学部 卒業
2005年4月 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 臨床研修医 2007年4月 独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 神経内科レジ 2008年4月 国立循環器病センター脳神経内科 レジデントデント
2011年4月 国立循環器病研究センター脳神経内科 専門修練医 2013年4月 国立循環器病研究センター脳神経内科 医師 2017年4月 京都大学医学部神経内科 研究員
2018年7月 National University of Singapore, Pharmacology, Visiting Research Fellow
脳卒中とてんかんは、一見異なる疾患群のように見えるが、
高齢者における新規発症てんかんの約半数は脳卒中が原因で あり、また、脳卒中の側から見ると、全脳卒中の約10%が脳 卒中後てんかんを後遺症として合併し、お互いに非常に密接 な関係を持っている。
近年、血栓溶解療法や血管内治療等、脳卒中急性期治療の 著しい進歩により、脳卒中死亡率は改善してきているが、超 高齢化社会である我が国において、脳卒中は依然増加してお り、その結果、脳卒中生存者(Stroke Survivor)が急増して いる。Stroke Survivorにおける合併症の一つとして頻度が 高いものであるが、脳卒中後てんかんは発症予測が困難であ る。また、一旦発症すると発作の再発率も高く、突然の全身 痙攣、意識障害をもたらすため、Stroke Survivorにとって 脳卒中後てんかんは身体的、精神的負担を強いることとなる。
また、我々の研究報告では脳卒中後てんかん289例において、
痙攣にて発症した例は178例(63.4%)であったことからも必ず しも痙攣にて発症する訳ではなく、部分発作や複雑部分発作 で発症する例も多い。非痙攣性の脳卒中後てんかんは、意識 障害、麻痺、失語といった症状を中核症状として呈すること が多く、脳卒中再発との鑑別が重要になる。しかし,現状で は脳卒中後てんかんにおける診断基準はなく、てんかん、脳 卒中のそれぞれの検査等を用いて個々に判断しているのが現 状である。また、近年CAVEスコアやSeLECTスコアが報告 され、脳卒中後てんかん発症リスクの層別化が可能となって きた。これらのスコアの違いによって脳卒中後てんかんの発 症率は非常に異なるため、脳卒中後てんかんの診断をサポー トする重要な要素であると考えられる。
現在、我々は当院を中心として脳卒中後てんかんの多施設 共同観察研究を行っており、2019年9月末までのてんかん発 作再発の予後調査の予定である。現時点では研究の途中経過 であるが、この登録時のデータから脳卒中後てんかんの背景 因子、臨床所見、脳波所見、画像所見について検討しており、
脳卒中後てんかんにおける重要な知見を得ることができてい る。本発表ではこれらの知見とともに、過去の報告を踏まえ、
脳卒中後てんかんの診断スキームについて報告する。
G-01-3 認知症とてんかん
○松平 敬史
国立病院機構 静岡てんかん・神経医療セン ター てんかん科
【略歴】
2006年3月 徳島大学医学部医学科 卒業 2006年4月 徳島県立中央病院 初期研修
2008年4月 医療法人鉄蕉会 亀田総合病院 神経内科 後期研修 2012年4月 国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター てんかん科
レジデント
2013年4月 国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター 神経内科・
てんかん科 医員
2016年4月 浜松医科大学大学院 生体機能イメージング教室 大学院生 内科学会認定医、神経学会専門医、てんかん学会専門医・代議員
本邦は世界的に見ても急速な高齢者社会に突入している。
高齢者では認知症とてんかんは、年齢とともに発症率が増加 することが知られており、社会的な注目を集めている。高齢 者ではてんかん有病率は約1%と推定されており、その中で 側頭葉てんかんが多い。高齢者のてんかん発作症状は客観的 に目立たない為、発作自体に気が付かれづらく、発作後症状 が長く続く場合もあり、認知症との鑑別に苦慮することもあ る。また、近年の研究などから、認知症はてんかんを併発し やすい事や発作間欠期てんかん性放電を含むてんかん性病態 が認知症(認知機能障害や記憶障害)に対して影響を与えてい る可能性も示唆されている。臨床を行う脳神経内科医にとっ て、高齢者の認知症・てんかんはともに、診療でよく診る common diseaseであり、両者の併発や影響などの理解は重 要になっている。
本講演では、始めに高齢者でのてんかん・認知症の疫学、
実際の高齢者のてんかん発作症状を提示し、高齢者のてんか ん発作の臨床的特徴や認知症症状との類似点などについて概 説を行う。続いて、認知症がてんかんに与える影響:認知症 の中で、特にアルツハイマー病(AD)とてんかんとの関連や リスク、またADがどのようにてんかん性病態に影響を与え ているかなどをin vivo, in vitroの研究などを通して最近の 知見を交えて紹介する。最後に、てんかん発作周辺時や発作 間欠期時てんかん性放電がどのように認知機能や記憶障害な どに影響を与えているかを示し、認知症を伴っていない高齢 者に対しても、てんかんを正しく診断し治療する必要性につ いても概説を行う。