• 検索結果がありません。

本図のねらい

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 5 : 付資料一覧 (ページ 89-92)

…左

A. 本図のねらい

 話し手が自ら「行く」という動作を実現しないという 意図的・積極的な志向を表す打ち消し意志表現「行くま い」を表す時に,どのような表現が各地で用いられるか を見ることを目的とする。質問文は

 「もうそんなところへなんか,けっして行くまい」

 と心に決:めるとき「行くまい」のところをどのように  いいますか。(「イカナイ」などでも可。)

である。

B.採否の方針

B−1.使用状況等による採否

 以下は,これまでに不採用としてきた参考話者の回答 であり不採用とした。

  5670.47[igandzo](同席者の回答)

  6277.12[ikanjo](平山氏)

  6437,94[ikeheN](ゆ)(同席者の回答)

  7308.05[ikuma:匂a](同席者の回答)

7308.05の回答は参考話者が複数いて,いずれも出生 年・居住歴が不明のため不採用とする。

 一方,次の回答の注記にある熊二氏とは第一調査票話 者であり,中道氏は採用する参考話者であるので採用す

る。

  6531.61[{konrindzai}ikaheN](中道氏)

  6629.13[igulnε:toomou](負農二氏)

次の注の「老人」とは自分より上の世代を指していると 見て,参考話者回答の扱いとした。

  1778.45[ikane:]〈古,老人が言う。〉

 次は使用状況がGAJの採用条件に合わないことから から不採用にした回答である。

  6434.04[ikuma=]〈他,?>

  7312.88[ikume:]〈聞いたことはあるがあまり使わ    ない。〉

 次の回答も注記から不採用にした。

  6477.12[イキャスマイ](ゆ,?,後の《166》でイ    ケスマイという回答が出て,マイがあったので,

   他の土地の者にきいたところ,イキャスマイは言    うが,イクマイは言わぬとの答えであった。)

 次の回答の注記は回答が「行かないでおこうよ」の意 味に相当するという指摘であると考えられる。

  6594.20[ikantookorai](これは勧誘の形)

しかし,あくまで調査者の注記であるのでこのまま採用 した。次の回答の注記も同様のものと判断し,この回答 は採用している。

  4609.53[egumondeammet∫a](ゆ,鶴岡にあるとい    うイカマイのような表現があるかと誘導したとき    の答がこの回答である。このマイは推量のように    も思われる。話者の言葉で,[egomme:]は「行    かないだろう」の意で推量打ち消しであるという。

   決意の打ち消しにはマイを使わないらしい。)

B−2.意味的な観点からの採否

 質問文に,「もうそんなところへなんか,けっして」

という前置きが付いているため,「行くまい」にあたる 回答の前に,副詞が付けられている回答が多かった。例 えば「二度と」「けっして」「何があっても」などである。

調査者が質問文が求めている分だけを報告した場合と,

副詞的部分も報告した場合とがあると思われる。これに 相当する部分は採用語形に含めなかった。削除した部分 を1}で括って示す。

(1>「絶対・決して」の類   0840,33 [{kess責e}ikanεbe]

  1942.62 [{zettai}ikanai]

  3649.73 [{d3ettaY}lgane]

  3734,14 [{d3etaη9ganaY]

  4706.43 [{dzettae}iηanε毘]

  0247,31 [{?issai}?i1りaη]

(2)「二度と」の類

  0717.50[{nidoto}ikane:natoomo:sa]

  1801.80 [{nidoto}ikaNzo]

  1865.54[{nidoto}ik田moηka]

  1920.05[{nidoto}ikanai]〈イクマイとは言わない。>

  4598.07 [{nidoto}ikaNコ

(3)「もう」の類

  0746.69[{mo:}ikanaiwa](「行くまい」は出ず。)

  1807.12[{mo:=}ikulmai]<モーに感情を込める。>

  3761.75 [{ado}egane]

  3762.42 [{ado}εganε]

  4647.69 [{ato}iganε]

  6510.74[{mo=}ikaN]

  6563.87[{mo:}ikotowaomowah弓N]〈前の印象が悪    かった場合>

  0246.88[{Jla:}?i幻am]

  0248.01 [{n a:nYr両a}?ikaO]

 [ado]やいa:]も「もう」の意である。 naanlr両aは

「もう二度とは」の意味である。

(4)「どうしても」の類   3752.79 [{∫fntatte}eganε]

  3774.64 [{nantatte}¢ganε]

  3780.65 [{nanbo∫atte}eganε]

  4706.43[{nambo∫itemo}iηanε判(ゆ)〈多>

  560299 [{donnakoto∫itatte}ekando]

  6510.74[{donnakotoηaattemo}ikaN]

  7659.31[{adaN∫itemo}ikoklpiwanarinne:]

(5)その他

  6378,06[{ha:}ikuma:]

  7659.62[{hara}ikinakots田moridara]

 動詞の部分については,「行く」という動詞を含む回 答を採用した。沖縄の「パルン」も意味的に「行く」に 相当するとして採用する。232図「行こうと思っている」

と同様に,八丈島の「デル」も採用している。「〜テクル」

「〜テミル」「〜テミテクル」を含むものも採用した。

 次の回答は「行く」にあたる動詞がないため不採用と した回答である。

  1169.62 [narao]

  1739.28[moJamet句ameta]

  2784.51[jamer山domoQterad3a]

  6573.32[iraN](「入らん」の意ならん。)〔イランは    不必要の意でなく,イカントコと同じ意〕

 表現の内容については,次のような判断をした。

 「(どうして)行こうか(いや行くまい)」のような反 語的表現は採用した。例を挙げる。

  2791.57[eg曲moNdaba]

   ク    [egεbε]

  4609.53[eggumondearo・ba](直接意志表現でなく,

   反語の表現である。)

  5579.12[ikumqpd3ai]

   ク    [ikadzu]

  6526.55[イコケエコ

  7382.77[ikukai](このように反語的表現をとるの    が普通の由)

 279L57と4609.53の回答中のbaは反語を表す形式と みなした。反語的表現かどうかの判断は,終助詞による ことが多いが,中には採用部分の前についた語形が参考 になることもある。以上のうち,採用にあたって削除し た前野部分から反語と判断しているものを次に挙げる。

{}に括った部分が削除した前接部分である。

  2791,57[{da:}egεbεコ(「誰が」にあたる)

  5579.12[{dare}ikumqpd3ai]

   〃    [{dare}ikadzu]

  7382.77 [{11aN∫ite}ikukai]

 他に,直前の質問項目が先の232・233図の「行こう と思っている」であったためか,「行くまいと思う」の ように「思う」を付けている回答も目立った。これが,

直前の質問項目の影響なのか,当該地方では「思う」を つけて表現するのかという判断 はむずかしい。0276,51 のような注が付けられた回答もある。

  0717.50[ikane:natoomo:sa]

  3720.70[lganεdoomotteda](omouで切れるべきも    の)

  0276.51[?ikjuntsY?omoturai]〈行くとは思わない。

   〜と思っていない。〉(分析的な表現しか出ない。

   なお行くかときかれて行かないと答えるとき

   ?ikibaという)

ここでは,「思う」を含む表現はすべて採用した。

 また,質問文の最後に(「イカナイ」などでも可。)と 添えられているとおり,語形上単純な打ち消しであって も意志を表すとして採用した。例えば次のようなもので

ある。

  4598.07 [ikaNzo]

  4677.98 [ikanai]

  5622,19 [igana巧。]

  6497.18 [ikeheN]

  6521.94[ikaheNwa]

  6651.93 [i1弓a:seNjo]

  1231.72 [?it∫aη]

 不可能表現は状況による事態の不成立を表し,意志性 がないとみて不採用にする。

  4761.07 [1ηaεnε]

  4676.57 [itterannε]

  7266.14[ikarummonka]

  0894.41 [ikarenai]

 「ナラナイ」などの禁止表現は不採用とする。この表 現は禁止表現で出てきている。

  4712.15[ettewagannε:bett∫a]

  8324.40 [itat∫anarando]

  1261.22 [?nd3e:naraη]

 次の回答は「行く所ではない」と解すると意志性が無 いと見られるので不採用とした。

  3781.21[lgtαdogodene](質問から外れた答え)

ただし,この地点,秋田県由利郡東由利町はdogoが形 式名詞に近く,「行くことはない」の意味である可能性 はある。

 テンス,アスペクトについては問わないで採用した。

質問文の「心に決めるとき」にもいろいろな場合が想定 され,また,一度行ったことがある場所について「もう 行くまい」と思う場合を尋ねているためである。したが って,次の回答のようにテンスが過去時制でも採用し

た。

  5642.29[ikanetomotta]

  7504.72[ik田malomota]

 終助詞についてはB方式で採用した。終助詞と見なし たものについていくつか補足する。

 次の回答中の[ni=]は終助詞というより,「〜なのに」

という言いさし的表現である。

  6387,62 [ikaNni:no:]

このような,接続助詞に由来する語形も終助詞扱いする ことにする。他にも同様の扱いをしたものにkara,keeが

ある。

  6368.60 [ikanNke:]

  6383.28 [i幻a:seNkara]

  6387.62 [ikla:seNke:no:]

 次の回答末尾のtomo,mON,haaも終助詞扱いにし採用

した。

  3746.76 [曾ganε:ha:]

  6385.98[i幻a:sentomo]

  7363.12[イカンモンネ]

 次の[ma:]は終助詞として扱った。打ち消し意志の

「マイ」ではないと考えられる。地点は福井県武生市だ が,藤原与一『方言文末詞の研究下』(597ページ)に よると,やや離れているが出雲地方に終助詞マーがある

という。

  558479[ikantokoma:]

B−3.音声の統合

 表記上の留意点として,次の地点がある。

  5527,81[イカンゼァ]

調査者によると,ゼァのような,工段音+アの表記は

[εo]という音声を表している。音声内容上は[ikaNZεo]

となり,見出しでは〈ikaNZεa>となる。(第3集解説書 103ページ)

C.語形の統合

 232・233図と同様に「行く」の部分に対し部分統合 を行った。ほぼ語幹にあたるこの部分の相違は本図のね らいではなく,また他の図を参照することでおよそ推定 することができるため,凡例の煩雑さを避けるために行 った。統合される部分だけを列挙すると次のようになる。

表記は地図見出しの表記による。

  ik一/ikj一/ek一/ig一/eg一/iη一/eη一/εη一/u夏〕一/

  juk一/jukj一/?ik一/?ikj一/?icj一/Ng一/Nη一/

例を挙げる。

ikumee igumee iuumee ekumee egumee eoumee jukumee

ikaN

?ikaN

?iklaN

?i(jaN

ekaN jukaN

〈(ik,ig,iη,ek,eg,eηjuk) umee>

〈(ik,?ik,?ikL?icj,ekjuk) aN>

 2拍目が撲音・促音になる場合は,それぞれ擾音・促 音までを統合する。

lll細細](ゆ)}価}一〉

 琉球で意味的に「行く」に相当する語である「パルン」

についても同様に語頭のpar一/hir一/har一/を統合した。

器1}甑圓蜘

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 5 : 付資料一覧 (ページ 89-92)