235図 236図
F. 語形の部分統合
凡例上の見出しでは,推量表現という点に直接関わら ない部分について,語形の一部を統合して示す場合があ
る。
すなわち,237図・238図においては動詞語幹に対応 する部分であり,例えば,ikudaroo, igudaroo,
iηudaroo, egudaroo, jukudarooの5つの形式は,
〈(ik,ig,iη,eg,juk)udaroo>のようにまとめて見出し語形 とする。また,239図においては動詞部分を対象にし,
例えば,itadaroo, ikitadaroo, ittadaroo, itekitadaroo,
ettadarooの5つは,<(i,iki,it,iteki,et)tadaroo>のように 見出し語形とする。また,240図においては「雨」の部 分について,例えば,amedaroo, amYfdarooなら
く(ame,am買)daroo>のようにまとめる。
G,記号化の方法
推量表現の4項目については,可能な限り記号の統一 をはかった。第3集の推量形項目の方法を取り込みなが ら,それとは別の方法によった。すなわち,第3集では 動詞の活用語尾を重視した記号化になっているが,ここ では推量の意味を担う付属形式に比重:を置いた記号の与 え方を行った。
G−1.終助詞付き回答の記号化
原則として,終助詞の付かない同形と対応する記号に,
真下方向に一本線を付けた記号とする。この点,この地 図集の全体方針に従っている。
G−2.二次的な形式の記号化
「〜ので(は)ないか」など二次的な形式(第3集
「推量形」の記号化では「語彙的回答」と呼んだ)につ いて最初に述べておく。
二次的な形式は,「前部」「後部」などの分割を行わず,
全体で次のように記号を与える。
【記号の色】 紺に指定する。
【記号の形】 原則として線記号とする。
【記号の向き】 適当に与える。
各地図に共通の形態にはなるべく同一ないし類似の記 号が与えられるよう配慮するが,形式のバリエーション が豊富なため,難しい場合が多い。
以下,一般的な形式について述べる。
G−3.語形分割の方法
まず,形態上の特徴により語形を分割する。語形の全 体を「前部」「中部」「後部」の3つの部分に分け,「中 部」については,さらに「中前部」と「中後部」とに分 割する。
具体例を挙げる(以下で扱う音形は,音声統合後の見 出し語形の音形である)。
237図「行くだろう」・238図「行くのだろう」
前部一 中部 一後部
中前部・中後部
UUUU lKlKlKlK U UUU幻UUUOUUUU
亜止止止査止止磁止口止 9レ賎
.1U UUCk U
■19止賢勝19なし・da no ・da N ・da to ・da to 勾a ga ●勾a C ●cja なし・なし なし・なし なし・da なし・zu なし・なし なし・なし なし・da no ・da なし・na なし・なし a ・da N ・dara
なし・ja なし・m なし・なし 239図「行っただろう」
前 部 一 中 部
itta ita itta
中前部・中後部 なし・da なし・da no ・da
00000000
r r r r00000000
r r r rr r r r
ZShQり 01D﹄UbtO10 0aaa eeeeeUaaO
0eeee ・m.別肱
後 部
000000 rr
r
itta
iCCU
itta itta itta
?izja
?i勾a
なし・なし なし・なし なし・zu N ・da N ・dara なし・N なし・ru 240図「雨だろう」
前 部 一 中 部
ame
arne arne
ame ame ame ami ami
中前部・中後部 なし・da naN ・da naN ・da daN ・de なし・da なし・dara duja●ee ru .laru 分割の原則を解説する。
⑦「前部」
roO roO ra bee ZU sani pazi
後 部
roO roO roO ra bee ZU sani hazi
237図・238図においては,語頭から数えて2拍目ま でを「前部」とする。この場合の「前部」は「行く(の)
だろう」の「行く」(動詞)の部分に対応している場合 が多い。ただし,例えば,琉球方言の上記?ikjurooや
?ikuruhaziにおいて,動詞の一部が「中後部」や「後部」
へと分割されるなど,そのようになっていない場合もあ
る。
239図においては,原則として語頭から数えて2音節 目までを「前部」とする。ただし,ikita〜, i(t)
ttekita〜, itatekita〜, ettekita〜の形をとるものは,そ の部分までを「前部」とする。「前部」は「行っただろ う」の「行った」(動詞+過去の付属形式)の部分に対 応している場合が多い。ただし,例えば,琉球方言の上 記?izjaNsaniや?izjarupaziのように,過去形の一部が
「中後部」へと分割されるなど,そのようになっていな い場合もある。
240図においては,原則として語頭から数えて2拍目 までを「前部」とする。ただし,am買〜, aami〜,
aNme〜, ameko〜の形をとるものは,その部分までを
「前部」とする。「前部」は「雨だろう」の「雨」の部分 に対応する。
②「後部」
語末から見て形態的に一定のまとまりをなす部分を
「後部」とする。例えば,上の例で「後部」として示し た形態は,同じ地図の中で,また,複数の地図にわたっ て共通に現れることから,これを「後部」と認める。も っとも,この認定方法は,特定の形態的条件によらない ため,恣意的にならざるをえない部分がある。なお,
「後部」は推量の付属形式の一部ないし全体に対応する ことが多い。
③「中部」
回答形式から「前部」と「後部」を除いた部分が「中 部」である。「中部」は,上記の例で「なし」と示した ように,存在しない場合もある。「中部」が存在する場 合は,それを「中前部」と「中後部」とに分割する。そ の際,「中後部」は存在しても「中前部」が存在しない ケースが出てくる。逆に,「中前部」だけがあって「中 後部」のないケースは作らない。つまり,「中後部」を 優先的に認定することにする。具体的には,同じ地図で,
あるいは,複数の地図で共通して現れる形態であること を手掛かりにするが,恣意性な判断を免れない。なお,
237図・238図・239図では,「中前部」が「のだろう」
の「の」(準体助詞)にあたり,「中後部」が「だ」(断 定の助動詞)にあたる場合が多い。240図では,「中後 部」は同じであるが,「中前部」はさまざまなものを含
む。
G−4.記号化の実際
①「前部」の形態→【記号の大きさ】【下に二本線の 付加】
237図・238図・240図では原則として記号に反映さ せない。したがって,基本的には線の付かない小記号が 与えられるのが普通である。ただし,「中部」「後部」の 記号化によっても区別ができない場合に限って大記号を 用い,それでも区別できない場合,さらに記号の下に二 本線を付加する。終助詞付き回答は,そのことを示すた めに下に一本線を付けるので,合わせて下に三本線が付 くことになる。なお,線の付加は,「後部」の記号の向 きが決定した上で,それに対して行う。
例えば,次のとおり。
237図「行くだろう」
△△A帰A儲
〈ikubee>〈egobee>
〈(i,e)Nbee>
〈eNbeejaa>
239図では,〜taの形をとるもの以外はすべて大記号 とする。さらに区別が必要な場合,まず,記号の下に二 本線を,次いでハの字に開いた二本線を用いる。
②「中前部」の形態→【線の付加(形と位置)】
何種類かの形の線を,下を除く,記号の7つの位置に 付加して区別する。なお,線の付加は,「後部」の記号 の向きが決定した上で,それに対して行う。
237図・238図・239図では次のように与える。まず,
線の形から示す。仮に,円形記号に付加したものとす
る。
「中前部」なし 線なし ・・系 Q
9・系 6
・系 6
t・系 δ
次に,線を付ける位置を示す。
no系 N no nON ne
NmUN
na naN ga系 oa Nηa ga gaN kaN a系 waN aN at jat上上 下下 上右左右左右左 下 上下 右右左左左 下 上下 左左右右
。・z(促音)上 a
ba to系 to te CU
左右 上右脚
上上
so 左上 ho 左
toko 左下dogo 右下
240図では,「中後部」「後部」の記号化によっても区 別できない語形が残った場合に限り,直線を付加して区 別する。付加する位置は,まず記号の上,次いで記号の 右とする。
③「中後部」の形態→【記号の塗りつぶし方】
一定の形態に対して一定の塗り潰し方が対応するよう にする。円形記号,三角形記号,四角形記号など,記号 の形の違いにかかわらず塗りつぶし方を統一する。その 際,形態の類似度に応じて記号の塗りつぶし方を変えて いく。例えば,
d・■■▲
勾a罪囚 ja國皿
「中後部」なし ロロ ム
のようにする。ただし,実際には「中後部」の形態のバ ラエティーが記号の塗りつぶし方の限界を越えているた め,おおまかな与え方にならざるをえない部分がある。
どの形態に対して,どのような塗りつぶし方が与えら れるか,ここに詳細に示すことはできない。ただし,第 3集の推量形項目の記号化は,この点に関してここでの 方法と基本的に同じであるので,第3集解説書42〜48 ページの表2(「後後前部」)によって見当をつけてもら
うことができる。
④「後部」の形態→【記号の色】【記号の形】【記号の 向き】
一定の形態に対して一定の記号の色,形,向きが対応 するようにする。
まず,紺を除く5つの色を,次のように与える。
roo類・raa類・doo類・o類・noowa類 zu類
bee類
sani柴頁・hazu類 gotta類・kamo野
水緑赤榿茶
そもそもすべての形態を5色に合わせるように分けるの は無理があるが,例えば,水色の類は,〜ooをもつも のを中心にまとめるなど,ある程度形態上の類似性を反 映させた分類にしてある。
なお,第3集の推量形では,記号の色を動詞の活用部
分に与えたので,この点,ここでの処理と大きな違いが
ある。
次に,形態の最初の音を重視し,全体の姿も考慮しな がらさらにいくつかのグループに分類し,記号の形を与 える。例えば,次のようにする。
roo To 正方形記号 rっっ・raa・ra 長方形記号 joO・jo 紡錘形記号 bee・bea・be・bεε・bε ニニ等辺三角形記号
続いて,それぞれのグループの中を,記号の向きによ って区別する。その際,形態の2番目以下の音が各グル ープ問に共通するものについては,同じ向きが与えられ るよう配慮する場合がある。例えば,b〜, Nb〜, p〜
の類で次のようにする。
〜ee 真上向き 〜e 右下向き 〜εε 真下向き 〜ε 左下向き
なお,これらの記号化の詳細は示すことはできないが,
第3集の推量形項目の記号化は,この点に関してここで の方法と同じである。したがって,「後部」の記号化の 概要は第3集解説書42から48ページの表2(「後後後 部」)によって知ることができる。
⑤ まとめ
以上,記号化の規則を述べた。これを,記号のどの要 素が,語形のどの部分を反映するかという観点からまと め直すと次のようになる。
【記号の色】 「後部」
【記号の形】 「後部」
【記号の向き】 「後部」
【記号の塗りつぶし方】
【線の付加(形と位置)】
【記号の大きさ】
【下に二本線の付加】
【下に一本線の付加】
「中後部」
「中前部」
「前部」
「前部」
「終助詞付き回答」
また,具体例により解説すれば,例えば,237「行く だろう」の
申<ig・ N d・ … 一naa>
前部 中前部 中後部 後部 終助詞 においては,
【記号の色】(=水)が,「後部」がroo類・raa類・
doo類・o類・noowa類のいずれかであることを,
【記号の形】(=正方形)が,「後部」が上記の中で rooないしroであることを,
【記号の向き】(=上)が,「後部」が上記の中で rooであることを,
【記号の塗りつぶし方】(=べた)が,「後後部」が daであることを,
【線の付加(形と位置)】(=直線・上)が,「中部」
がNであることを,
【下に一本線の付加】が,「終助詞付き回答」である ことを,
それぞれ示していることになる。
G−5.凡例における記号の並べ方
まず,【記号の色】により大きく分け,次いでそれぞ れの色の中を【記号の形】によって分ける。さらにそれ ぞれの形の中を【記号の向き】によって細分する。以下,
【記号の塗りつぶし方】【線の付加(形と位置)】【記号の 大きさ】【下に二本線の付加】の順に優先して配列する。
なお,終助詞付き回答(【下に一本線の付加】)は,終 助詞の付かない同形での採用語形があれば,その見出し の直後に位置させる。終助詞の付かない同形がない場合 は,その位置を想定して同様の処理を行う。
7.2.各階の説明
237図 行くだろう
〔語形の採用と統合〕
推量表現に関しては4つの項目を取り上げたが,その 中でこの地図は最も基本的な形式を見るための地図であ る。質問文は次のとおりである。
友達から「あの人は今日役場に行くだろうか」と聞 かれ,迷いながら「たぶん行くだろう」と答えると き,どのように言いますか。 《165》
なお,第3集の「推量形」でも112図「書くだろう」,
113図「来るだろう」,114「するだろう」の3項目を取 り上げており,それらと比較することで動詞「行く」の 場合はどうか知ることができる。第3集の「推量形」は 動詞の活用語尾にあたる部分が記号の色に反映されてい るが,この地図では「だろう」にあたる付属形式の部分 が記号の色の違いとして見えるようになっている。
推量表現の4枚の地図に共通する問題は,すでに7.1.
「推量表現の概要と記号化」で述べたので,ここでは個