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A. 本図のねらい
話し手が自ら「行く」という動作を実現しないという 意図的・積極的な志向を表す打ち消し意志表現「行くま い」を表す時に,どのような表現が各地で用いられるか を見ることを目的とする。質問文は
「もうそんなところへなんか,けっして行くまい」
と心に決:めるとき「行くまい」のところをどのように いいますか。(「イカナイ」などでも可。)
である。
B.採否の方針
B−1.使用状況等による採否
以下は,これまでに不採用としてきた参考話者の回答 であり不採用とした。
5670.47[igandzo](同席者の回答)
6277.12[ikanjo](平山氏)
6437,94[ikeheN](ゆ)(同席者の回答)
7308.05[ikuma:匂a](同席者の回答)
7308.05の回答は参考話者が複数いて,いずれも出生 年・居住歴が不明のため不採用とする。
一方,次の回答の注記にある熊二氏とは第一調査票話 者であり,中道氏は採用する参考話者であるので採用す
る。
6531.61[{konrindzai}ikaheN](中道氏)
6629.13[igulnε:toomou](負農二氏)
次の注の「老人」とは自分より上の世代を指していると 見て,参考話者回答の扱いとした。
1778.45[ikane:]〈古,老人が言う。〉
次は使用状況がGAJの採用条件に合わないことから から不採用にした回答である。
6434.04[ikuma=]〈他,?>
7312.88[ikume:]〈聞いたことはあるがあまり使わ ない。〉
次の回答も注記から不採用にした。
6477.12[イキャスマイ](ゆ,?,後の《166》でイ ケスマイという回答が出て,マイがあったので,
他の土地の者にきいたところ,イキャスマイは言 うが,イクマイは言わぬとの答えであった。)
次の回答の注記は回答が「行かないでおこうよ」の意 味に相当するという指摘であると考えられる。
6594.20[ikantookorai](これは勧誘の形)
しかし,あくまで調査者の注記であるのでこのまま採用 した。次の回答の注記も同様のものと判断し,この回答 は採用している。
4609.53[egumondeammet∫a](ゆ,鶴岡にあるとい うイカマイのような表現があるかと誘導したとき の答がこの回答である。このマイは推量のように も思われる。話者の言葉で,[egomme:]は「行 かないだろう」の意で推量打ち消しであるという。
決意の打ち消しにはマイを使わないらしい。)
B−2.意味的な観点からの採否
質問文に,「もうそんなところへなんか,けっして」
という前置きが付いているため,「行くまい」にあたる 回答の前に,副詞が付けられている回答が多かった。例 えば「二度と」「けっして」「何があっても」などである。
調査者が質問文が求めている分だけを報告した場合と,
副詞的部分も報告した場合とがあると思われる。これに 相当する部分は採用語形に含めなかった。削除した部分 を1}で括って示す。
(1>「絶対・決して」の類 0840,33 [{kess責e}ikanεbe]
1942.62 [{zettai}ikanai]
3649.73 [{d3ettaY}lgane]
3734,14 [{d3etaη9ganaY]
4706.43 [{dzettae}iηanε毘]
0247,31 [{?issai}?i1りaη]
(2)「二度と」の類
0717.50[{nidoto}ikane:natoomo:sa]
1801.80 [{nidoto}ikaNzo]
1865.54[{nidoto}ik田moηka]
1920.05[{nidoto}ikanai]〈イクマイとは言わない。>
4598.07 [{nidoto}ikaNコ
(3)「もう」の類
0746.69[{mo:}ikanaiwa](「行くまい」は出ず。)
1807.12[{mo:=}ikulmai]<モーに感情を込める。>
3761.75 [{ado}egane]
3762.42 [{ado}εganε]
4647.69 [{ato}iganε]
6510.74[{mo=}ikaN]
6563.87[{mo:}ikotowaomowah弓N]〈前の印象が悪 かった場合>
0246.88[{Jla:}?i幻am]
0248.01 [{n a:nYr両a}?ikaO]
[ado]やいa:]も「もう」の意である。 naanlr両aは
「もう二度とは」の意味である。
(4)「どうしても」の類 3752.79 [{∫fntatte}eganε]
3774.64 [{nantatte}¢ganε]
3780.65 [{nanbo∫atte}eganε]
4706.43[{nambo∫itemo}iηanε判(ゆ)〈多>
560299 [{donnakoto∫itatte}ekando]
6510.74[{donnakotoηaattemo}ikaN]
7659.31[{adaN∫itemo}ikoklpiwanarinne:]
(5)その他
6378,06[{ha:}ikuma:]
7659.62[{hara}ikinakots田moridara]
動詞の部分については,「行く」という動詞を含む回 答を採用した。沖縄の「パルン」も意味的に「行く」に 相当するとして採用する。232図「行こうと思っている」
と同様に,八丈島の「デル」も採用している。「〜テクル」
「〜テミル」「〜テミテクル」を含むものも採用した。
次の回答は「行く」にあたる動詞がないため不採用と した回答である。
1169.62 [narao]
1739.28[moJamet句ameta]
2784.51[jamer山domoQterad3a]
6573.32[iraN](「入らん」の意ならん。)〔イランは 不必要の意でなく,イカントコと同じ意〕
表現の内容については,次のような判断をした。
「(どうして)行こうか(いや行くまい)」のような反 語的表現は採用した。例を挙げる。
2791.57[eg曲moNdaba]
ク [egεbε]
4609.53[eggumondearo・ba](直接意志表現でなく,
反語の表現である。)
5579.12[ikumqpd3ai]
ク [ikadzu]
6526.55[イコケエコ
7382.77[ikukai](このように反語的表現をとるの が普通の由)
279L57と4609.53の回答中のbaは反語を表す形式と みなした。反語的表現かどうかの判断は,終助詞による ことが多いが,中には採用部分の前についた語形が参考 になることもある。以上のうち,採用にあたって削除し た前野部分から反語と判断しているものを次に挙げる。
{}に括った部分が削除した前接部分である。
2791,57[{da:}egεbεコ(「誰が」にあたる)
5579.12[{dare}ikumqpd3ai]
〃 [{dare}ikadzu]
7382.77 [{11aN∫ite}ikukai]
他に,直前の質問項目が先の232・233図の「行こう と思っている」であったためか,「行くまいと思う」の ように「思う」を付けている回答も目立った。これが,
直前の質問項目の影響なのか,当該地方では「思う」を つけて表現するのかという判断 はむずかしい。0276,51 のような注が付けられた回答もある。
0717.50[ikane:natoomo:sa]
3720.70[lganεdoomotteda](omouで切れるべきも の)
0276.51[?ikjuntsY?omoturai]〈行くとは思わない。
〜と思っていない。〉(分析的な表現しか出ない。
なお行くかときかれて行かないと答えるとき
?ikibaという)
ここでは,「思う」を含む表現はすべて採用した。
また,質問文の最後に(「イカナイ」などでも可。)と 添えられているとおり,語形上単純な打ち消しであって も意志を表すとして採用した。例えば次のようなもので
ある。
4598.07 [ikaNzo]
4677.98 [ikanai]
5622,19 [igana巧。]
6497.18 [ikeheN]
6521.94[ikaheNwa]
6651.93 [i1弓a:seNjo]
1231.72 [?it∫aη]
不可能表現は状況による事態の不成立を表し,意志性 がないとみて不採用にする。
4761.07 [1ηaεnε]
4676.57 [itterannε]
7266.14[ikarummonka]
0894.41 [ikarenai]
「ナラナイ」などの禁止表現は不採用とする。この表 現は禁止表現で出てきている。
4712.15[ettewagannε:bett∫a]
8324.40 [itat∫anarando]
1261.22 [?nd3e:naraη]
次の回答は「行く所ではない」と解すると意志性が無 いと見られるので不採用とした。
3781.21[lgtαdogodene](質問から外れた答え)
ただし,この地点,秋田県由利郡東由利町はdogoが形 式名詞に近く,「行くことはない」の意味である可能性 はある。
テンス,アスペクトについては問わないで採用した。
質問文の「心に決めるとき」にもいろいろな場合が想定 され,また,一度行ったことがある場所について「もう 行くまい」と思う場合を尋ねているためである。したが って,次の回答のようにテンスが過去時制でも採用し
た。
5642.29[ikanetomotta]
7504.72[ik田malomota]
終助詞についてはB方式で採用した。終助詞と見なし たものについていくつか補足する。
次の回答中の[ni=]は終助詞というより,「〜なのに」
という言いさし的表現である。
6387,62 [ikaNni:no:]
このような,接続助詞に由来する語形も終助詞扱いする ことにする。他にも同様の扱いをしたものにkara,keeが
ある。
6368.60 [ikanNke:]
6383.28 [i幻a:seNkara]
6387.62 [ikla:seNke:no:]
次の回答末尾のtomo,mON,haaも終助詞扱いにし採用
した。
3746.76 [曾ganε:ha:]
6385.98[i幻a:sentomo]
7363.12[イカンモンネ]
次の[ma:]は終助詞として扱った。打ち消し意志の
「マイ」ではないと考えられる。地点は福井県武生市だ が,藤原与一『方言文末詞の研究下』(597ページ)に よると,やや離れているが出雲地方に終助詞マーがある
という。
558479[ikantokoma:]
B−3.音声の統合
表記上の留意点として,次の地点がある。
5527,81[イカンゼァ]
調査者によると,ゼァのような,工段音+アの表記は
[εo]という音声を表している。音声内容上は[ikaNZεo]
となり,見出しでは〈ikaNZεa>となる。(第3集解説書 103ページ)
C.語形の統合
232・233図と同様に「行く」の部分に対し部分統合 を行った。ほぼ語幹にあたるこの部分の相違は本図のね らいではなく,また他の図を参照することでおよそ推定 することができるため,凡例の煩雑さを避けるために行 った。統合される部分だけを列挙すると次のようになる。
表記は地図見出しの表記による。
ik一/ikj一/ek一/ig一/eg一/iη一/eη一/εη一/u夏〕一/
juk一/jukj一/?ik一/?ikj一/?icj一/Ng一/Nη一/
例を挙げる。
ikumee igumee iuumee ekumee egumee eoumee jukumee
ikaN
?ikaN
?iklaN
?i(jaN
ekaN jukaN
〈(ik,ig,iη,ek,eg,eηjuk) umee>
〈(ik,?ik,?ikL?icj,ekjuk) aN>
2拍目が撲音・促音になる場合は,それぞれ擾音・促 音までを統合する。
lll細細](ゆ)}価}一〉
琉球で意味的に「行く」に相当する語である「パルン」
についても同様に語頭のpar一/hir一/har一/を統合した。