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第 2 章 主要国等の対アフリカ戦略

第 7 節 豪州

1. 豪州とアフリカ諸国の関係:2008 年から強化

(1) 2008年までの状況:南アフリカとの関係が中心

2008年に、豪州政府は「アフリカ諸国への関与を拡大・深化させるという政策」を立案 した151

2008年以前の豪州とアフリカ諸国との関係について、豪州財務省統計局が発行している

「Year Book Australia152」の2008年版には次のように記述されている153

①アフリカにおいて、豪州と最も関係が深い国は、南アフリカである。

②豪州の鉱業会社がアフリカ全土で活発に活動している。

149 同上、12頁。

150 同上、14頁。

151 Australian Government, Department of Foreign Affairs and Trade, “Australia and Africa”, 2013.

<http://www.dfat.gov.au/geo/africa/>

152 “Year Book”は、豪州の環境、社会、工業、経済についての包括的かつ詳細な統計概要を示すものであ

る。

153 Australian Bureau of Statistics, “Year Book Australia, 2008”. <http://www.abs.gov.au/AUSSTATS>

③ジンバブエでは、政治・経済改革を促進させるための制裁措置を実施している。

④スーダンの人道危機に対しては国際社会の一員として対応している。

(2) 2008年以降の状況:全てのアフリカの国々及びAUとの関係を重視

アフリカとの関係強化の政策が進められた 2008 年以降の豪州とアフリカ諸国との関係 について、2012 年版では、「サブサハラ・アフリカ」という項目が新たに設定され、その 上で次のように記述されている。

①豪州は、アフリカの全ての国々とアフリカ連合(AU)との関与を強化している。

②豪州は、2008年以降各国に大使館を開設するとともに、2010年には「AUとの関 係強化のための覚書」にも署名した。

③豪州は、アフリカにおいて鉱業の面で重要な存在を示している。

④豪州は、ジンバブエに対する関与を継続する。2008年までは、豪州とアフリカの 関係は南アフリカが中心であったものが、アフリカの全ての国々とAUの関係 に拡大されている。

2. 豪州の対アフリカ戦略の考察

(1) 豪州の外交通商方針

オーストラリアの外交政策全般について、「ヨーロッパからオーストラリアへの移住が 始まって以来、オーストラリアの外交政策における大きなジレンマは、主要な市場や安全 保障のパートナーから遠く離れ、資源豊かな大陸に居住する少ない人口で、いかに自国の 安全保障を担保し、経済的利益を守っていくかという点に主眼があった。米国とは対照的 に、オーストラリア人が抱く最大の恐怖は、世界の諸情勢に巻き込まれることではなく、

放棄されることである。孤立主義的な考え方がオーストラリアの外交政策において優勢に なったことはない。世界の舞台から撤退することで安全保障が担保されるという考え方は、

オーストラリア人の中には決して存在しなかった。それにより、オーストラリアの外交政 策には実践主義、行動主義の要素が生まれた。」とされている154

このような基本的な考え方を背景として、現在の豪州の外交通商方針は、「豪州の国際

154 アラン・ギンジェル「オーストラリアの外交政策とラッド政権」『総合調査報告書:オーストラリア・

ラッド政権の1年』国立国会図書館調査及び立法調査局、20093月、102頁。

的な評判、イメージと関与を強化する」ことを目標として、次の3項が掲げられている155

①アジア・太平洋地域での地域的な関与を重視する。

②国際社会の問題について積極的に支援するとともに、豪州のビジネス・投資環境を 強調する。

③多文化社会に裏付けられた豪州の社会と文化を強調する。

(2) 豪州の対アフリカ戦略の考察

前項の外交通商方針の下、豪州とアフリカの関係は、2008 年以降着実に進歩しており、

豪州とアフリカ諸国の間の政治、外交、商業、安全保障その他の面の関係は飛躍的に強ま っている156

これらを踏まえるならば、豪州の対アフリカ戦略は次の2点と考えることができる。

①アフリカとの経済的関係の強化

豪州にとって、資源と市場の面でアフリカにおける経済的関係の強化が重要である。

②国際社会における名声の獲得

アフリカにおける国際社会とっての課題に対しても積極的に支援し、国際社会における 名声を獲得する。

3. 豪州の PKO への取り組み―アフリカへの国連 PKO 派遣

(1) 豪州のPKOへの近年の取り組み157

豪州は、国連PKO予算において、第12位の貢献を示している。1947年以来、約6万5,000 人の要員を国連PKOに派遣している。この中には、1960年以来のアフリカにおける22の ミッションへの派遣が含まれている。

豪州は、アフリカ諸国のPKO実施能力を向上させるため、AUのソマリアにおける部隊 に装備品を供与し、また、東アフリカ待機軍に対する教育を実施している。さらに、豪州 は、アフリカの国々の軍人や文民に対しての豪州でのPKO教育を支援している。

155 Australian Government, Department of Foreign Affairs and Trade, “Public Diplomacy Strategy 2013-14.”

156 Australian Government, Department of Foreign Affairs and Trade, “Australia and Africa”, 2013.

157 Australian Government, Department of Foreign Affairs and Trade, “Australia and Africa: Partners into the future”, July, 2012.

(2) 豪州の国連PKO派遣状況

a) 豪州の世界各地への国連PKO派遣状況

国連の統計によると、豪州は2013年末現在52名を派遣しており、国連PKO要員を派遣 している114カ国中で79位となっている(表10参照)。

豪州の特色は、周辺地域である大洋州に要員を派遣していることである(東ティモール とソロモン島)。豪州は、中東、アフリカのミッションにも要員を派遣している158

表10:豪州の国連PKO派遣数(上段は人数、下段のカッコ内は順位) 2013年末現在

警察 専門官 部隊 合計 変化の傾向 20

(55)

21 (27)

11 (70)

52 (79)

2001年までは1,600名 2005年以降50名~110名

出典:国連HP “average monthly uniformed personnel contributions by country”に基づき筆者作成

b) 豪州のアフリカへの国連PKO派遣状況

豪州は2013年12月現在、4個の国連PKOミッションに参加している。アフリカに対し

てはUNMISS(南スーダン)のみである(表11参照)。

表11:豪州のアフリカにおける国連PKO派遣数(人数) 2013年末現在

警察 専門官 部隊 合計 派遣先(カッコ内は人数)

5 4 11 20 UNMISS(20)

出典:国連HP “UN Mission’s Summary detailed by country”に基づき筆者作成

4. 豪州の対アフリカ援助と豪州・アフリカ間の貿易投資

(1) 豪州の対アフリカ援助

a) 豪州の対外援助の特徴159:アジア太平洋地域を重視

2011年7月、豪政府は、新たな援助政策「豪州にとっての効率的な援助プログラム:真 の成果の達成に向けた変革の実現」とともに、この政策を実現するための4年にわたる予 算戦略を含む「包括的な援助政策枠組み」を発表し、効率的・効果的な援助の実施を目指 している。

158 平和・安全保障研究所「平成22年度防衛省委託研究:国際平和協力活動における先進国の取り組み及 び体制整備の動向」20113月、122頁。

159 外務省『2012年版 政府開発援助(ODA)参考資料集』、163頁。

この新たな援助政策に基づき、豪州は、①命の救済、②あらゆる人のための機会の促進、

③持続可能な経済開発、④効果的なガバナンス、⑤人道支援・災害対応の5つを戦略的目 標として掲げている。地域別に見ると、アジア大洋州地域を重視しており、特にインドネ シア、パプアニューギニア、アフガニスタンおよびソロモンへ重点的に支援を行っている。

また、国際組織を通じた援助にも重点を置いており、予算の30%以上を国際機関を通じ た援助に割り当てている。

開発援助政策の企画・立案、実施は、1995年3月に設置された「オーストラリア国際開 発庁(AusAID160)」において実施されている。行政機構上、AusAID は外務貿易省から独 立した機関となっているが、外交政策と政府開発援助政策の一貫性は確保されている。

b) 豪州の対アフリカ援助額161:アフリカへの配分は低い

2012年5月に発表された2012〜2013年度の予算において、政府開発援助額は前年度予 算の約44億ドルから約 47億ドルへと 4.0%増額した。しかし、世界的に経済が減速し政 府の歳入が減少する中、政府関係機関の予算を軒並み削減しており、その増額幅は前年度

の9.8%に比べて圧縮されている。

2010年の二国間ODA合計は約32億ドルで、その中の5.49%がサブサハラ・アフリカに 配分されている(2008年は約27億ドルの中の2.6%、2009年は約23億ドルの中の4.1%)。

2010年度の政府開発援助上位10カ国中にアフリカの国は含まれていない。

(2) 豪州・アフリカ間の貿易投資

a) 貿易

アフリカ諸国との二国間の貿易は、この10年間、毎年6%増加して、約97億ドルに達 している162

輸出において、豪州は伝統的にドイツをはじめとする欧州への輸出が多く、2012年は輸 出、輸入とも貿易量全体の80%を超えている。欧州への輸出依存度を減らし輸出市場を多 角化したい豪州にとってアフリカ、特にサブサハラ・アフリカは今後の伸びが期待される 市場である。アフリカ諸国への輸出は2012年までの5年間、輸出全体の 1.2%から 1.5%

で推移している。南アフリカにはさまざまな規模、業種の企業が進出しているほか、ナイ

160 Australian Agency for International Development.

161 同上、165頁。

162 Australian Government, Department of Foreign Affairs and Trade, “Australia and Africa”, 2013.

ジェリアの富裕層は豪州で製造される「織物や布地」の重要な顧客になっている163。 また、アフリカ諸国への教育関係の輸出は、2005 年から 80%以上増加しており、アフ リカ地域に対する豪州からの輸出の中で、鉱石類についで2位の位置を占めている164

b) 投資:鉱業が中心

豪州のアフリカへの投資は、鉱業部門を中心に盛んに行われている。アフリカでは、200 以上の鉱業会社が700以上の開発プロジェクトを実施中である165