250図 251図
B. 記号の与え方
次に記号の各要素と語形の各部との対応について解説
する。
B−1.記号の色
後前部を「類」に分類し,その類と記号の色とを次の ように対応させた。前部・後部に分割しない語形は「紺」
とした。
力類(ka, kla, ga, ke)・……・・……・…・・………水 ゾ類(zo, zoo, zu, zi, za, so, do, doo,
ro)……・…・……・………・…・……・…………茶 ガナ類(gana, gara, garaa, gaara, gera,
gaira, gaeera, karaa, Ngasa, Ngasaa,
Ngasama)…・…………・…・………・・………・…榿 ジャ類(勾ai,勾arO, jara, nattO, naεtO, natO,
daka, dagaN, dagasa, dara)…………・…・・赤 その他qu, N, zoka, gasira, deeNgara,ηa),
前部・後部に分割しない語形………紺
「力類」は,係助詞「か」に対応すると思われるもの,
「ゾ類」は,係助詞「ぞ」に対応すると思われるもの,
「ガナ類」は琉球地方に見られるgana, gara, Ngasaなど,
「ジャ類」は,断定辞(またはそれに由来する形式)で 始まるものである。
B−2.記号の形・塗りつぶし方・大きさ
記号の形は後後部の形態と対応させた。ただし,色が
「紺」の場合は,後部全体や語形全体の形態に対応する こともある。下に例を挙げる。
η・,9・(ガ類)…・…一・…一・………・………△
gadu, adu, katu(ガドゥ類) 一…・・………○
・……一………・・……・…・9…・…・…・…………q なし……・…………・・………・・…・………○
なお,一つの記号の形が二つ以上の形態に対応している のは上の「ガ類」「ガドゥ類」のみで,それ以外では,
記号の形と後後部の形態とが一対一に対応している。
さらに,後前部と後後部の組み合わせ等によって塗り つぶし方を変え,語形が互いに区別できるようにした。
また,後前部が非長音か長音かによって記号の大きさを 変えた。例えば次のようになる。
△〈d・・ez・9・〉
△〈…ez・…>
B−3.記号の方向・補助記号
記号の方向と前部の形態とを次のように対応させた。
第1集解説書34,35ページに示した記号の方向を上と
する。
上dare, daree, daare, rare, tare, tari, tani,
toO, tau 左上 dari
右上 daru, dar, taru, taruu, tar 左dak, daak, dag, daz, daaz, tak 右daN, dεN, taN
下dae, dai, daε 左下 dεε,dε
右下 daa, da,(塊a, taa, ta
以上によっても語形の区別ができない場合,補助記号 を用いた。例えば次のようになる。
△〈d・・ek・g・〉
△〈d・・eek・g。〉
254図 どこかに(あるだろう)
〔語形の採用と統合〕
共通語の「どこかに」に対応する,不定の存在場所を 表す形式を見るための項目である。調査では,「それは どこかにあるだろう」という共通語文を提示して,「ど こかにあるだろう」に相当する方言形式を求め,調査者 には「どこかに」に相当する形式を報告してもらった。
第1集には24図「ここに(有る)」が収められており,
この項目の回答において共通語の「に」に相当するのは どの部分かを見る上で参考になる。
以下,語形の採否について述べる。
まず,「方言文法全国地図』全体としての語形の採用 規則に合わないために不採用とした語形について述べ
る。
次の回答は,注記により話者の使用が不確かというこ とが示されているので,不採用とした。
6522.32[dokodoniar吻aro:]〈方〉〈?〉
次のものは,同席者の回答であるが,参考話者として の採用の条件に合わないので,不採用とした。
5675.77[dokonika](同集落生育の妻の回答)
次の地点における同席者(妻)の回答は,参考話者と しての条件に合わないので不採用となる。ただし,その 後に話者が同じ語形を回答している。
6398.07[dokk環pi](妻の回答)
[dokkεψiarud3aro:]
次に意味的・文法的な点から問題となるものについて 述べる。
意味的な問題から不採用としたのは次のものである。
6639.97[do:ndemo]
これは共通語の「どこにでも」に相当し,「あらゆる場 所にある」ことを意味すると思われる。この地点の疑問 表現aの他項目では,「か」相当部分に[ka]が用いら れており,[demo]が「か」に相当する形式というわけ ではなさそうである。よってこの回答は不採用とした。
次に,採用としたが説明を要するものについて述べ
る。
調査結果の報告に述語部分が記されている場合,述語 のテンス・モダリティが,調査で提示した「あるだろう」
に直接対応しなくても採用した。下に例を挙げる(「ど こかに」相当部分に下線を付す)。
0717.50 [dokkaniarしund3anaiga:コ 0746.69 [dokkaniaruI]
1739.28[dokokaniaruIkamo∫irenai]
3762.42 [dogoganYaruIdogodenega]
4712.25 [dokkanlattahandana:]
6480.23 [dokokaniarja:se【〕kano:]
7350.54 [dokokaniakkusai]
8248.18[dokkaattaijo:moN]
8372.47 [dokkalliattojo]
次の回答は,「どこかそこかに」のような,疑問詞
(+「か」相当形式)の後に代名詞が続く構成のもので ある。これらは,不定の存在場所を表すという点で意 味・文法的にこの項目のねらいに合致するので,全て採 用した。253図で「誰か彼が」等相当の形式を採用した のと同様である。
2784.51 [dogokats亡臼k即Y]
3702.83 [doQkakaQka]
3780.65 [dogogakagogani]
〃 [dogakagoganiコ 3781.21 [dogosogoganY]
651735 [dokozokanzoni]
6697.59 [dokkasokoir即i]
なお,2784.51(青森県東津軽郡平内町)の回答語形は,
松木明(1982)『弘前語彙』(弘前語彙刊行会,308ペー ジ)に,「どこかに」を意味する形式として記載されて いる「どこがかつかね」と類似していることから,この 類の形式と判断した。
次に,回答語形の構成が分かりにくいが,関連項目や 近隣地点の回答語形,先行研究を参照しながら採用とし た語形について説明しておく。
下の回答(地点は沖縄県八重山郡与那国町字与那国)
では,[mmja]が「どこ」相当部分,[arubaη]が「か」
相当の意味を表す部分と判断し,意味的・統語的にこの 項目のねらいに合致するとみて採用とした。
2072,20[mmj aarubaη]
「アルバン」については,平山輝男編(1988)『南琉球の 方言基礎語彙』(桜苗印,813ページ)に,「基本的にあ る事柄を例示するのに用いられる。それが文脈によって,
以下に記す意味も表すようになる」とされ,その意味の 一つとして「かやら(不確か)」が挙げられている。
次の回答については,253図の解説でも触れたように,
[dagaN]が「か」相当形式と考えられる。ただし,第 1集24図「ここに」では〈N>が回答されていることか ら,[daga]が「か」相当,[N]が「に」相当の可能性
もある。
6700.97 [dokodagaN]
次に,不明瞭な点・疑問が残るが,採用とした回答に ついて述べておく。
次の回答は,末尾の[du]は強意の助詞と思われる ものの,それ以外はどのような構成なのか不明である。
2085,16 [takahadu]
次の回答は,[dOYO]が「どこ」相当形式,[de]が 格助詞,[Ya]が「か」相当形式ではないかと思われる が,そうだとすれば,存在場所を表す助詞として[de]
が適当なのか疑問が残る。あるいは,[deYa]全体で
「だか」に対応する形式とも考えられよう。
5762.82 [doYodeYa]
次の1169.62,1261,16の回答については,末尾の
[jetiη][tiη]が,共通語の「でも」に相当し,全体とし て「どこにでも』 iあるだろう)」の意味かもしれないと いう疑問が残るが,採用とした。これについては253図 の解説を参照のこと。
1169.62[ma:ηka麺etiη]
1261ユ6[mamakatiη]
次の回答は,〈「どこ」相当形式+格助詞〉という構 成で,「か」相当の形式を含まないように見えるもので ある。地理的には岩手県と岐阜県に多い。
2775.21 [dogone]
3725,32 [dogosa]
3734.14[dogonl]〈ドコカニの意味もこれであり。>
3784.65 [dogonY]
5579.79[ドコネ]
5598.95[ドコニ]
5646.80 [dokoni]
5660.50[ドコニ]
これらは「どこにあるだろう」相当する疑問表現ではな いかと疑われるが,3734.14では,意味的に合致した形 式だという話者の注がある。そこで,上の語形は全て採 用とした。253図でも[dareoa]等の回答を採用として
いる。
採否には関わらないが,下の地点では,話者による回 答語形の意味に関する注記がある。
4712.40 [dosaga]
[dogonTga]
[dogosaga]〈方向を示す様な気がする。〉
[dogogasa]〈場所を示す様な気がする。〉
次の2つは,参考話者の扱いで採用した回答である。
6629.13[dokk興pi](丸熊二氏の回答)
7305.22[dokodo]〈父が言っていた。〉
次の3つは,表記レベルで語形の統合を行ったもので
ある。
7311.28 [dokkε嚇]
〃 [dokqjka]
7366.13[ドクィーカ]
7311.28の陶]という表記は,母音連続[ai]を表すと 考えられるので,回答語形全体をそれぞれ[dokkai],
[dokoika]とした。7366.13では,[クィ]は[kwiコと
いう音声を表すものと判断し,回答語形全体を
[dokwi:ka]とし,見出しでは<dokwiika>に統合した。
〔語形の記号化〕
A. 語形の分割
記号化に際しては,語形を「前部」と「後部」に分け,
さらに後部を「後前部」と「後後部」に分け,それぞれ の形態に応じて記号を与えた。
分割のしかたは,「前部」「後前部」「後後部」と語形 の構成要素とが,なるべく次のいずれかに対応するよう に決めた(以下,前部と後部の境界を一で表し,後前部 と後後部の境界を=で表す)。
(1) 「どこ」相当形式一「か」相当形式=「に」相当 形式
(2) 「どこ」相当形式一「に」相当形式=「か」相当 形式
以下,分割の具体的な手順を説明する。
「前部」と「後部」を分ける際には次の手続きをとつ 163
た。
1 原則として2モーラ目までを前部,残りを「後部」
とする。
伊U:doko−kani, dok−kani, daa−garani
2ただし,次の場合は例外となる。該当する語形を すべて挙げる。
2−12モーラ目と3モーラ目が長母音をつくる場合,
3モーラ目までを前部とする。
?idaa_kanaN
2−2次のものについては1モーラ目のみを前部とす
る。
do−niga, do−saga, ma−Ngarakaci,
ta−kahadu, za−Ndara
2−3次のものについては,「前部」と「後前部」を分 割せず,2モーラ目まで(3モーラ目が促音や長 音の後部の場合は3モーラ目まで)を「前部+後 前部」とする。該当する部分は()で括って示 す。
(doke) =ka, (doke) =kani, (doke) =勾ai,
(doke) =natto, (doke) =nattoN,
(dokee) ;ka, (dokee) =勾ai, (doge) =ga,
(dokek)=ka,(dokii)=ka,(dokwii)=ka,
(dokoo) =ka
これらは,上の(2)に対応する構成で,「どこ」相 当の部分と「に」相当の部分が融合していると思 われるものである。
「後前部」と「後後部」の分割は,次のようにした。
1原則として,後部の頭から1モーラ目を後前部と し,残りを後後部とする。後後部がない場合もあ る。
例:doko−ka=ni, doko−zo=e, doko−zo=なし,
doko_ni=ka
2 ただし,2モーラ以上を後前部とした場合がある。
例:doko−doo=e, maa−gana=nakai,
doko−jara=ni, maa−deNgara=可a,
N切a−arubaN=なし
3次のものについては,「後前部」と「後後部」を分 割しない。これに該当する後部は()に括って 示す。
dok一 (kε), dok一 (kεε), doko一 (kεε),
dok一 (kiaa), dok一 (kaa), doko一 (zee)
これらは,上の(1)に対応する構成で,「か」相当の部