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225図 226図

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 5 : 付資料一覧 (ページ 52-62)

行ってはいけない 行ってはいけない

〔語形の採用と統合〕

 禁止表現のうち,「行ってはいけない」に相当する,

複文構造(順接の条件表現形式をとる前部分と,「行く」

という行為に対する否定的な評価を表す表現の後部分か らなる)の表現形式を見ようとした地図である。調査で は,「孫にむかって「そっちへ行ってはいけない」と言 うとき,どのように言いますか。《153》」という質問文 によってたずね,「行ってはいけない」にあたる方言形 を求めた。

 この項目では地図化にあたって,回答語形を,「行っ ては」にあたる部分と,「いけない」にあたる部分とに 分け,別々に地図化を行った。前者を225図,後者を 226図とした。ただし語形の分割の詳細については,後 の〔語形の記号化〕を参照。

 225図は,基本的には順接の条件表現形式の地図とし て見ることが可能である。近畿を中心に「イッタラ」な どのタラ,その両側の中部・関東・東北南部と,中国・

九州には「イッチャー」などのテワの類(東北にはテも 多く見られる)が分布しており,周圏分布をなしている。

また,青森・秋田などに「イゲバ」などのバ,に南九州 を中心に「イット」などのトがまとまっており,「と・

ば・たら・ては」という,共通語で類義関係にある接続 助詞が,それぞれ固有の地理的領域を持っている点が注 目される。同じく川頁接の条件表現でありながら用法の異 なる,第3集の仮定形,第4集の条件表現の項目との比 較も興味深い。

 226図では,「イケナイ」の類の他に,「マイネ」「ワ ガンネ」「ワリ」「ダメダ」「ダチャカン」「アカソ」「イ カン」「デキン」「ナラン」など,さまざまな表現形式が,

それぞれの分布領域をもって広がっている様相が見られ る。これらの形式の多くは,第4集172図「行ったって だめだ」に現れる形式と共通しているが,相違もある。

 二枚の地図を合わせ見ることで,「行ってはいけない」

という複文的表現による禁止表現のバリエーションを見 ることができる。

A.語形の採用

A−1.使用状況等が採用条件に合わない回答  語形の採用にあたり,回答状況が採用条件に合わない

ために不採用としたのは次の回答である。

  5609.54[壁ttew鴛genad〈若い人が言う。>

  5720.84[itt∫a:ikenai]〈女>

  6624.54[itt∫a:重ken璃。]〈これはよほどのおばあさ    んが使う。男は[ikenae:]とは言わない。

  7331.32[ik anna]〈女が言う。>

  7349.91[it:a=dam〔狛naika]〈若い者>

5720.84,6624.54,7331.32の話者は男性である。

 次の回答は,話者が使用するかどうかあいまいなので,

不採用とした。

  2761.66[egebamanehandeegαlnaQte]〈?〉

 次の回答の第1答は,話者によって取り消されたもの と見て,不採用とした。

  7400.15[it:ewaikenai]

   ク  [it∫a:ikaN]〈第1答を改めてこちらを提示〉

 一方次の回答の第2答の注記は,第1答を積極的に取 り消してはいないと見て,第1答は採用した。

  6378.90 [itt∫aikeNjo]

   ク  [itt∫aikeNdo]〈こちらが」良い・〉

 また,次の回答の注記には,《151》《152》の回答へ の言及がある。

  6560.22[イッタライカン]

   ク  [イッタラアカソ]

   〃  [イッタライカンノンデス]

   〈《玉53》があるなら,《151》《152》の回答中,

   《153》に該当するものは取り消す。〉

この注記は,類似の回答を繰り返す必要はなかった,と いう意味であって,質問文の文脈で使えない,というこ

とを意味するものではないと考え,《151》《152》から 回答を削除することはしなかった。また,《151》

《152》《153》は採用の範囲が共通であるという事情も ある。なお,この地点の《151》《152》の回答は,次の

とおり。

《151》[イキナ][イキナヨ][イカントキ][イッタラ     アカンネンデ]

《152》[イッタライカンユータラ][イクナユータデ     ショ][イッタラアカンノ][イクナユータライ     クナ]

 この項目では,終助詞の採用と統合にあたって,Aα 方式をとった。これにより,不採用となった終助詞付き 回答は,次のとおりである。

  3721.11 [egebε聖jazanεdo]

  3747.46[弓ttewagannεe=dzo:]

  4730.59[Yttewaffdz山:]

  4761.07[ettewagannε=deba]

  4763.11 [eη山nana:]

  5597.68[イッテワアカンゾヨ]

  5598.95[イクナヨ]

   ク    [itt∫a:ikenejo]

  5702.35 [ette壁gen(ミlo:]

  6358.43 [it隻la:ikenlo]

   ク    [itOa:ikenke:na:]

  6557.65 [itt∫a:akanga重]

  6435.04[イッチャーイケンゾ]

  6440.35 [itqa:ikende]

  6457.60[イタラアカンドー]

  6486.58[イタライカンゾー]

  6504.96 [ittaraakanze]

  6560.22[イッタライカンノンデス]

  6622.97[itt∫a:dam句。]

  7427.06 [itaraakand30:]

   ク    [itaraakanzo:]

   ク    [itaraikand30:コ    ク    [itaraikanzo:]

  8352.08 [ittod3anedo]

 6560.22の回答では,「ノンデス」の部分を終助詞とし て扱っている。これは,「のだ」にあたるものを終助詞 としたのと平行するものである。

A−2.意味的・文法的な観点からの採否の検討  語形の採用については,基本的に,「3.1.A−2語形の採 用」で述べた,禁止表現全体の方針(「行くな」のよう な直接的で単純な禁止の形だけでなく,「聞き手(=孫)

に対して,「行く」という行為を行わないように求める 表現」と見られるものは,間接的な表現を含めて広く採 用する。)に従っている。

 想定された聞き手が「孫」ではないと見られるために 不採用とした回答と,「行く」にあたる動詞を用いてい ないために不採用とした回答は,「3.1.A−2.」の中で挙げ

た。

A−3.参考話者

 採用の条件を満たしているので,参考話者の回答とし て地図上に登載したのは,次の回答である。

  6629.13[itt∫aoine](丸熊二氏の回答)

  8303.70[イタチャナランゾ]

いずれも,これまでも参考話者として採用している同席 者による回答である。

 一方次の回答は不採用とした。

  0776.88[イッタライケナイコ(安井氏の回答)〈そ    れは先生のことばだ。〉

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同席者は経歴が不明であり,また,話者はこの語形を使 用しないと見られる。話者の職業は職人である。

A−4.採用した語形について

 最後に,採用した語形について説明を加える。

 まず,終助詞の認定について取り上げる。225・226 図「行ってはいけない」では,基本的に,221・222図

「行くなよ(やさしく)」,223・224図「行くなよ(きび しく)」において,語形の「後半」とした部分(222図,

224図に登載した部分)を,「終助詞」として扱った。

そのため,一般に終助詞とされているものを終助詞扱い しなかったり,通常終助詞とされない形式を終助詞とし て扱ったケースがある。この点を中心に,問題となる点 とその処理について述べる。

 まず,一般に終助詞とされるもののうち,禁止を表す

「ナ」は終助詞として切り離さず,それより前の部分に

、含めた。「ナ」は,禁止の表現を構成する上で欠かせな い要素であると見られるためである。

  {列:ikuna, ikassjaNna, ig麺aOaNna

 ただし,次の回答は,「コト」を含めた全体で禁止の 表現を構成するとも見られるが,「コト」を終助詞とし て扱っている。

  6396.62 [ikaNkoto] → 〈ikaN−koto>

 一方,一般には終助詞とされないが,ここでは終助詞 として扱った形式に次のものがある。

 まず,「じゃないか」にあたる形式は,すべて終助詞 として扱った。例を挙げる。前半と後半への分割につい ては,「語形の記号化」で述べる。後の〈〉内のハイ フンより後が,終助詞扱いする部分である。

  4694.72[itt∫adameranekka]

      → 〈iccja一〉<darne−ranekka>

  5693.05[itt∫a:damed3anka]

      →〈ic(jaa一〉〈dame一三aNka>

  6488.48[イタラアケヘンナイカ]

      → 〈itara一〉〈akeheN−naika>

  6538.42 [itt∫a:akan3a:nae:ka]

      → 〈iccjaa一〉〈akaN−zj aanεεka>

  6662.49[itt∫a:dameda3a:naika]

      →〈ic句aa一〉〈dameda一勾aanaika>

  7349.91 [it∫a:ikan5anaika]

      → 〈i(jaa一〉〈ikaN一山anaika>

 これらの回答の「じゃないか」は,実質的な否定疑問 の意味を担うものではなく,「聞き手が了解しているべ

きなのにわかっていない」というような含みを持って,

話し手の判断を聞き手に持ちかける,といった働きを持 つものと思われる。このような働きは終助詞に通じる。

また形態の上で,「じゃないか」は,終止形(と同じ形)

か名詞(または形容動詞語幹)に接続しており,この点 でも終助詞に準ずるものとして扱う上で不都合がない。

このようなことから,この項目では,「じゃないか」に あたる形式を,終助詞として扱った。

 なお,「行くんじゃない」類は,次のように扱った。

  1778.45 [ikundena o] → 〈ikuNde一〉〈naijo>

  6368.60 [ikun3a:nai] → 〈ikuN勾aa一〉〈nai>

  6548.53 [iku3ane:dzo] → 〈至ku勾a一〉<nee−zo>

「行くんじゃ」にあたる部分を前半,「ない」にあたる部 分を後半とし,(「じゃないか」と違って」)「じゃない」

にあたる部分を終助詞扱いしてはいない。

 また,次のような「う」「のだろう」に相当する形式 も,実質的な推量の意味ではなく,「じゃないか」と類 似の意味を担うと思われる。

  7336.38[イッチャーワルカローガ]

      →〈iccjaa一〉〈warukaroo−ga>

  8394,21 [ikantojaro:] → 〈ikaN−tojaroo>

   ク   [ikantejaro=] → 〈ikaN−te3aroo>

   〃    [itat∫aikento3aro=] → 〈itacja一〉〈ikeN−tojaroo>

   ク   [itat∫aikent句aro:] → 〈itacja一〉<ikeN−t(ミjaroo>

このうち,8394.21の〈tojaroo><tejaroo>の部分は,終 助詞として扱った。終止形(と同じ形)に接続している ことの他,次に触れるように,「のだ」を終助詞として 扱ってきているのと,平行した扱いにもなる。一方,

7336.38では,「う」に相当する部分だけを終助詞と同じ ように切り離すことはできないので,〈ga>のみを終助 詞とした。

 これまでの『方言文法全国地図』での扱いと同様,こ の項目でも,「のだ」にあたるものは終助詞扱いしてい る。例を挙げる。

  3725,32 [弓ζ〕anendana・] → <e:〕ane−Ndanaa>

  3780.11 [eganεho曾:nda] → 〈eganεhoee−Nda>

  4657.79 [珀購[endadzo:] → 〈iηaNne−nadazoo>

  4677,98 [iηannεndazo] → 〈iηaNnε一Ndazo>

  5566.95[イッコトナランジャワイ]

      ・→ 〈ikkotonaraN−zj awai>

 次に,「というのに」「といったら」などにあたる形式 は,「〜テバ」のように,終助詞化が進んでいると見ら

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れる形式だけではなく,実質的な意味を担うと見られる ものも終助詞として扱った。これらの形式を除いた部分 に,他の回答と共通する形が現れることなどを勘案した。

次に例を挙げる。

  3747.46 [曾gumadε:ba] → <eguna−dεεba>

  3750,64[egebadamedadeba]

     →〈egeba>〈dameda−deba>

  5615.67 [egumat∫ulganni] → 〈eguna−cjugaNni>

  5731.69 [ikundane:tt∫重noni]

     → 〈ikuNda一〉〈nee−ccinoni>

 さらに,終助詞とすべきかどうか迷ったものに,次の 回答がある。

 次の回答の[na][ナ]の部分は,終助詞であるか,

形容動詞の語尾であるか,判断に迷った。

  4688.45[ettedamenazo:]→〈ette一〉〈dame−nazoo>

  5579.79[イッテダチカンナガイ]

      → 〈itte一〉〈dacikaN−nagai>

形容動詞の終止形の項目である,第3集145図「静かだ」

の,この地点の回答は,

  468&45 [suzukada]

  5579.79[シンビョウジャ]

であって,語尾は「ダ」「ジャ」となっている。そこで,

この回答では,〈na>以降を終助詞として扱った。

 また関連して,次の回答の[da]の部分は,終助詞の 可能性もあるかもしれないが,形容動詞の語尾として扱

った。

  3741.06 [egeb句at∫ikaNda] → 〈egeba一〉〈jacikaNda>

地点は秋田県北秋田郡阿仁町である。<jacikaN>の部分 は,語源的には「婬いかない」などに由来するものかと 思われる。しかし,秋田県教育委員会編(2000)『秋田 のことば』(無明舎出版,p.485)に,「失敗する」とい う意味で,「やちかんする」という語形が挙がっており,

「ヤチカン」が,サ変動詞の語幹として使われるようで ある。このことはくjacikaN>が名詞の性質を持つこと を示すと見られる。そこでこの回答も,「ヤチカンダ」

という形容動詞と見て採用した。

 終助詞の扱いについては,以上である。

 次の回答の注記からは,第1答と第2答に意味の違い があるらしいことがうかがわれる。

  1213.88 [?id3a:narannu]

   〃  [?ikipo切anarando:]〈複数形〉

「複数形」というのがどの部分にかかわるのか明らかで

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