第 2 章 主要国等の対アフリカ戦略
第 5 節 英国
3. 英国の「海外安定構築戦略」と国連 PKO 派遣
(1) 英国のアフリカでの軍事的関与の変遷:旧植民地へ軍事的関与は最小限
英国は、後述する仏国とは異なり、旧植民地へ軍事的関与は最小限にとどめてきた。1964 年までにケニア、ウガンダ、タンザニアに軍事的に介入して以降、英国は直接的な軍事介 入を控えるようになった。ビアフラ戦争の際への介入は間接的なものである、1979年のジ ンバブエに対する関与は平和的な手段によるものであった。現在、英国はアフリカに駐留 軍や基地を有していないが、軍事顧問を然るべきポストに派遣して、アフリカ諸国に対す る軍事的な影響力を維持している111。
(2) 海外安定構築戦略:紛争の予防と拡大の抑制
「海外安定構築戦略112(BSOS:Building Stability Overseas Strategy)」は、外務省(FOC)、
国際開発省(DFID)と国防省(MOD)にまたがる戦略として、2011年7月に公表された ものである。その目的は、英国の安全と繁栄のために、海外の不安定要素や紛争を発見・
予防・対処において、外交、国際開発と防衛・安全保障の力をいかに結集するかであると されている。
BSOS においては、紛争発生後の対応にコストをかけるよりも、紛争を予防し、拡大を 抑える方がより効果的(Cost Effective)との認識の下に、早期の対応と紛争に至る以前の
111 片岡貞治「フランスの新たな対アフリカ政策」『国際政治』第159号、2010年2月、127頁。
112 U.K. Department for International Development, Foreign & Commonwealth Office, Ministry of Defense,
“Building Stability Overseas Strategy.”
予防が重視されている。BSOS の三本柱として、①早期警戒、②迅速な紛争予防と対応、
③紛争以前に対する投資が掲げられている。
このBSOSの中でPKOに取組む方針も示されている。
(3) 英国の国連PKOへの取組みと国連PKO派遣状況
a) 英国の国連PKOへの取組み
2000年代初頭において、英国は、安全保障理事会常任理事国として国際社会に対する特 別な責任を負っており、国連 PKO に対しても相応の貢献をしなければならないという認 識に基づき、UNFICYP(キプロス) やUNPROFOR(ユーゴスラビア)などに多数の要員 を派遣してきた。また、国連PKO の公平・中立原則にかんがみ、国連PKO の中核をなす 歩兵部隊に対する兵力の提供は差し控える一方で、兵站及び補給面での協力を重視してき た113。
現在、英国は国連PKOの任務が多様化している中で(参考4参照)、「海外安定構築戦略
(BSOS)」において、次により国連PKOに取り組むとしている。
①安全保障理事会常任理事国としての責任を果たす。
②国連PKOは他の軍事ミッションに比べれば低コストであるが、まだ高コストであ り、国連PKOが効率と効果を高めるための改革の努力を主導する。PKOミッ ションが必要以上に現地に留まらなくてよくなるよう努める。
③国連が行う「紛争予防」のための措置を積極的に支援する。
参考4:国連PKOの現状114
国連 PKO は、伝統的に、国連が紛争当事者間に立って、停戦や軍の撤退の監視等を行 うことにより事態の沈静化や紛争の再発防止を図り、紛争当事者による対話を通じた紛争 解決を支援することを目的とした活動であった。例えば、国連休戦監視機構(UNTSO)、 国連インド・パキスタン軍事監視機構(UNMOGIP)などはこうした目的のために数十年 間活動を続けている。
冷戦の終結以降、国際の平和及び安全の維持の分野における国連の役割が高まるととも に、国際社会が対応を迫られる紛争の多くが国家間の紛争から一国内における紛争又は国
113 衆議院憲法調査事務局「国連平和維持活動について」2002年2月、8頁。
114 外務省「国連PKOの現状」外務省HP、2010年5月。
内紛争と国際紛争の混合型へと変わった結果、国連 PKO の任務も多様化している。すな わち、停戦や軍の撤退等の監視といった伝統的な任務は引き続き重要であるが、これに加 え、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)や治安部門改革(SSR)、選挙、人権、
法の支配等の分野での支援、政治プロセスの促進、紛争下の文民の保護など多くの分野で の活動が国連PKOの任務に加えられてきている。例えば、日本が、2014年2月から参加 している国連ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)は、軍事部門に加え、文民警察、行 政、選挙、復旧、人権及び難民帰還に関する任務を与えられている。
b) 英国の世界各地への国連PKO派遣状況
国連の統計によると、英国は2013年末現在289名を派遣しており、国連PKO要員を派遣 している114カ国中で43位となっている(表6参照)。
派遣は部隊のみで、UNFICYP(キプロス)への派遣数が多い(部隊279名)。
表6:英国の国連PKO派遣数(上段は人数、下段のカッコ内は順位) 2013年末現在
警察 専門官 部隊 合計 変化の傾向
0 0 289
(43)
298 (43)
2002年の697人をピークに漸減
出典:国連HP “average monthly uniformed personnel contributions by country”に基づき筆者作成
c) 英国のアフリカへの国連PKO派遣状況
英国は2013年12月現在、4個の国連PKOミッションに参加している。その中で3個が アフリカである(表7参照)。
表7:英国のアフリカにおける国連PKO派遣数(人数) 2013年末現在
警察 専門官 部隊 合計 派遣先(カッコ内は人数)
0 0 10 10 MUNUSMA(2), MONUSCO(5), UNMISS(3) 出典:国連HP “UN Mission’s Summary detailed by country”に基づき筆者作成