水 榿 赤
B. 意味的・文法的な面からの採否の検討
次に,意味的・文法的な観点から,採否について検討 したところを述べる。
次の回答は,「行く」にあたる動詞を用いていないた め,不採用とした。
3791,41[nanηi∫itemOraidae]
6374.58 [i∬onaraemo:]
6615.12[moraite:]
7316.65 [gokuro:∫it∫ekureηka]
8229,96[kulwaikataide](「加わって話すよ」の意)
ただし,「来る」を用いた次の回答は,質問文の文脈か ら大きく外れないとみて,採用した。
5574.79 [kiteho∫i]
8300.81[kitemorao:gotai]
また,次の回答は「行く」を用いてはいるが,質問の趣 旨とはずれていると見て不採用とした。
0717.50 [i∬oniittei∬oniΦulrosahairita童na:]
以上は,希望表現全体の採否の方針に沿った扱いであ
る。
「希望表現」として採用する範囲についても,「4.1.
A−2.」で述べた,希望表現全体の採用の方針(意志表現 とみられる回答:は不採用とし,それ以外は,「第三者が ある行為をすることを,話し手が望んでいる」表現とみ
られるものは比較的広く採用する)に沿って,語形の採 否を検討した。
まず,意志表現であると見て不採用としたのは,次の 回答である。
2761.66[etemora山切ε]
3730,43[了ttemofaulkana:N]〔ゆ〕
5549.32[ittemorabo:ka]
5669.19[ittemo「a:Yana:]
5696.16[ittemora:be:]
5780.84[ettemora=be]
645996[イッテモラオカ](不採?)
6642.57[ittemoralzaJa:]
7391.41[itattemoraottai]
8301.68 [itattsumaro:]
8324.40[itaTmorao]
8343,28[ita?moro:]
このうち,8343.28の回答は,終止形の言い切りの形で あるが,これで意志を表すものと見た。また,8301.68 の回答は,[ma]の部分が不明であるが,おそらく全体 で「行ってもらおう」にあたるものと見て不採用とした。
3730.43,5549.32,5669.19,6459.96の回答は,疑問の 終助詞「か」に相当する形式を伴っており,意志の表現
とは言っても,その意志が不確定なことを表すと見られ,
希望表現に近い点に留意しておきたい。
一方,次の「行ってもらいたいと思っている」にあた
る回答は,「第三者がある行為をすることを,話し手が 望んでいる」表現の範囲に収まるので採用した。
3722.42[ettemoraetεtoomotteradomo]
「行ってもらえないだろうか」に相当する次の回答も,
控えめな希望の表現と見て,採用した。
1868.21[ittemoraenebega]
3722.42[婁ttemora曾nεbega]
7460.22[it:emoraen3aroka]
〃 [itemoraen3aroka]
ただし,少なくとも共通語の語感でとらえると,「行っ てもらえないだろうか」は,質問文で用いられている副 詞「是非」と,「希望の強さ」というような点において,
意味的にやや整合しないように感じられるかもしれな い。しかし,この点に関してはここでは問題とせず,採 用することにした。
また,次の回答も,類似のものとして採用した。
7383.98[ittemorawaηkana:]
ク [ittemorawandαkana:]
次の「行ってもらうといい」にあたる回答は,227・
228図「行きたいなあ」で採用した,「イクトイイナー」
と同じく,地域によっては希望表現として用いられてい ると見て,採用した。
3734.14[ettemoraembae:na:]
6385.98[ittemoraut∫u:toe:]
6396.62[ittemorautoemo:]
6412.22[lttemora:toe:gano:]
6563.87[ittemorotarae:ne](neは「のや」出自の文 末詞)
6572,14 [itelnorotarae:n jagana]
7305.22 [itternorautoe:gano]
7416.34[itemorotarae:kendona:]
7441.02[it∫imoro:taraε:]
ただし,次の回答は,「行ってもらうといい」の前半 だけの言いさしで止めた表現である可能性もあるが,言 い切りでない点に着目して不採用とした。あるいは,
「第三者に行ってもらう」ことを聞き手にもちかける表 現かもしない。そうであっても希望表現の範囲から外れ るので,やはり不採用となる。
6491.78 [ittelnorotara] (#)
2072.02 [hi:turabahai]
なお,不採用にはしたが,2072.02は,「トル」を補助動 詞として用いている点で注目される。(この点について
は,後に触れる。)
また,「行ってもらう方がいい」に相当する次の回答 は,類似の回答であるが,話し手の主観的な希望という より,やや客観的な評価判断の表現であると見て,不採 用とした。まとまった分布が見られないことも勘案し
た。
6566.73[itemora田ho:ηae:naika]
次のような義務表現の形をとる回答は不採用とした。
使用状況によっては,語用論的に希望を表す場合もある かもしれないが,一次的な意味としては,希望から離れ ていると判断した。
3702.37[eQtemoranebamaned3a]〈対話の中で使用>
3710.70[fttemoranebanafane]
3764.66[了ttemoranebane・]
4711.32[Yttemofawanane]<強く願望する,義務を も含む。>
4723.40[ettemorawanakutεwaganε]
5556,91[itternorawannaN]
642296[lttemorawa句a:iken]
6450.98[it:temorawanpa:ikeN]
7374.12[イテモラワニャ]
7373.31[イテモラワニャー]
8314.52[itat∫imoraw姐panaraNコ ク [itat∫lmOraWannaraN]
8394.21[itatemurawamb句ana:]
次に,希望表現の項目の中でも,特にこの項目におい て問題になる点について述べる。
この項目では,「あの人には,是非,いっしょに行っ てもらいたい」というときの「行ってもらいたい」にあ たる部分を求めている。意味的には,以上に見てきたよ うに,「第三者がある行為をすることを,話し手が望ん でいる」ことを表す表現を求めたわけだが,同時に,構 文的には「【話し手】ガ【第三者】二〜」という格関係
(恩恵の受け手である話し手が主格に立つ)をとるもの を対象としていると考えられる。「〜てもらう」の他,
「〜てほしい」の類も,このような構文をとる。また,
「得る」「受ける」に相当すると見られる補助動詞を用い た次の回答も,同様の格関係をとると見られるので採用
した。
5617,85[イッテイェーテー]
6603.52 [itteuketaidai]
一方,「〜てもらう」と異なる構文,格関係をとる回
答は,すべて不採用とした。これにより不採用とした回 答には,「〜てくれる」に代表されるような,格関係の 異なる補助動詞を用いた回答と,補助動詞を用いない回 答がある。またいずれの場合も,構文,格関係だけでな く,表現意図の上でも,質問の趣旨とずれる回答があっ
た。
まず,異なる補助動詞を用いた回答について取り上げ る。この項目では,「行ってくれるといいなあ」など,
「〜てくれる」を用いた回答が多く得られた。「〜てくれ る」は,「〜てもらう」と同じく,受け手が受益者であ るということを表す授受表現であるが,「【第≡:者】ガ
【話し手】二〜テクレル」(恩恵の与え手である第三者が 主格に立つ)という格関係をとる点で,「〜てもらう」
と異なる。ここでは,「〜てくれる」および,これと同 じ格関係をとる補助用言(琉球の「トラス」など)を用 いた回答はすべて不採用とした。これにより不採用とし た回答を,以下に類別して挙げる。
・行ってくれない(だろう)か 3609,46 [eQtekenaga]
3702.83 [etekenega]
3740.34 [Yttekenebega]
4706.43 [ittekenε記bekana:]
4712ユ5 [ettekenebeヒan句a]
4735.32 [ittesulkenεkana:]
4763.11 [ettekennεka]
5638.67 [ittekunne:gana:]
6521.20 [ittokuretenaikana:]
6571.48 [ittekurenk艮ja]
663521 [ittekurenae:ka]
6667.81 [ittekulrenne:]
7313つ7 [ittekureNkana]
7420.76 [ittekureηka]
7659.31 [ittekenne:daro:ka]
8303.39 [itekureNna]
8320.28 [itatekureηka]
8352.61 [itakkUjeηka]
1157.92 [nζiturahanna:]
l169.62 [?it∫in3ikwiranna:]
1231,72 [?id3itura∫anna:]
1241.49 [?i3iturahaηgε隻ja:]
1250.59 [?id:5iturasanna:]
1251.27 [?id3iturasanna=]
・行ってくれるといい
1801.80 [ittekulrerebai:ηana:]
2722.67 [ettekerebae・]
2765.13 [eQtekerebae:tate]
3721,11 [andekerebal:]
3750.64 [ittekerebaY:]
ク [andekerebaY:]
3762.42 [Yttekerebae:na]
6393.86[ittekurerutoe:gano:](文脈がやや異なる。)
649850[ittekuretarai:noni](#,?,参考)
7308.05[ittek呵a:百a:e:n(〜piittek呵a:raηkekomatt∫oru]
8362.31[itakkurureba](jokabaの省略形)
8372.47 [ittakkulrしureb司okaba?ne:]
0247,31[?id3ikurlbbad吋itt∫aη]〈依頼〉
・来てくれなけばしょうがない
7350.54[doqj aηkoddeNkltekurembadogjaN∫onakabo:]
・行ってくれないから困っている
7308,05[itteku尊a:raりkekoma呵oru]〈上〉
・行ってくれると思っている 7249.35[itatekunlggotoommoto?]
〃 [itatekuirasugotoommoto?](行ってくださ るように思っている。)
・行ってくれた方がいい
0276.51[?idzikutik句uta:i]〈行ってくれた方がよ い。>
0276.51は話者の注記に従って分類したが,あるいは,
「行って来ればよい」にあたるものかもしれない。そう であるとしても,やはり構文の点で不採用になる。
また,次の「行ってくれ」に相当する形式の回答は,
基本的には,聞き手に対する依頼表現であり,この点で も,質問文の文脈から大きくはずれている。
2761.66 [etek山r句a:]
3700.97 [jandekulro]
3730.43[andekefed句a:]〈相手に直接>
5548.55 [ittekutahare]
5638.67 [ittekur句a:]
ク [ittekuroja:]〈ていねい>
6542.64[ittekur句ai]〈親しい友だちへ>
657L48 [ittekur〔ミjo]
6635.21 [itteokunna:]
7219.20 [ita:t∫iokure]
ク [ita:∬iokurema∫:e:]〈ていねいな言い方〉
7354.43 [ittekure]
ク [ittegudahai]
7391.41 [itattekurei]
7404.20[itetsuka]〈下〉
〃 [itetsukasai]〈上>
7420.76 [ittekur(ミja:]
8345.56 [itekuri] (?)
1221.48 [1〕3itura∫i]
1231.99 [?id3itura∫e:]
1232.38 [?id3iturase=]
1233.52 [?i3itura∫ib綾ja:]
1242.26 [?id3iturase:]
1251.04[n3iturasuwa]
1261.16 [?nd3iturahi]
1261.22 [?n3itura∫e:]
1261.92 [n3iturase:]
127026[?nd3ikwiri]
1271.05 [nd3it uraθiba]
2068.07[ikifiwa:1]
207698 [o:riho:ri]
2086.03 [haripire=]
2141.52 [ikifi:ru]
215121 [ikYfi=ru] (#)
7404.20の「ツカワス」は,「くれる」と同じ格関係をと るものである。2068.07と2076.98は敬語形式による回答 である。
次の回答は,「行ってくれと思っている」にあたる。
1260.68[?nd3itura∫eja:ndi?umuto:N]
奄美地方を除く琉球方言では,「もらう」にあたる受納 動詞として「エル」「トル」などが用いられる(262図)。
しかしこれらは,本動詞としての用法が主で,補助動詞 として用いられることはほとんどないようである。(不 採用にした2072.02の[hi=turabahai]は,「トル」を補助 動詞として用いたと思われるわずかな例である。)その ため,「行ってもらいたい」にあたる内容を,恩恵の受 け手である話し手を主格として表現する一般的な形式が なく,231図では,琉球に無回答の地点が目立つ結果と なった。その中であえて,恩恵の受け手である話し手を 主格として表現するためには,この回答のような文型を
とる必要があるのかもしれない。ここでは「〜くれる」
に相当する補助動詞を用いた回答と一括して不採用とし たが,留意しておきたい。
「行ってくれない」にあたる,次の回答も不採用とし
た。
2076.25[pariΦunu](対等以下に)
ク [o:riho:ranu]
2076,96 [o:ri聡jo:ranu]
2085.16 [parihiranu]
2151.51 [ikifudε隻ja:n]
以上が,「〜てもらう」とは異なる格関係をとる補助 動詞が用いられているために不採用とした回答である。
次に,補助用言が用いられていない回答について述べ る。この項目に現れた,補助用言の用いられていない回 答はすべて,「〜てもらう」とも,また上記で不採用と した「〜てくれる」とも違い,恩恵の授受にかかわる人 を二格にとることがないと見られる。この点で構文的に 大きく異なるので,このような補助用言を用いていない 回答は,すべて不採用とした。以下に類別して挙げる。
この中には,表現意図の上でも,質問文の文脈から大き くはずれると見られる回答が含まれている。
・そテくといい
5742.71 [iYultoe:ndaYana:]
6374.58[ittsurae:no:](「〜てもらいたい」を何度も 誘導したが,「〜ツラ(ナラ)エー」の言いかた しか出ない。)
7308.37[i幻a:e:nqpinol]〈上〉
ク [i幻a噂a:eln(加itteku巧a:raηkekomatt∫oru]
7382.21 [ikasunarayokabatteNne]
7396.44 [ikutoi・gana・]
・行かないか
4746.21[eηanεkana:](「行ってもらいたい」にあた る形式はどうしても出てこなかった。一応この回 答を示しておく。)
5615.67[eganεkana:]〈「行ってもらいたい」にあた る言い方である。>
6621.07[ikaOka:](《164》の回答としては不適)
7308.05[i㎏a:raηkanol]<上>
7316.65 [ikarel〕ka]
・行かなければならない 4638.01[iganebadamedadzo:]
2150,17 [ikadahanaran]
「行かなければならない」の類は義務表現の形であり,
表現意図の点でも質問文から離れている。なお,
7316.65の回答中の[re]は,敬語形式とみたが,ある