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125 第2節 カラオケに関わる高齢者への意識調査

ドキュメント内 高齢者の歌唱活動による変容と自己の生成 (ページ 129-134)

Ⅰ.カラオケ団体の実態-テキストマイニングを用いて-

本節では,カラオケクラブやカラオケ発表会に参加する者が長期にわたり歌唱活動を行うこ とで感じている声の変化や歌うことに関しての目標等を調査し,歌唱活動を長期継続している 高齢者の特質及び意識について調査する。これにより,高齢者自身の声や生活への影響の実態 を明らかにする。

高齢者が関わる歌唱活動は幅広くカラオケから派生する多様な活動が存在する。そのなかに は,公民館におけるカラオケクラブ,カラオケ喫茶,カラオケボックスでの歌唱教室,元歌手 や現役の歌手等が経営する歌謡教室,コンテストを兼ねたカラオケ発表会等がある。店舗等で 行われる歌声喫茶ではよく歌謡曲や演歌が歌われる。筆者が行った店舗における歌唱教室では ピアノやアコーディオン等の楽器にあわせて演歌や歌謡曲を歌唱していたが,本節で取り上げ るカラオケとはカラオケ機材のプロミュージシャンの伴奏演奏にあわせて歌うことを総称して いる。数十年前,岡山県で初めてカラオケボックスが作られて(1)以降,カラオケが全国的に 広まった。その後,カラオケはフィリピンや中国をはじめとする他国でも人気となっている。

人々はカラオケの流行によって,気軽に歌う機会を得られたのである。

歌唱活動のなかで高齢者が好む歌唱ジャンルには,クラシック,演歌,歌謡曲,童謡,唱歌 等があり,先にも述べたように演歌,歌謡曲の活動ではここで取り上げるカラオケに関する活 動が目立っている。近年,筆者はいくつかの歌唱ジャンルを歌唱する活動を調査してきたが,

活動に参加する者の高齢層比率は若,中年層を比較すると全体数の

50%を超える程であった。

さらに,高齢者の歌唱活動は団塊の世代の活躍でより活発になっている。例えば,カラオケ喫 茶の舞台に立ち自身の得意とする歌唱曲を披露し高評価を受け,さらにうまくなりたいとカラ オケ講師の指導を得る高齢者が増加している。初心者から熟練者までカラオケに幅広く関わっ ているのは,カラオケが気軽にできるのと同に意欲的にも取り組める活動であり,門戸が広い 側面をもつためであるといえる。

以下に本節の方法を述べる。

【方法】

本節では,62歳から

85

歳までのカラオケクラブ参加者のなかから

17

名に対する構造化イ ンタビューを行うとともに,カラオケ発表会の出演者のうち

60

歳以上の出演者

32

名に対する 質問紙調査を実施した。質問紙調査の自由記述部分については一定の客観的水準に基づいて考 察するためにテキストマイニングを使用した。テキストマイニングには樋口耕一氏の開発した

KH Coder

(2)における階層的クラスター分析1と共起ネットワーク 2を使用した。階層的クラ

1 異なる性質のものが混ざりあっている集団(対象)のなかから互いに似たものを集めて集落

(クラスター)を作り,対象を分類する方法を総称したもの。

2 文書からその文書を特徴づける語の抽出を行い特徴語同士の共起関係をネットワーク図に するもの。

KH Coder

参照:Macromill HP

http://www.macromill.com/landing/words/b003.html

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スター分析と共起ネットワークは自由記述に含まれる頻出語を抽出し可視化するものである。

テキストファイルにテキストデータを読み込み,自動的に語を取り出して頻出語を割り出しそ れらの語の関係を考察した。なお,カラオケクラブ参加者とカラオケ発表会参加者への同じ質 問を比較しするために階層的クラスター分析と共起ネットワークを図示した。質問に対する結 果は,分析結果として文面で記す。

1.62歳から

85

歳までのカラオケクラブ参加者

17

名に対する構造化インタビュー

1)カラオケクラブの実態

このカラオケクラブは公民館で実践されるクラブの1つである。地域に住む高齢者のうち,

カラオケ好きの参加者が集まって

30

年前に始められた。参加者のなかで歌が上手で人望の厚 いものが講師となりクラブ以外でも個人指導も行っている。このカラオケクラブは公民館内の 最も広い小舞台のある部屋で行われ,カラオケ喫茶と同様に,歌いたい歌を曲入力担当者に書 いて渡しておき自身の順番が来たら舞台に立って歌うという仕組みである。待ち人は観客とな り,お菓子を頂きながら発表者の歌を聴き,歌い終わりには盛大な拍手をしたり他の参加者達 との談話を楽しんだりしていた。

2)調査の詳細

場所:O県

K

市にある公民館

実施日時:2015年4月

30

日,13時半から

16

時(カラオケクラブの実施時間内)

カラオケクラブ参加者:30名弱

研究協力者人数と性別:62歳から

85

歳の女性

10

名,男性7名の計

17

調査方法:構造化インタビュー,参加者のなかから

60

歳以上の人のみを対象とし,一人辺り 5分から

10

分弱,同質問を聞き取り形式で実施した。

3)質問内容

Q1.今までどのような音楽の習い事をしてきましたか。

Q2.歌を始めて何年ですか。

Q3.得意な歌がありますか。ありましたらご記入お願いします。

Q4.声についての悩みはありますか。

Q5.自分の歌声についてどう思いますか。

Q6.歌うために何か努力していること,心がけていることがありますか。

Q7.歌うことに関して,これからの目標はありますか。はい・いいえ Q8.Q7で「はい」とお答えの方,それは具体的にどのような目標ですか。

4)結果

インタビュー内容は,本節2「カラオケ発表会出演者」32名への質問と同様である。

表3-2-1.Q1今までの音楽の習い事経験(山下,2015)

10年程2年間歌のレッスンを受けていた。歌は25年~30年続けている。

歌は30年,カラオケは40歳くらいから。

歌は15年,D先生に習っている。歌を10年習っている。2年半D先生に習っている。

歌は30年くらい,その他,カラオケや民謡をした。音楽が好きになったのは中学2年の夏に入院したとき,

隣に流しのお兄さんがいて,歌謡曲をいろいろと教えてもらったこと。

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歌を10年,カラオケを毎週木曜にしている。歌は昭和45年か46年頃から続けている。

歌をY先生に1年,歌がずっと好きだった。

歌を習って2,3曲が歌えるようになったところ。

中学でブラスバンド(ユーフォニウム),歌は小学校で合唱,レコードに合わせて歌うことは昭和47年頃 から続けている,23歳ころカラオケスナックで歌い始めた。20曲位を朝まで歌う。

歌を4年程,D先生に10年習っている。

主人が歌っていたのに影響されて聞いていたが,3年前からO先生に習っている。定年後から始めた。4~

5年前から歌っている,レッスンは3年前から。

作曲家の先生について歌を習っている。小さい時から20年くらいは歌を歌っている。

「音楽の習い事経験」(表3-2-1)から歌を長年続けている者が多い結果となった。大半は 歌唱講師から歌のレッスンを受けていた。歌唱講師に習わずにレコードに合わせて練習してい る者もいた。

Q2歌を始めて何年

歌の経験年数(図3-2-1)の上位を挙げると,1年以上5年以下が最も多く,6名となり,

次いで6~10年が3名,

26~30

年が3名となった。参加者のうち,10年以上継続している者 は8名であり全体の

47%となった。

表3-2-2.Q3得意な曲(山下,2015)

歌手についての回答 曲名についての回答 ジャンル・その他の回答 宮史郎,三船和子,北島三郎,布施明,菅原

洋一,吉幾三,香西かおり,あおいかおり,

美空ひばり,中村美紀子,天童よしみ,大月 みやこ,三門忠治,門川博,片見五郎

≪蛍火海峡≫≪山≫≪川≫≪

男一代≫≪がっしょう海峡≫

≪女の海峡≫≪旦那様≫≪女 化粧≫

演歌6名,民謡の入ったよ うな高音の歌,POPS系

「得意な曲」(表3-2-2)については,現在流行している演歌歌手の曲や岡山県出身の歌手 の曲が多数あった他,多ジャンルの曲も歌うことがあるということが明らかになった。

表3-2-3.Q4声についての悩み(山下,2015)

回答

低音が苦手,高い声が出たらいい,声がお腹から出しにくい,ロングトーン,自分の声は好きじゃない,節 回しやコブシ,低音がでづらい,パワーがもっとほしい,ロングトーンやブレスが難しい,無し5名,声を 潰してだみ声にしたい,声がかすれる時がある

裏声で歌っていたが表声で歌うようになったら表声ばかりになってしまった,声の線が細い,声帯

「声についての悩み」(表3-2-3)の階層的クラスター分析では声が上位,次いで,ロング トーン,低音,表声等があった。共起ネットワークは声が中心的役割をもち2つの形に分散し た。「声」が頻出した。

0 2 4 6 8

1~5年 6~10年 11~15年 16~20年 21~25年 26~30年 31~35年 36~40年 41年~

図3-2-1.歌の経験年数(山下,2015)

128

表3-2-4.Q5自分の歌声について(山下,2015)

回答

高音が良い。カラオケ大会で最近特別賞をもらった。感情がこもっている。味がある。がら声が渋いと言わ れる。人にあなたの声がものすごく好きと言われて嬉しかった。そう言われることが踏み台となるお腹から 声が出ている。声が大きいこと。声に力がある。大月みやこさんの声に似ている。高音がきれい。きれいな 声だと言われる。高い時はお腹か,語りは胸から出すように教えられた。つぶれた声,きれいな声など曲に よって声を使いこなす。低音がうまい。発表会に出だして,歌えるようになった,声が伸びる。声の質がよ いと言われる。自分では分からない

「自身の歌声について」(表3-2-4)は,「高音がよい」「感情がこもっている」「賞をも らった」「声を褒められた」等,自身の歌声に対する肯定的な自己評価や他者評価が大半を占 めていた。否定的な評価に関しては,「がら声」「つぶれた声」が抽出された。

表3-2-5.Q6歌うために努力していること(山下,2015)

回答

毎日歌う。週2回カラオケ喫茶に行き,その他にカラオケに行く。数多く,しっかり歌う。週2回カラオケ へ通い,一回行ったら10曲は歌うとにかく聞いて,習って,怒られると伸びると思っている。もっと上手 になりたい自分がこれだと思うことを続けること毎日発声練習をすること2名「アエイウエオアオ」にメロ ディを付けてロングトーンを伸ばすこと。声を大きく,ブレスに気を付ける。思い切りお腹から歌う風邪を ひかないように外出から帰ったら必ず塩水でうがいをする。仕事行き返りに歌う,一人の時に歌う。別にな い、自分なりに歌うこと。聴くこと。ブレスの仕方。家でテープを聞きながら歌詞カードを見て歌う。楽譜 を見て忠実に,声の出し方を研究する。筋トレ,毎日歩く,健康維持のためもある。特にない。

歌うために努力していること」(表3-2-5)では,「歌う」や「カラオケ」「行く」等 が上位に挙がり外出し歌う努力をしていることが示された。また,共起ネットワークでは「歌 う」ことが中心的役割をもち,毎日または週に何回かカラオケに行くこと,それにより自身を 見つめ,実践を通すことで日常的にブレスに気を付ける等の努力する姿勢が身についているこ とが明らかになった。

Q7今後歌うことに関しての目標

今後歌うことに関しての目標があるかどうかについては,目標がある者が

14

名,目標のな いものが3名となり,全体の8割以上が目標をもっていた。

表3-2-6.Q8今後歌うことに関しての目標の具体的な内容(山下,2015)

回答

健康の秘訣,歌える限り歌いたい。自分の思うように歌えるようになりたい。自分の納得が行く歌が歌いた い。健康のため,生きている限り歌う。ボケ防止に歌を歌い続けたい2名。演歌だけでなく,民謡に力を入 れたい。語りの曲に挑戦したい。≪海宿≫などの難しい曲。歌って楽しみ,皆のうたを聴くのも楽しみ。歌 い続けること。カラオケ大会でいい点をもらうこと,シニアの部で寿賞をもらった,舞台に上がって歌い,

賞状やトロフィーをもらえることが嬉しい。いろいろな所の発表会に参加すること,誘われれば県外へも行 く。毎日を健康に過ごすこと,カラオケの会に参加して人の輪を作る,話をすること。音を外さないように する。健康のために歌いたい,皆との会話が楽しい。体調が悪く蚊が鳴くような声だったが声が出るように なり体調も良くなった,これからも今のままで頑張っていきたい。皆を楽譜通りに歌えるようにしてあげた い。慰問で歌っていきたい。

「今後歌うことに関しての目標」(表3-2-6)の階層的クラスター分析では,「健康のため に歌う」ことが上位に挙がった。共起ネットワークでは「歌う」が中心的役割をもち,「健康」

「カラオケ」「参加「自分」「歌を歌える」「楽しむ」等の言葉があり,楽しんでカラオケに 参加している人が多かった。また,語群は2つに分散した。「体調」「声」が1つの語群とな り,声を通して自身の体調と向き合っていた。

5)考察

カラオケクラブ参加者のなかには何十年も歌に携わっている者がいれば近年歌い始めた者も いた。本クラブへの参加が歌を続ける参加者の原動力となっていると考察する。また,参加者 は,自身の歌を披露するために日々の練習を重ねるなかで新たな自身の声の魅力を発見し他者

ドキュメント内 高齢者の歌唱活動による変容と自己の生成 (ページ 129-134)