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前半・後半の分割

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 5 : 付資料一覧 (ページ 84-89)

…左

A. 前半・後半の分割

 前半「行こう一」と後半「一と思っている」に分割し た。引用形式部分から後を後半としたが,引用形式がな い,いわゆる「ト抜け」も「思う」を使用していれば,

そこから後半図とした。

 ただし,動詞「思う」に相当する表現を含まない回答 については,たとえ引用形式「と」を介する表現であっ ても前後に分割せず,回答語形の全体を前半図で扱い,

後半図に続く形がないものとした。例えば,「イコウト カンガエル」「イクカンジョウダ」「イクキニナル」など である。この点について少し補足する。

 本項目のねらいは前半の「行こう」という意志表現に あり,「と思っている」は確実に話者自身の意志表現を 導くために付けられている。しかし,地方によっては必 ずしもこのように分割的に前半を意志表現と見なせる回 答が得られているわけではない。例えばここで取り上げ た「思う」を使用しない回答語形の中には,全体で意志 表現であると見なせるものがある。また,前半より後半 の回答の方が語形の種類が多いため,「思う」を含む表 現のみを後半で扱うことによって,後半の地図を複雑化

させないという実際的な理由もある。

 以下では分割上,問題となったものを中心に説明す

る。

 引用の「と」の前に促音が入る場合は,促音部分から 後半とみなす。例えば次の[tti]は,促音から引用形式

と見る。

  2151.21[ikattiumuidu]    →〈ika一〉<ttiumu韮du>

   〃  [ikattiduumuidu] →〈ika一〉〈ttiduumuidu>

  2151.51[ikattl:umuiuY]   →〈ika一〉〈ttiiumuiuY>

 例外として,次に挙げるものは促音を前半に入れる。

まず,九州方言のように後半がなくても終止形が[i?]

のように入声音で終わる可能性があると思われるものは 前半で扱う。判断は併用語形や他項目の回答を参考にし

た。

  7275.24[itt∫iomot∫ottojabatte]

      →〈ic一〉〈ciomocjottojabatte>

  8362.31 [itt∫uolno=t∫ottokoi]

      →〈ic一〉<cjuomoocjottokoi>

 また次のように「イカズトオモー」の「ズ」が促音に なっていると考えられる回答は,促音までを前半とす

る。

  5631.26[ikat=oomot=cirul] →〈ikat一〉〈toomotteiru>

  5631.78[ekattomotteru]  →〈ekat一〉<tomotteru>

  5633.42[ikattomotteru](ゆ)〈早く言ったことば〉

       →〈ikat一〉〈tomotteru>

  5651.04[ikattoomotter田] →〈ikat一〉<toomotteru>

  5652.74[ikattomotteruI]  →〈ikat一〉〈tomotteru>

5661.77[ikattomotter田]

5662,78[ikattoomotter田]

5671.77[ikattomotter田]

5672.89[ikattomotteru]

5673.18[ikattomotteru]

5681.79[ikattoomotter田]

6601.37[ikattoomotterm]

 〃  [ikattoomottorul]

→〈ikat.〉〈tomotteru>

→〈ikat一〉<toomotteru>

→〈ikat一〉〈tomotteru>

→〈孟kat.〉〈tomotteru>

→〈ikat.〉<tomotteru>

→〈ikat.〉〈toomotteru>

→〈ikat一〉<tOOmOtterU>

→〈ikat一〉〈toomotto「u>

  6610.08[ikattoomotteirul]〈古〉

      →〈ikat一〉〈toomotteiru>

  6611.15[ikattoomottorul] →〈ikat一〉〈toomottoru>

  6621.07[ikattomottor切。] →〈{kat一〉<tomottor切。>

同じく中部地方に見られる[SSO]は[ZUSO]の変化し たものと考えられる。つまり促音はzuに由来すると考 えられるので 前半に入れる。

  5681.22[ikassomottoru]

   ク [ikassomo:]

  5690.28[ikassomo:]

   〃  [ittekossomo:]

[ZUSO]の形を残す回答もある。

→〈ikas一〉〈somottoru>

 →〈ikas.〉<somoo>

 →〈ikas一〉〈somoo>

→〈ittekos一〉〈somoo>

  5633.42[ikazusomotteru](ゆ)

      →〈ikazu一〉〈somotteru>

  5642.29[ikazusomotteru](「行くと思っている」)

      →〈ikazu.〉〈somotteru>

これらの回答中の[somoo]のsoは,「そう思う」のソ ウにあたるといわれるが,現代では語源意識はないよう である。

 前後の分割の際,引用形式と前半末についている終助 詞の認め方が微妙なものもある。次の回答中の[de]

[dai]は九州でみられる勧誘や意志表現につく終助詞で あり,ここまでを前半とする。

  7289.51[iko:daitoomo:t∫oi]

      →〈ikoodai一〉〈toomoocjoi>

  7350.54 [iko:deomototta麺e:]

      →〈ikoode一〉〈omotottaiee>

  7362.09[イコデチオモートル]

       → 〈ikode_〉 〈ciornootoru>

しかし,次の「テチ」は上記の7362.09に語形が似てい るが,「テチ」で一つの引用形式とみなした。『講座方言 学』9の,佐賀地区の引用は「テ」,唐津地区では「チ」

が優勢,有浦地方では「テチ」があるという記述によっ

た。

  7374.12[イコーテチオモートル].

       →〈ikoo一〉〈teciomootoru>

琉球方言の前後の分割についても若干例を挙げて説明し ておく。

  1260.68[?ikeja:ndi?umuto:N]

       →〈?ike句aaN一〉〈di?umutooN>

  1261.22[?ike謡a:ndi?umuto:N]

       →〈?ike句aaN一〉〈di?umutooN>

  1261.92[?ikeJa:ndi?umuto:N]

       →〈?ike司aaN一〉〈di?umutooN>

上記の回答の〈?ikee>はikiwaru(行けばぞ)の変化形,

<jaaN>は「である」に相当するもので,〈di>が引用形 式にあたるとみなし,<di>以降を後半とする。ただし,

沖縄方言の引用形式はNdiであるという記述もある

(「沖縄語辞典』)ので注意が必要である。

 一方,次の回答では,〈jaa>は終助詞で,〈?ikan両aa>

全体で「行かないかなあ」という意味をなし,〈cjaNci>

が一まとまりの引用形式とみた。

  1157.92[?ikan両a:t∫ant∫i?umuto:N]

         →〈?ikan両aa一〉〈cjaNci?umutooN>

 次の回答中[iko]の後の[?]は引用形式にあたると 考えて後半に入れている。

  8352.08[iko?omo巾?]    →〈iko一〉〈?omocjot>

すると,後半の見出しがく?omocjot>となり,琉球方言 の語頭のグロッタルストップとおなじに見えるが,それ

とは異なることを断っておく。

 記号の与え方については,各図ごとに説明する。

B.232図「行こうと思っている」(前半)の記号

 化

B−1.語形の分割

 232図で扱う語形は,「第二母音前まで」の「前部」

と,第二母音以降の「後部」にまず分ける。後部はさら に分けて,第二母音(第二母音が長音を形成している場 合は長音末まで)を「後前部」,それに続く部分を「後 中部」とした。また終助詞があるものは「後後部」とし た。部分統合については前述したとおりである。具体例 を挙げる。ハイフンは後半に続く形があることを示す。

前部 ik ik

itt itt

後前部 0 0 e e

後中部 0 0 mijoO−

miru

後後部

ka.

dai一

なし deaa

磁欲止止徽止−o㎎

.1

u a a ee u u u

tai.

Nbe.

k NnaraN一 jaa cumo司a

kaN(Uositta kinatera

しし  し  ししし なな㎞な悼ななな

琉球の〈jaaN>はjaaとNに分け,それぞれ「後中部」

「後後部」とした。

B−2.語形の記号化

 まず,おもに「後前部」に着目して【色】を,「後中 部」に着目して【形】を与えた。分類すると以下のよう になる。

① イコー系:榿 a イコー類:円形 b イクー類:紡錘形

。 イッテミヨー類:蝶形

② イク系:緑 a イク類:正方形 b イチュン類:菱形

③タイ・ゴタル系:緑 a イキタイ類:長方形 b イクゴタル類:爪形

④べ系:水

a イクベ類:正三角形 b インベ類:二等辺≡:角形

。 イッベ類:平二等辺三角形

⑤ イカ系:赤 a イカ類:涙滴形

b イカナケレバ類:小刀形

。 ヤー類:リボン形

⑥ イカズ系:茶 a イカズ類:曲玉形

b イカッ類(促音で233図に続くもの):涙滴形

⑦その他(233図に続く形がないもの):紺  ⑦のうち,「後中部」が次のa〜gの類である回答には,

以下のような記号を与えた。

a〜ッモリダ類:いちょう形 b 〜カンジョーダ類:U形

。〜アンジル類:あやめ形 d〜カンガエル類:若葉形

e〜ミトル類:傘形 f〜キニナル類:矢印形 g 〜コトオモウ類:分銅形

 ⑦のうち,これら以外の「後中部」は,基本的に①〜

⑥の各類と共通であるので,①〜⑥に準じた形を与え

た。

 具体例を挙げながら各分類の内容について補足する。

 次の回答は①bに分類した。

  8345.56[iku=tomot∫oru]〈多〉

この地点では『方言学講座』9(278ページ)によると,

連母音OUが00さらにUUになることもあるということか ら,[iku:]は「行こう」にあたるものと見て,②では なく①の系に属することとした。

 ②bイチュン類に含まれるのは,次のような琉球方言 の終止形の回答である。

  033α80[?ikjuNt∫i?umu:tui]

  1213.88[?ilqunt∫i?umo:tuN]

  1271.05[?ikint∫i?umuto:N]

 ③aイキタイ類には次の回答を含む。

  4742.95[eOtUdetoomotterul]〈まだ未定のとき。希    望を表わす。〉

注より[de]は希望のタイに類する形とみる。

 次の回答も③aに分類した。

  7659.31 [ikitakedaido:]

八丈島大賀郷の回答であるが,形容詞型活用をする希望 の「タキャ」の活用形に,「〜けれども」にあたる逆接 の形式が接続した,「行きたいのだけれど」に相当する 表現と考えられる。(『伊豆諸島方言の研究』(1965,

195・199ページ))

 次の回答は⑤bイカナケレバ系に分類した。

  027597[?ikjambat∫i?omojuri]〈この答のほうが強    い意志をあらわす。>

  124226[?ikibare=ru:tu?umutuiN]

  2076.96 [harabad吋arudeulnuiru]

  2086.60 [paraba=ttiumuiburu]

1242.26の[re:ru:]は「ru(ぞ)+jaru(である)」の変 化したもので,全体で「行けばぞあると思っている」に あたる形である。

 ⑤cのヤー類とは次のような回答である。

  1231.99[?ikeJa:di?umutui∫iga]

  1251.04[?ikeJa:di?umilgwa]

[ja:]は,軽い念押しの意味の終助詞で,全体で「行け 80

ばねえと思っているんだけど」にあたると考えられる。

イカナケレバ類に近い表現である。

 次の回答は後半に続く形がないので⑦その他に分類さ れるが,希望を表す形式が使われているので記号の形は

③bと同じ爪形である。

  1232.38 [?ikibuhassa:]

この[buhas]は「busaaru」(欲しさある)の変化した もので希望を表す。

 次の回答も,後半に続く形がなく⑦その他に分類して いるが,記号の形は語形が近い④aイクベ系に準じて正 三角形にしている。

  3725.49[弓gube:sitera]〈今すぐの気持〉

しかしこの回答中の[be:]は勧誘あるいは意志を表す ものではなく,「〜ばかり」「〜だけ」の意味である。第 4集201図「死による」の回答として〈sinubεdera>が あるが,このbεと同種のものと見られる(第4集解説 書341ページ)。つまり「行くばかりにしている」の意 味になると考える。

 次の回答も⑦に属し,⑤bと同じ記号の形をあてた。

  1251.27[?ikiwadessa:]

この[wa]は「バ」にあたり,全体で,「行けばそであ るよ」に相当する。

 記号の【大きさ】は基本的に小を用い,「思う」以外 の動詞を用いた述部があるものと「行く」と系統を異に する動詞(「パルン」や「デル」など)を使っている回 答を大記号にした。

 アルファベットで表した下位分類中での細分は【塗り つぶし方】によって表現している。塗りつぶし方は「後 前部」または「後中部」に含まれる母音の長短による。

長音や二重母音である回答ほど塗りつぶし,短音は白抜 きになるようにした。

 前半末の終助詞すなわち「後後部」の有無と種類は次 のように記号の【方向】で表す。

 後後部       方向  なし       上  ga,胆       左上

 kanaa, gana       右一ヒ

 その他      右  dai      右下

de, dea, deaa,(jaaに糸売く)N kka, kakaa

kai,ηai

下折左

このうち左上,左下および左のように,子音のkとgあ るいはgと。の区別が必要な時は,補助記号(線)を左 上と右上に・一本ずつけて区別している。

 なお,前半の末尾,すなわち「後後部」になる終助詞 については統合を行わない。できるだけ2枚の地図をみ てもとの語形を再構成できるようにするためである。

B−3.凡例における語形の並べ方

 凡例は前述の①〜⑦の二二に,それぞれの系の中はア ルファベットの類順に配列した。各分類の中は,塗りつ ぶし部分が多いものから先に並べて配列している。つま り,後前部の母音の長短が異なる語形が隣り合うように なっている。方向は上向きを始めにし,あとは左上向き から時計回りに配列した。

C.233図「行こうと思っている」(後半)の記号

 化

C−1.語形の分割

 引用形式にあたる部分を「前部」,動詞「思う」にあ たる部分を「中部」,それに続くアスペクト形式やテン ス形式にあたる部分を「後部」,そして「終助詞」の四 つに大きく分割した。「中部」は,子音のmを境に,m の前の部分を「中前部」,m以降を「中後部」とする。

具体例を示す。

前部 to to to di

 SO  なし

C−2.

中前部 0 0 なし

?u

なし

?o

語形の記号化

中後部

mo

mot

mo mu 00mm

後部 tteiru teda toru tui tteru cjot

終助詞 naa なし なし

aしし 内なな

 「前部」に【色】を,「中前部」に【大きさ】と【補 助記号】,「中後部」に【方向】を,「後部」に【形】と

【塗りつぶし】を与えた。終助詞の有無は補助記号(線)

で表した。

 まず「前部」に与えた色を説明する。

①ト系〈to>:緑

②ド系〈do>:水

③チ系〈ci, cjaNci, cito, teci>:赤

④テイ・リ系〈ti, tii, tti, ttii, ttidu, gl, di, ri,

  rici, ridu> :茶

⑤テ系〈te, tte, tto>:紺

  その他〈ta, tu, de, cjo,句u, so>:紺

⑥ なし:榿

 このうち,④ティ・リ系の,<ttidu>〈ridu>のduは,

係助詞の「ぞ」にあたるものだが,琉球でこのような語 形があった場合,<du>を引用形式の中に含めて扱った。

例えば次のような例である。

  2151.21[ikattiduumuidu]→〈ika一〉〈ttiduumuidu>

 ⑤その他のくso>は厳密には引用形式ではないが「前 部」に入れている。

 次に,「後部」と記号の形である。①〜⑧に大別され

る。

①イル類:二等辺三角形・正三角形

②オル類:正方形

③チョル類:円形

④ヨル類:紡錘形

⑤アル類:長方形

⑥ヤル類:楕円形

⑦なし:鍬形線記号

⑧琉球方言類:リボン形・曲玉形・蝶形・いちょう形  記号の大きさは「中前部」による。「中前部」が。,u,

?o,?uのときは小記号で表し,それ以外のものは大記 号で表す。なお⑦は線記号なので,角を塗りつぶした太 鍬形線記号を大記号の代用とした。

 また,次のように「中前部」にあたる部分がないもの も,大記号で表す。

  <tomotteru−gasa,Ndai>

  〈tomOU>

  〈domoteda>

 また,次のような形も大記号で表した。

  〈totteeda>

 「中後部」には次のように方向を与えた。

中後部 mot,mod,moc moi,mui その他

muu mu mOU mo30 moO

加納祉右都下肝左証

 記号の形によっては方向で区別が付かなくなるものが ある。その場合は,補助記号線を上向きに一本または左 上・右上に一本ずつ付けて方向を明らかにした。

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 5 : 付資料一覧 (ページ 84-89)