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第 2 章 主要国等の対アフリカ戦略

第 6 節 仏国

1. 英・仏とアフリカ諸国の関係:歴史的に深い関係

(1) 東西冷戦終了まで:アフリカは英仏の「勢力圏」

英国の項を参照。

(2) 冷戦終了後:英仏などの欧米諸国は、アフリカ支援に消極的に 英国の項を参照。

(3) 2000年代:英仏は中国の進出への対応

英国の項を参照。

(4) 仏国の(旧仏領)アフリカ諸国との関係の特徴:擬似家父長制的「共同体」関係

仏国は、植民地支配において「同化政策」をとった。つまり、現地住民から優秀な人材 を選別して仏本国に送り、彼らに仏語や仏文化を習得させて「フランス人化」し、彼らに 植民地統治の代理を実施させた126

アフリカ諸国の独立後も、全てのアフリカにおける植民地帝国(仏、英、ベルギー、伊、

ポルトガル、スペイン、独)の中で、仏国は唯一アフリカ大陸に軍事的なプレゼンスを有 するなど、アフリカにおいて重要な影響力を維持した国であり、その影響力の維持に努め

125 日本貿易振興機構在欧州事務所、海外調査部欧州ロシアCIS課・中東アフリカ課「欧州企業のアフリ カ市場開拓事例」20135月、63頁。

126 青木『これがアフリカの全貌だ』、167頁。

てきた国である127

このような結びつきを、旧仏領アフリカ諸国のエリート層も当然と考えており、仏とア フリカを結び付けている擬似家父長制的「共同体」関係は他に例をみないものであるとも 言われている128

2. 仏国の対アフリカ戦略

(1) 仏国の対アフリカ政策の変遷:「勢力圏の維持」と「関与の低下傾向」間で揺動

第二次世界大戦後、仏国の対アフリカ政策は、勢力圏および権益の維持と仏国のアフリ カの関与の低下傾向の間で揺れ動いてきた。関与の低下の傾向は、ドゴールの植民地政策 において明らかであった。ドゴール政権以降も関与は低下傾向にあったが、1973年から開 始された「フランス・アフリカ会議」を通じて、仏国の対アフリカ外交は再強化された129

冷戦後の仏国におけるアフリカに対する世論の特徴は「アフロペシミズム130」に要約さ れる。1990 年代に入ると、「アフリカには政治的には独裁か混乱しかありえない、また経 済的発展の見込みもない。これまでの仏国の援助は無益であった。仏国はアフリカから手 を引くべきである」という論調が広まった。この時代、急成長するアジア市場、復興過程 にある東欧市場に向けて、公的資金をアフリカからシフトさせるべきとの機運も高まって いた131

冷戦後の仏国の対アフリカ政策として、1990 年の第16回フランス・アフリカ首脳会議 において、ミッテラン大統領は「今後、仏国の支援は自由を拡大する努力にリンクされる」

と述べた(ラ・ボール宣言)。この宣言に基づき、仏国は旧植民地国の民主化支援を進めた。

民主化の支援において、経済協力、トップレベルの政治協議、軍事介入など、公的に宣 言された手段と隠然たる手段がとられた132

軍事面では、アフリカ諸国の多くが独立した1960年代から、仏国は「アフリカの憲兵」

として、当事国との二国間関係において、紛争の予防や解決のために、軍事介入や戦略的

127 片岡貞治「アフリカの紛争予防:フランスの視点(仏の対アフリカ政策から)」平成12年度自主研究

『現代アフリカの紛争及び紛争解決の模索』日本国際問題研究所、20013月、54頁。

128 大林稔「冷戦後のフランスの対アフリカ政策」林晃史編『冷戦後の国際社会とアフリカ』研究双書、

19963月、65頁。

129 同上、68-70頁。

130 いわゆる“アフロペシミズム”的な見方とは、「慢性的な武力紛争、破綻した国家、世界経済における いっそうの周辺化」といった悲観論である。

131 大林「冷戦後のフランスの対アフリカ政策」、75-78頁。

132 同上、78-82頁。

な関与を行ってきた133

1997年以降の改革において、アフリカ紛争問題への対応に関して、仏国は介入を自戒す ることとし(在留仏人・外国人コミュニティの安全確保と国外退避にのみ軍を派遣)、駐留 仏軍の削減と再編などが進められた134

(2) 仏国の外交・国防基本方針とアフリカとの関係:アフリカ関与に積極的な姿勢 現在の仏国の外交・国防基本方針として次の5項目が掲げられている135

①仏国は、伝統的に国連を中心とした「国際協調」の重要性を主張。

②オランド大統領は、人権や民主主義等の価値の重要性を主張。

③伝統的に関係が深い中東・北アフリカ地域に対しては、同地域の安定化、民主主義、

人道状況の改善に向けた積極的なイニシアティブを継続。

④安全保障に関しては、核抑止力の独自性は維持しつつ、欧州の防衛体制及び対応能 力の更なる強化・発展に注力。

⑤旧植民地を多く擁するアフリカ地域に対しては、アフリカ自身のイニシアティブを 尊重しつつ有事の際は支援を行う方針。

5項目中の2項目がアフリカにかかわるものであり、仏国のアフリカ関与に積極的な姿 勢がうかがわれる。

そして、この方針の下に、仏国は、アフリカに対して次のような支援、貿易投資を実施し ている。政府開発援助(ODA)においては、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成を目標 に、サブサハラ・アメリカを最優先地域としており136、貿易投資においても近年、サブサ ハラ・アメリカとの関係が強まっている137

また、軍事・安全保障面においては、2013年1月より、マリ政府の要請に応じ、マリ北 部においてテロリスト掃討作戦を展開するなど、国連軍を支援するための派兵を積極的に 行っている。

(3) 仏国の対アフリカ戦略の考察

フランスの対アフリカ政策の目的は、伝統的に、①「大国」の条件のひとつとしての勢

133 片岡「アフリカの紛争予防」、58頁。

134 片岡「フランスの新たな対アフリカ政策」、116-117頁。

135 外務省「フランス共和国基礎データ」外務省HP。

136 外務省『2012年版 政府開発援助(ODA)参考資料集』、140頁。

137 日本貿易振興機構「欧州企業のアフリカ市場開拓事例」、12頁。

力圏の維持、②経済的利益の追求にあるといわれている138

このことと、仏国とアフリカ諸国の歴史的な関係、現在の政策などから、仏国の対アフ リカ戦略は次の3点と考えることができる139

①アフリカにおける経済的利益の確保

資源と潜在的市場であるアフリカを巡る国際的競争が活発化している。仏国にとっ て、アフリカにおける経済的利益の確保が重要である。

②旧宗主国としての政治・文化的プレゼンスの維持

③国益がからむと判断すれば、直接的な軍事介入も実施

3. 仏国のアフリカに対する軍事的関与

(1) 仏国のアフリカに対する軍事的関与の変遷:「アフリカの警察官」の立場

1960年代から、仏国の対アフリカ政策は、旧仏領アフリカ諸国と宗主国であった仏国と の間に存在した緊密な友好関係を独立後も維持していくという意思に裏打ちされていた。

それゆえ仏国は、経済協力と軍事協力を機軸とした伝統的な絆の維持に努めてきた。仏国 は、国益追求の観点から、必要があれば「アフリカの警察官」として武力行使も含めた介 入を行ってきた140

しかしながら1994 年のルワンダにおける「トルコ石作戦」への国際的な非難、1996-97 年の中央アフリカでの度重なる軍事介入において、仏国の介入主義的な政策がこれまでの ようには機能しなくなった。1997年頃から、フランスでは駐留仏軍の削減と再編、協力省 の外務省への併合、軍事協力局の解体などの変革が進められた141

現在、仏政府の「安全保障と防衛協力」のための体制は、国防省(統合軍)、内務省(国 際協力局)と外務省(安全保障・防衛局)により構成されている。国防省と内務省は作戦 面での協力を推進し、外務省は構造的な協力を推進する。構造的な協力においては、相手 国の軍事組織や治安組織の構造的な改善にかかわる協力が実施される142

138 大林「冷戦後のフランスの対アフリカ政策」、67頁。

139 元駐ボツワナ日本国特命全権大使は次のように考察している。①主要国共通のアフリカ接近の狙いは

「資源権益の確保」、②仏国特有の狙いは「旧宗主国としての政治的影響力を通じた市場の確保」、松山

「最近のアフリカ情勢と我が国の対アフリカ政策」、15頁。

140 片岡「フランスの新たな対アフリカ政策」、117頁。

141 同上。

142 France’s Ministry of Foreign and European Affairs, “Security and Defense Cooperation”p.3.

(2) 仏国の海外派兵の状況143

2014年1月時点での、仏国の海外派遣の状況は次のとおりであり、アフリカ諸国への派 兵が多い。

①国連軍を支援するための派兵

・コートジボアールに対しては、国連UNOCI(コートジボアール)ともに安全の確保 のため、2011年以来約450名を派兵(2009年当初は1,800名)。

・チャドに対しては、チャドにおけるプレゼンスを保持するため、950名を派兵(2013 年12月)。

・マリに対しては、マリの要請に応じ、テロ掃討作戦のため2,900名を派兵。

・中央アフリカ共和国に対しては、アフリカ連合(AU)が実施中のPKOを支援する ため、1,600名を派兵。

・以上のほか、アフリカ諸国が自らの PKO 能力を向上させるために実施している

ReCAMP144への参加と支援。

②EUの一員としての派兵

・ソマリア沖における海賊行為抑止のため、191 名を派兵。フリゲート艦と哨戒機も 派遣。

・EULEX Kosovoに192名を派兵。

・コンゴの治安部門改革(SSR : Security Sector Reform)支援とボスニア・ヘルツゴビ ナに対する支援への参加

③NATOの一員としての派兵

・アフガニスタンに、235名を派兵(2013年10月)。 ・コソボに、319名を派兵(2013年10月)。

(3) 仏国の国連PKO派遣状況

a) 仏国の世界各地への国連PKO派遣状況

国連の統計によると、仏国は2013年末現在956名を派遣しており、国連PKO要員を派 遣している114カ国中で26位となっている(表8参照)。

UNIFIL(レバノン)への派遣数が多い(部隊855名)。

143 France ONU(Organisation des Nations Unies),“Peacekeeping Operations”January 2014.

144 Reinforcement of African Peacekeeping Capabilities.