②参加者が活動環境により,歌詞カード(模造紙)をもちいる。ホワイトボードや黒板がある 場所では,動きを伴う曲のみ事前に手書きする場合がある。
G.歌の先導の注意点
参加者が日頃忘れている曲でも歌唱中に思い出し,歌い始めることが多い。参加者の声が大 きくなるまで講師が大きな声で歌う。メロディや歌詞の歌いづらい曲はゆっくりと部分的に反 復練習をしながら1番のみを歌い,歌っているうちに参加者が乗ってくる曲は3番や4番まで 歌う等,曲や参加者のそのときの様子に合わせて臨機応変に変動する。講師は歌いすぎること なく,参加者の歌声を誘導するように歌う。時に1番全てを講師が歌って示すことで,どのよ うな曲か参加者が思い出すこともある。
(4)休憩
休憩の目的は,連続して歌い,身体を動かしたことによる疲れの軽減である。
①瞑想・・・目を閉じる➡息が,鼻から身体を通り,循環して口からゆっくり出ていくことを イメージする(3,4分)➡ゆっくり深呼吸をして目を開ける。
②ストレッチ・・・ウォーミングアップの体操に記載したストレッチを,2,3種類,丁寧に 行う。
③クイズ・・・簡単に答えられるクイズを行う。例,「パンはパンでも,空飛ぶパンは?」
(5)展開②
展開①と同様の内容に注意する。後半に向けて,盛り上がるように,歌唱に合わせた楽器活 動や道具の活動,仲間と協力し合う活動を取り入れていく。
(6)クロージング
クロージングの目的は,まとめに向かって終わりの意識が生じる歌を歌い,参加者が落ち着 いて活動を終えられるようにすることである。
①既存の固定曲の演奏・・・≪今日の日はさようなら≫≪蛍の光≫≪翼をください≫等,場所 や対象者によって変更している。高齢者施設の場合,よく知られている≪蛍の光≫が好まれる が,なかには,「寂しい気持ちになるから歌いたくない」という参加者がいる。テンポの速い曲 はあまり使用せず,参加者が落ち着いて音楽療法後の時間を過ごせる状態にもっていく。
②終わりへの意識向け・・・講師は一人ひとりの表情を確認し,参加者の空気を1つにしなが ら優しい声で歌う。
(7)まとめ
まとめの目的は,その日の歌唱プログラムの流れを振り返り,達成感や充実感を抱くこと,
何をしたかを思い出すことで脳に刺激を与えること,次回を楽しみにしながら終えるのを促す ことである。
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①本日の振り返り・・・今日,どんな曲を歌ったか,思い出してもらう。感想を自由に発言し てもらう。感想が出ない場合,講師が一言,感想を述べる。
②あいさつ・・・「今日も気持ちよく一緒に歌ってくださり,ありがとうございました」「今日 はいつも以上に声が大きく,晴れやかでした」等と感謝の意を述べる。
③次回予告・・・次回の活動で何をするか予告する。
3)歌唱プログラム実施時の配慮事項
(1)事前準備
①同じ人にばかり話し掛け偏らないようにする。
②開始前から終了後まで,楽しく,話し掛けやすい雰囲気づくりをする。
③参加者に認知機能の衰えがあり理解しづらい状態であっても,参加者へ「伝える」気持ちで 行う。参加者から明確な返事がなくても声掛けをしたり,代弁したりする。
④身体が不自由な人へ配慮する声掛けを行う。例えばウォーミングアップ時には,「両手でも片 手でも構いません。動きづらかったら,気持ちを送ってください」と,動けないことで自身を 責めることのないよう声掛けする。
⑤講師の服装は地味過ぎないようにする。明るめの色やきれいな色を取り入れ,対象者の気持 ちを惹き込めるようにする。
(2)実践前
①会場に一歩入ったときから,挨拶や言葉掛け,明るい表情等に気を配る。
②背を向けている人がいないか,歌詞カードや楽器は届いているか,体調が悪そうな人はいな いか等に配慮する。
(3)実践中
①体調確認・・・体調不良の人がいないか,何か言おうとしている人はいないか,観察する。
②会場内の温度調整・・・ウォーミングアップや歌で気温が上昇するため調整が必要となる。
③声・・・会場が広すぎて声が通らない場合,マイクを使用して聞き取りやすい声量にする。
滑舌も明確にし,早口で話さないようにする。
④緩急・・・プログラム内に緩急をつける。一息つける時間を設ける。
⑤表情や雰囲気・・・表情は柔らかくし,溌剌とした雰囲気で実践するが,ハイテンションに ならないようにする。講師が頑張り過ぎると,参加者はついていけないという雰囲気になるこ とがある。中庸か少し元気に接した方が,参加者が自身も真似ができるかもしれないと思い,
参加しやすくなる。
⑥コミュニケーションの確認・・・集団の場合,参加者同士が関われるように工夫する。
⑦体を動かすことへの配慮・・・体が固まらないようにする。身体が不自由な場合,身体が固 まりやすいので,ウォーミングアップを入念に行い,歌の合間や曲中にも身体を動かす。老人 ホーム等の施設入居者は体力が少ないため,過度な動きや休みなく動かすことは避ける。
⑧強要の禁止・・・振り付けや手話,楽器活動等を嫌がる参加者には強要しない。
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(4)実践後
楽器や楽譜を回収しながら,参加者全員への声掛けや握手等のスキンシップを行う。スタッ フが不足しているときは誘導を手伝うが,介助は知識がなければ事故に繋がるため行わない。
(5)参加者と内容の対応
高齢者の歌唱プログラム実践への参加者は,60 歳から
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歳までと年齢の幅が広い。した がって,世代の違いにより曲の好みに違いが生じる。また,年代による参加者の違いにはこの ことに十分気を配る必要がある。高齢者対象の公募タイプで参加者を募集する場合,参加者のADL
や年齢の幅は事前に把握することが難しいので,参加者に実際に会ってから判断する。初 回には,どのような参加者にも対応できるプログラムを用意し,その後,参加者に応じて内容 や曲を変えていく。高齢者施設での歌唱を中心とした音楽療法実践の場合,施設入居者の特質 を知っておく必要がある。特別養護老人ホーム入居者では,要介護4から5の人が多く,一般 的によく覚えていてなじみ深い童謡,唱歌,演歌等を好む傾向にある。介護付有料老人ホーム,サービス付き高齢者住宅や公共のケアハウス等の入居者は,要介護3程度の人が入居しており,
曲の好みは多様である。
自活している高齢者は,自活を続けられるように意識して日々の生活を能動的に生活してい る人が多い。こうした高齢者は,あらゆるジャンルの曲,知らない曲にも果敢に挑戦したり,
より上達したいと日々トレーニングしたりする場合が多い。このような高齢者に対しては,歌 唱プログラムを構成する曲のジャンルや種類を多様にし,体操や楽器活動も積極的に取り入れ,
歌唱活動でより健康で元気になれるようにバックアップしていくことが必要となる。また,指 導内容においても,フレージングやブレスの位置,表現方法等,専門的な歌唱法も取り入れる ようにする。参加者に応じて活動内容を変化させ,常に参加者の立場になって考え,参加者の 声を聞きながらよりよいプログラムにしていくことが講師に求められる。
3.まとめ
本節では,歌唱プログラムの開発について,開発段階における介入調査と,開発した歌唱プ ログラムの概要を中心に述べた。高齢者向けに留意する点は,心身両面である。片麻痺等の障 害がある者から健常な者までが幅広く参加するような場面では,他にも,取り扱う曲について の楽曲分析や活動の進め方,ピアノの弾き方,参加者の発言への対応等,記載すべき内容は多 分にある。本節ではウォーミングアップに重点を置き記載した。今後は音を使った詳細な方法 について検討していきたい。
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https://locomo-joa.jp/locomo/(2017
年6
月18
日採取)(25)杉下守弘・朝田隆「高齢者用うつ尺度短縮版-日本版(Geriatric Dopression Scale-Short
Version –Japanese,GDS-S-J)」『認知神経科学』Vo.11 No.1,2009.
(26)自由国民社編集部『なつかしの楽譜で楽しむ スターヒットパレード』,自由国民社,
2014.
(27)伊藤滋発行『オールヒット曲
2017』,自由国民社,2017.
(28)編集部編『ピアノ伴奏 世界の名曲専修』,メトロポリタンプレス,2013.
(29)師井和子『心にとどく高齢者の音楽療法 理論と実践,ドレミ楽譜出版,1999.
第2節 歌唱プログラムの実践
本節では,筆者が