• 検索結果がありません。

意味的・文法的な面からの採否の検討

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 5 : 付資料一覧 (ページ 74-79)

水  榿   赤

B. 意味的・文法的な面からの採否の検討

 次に,意味的・文法的な観点から,採否について検討 したところを述べる。

 次の回答は,「行く」にあたる動詞を用いていないた め,不採用とした。

  3791,41[nanηi∫itemOraidae]

  6374.58 [i∬onaraemo:]

  6615.12[moraite:]

  7316.65 [gokuro:∫it∫ekureηka]

  8229,96[kulwaikataide](「加わって話すよ」の意)

ただし,「来る」を用いた次の回答は,質問文の文脈か ら大きく外れないとみて,採用した。

  5574.79 [kiteho∫i]

  8300.81[kitemorao:gotai]

また,次の回答は「行く」を用いてはいるが,質問の趣 旨とはずれていると見て不採用とした。

  0717.50 [i∬oniittei∬oniΦulrosahairita童na:]

以上は,希望表現全体の採否の方針に沿った扱いであ

る。

 「希望表現」として採用する範囲についても,「4.1.

A−2.」で述べた,希望表現全体の採用の方針(意志表現 とみられる回答:は不採用とし,それ以外は,「第三者が ある行為をすることを,話し手が望んでいる」表現とみ

られるものは比較的広く採用する)に沿って,語形の採 否を検討した。

 まず,意志表現であると見て不採用としたのは,次の 回答である。

  2761.66[etemora山切ε]

  3730,43[了ttemofaulkana:N]〔ゆ〕

  5549.32[ittemorabo:ka]

  5669.19[ittemo「a:Yana:]

  5696.16[ittemora:be:]

  5780.84[ettemora=be]

  645996[イッテモラオカ](不採?)

  6642.57[ittemoralzaJa:]

  7391.41[itattemoraottai]

  8301.68 [itattsumaro:]

  8324.40[itaTmorao]

  8343,28[ita?moro:]

このうち,8343.28の回答は,終止形の言い切りの形で あるが,これで意志を表すものと見た。また,8301.68 の回答は,[ma]の部分が不明であるが,おそらく全体 で「行ってもらおう」にあたるものと見て不採用とした。

3730.43,5549.32,5669.19,6459.96の回答は,疑問の 終助詞「か」に相当する形式を伴っており,意志の表現

とは言っても,その意志が不確定なことを表すと見られ,

希望表現に近い点に留意しておきたい。

 一方,次の「行ってもらいたいと思っている」にあた

る回答は,「第三者がある行為をすることを,話し手が 望んでいる」表現の範囲に収まるので採用した。

  3722.42[ettemoraetεtoomotteradomo]

 「行ってもらえないだろうか」に相当する次の回答も,

控えめな希望の表現と見て,採用した。

  1868.21[ittemoraenebega]

  3722.42[婁ttemora曾nεbega]

  7460.22[it:emoraen3aroka]

   〃  [itemoraen3aroka]

ただし,少なくとも共通語の語感でとらえると,「行っ てもらえないだろうか」は,質問文で用いられている副 詞「是非」と,「希望の強さ」というような点において,

意味的にやや整合しないように感じられるかもしれな い。しかし,この点に関してはここでは問題とせず,採 用することにした。

 また,次の回答も,類似のものとして採用した。

  7383.98[ittemorawaηkana:]

   ク  [ittemorawandαkana:]

 次の「行ってもらうといい」にあたる回答は,227・

228図「行きたいなあ」で採用した,「イクトイイナー」

と同じく,地域によっては希望表現として用いられてい ると見て,採用した。

  3734.14[ettemoraembae:na:]

  6385.98[ittemoraut∫u:toe:]

  6396.62[ittemorautoemo:]

  6412.22[lttemora:toe:gano:]

  6563.87[ittemorotarae:ne](neは「のや」出自の文    末詞)

  6572,14 [itelnorotarae:n jagana]

  7305.22 [itternorautoe:gano]

  7416.34[itemorotarae:kendona:]

  7441.02[it∫imoro:taraε:]

 ただし,次の回答は,「行ってもらうといい」の前半 だけの言いさしで止めた表現である可能性もあるが,言 い切りでない点に着目して不採用とした。あるいは,

「第三者に行ってもらう」ことを聞き手にもちかける表 現かもしない。そうであっても希望表現の範囲から外れ るので,やはり不採用となる。

  6491.78 [ittelnorotara] (#)

  2072.02 [hi:turabahai]

なお,不採用にはしたが,2072.02は,「トル」を補助動 詞として用いている点で注目される。(この点について

は,後に触れる。)

 また,「行ってもらう方がいい」に相当する次の回答 は,類似の回答であるが,話し手の主観的な希望という より,やや客観的な評価判断の表現であると見て,不採 用とした。まとまった分布が見られないことも勘案し

た。

  6566.73[itemora田ho:ηae:naika]

 次のような義務表現の形をとる回答は不採用とした。

使用状況によっては,語用論的に希望を表す場合もある かもしれないが,一次的な意味としては,希望から離れ ていると判断した。

  3702.37[eQtemoranebamaned3a]〈対話の中で使用>

  3710.70[fttemoranebanafane]

  3764.66[了ttemoranebane・]

  4711.32[Yttemofawanane]<強く願望する,義務を    も含む。>

  4723.40[ettemorawanakutεwaganε]

  5556,91[itternorawannaN]

  642296[lttemorawa句a:iken]

  6450.98[it:temorawanpa:ikeN]

  7374.12[イテモラワニャ]

  7373.31[イテモラワニャー]

  8314.52[itat∫imoraw姐panaraNコ    ク  [itat∫lmOraWannaraN]

  8394.21[itatemurawamb句ana:]

 次に,希望表現の項目の中でも,特にこの項目におい て問題になる点について述べる。

 この項目では,「あの人には,是非,いっしょに行っ てもらいたい」というときの「行ってもらいたい」にあ たる部分を求めている。意味的には,以上に見てきたよ うに,「第三者がある行為をすることを,話し手が望ん でいる」ことを表す表現を求めたわけだが,同時に,構 文的には「【話し手】ガ【第三者】二〜」という格関係

(恩恵の受け手である話し手が主格に立つ)をとるもの を対象としていると考えられる。「〜てもらう」の他,

「〜てほしい」の類も,このような構文をとる。また,

「得る」「受ける」に相当すると見られる補助動詞を用い た次の回答も,同様の格関係をとると見られるので採用

した。

  5617,85[イッテイェーテー]

  6603.52 [itteuketaidai]

 一方,「〜てもらう」と異なる構文,格関係をとる回

答は,すべて不採用とした。これにより不採用とした回 答には,「〜てくれる」に代表されるような,格関係の 異なる補助動詞を用いた回答と,補助動詞を用いない回 答がある。またいずれの場合も,構文,格関係だけでな く,表現意図の上でも,質問の趣旨とずれる回答があっ

た。

 まず,異なる補助動詞を用いた回答について取り上げ る。この項目では,「行ってくれるといいなあ」など,

「〜てくれる」を用いた回答が多く得られた。「〜てくれ る」は,「〜てもらう」と同じく,受け手が受益者であ るということを表す授受表現であるが,「【第≡:者】ガ

【話し手】二〜テクレル」(恩恵の与え手である第三者が 主格に立つ)という格関係をとる点で,「〜てもらう」

と異なる。ここでは,「〜てくれる」および,これと同 じ格関係をとる補助用言(琉球の「トラス」など)を用 いた回答はすべて不採用とした。これにより不採用とし た回答を,以下に類別して挙げる。

・行ってくれない(だろう)か   3609,46 [eQtekenaga]

  3702.83 [etekenega]

  3740.34 [Yttekenebega]

  4706.43 [ittekenε記bekana:]

  4712ユ5 [ettekenebeヒan句a]

  4735.32 [ittesulkenεkana:]

  4763.11 [ettekennεka]

  5638.67 [ittekunne:gana:]

  6521.20 [ittokuretenaikana:]

  6571.48 [ittekurenk艮ja]

  663521 [ittekurenae:ka]

  6667.81 [ittekulrenne:]

  7313つ7 [ittekureNkana]

  7420.76 [ittekureηka]

  7659.31 [ittekenne:daro:ka]

  8303.39 [itekureNna]

  8320.28 [itatekureηka]

  8352.61 [itakkUjeηka]

  1157.92 [nζiturahanna:]

  l169.62 [?it∫in3ikwiranna:]

  1231,72 [?id3itura∫anna:]

  1241.49 [?i3iturahaηgε隻ja:]

  1250.59 [?id:5iturasanna:]

  1251.27 [?id3iturasanna=]

・行ってくれるといい

  1801.80 [ittekulrerebai:ηana:]

  2722.67 [ettekerebae・]

  2765.13 [eQtekerebae:tate]

  3721,11 [andekerebal:]

  3750.64 [ittekerebaY:]

   ク    [andekerebaY:]

  3762.42 [Yttekerebae:na]

  6393.86[ittekurerutoe:gano:](文脈がやや異なる。)

  649850[ittekuretarai:noni](#,?,参考)

  7308.05[ittek呵a:百a:e:n(〜piittek呵a:raηkekomatt∫oru]

  8362.31[itakkurureba](jokabaの省略形)

  8372.47 [ittakkulrしureb司okaba?ne:]

  0247,31[?id3ikurlbbad吋itt∫aη]〈依頼〉

・来てくれなけばしょうがない

  7350.54[doqj aηkoddeNkltekurembadogjaN∫onakabo:]

・行ってくれないから困っている

  7308,05[itteku尊a:raりkekoma呵oru]〈上〉

・行ってくれると思っている   7249.35[itatekunlggotoommoto?]

   〃 [itatekuirasugotoommoto?](行ってくださ    るように思っている。)

・行ってくれた方がいい

  0276.51[?idzikutik句uta:i]〈行ってくれた方がよ    い。>

0276.51は話者の注記に従って分類したが,あるいは,

「行って来ればよい」にあたるものかもしれない。そう であるとしても,やはり構文の点で不採用になる。

 また,次の「行ってくれ」に相当する形式の回答は,

基本的には,聞き手に対する依頼表現であり,この点で も,質問文の文脈から大きくはずれている。

  2761.66 [etek山r句a:]

  3700.97 [jandekulro]

  3730.43[andekefed句a:]〈相手に直接>

  5548.55 [ittekutahare]

  5638.67 [ittekur句a:]

   ク  [ittekuroja:]〈ていねい>

  6542.64[ittekur句ai]〈親しい友だちへ>

  657L48 [ittekur〔ミjo]

  6635.21 [itteokunna:]

  7219.20 [ita:t∫iokure]

   ク  [ita:∬iokurema∫:e:]〈ていねいな言い方〉

  7354.43 [ittekure]

   ク    [ittegudahai]

  7391.41 [itattekurei]

  7404.20[itetsuka]〈下〉

   〃  [itetsukasai]〈上>

  7420.76 [ittekur(ミja:]

  8345.56 [itekuri] (?)

  1221.48 [1〕3itura∫i]

  1231.99 [?id3itura∫e:]

  1232.38 [?id3iturase=]

  1233.52 [?i3itura∫ib綾ja:]

  1242.26 [?id3iturase:]

  1251.04[n3iturasuwa]

  1261.16 [?nd3iturahi]

  1261.22 [?n3itura∫e:]

  1261.92 [n3iturase:]

  127026[?nd3ikwiri]

  1271.05 [nd3it uraθiba]

  2068.07[ikifiwa:1]

  207698 [o:riho:ri]

  2086.03 [haripire=]

  2141.52 [ikifi:ru]

  215121 [ikYfi=ru] (#)

7404.20の「ツカワス」は,「くれる」と同じ格関係をと るものである。2068.07と2076.98は敬語形式による回答 である。

 次の回答は,「行ってくれと思っている」にあたる。

  1260.68[?nd3itura∫eja:ndi?umuto:N]

奄美地方を除く琉球方言では,「もらう」にあたる受納 動詞として「エル」「トル」などが用いられる(262図)。

しかしこれらは,本動詞としての用法が主で,補助動詞 として用いられることはほとんどないようである。(不 採用にした2072.02の[hi=turabahai]は,「トル」を補助 動詞として用いたと思われるわずかな例である。)その ため,「行ってもらいたい」にあたる内容を,恩恵の受 け手である話し手を主格として表現する一般的な形式が なく,231図では,琉球に無回答の地点が目立つ結果と なった。その中であえて,恩恵の受け手である話し手を 主格として表現するためには,この回答のような文型を

とる必要があるのかもしれない。ここでは「〜くれる」

に相当する補助動詞を用いた回答と一括して不採用とし たが,留意しておきたい。

 「行ってくれない」にあたる,次の回答も不採用とし

た。

  2076.25[pariΦunu](対等以下に)

   ク    [o:riho:ranu]

  2076,96 [o:ri聡jo:ranu]

  2085.16 [parihiranu]

  2151.51 [ikifudε隻ja:n]

 以上が,「〜てもらう」とは異なる格関係をとる補助 動詞が用いられているために不採用とした回答である。

 次に,補助用言が用いられていない回答について述べ る。この項目に現れた,補助用言の用いられていない回 答はすべて,「〜てもらう」とも,また上記で不採用と した「〜てくれる」とも違い,恩恵の授受にかかわる人 を二格にとることがないと見られる。この点で構文的に 大きく異なるので,このような補助用言を用いていない 回答は,すべて不採用とした。以下に類別して挙げる。

この中には,表現意図の上でも,質問文の文脈から大き くはずれると見られる回答が含まれている。

・そテくといい

  5742.71 [iYultoe:ndaYana:]

  6374.58[ittsurae:no:](「〜てもらいたい」を何度も    誘導したが,「〜ツラ(ナラ)エー」の言いかた    しか出ない。)

  7308.37[i幻a:e:nqpinol]〈上〉

   ク  [i幻a噂a:eln(加itteku巧a:raηkekomatt∫oru]

  7382.21 [ikasunarayokabatteNne]

  7396.44 [ikutoi・gana・]

・行かないか

  4746.21[eηanεkana:](「行ってもらいたい」にあた    る形式はどうしても出てこなかった。一応この回    答を示しておく。)

  5615.67[eganεkana:]〈「行ってもらいたい」にあた    る言い方である。>

  6621.07[ikaOka:](《164》の回答としては不適)

  7308.05[i㎏a:raηkanol]<上>

  7316.65 [ikarel〕ka]

・行かなければならない   4638.01[iganebadamedadzo:]

  2150,17 [ikadahanaran]

「行かなければならない」の類は義務表現の形であり,

表現意図の点でも質問文から離れている。なお,

7316.65の回答中の[re]は,敬語形式とみたが,ある

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 5 : 付資料一覧 (ページ 74-79)